どうしても融資が必要。しかし借入過多・・・短期のつなぎ融資で交渉してみては?

資金繰りのためには、銀行からの融資が欠かせないものです。

しかし、必要だからといって融資を受けすぎた会社では、銀行から「借りすぎだから、これ以上の融資は危ない」と判断され、融資を受けにくくなることもあります。

この状態を「借入過多」といいます。

しかし、実際の資金繰りを考えると、どうしても融資が必要なこともあるでしょう。

そこで融資を引き出すためには、借入過多の問題点を正確に理解し、銀行が融資しても良いと納得するような融資交渉が必要となります。

本稿では、借入過多の会社が融資を受けるための融資交渉について、徹底解説していきます。

借入過多は危険視される

会社を経営していくにあたって重要となる経営資源には、ヒト・モノ・カネの三つがあります。

これらは三位一体であり、どれも欠かすことのできない重要な資源ですが、多くの経営者が一番重要だと感じているのはカネでしょう。

確かに、カネがあれば経営は非常にスムーズになります。

資金繰りが行き詰まらなければ、資金調達に奔走する必要はなく、経営者は事業推進に注力できます。

人材育成や新規雇用にお金をかけることができれば、ヒトの部分でも豊かになります。

豊かなヒトとカネによって優れた商品を開発したり、宣伝広告を盛んに行えば、モノの部分でも豊かになることでしょう。

このような意味では、カネは最も重要な経営資源と言えるかもしれません。

しかし、多くの会社がカネに困っているのもまた事実です。

カネが必要になれば、銀行から融資を受けるなどして資金繰りを回していきますが、いくらでも借りられるわけではありません。

銀行が融資判断をする際には、借入金総額も必ずチェックしています。

ここで「借入過多(借りすぎの状態である)」と判断された会社に対しては、融資に慎重になるのが普通です。

一般的に適正とされる水準よりも借入れが多い会社は、そこまで借入れに頼らなければ資金繰りが回らない体質や、借入金の返済による資金繰りへの圧迫が危険視されるのです。

借入過多の水準

業種によっても違いはありますが、一般的には、次のように判断されます。

  • 借入金が年商の30%以下であれば良好
  • 借入金が年商の30%超50%以下であれば普通~要注意
  • 借入金が年商の50%超ならば危険

融資のプロである銀行の判断というだけのことはあって、この見方はかなり適格な見方です。

実際、借入金が年商の50%を超えている会社では、リスケジュールや倒産に至る可能性が非常に高いのです。

そのような会社では、借入金返済による資金繰りの負担はかなり重く、資金繰りが回りにくい状況にあります。

なんとか回っているうちはいいのですが、売上の低下などを招くと借入金の割合は高まり、資金繰りは回らなくなり、返済も不可能となります。

また、資金繰りが回りにくい会社では、積極的な事業展開も難しく、良くて現状維持という経営に陥ることが多いです。

そのような経営をしていると、同業他社から置き去りにされ、業績低下に至る可能性が高いでしょう。

このように、借入過多の会社は「業績が落ちていく可能性が高く、業績が低下すれば資金繰りは破綻する可能性が高い」のですから、銀行が危険視するのも当然だと言えます。

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会社が抱えるジレンマ

それでも、会社がお金を必要としていることには変わりありません。

どうしても融資が必要であり、しかし追加の融資は見込めないとなれば、資金繰りは危機的状況に陥ります。

そのような状態でも、何とかして融資を引き出していく必要があり、そこに融資交渉の価値があるとも言えます。

借入過多以外にも、ネガティブな要素をたくさん抱えているために融資を拒否されているならば、拒否されるのは当たり前で交渉の余地もありません。

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しかし、融資を拒否されるのはそのような場合ばかりではないのだ!

例えば、大きな取引が実現しそうな場合を考えてみると、よくわかるでしょう。

大きな取引をするためには、必要な運転資金も大きくなります。

販売量が多い取引では、前提としてたくさんの仕入れが必要です。

大型の工事では、工期も長くなるため多額の立替が発生します。

この運転資金を調達できなければ、せっかくの大型取引を逃してしまうかもしれません。

相手が大手企業ならば、その取引をきっかけとして、長期的に大きな売上を期待できるかもしれませんが、最初の取引ができなければどうしようもありません。

そこで、銀行に融資を依頼するのですが、銀行は借入過多を理由に融資が難しいと考えます。

融資を受けられれば全てうまくいくのに、それができなければ取引を諦めなければならず、それは非常にもったいない。しかし、融資を諦めて自己資金でやろうとすれば、資金繰りは破綻する。

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このように、融資なしでは「進むも地獄、退くも地獄」のジレンマに陥るのよ!

ジレンマを解消するには?

そのジレンマを解消できる唯一の方法は、何とか融資を受ける以外にありません。

銀行は、借入過多の会社に融資を出せばリスクが高いと考えて、融資に消極的になっています。

ここで重要なのは、銀行の本音です。銀行に言わせれば、

「借入過多になっているんだし、ここで借入れを増やすのと資金繰りに響くかもしれませんよ。その取引を諦めても経営が破綻するわけではないし、今回は見送って、手堅く経営してはどうですか」

というのが本音です。

融資しなければ資金繰りが行き詰まるわけでもありませんから、銀行には融資すべき必然性がありません

もし、財務的に問題がない会社であれば、融資を受けて事業を拡大するということは、融資を受けるべき必然性があると言えます。

また、融資することで融資シェアが拡大したり、融資以外の取引も広がっていく可能性があれば、積極的に融資したいと考えるでしょう。

しかし、借入過多の会社では、これ以上の融資を受けると危なくなるのですから、いくら事業拡大がかかっていたとしても、融資を見送るのが合理的な考え方と言えます。

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融資交渉の考え方

以上のように、銀行は積極的に融資したいと思っていないわけですが、その考え方を変えてもらわない限り、融資を引き出すことは不可能です。

そこで、融資交渉をしかけるわけです。

銀行の考え方を、「借入過多だし、融資しないほうがいいだろう」から「まあ、そういう話なら融資してもいい」へと変化させるためには、銀行の考え方の原則を踏まえた交渉が大切です。

銀行は、保守的な組織です。

保守的な組織だからこそ、「原則」を重視して考える傾向が非常に強いのです。

借入過多の会社に融資を嫌うのも、「原則から考えて、借入過多の会社には融資すべきではない」と考えているからです。

しかし、その原則を知り、原則に外れない融資になるように会社から働きかけていけば、「原則から考えて、借入過多ではあるが融資しても良い」という判断に換えられる可能性があります。

これが、融資交渉におけるもっとも重要な考え方ですから、必ず押さえておきましょう。

銀行が重視するリスクとリターンの原則

ここでは、できるだけシンプルに考えるべく、借入過多以外には大きな問題を抱えていない会社を前提とします。

  • 赤字ではない
  • 業績は横ばいでそれなりに安定している
  • すぐに資金繰りが行き詰まる可能性は低い
  • これまでの返済状況などにも問題がない

このように、色々な点で良好な会社ですが、唯一「借入過多」という問題を抱えている会社です。

このような欠点がある会社に融資するということは、銀行は通常よりも高いリスクを受け入れて融資することです。

投融資の世界では、リスクとリターンは表裏一体と考えます。

好調な会社への融資は低リスクですが、そのような会社はどこからでも融資を受けられるため、会社側に有利な条件で融資する必要があります。

つまり、ローリスクローリターンの融資です。

普通の会社への融資は、ミドルリスクです。

財務や業績が基本的に不安定な中小企業は、融資の時点では大きな問題がなくとも、融資期間中にリスクが高まることもあるため、ローリスクとは言えません。

したがって、そのリスクに見合うだけ条件を設定してミドルリスクミドルリターンの融資をするか、条件設定によってリスクを引き下げ、ローリスクローリターンの融資に持ち込むでしょう。

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問題点を抱えた会社への融資は、ハイリスクだ!

貸し倒れになる可能性が通常より高いため、銀行はそのようなハイリスクな融資を嫌います。

もし、何らかの理由によって支援することになっても、銀行が設定する条件は厳しく、ハイリスクハイリターンの内容になります。

または、何らかの方法によってできるだけリスクの引き下げを図ることでしょう。

このように、リスクとリターンにズレが生じることはありません。

あるとすれば、非常に安定性の高い会社でありながら、経営者が銀行対策を知らずに一行取引をしている場合などでしょう。

そのような取引では、低いリスクで高いリターンが得られることもあります。

しかし、銀行が受け入れるリスクに比べて、リターンが明らかに低くなることはないものです。

銀行の事業の中心は融資なのですから、このリスクとリターンの原則を基本としています。

この原則を知らなければ、融資交渉をうまく進めていくことは不可能ですから、しっかり覚える必要があります。

銀行側のリスクを汲み取る

リスクとリターンの原則から考えると、銀行交渉の方向も見えてきます。

銀行はリスクとリターンが見合わないことを嫌っているのですから、交渉によってリスクとリターンの乖離を埋めるべくことができれば、融資の可能性は拓けます。

上記でも少し触れていますが、その方法にはリターンを引き上げる方法と、リスクを引き下げる方法の二通りが考えられます。

リターンを大きくする

銀行は、次のように考えています。

「借入過多の会社にこれ以上融資するのはリスクが高い。だから融資したくない。(でも、リターンが大きければ検討してみる価値はある)」

したがって、リスクに見合うだけのリターンを提供することができれば、融資交渉はかなりやりやすくなります。

分かりやすいリターンとしては、融資以外の取引が挙げられます。

銀行は、融資した資金を利息とともに回収して収益をあげています。

しかし、それ以外でも、その銀行に売掛金の入金口座を作ったり、その銀行の口座から送金したり、その銀行に為替取引を任せたりすることで、融資以外でも収益が得られるようになります。

銀行にとって、これはかなりうまみのある取引ですから、融資によってそれらの取引を獲得できれば、リスクに見合うリターンが得られると考えることも多いです。

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もし、このような交渉カードを持っているならば、積極的に使っていくべきだろう。

リスクを低くする(1)保全の提供

しかし、大きなリターンを提供できない会社も多いと思います。

そのような会社では、保全を提供することで、リスクを低くするという方法があります。

保全とは、万が一回収不可能になったとき、担保などから回収することで債権の保全を図るものです。

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これがあれば、銀行のリスクは大きく下がるよ!

例えば、会社の持っている不動産や定期預金、経営者の持っている不動産、信用保証協会の保証などが保全となります。

ただし、信用保証協会から保証を受けるためには、保証審査に通らなければなりませんから、借入過多の会社では保証を受けられない可能性も高いです。

また、不動産などの担保を持っていれば資金調達は簡単になりますが、苦しい会社の多くは担保にできる資産を持っていない、あるいは持っていても既に担保に取られているということが多いため、この方法は利用できないことが多いと思います。

リスクを低くする(2)具体的な経営計画の提示

融資交渉で意外なほどに効果的なのが、経営計画を具体的に説明することです。

そもそも、なぜ銀行がハイリスクに感じているかといえば、資金繰りに不安がある会社への融資は原則的にしないものであり、借入過多の会社はそれに該当するからです。。

融資担当者は、これまでの経営状況を決算書などによって分析し、これ以上の融資は危ないと考えています。

しかし、経営者が具体的な説明によって、「銀行が思っているよりも、わが社の経営は安全である」と説明することができれば、考えを改める可能性があります。

ここで問題となっているのは借入過多であり、これ以上の融資をすると、返済や利息が資金繰りを圧迫してしまうことです。

そのため、経営者が資金繰りを含めた具体的な計画を見せ、借入金による圧迫はそれほど大きくないことや、今後も資金繰りが安定して続いていくことを説明すればよいのです。

ただし、融資担当者も伊達に財務分析をしているわけではありませんから、普通の説明では魅力を感じないでしょうし、具体性に乏しいと思われるはずです。

そこで重要となるのが、資金繰りが回っていくことを説明すると同時に、融資を受けて大型取引が実現した場合、良い変化が期待できることを力説することです。

融資によって運転資金を獲得し、大型取引で売上が大幅にアップして業況が拡大すれば、借入過多とは言えなくなるかもしれません。

借入金の圧縮も可能になるかもしれません。業績にも財務にも、良い効果が期待できるのです。

そのような見通しを具体的に説明すれば、融資時点ではリスクが高くとも、そのリスクはやがて下がっていくことになります。

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銀行が融資を前向きに検討する可能性が出てくるのだ!

リスクを低くする(3)短期融資での交渉

具体的な計画を説明することは非常に重要ですが、それだけでは不十分な場合も多々あります。

その計画は、あくまでも計画であって、実現しない可能性もあります。

そうなれば、銀行員が当初予測した通り、経営困難に陥るリスクも高いです。

だからこそ、今後の見通しを説明し、納得してもらった上で、さらに銀行のリスクを下げることが重要です。

この場合では、もし融資を受けられれば増加運転資金の需要をまかなうことができ、大型案件を受注し、すでに説明した見通しの実現性も増すのですから、それをきっかけにリスク低減を図ります。

もし、融資を受けて案件の受注となれば、数ヶ月後には代金を回収できるはずです。

その代金で返済するという短期融資での融資契約ならば、銀行のリスクは大幅に下がります。

短期融資の交渉にあたっては、受注予定の案件の詳細を資料にまとめて提示するのはもちろんのこと、融資さえ実行されれば受注できることを証明することが重要です。

資金調達ができれば受注、できなければ見送りという形ですから、その時点では契約書によって受注を証明することはできないはずです。

しかし、契約が迫っているならば契約書の雛形があるでしょうし、取引先からの依頼相談なども文書で受け取っていることでしょうから、それを証明に使うことができます。

それらの資料によって、取引先や取引の内容、売上の見込み、代金の支払条件なども明示できます。

その上で、

この資料の通り、金額○○万円の案件で、工事の終了は〇月、入金は〇月です。〇ヶ月後には売上代金で一括返済ができますから、それまでのつなぎ資金を融資してください

と交渉するのです。

このような交渉をすれば、銀行はその融資を短期間で回収できる可能性が高いと考えることができます。

短期間の融資ですから、その期間中に経営が急激に悪化して倒産などに至る可能性は非常に低く、リスクが大幅に下がることが分かります。

短期で返済すれば、その取引先と取引を続ける場合、また運転資金に困ることになると思うかもしれません。

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しかし、その時にはまた融資を受ければいいのだ!

大きな取引先を獲得したことは、会社の業績にもいい影響を及ぼしており、会社の評価にはプラスとなっています。

再び短期融資を実行し、短期間で回収できるならば、銀行は良い取引だと考えて融資してくれる可能性が高いです。

そのように短期間の融資と返済を繰り返していき、業績を伸ばしていくことができれば、銀行も付き合いに積極的になってくるはずです。

やがて、長期融資も引き出せるようになっていくでしょう。

例外は好調な会社

なお、業績が増収増益傾向にあり、他行の支援状況も極めて良好で、しかし借入過多という会社もあると思います。

そのような会社では、融資交渉は非常に簡単です。

借入過多の傾向にあっても追加融資を受けられる可能性が十分にあります。

なぜならば、好調が続いている会社では、運転資金もたくさん必要になるのが普通であり、借入金総額が大きくなっていくこともそれほど不自然ではないからです。

また、好調が続いて業況が大きくなれば、その会社の売上も大きくなっていき、借入過多と判断される水準も高まっていきます。

このため、好調続きの会社では、借入過多がそれほど問題視されないことも多く、むしろ取引拡大を狙う複数の銀行から融資提案を受けることも多いと思います。

しかし、これは各銀行のチキンレースのようなものでもあります。

会社の好調は永遠に続くわけではありませんから、いずれは成長が鈍り、銀行は融資に慎重になる必要があります。

そのタイミングを見極めながら、できるだけ積極融資をするという姿勢です。

したがって、好調の会社に限っては、借入過多の状態にあっても融資交渉はラクな場合が多いです。

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返す必要のない、助成金で資金調達する方法もあります。

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実際の融資交渉

ここまで説明してきた内容を、もっと具体的に見ていきましょう。

ここでは、借入過多のA社が、大型取引によって運転資金が必要となり、メインバンクのB銀行に短期融資を持ち掛けるという設定で融資交渉を見ていきます。

なお、A社の業績は横ばいで安定しており、B銀行からは1億円の無担保融資を受けています。

他行との融資も合わせると借入金は年商の50%であり、B銀行はこれ以上の融資は借入過多になるため、融資を渋っているものとします。

担当者「今回は、運転資金の融資をご希望とのことですが。」

経営者「そうです。実は、B社(上場企業)から大きな受注がありまして、運転資金が必要になっています。」

担当者「B社からですか。それはよろしいですね。
しかし、当行では御社にこれまで1億円の無担保融資を実行しています。

借入金総額を見ても、業績的にこれ以上の融資は出しにくいというのが正直なところです。」

経営者「そう言わないで、なんとかお願いできませんか。
上場企業との取引なんて、またとない機会なんです。」

担当者「おっしゃることは分かりますが・・・。担保などはないでしょうか。」

経営者「ありません。これまでの融資でも、担保がないから無担保で対応してもらっていますし。」

担当者「そうですか・・・」

経営者「なんとかなりませんか。受注したら、こんな見通しになるという資料も作ってきたのですが。(資料を提示)」

担当者「なるほど、受注すれば業績アップも見込めるのですね。」

経営者「そうなんです。取引が続く可能性も高いと考えていて、何とかして取りたいんです。」

担当者「そういわれましても、既に多額の支援をさせていただいている状況ですので・・・」

経営者「この取引ができれば、当社もかなりラクになるんです。長年の付き合いですし、何とか助けてください。」

担当者「お気持ちはわかりますが・・・」

経営者「まだ契約書はありませんが、契約書の雛形はありますので見てください。
ほら、金額3500万円の案件で、工期は5ヶ月ですから完了は6月末、入金は7月末。

それまでの立替資金が3000万円ほど必要になるのは、さっきの資料の通りです。
それを融資してほしいんです。

入金があれば返済はできますから、短期融資でも構いません。」

担当者「ということは、7月末には一括返済ができるのですね?」

経営者「そうです。相手はB社ですし、入金遅れの心配もないと思います。」

担当者「分かりました。では、入金までのつなぎ資金として検討させていただきます。」

経営者「本当ですか。ぜひお願いします。」

担当者「入金予定は7月末となっていますが、万が一のこともありますから、返済は8月末に設定したいと思います。

しかし、当行としては短ければ短いほどいいので、7月末に入金があれば、すぐに返済いただきたいと思います。」

経営者「もちろんです。」

担当者「B社が支払う工事代金は、もちろん当行の口座に入金頂きます。」

経営者「それも約束します。宜しくお願いします。」

担当者「では、持ち帰って検討させていただきます。」

このやり取りを見ても、銀行が借入過多を大きな問題とみなすことが分かります。

現在の水準でも借入過多ギリギリですから、その会社に対して融資を出せば、銀行自らの手で借入過多に追い込むこととなります。

簡単に融資を出せないというのが正直な気持ちです。

ましてや、メインバンクともなれば、融資シェアは一番大きいのが普通です。

最も支援すべき立場であるのは事実ですが、融資シェアが最大であれば、貸し倒れになったときの被害額も最大になるのです。

更なる融資を出して経営に悪影響となり、経営困難に陥れば、その時にもメインバンクは支援を求められて困ることとなります。

そのような厄介な事態にならないためにも、とりあえず今回は融資を断って、A社にも取引を見送ってもらって、無難に経営を続けてほしいと考えても無理はありません。

しかし、A社の社長は今後の計画や受注見込みの詳細を具体的に説明し、さらに短期融資を持ち掛けることによって、最終的には前向きな姿勢を勝ち取っています。

最初は、融資したくないとはっきり言っていた担当者が、返済条件なども細かく話したうえで「検討します」と言っているのですから、その姿勢を引き出したのは素晴らしいことです。

もっとも、融資の可否は稟議制度によって判断されるため、支店内の色々な人が検討されることとなります。

融資担当者は、いわば稟議の窓口、出発点なのであり、担当者を説得すれば融資が出るというものではありません。

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しかし、この出発点でいかに交渉するかによって、稟議の結果は非常に大きく左右されるわ!

融資担当者は、経営者と面談した後に上司に報告し、稟議の方向性を協議していきます。

協議の結果、融資実行の方向で稟議を進める、あるいは慎重に検討すると決まれば、融資担当者は稟議書を作り、支店内で稟議が行われます。

最初から融資謝絶の方向で進めるならば、稟議書を作るまでもなく、融資できないことが言い渡されて終わりです。

伝言ゲームで例えるならば、交渉での説明その他の情報は、「経営者→融資担当者→担当者直属上司→融資管理職→支店長(→案件によっては本部の審査部門)」という流れで伝えられていきます。

融資担当者以降の流れでは、経営者が予想していなかった形で伝えられたり、解釈されたりすることもあるかもしれません。

しかし、「経営者→融資担当者」の時点でしっかりと伝わっていなければ、それ以前の話になりますから、融資担当者との交渉は非常に重要なのです。

稟議は融資実行の方向へ

さて、経営者との面談を終えた融資担当者は、上司との協議に入ります。

これは、比較的短時間で行われますし、内容によっては面談後すぐに協議が行われ、稟議の方向性がそこで決まることあります。

判断が難しいと感じる案件では、上司自ら経営者と面談し、内容を検討することもあります。

上司との面談が行われないならば、融資担当者が経営者の思いをどのように伝えてくれるかによって、結果が変わってきます。

といっても、面談でしっかりと説明できており、担当者の能力にも大きな問題がなければ、しっかり伝わるのが普通です。

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担当者と上司の協議は、以下のように行われるよ!

担当者「A社から、運転資金3000万円の申し入れがありました。」

上司「A社には、すでにかなり融資していたと思うが。」

担当者「はい。無担保で1億円の融資となっています。」

上司「それで、また3000万円も必要って大丈夫なの?」

担当者「現時点で借入れがかなり大きく、これ以上の融資は借入過多になります。」

上司「それじゃ、これ以上は厳しいな。なんのための資金?」

担当者「B社から大型工事の受注があり、そのつなぎ資金です。」

上司「B社。上場企業の?」

担当者「そうです。社長はどうしてもこれを受注したいと。継続的な受注も期待でき、この受注によって経営状況がかなり良くなる見通しとのことです。」

上司「そうか。それは融資してほしいだろうな。」

担当者「借入れが多いので難しいと申し上げましたが、重要な契約だからと強く頼まれました。」

上司「う~ん。主力先として長い付き合いがあるから、なんとか出してあげたいけど、やっぱり厳しいよなあ。担当者としては、正直どう思っている?」

担当者「詳細な資料も提出してもらいました。それを見ると、確かにこの取引によって業績は伸びます。資金繰りがすぐにどうなるという状態にも見えません。

取引先が上場企業というのも安心材料です。また、計画には織り込まれていませんが、上場企業との取引実績があれば、それがさらなる新規取引にもつながると思います。

社長からの依頼も強いことですし、資金使途や見通しもはっきりしていますから、融資してよいと思います。」

上司「そうだな。ただし、やはり借入過多は気にかかる。保全はとれないか?」

担当者「担保やマル保も余力がありません。そこで、短期融資で検討できないかと思っています。」

上司「なるほど、短期で。」

担当者「資料によれば、工事完了が6月末、入金が7月末、これを当行宛に入金していただいて、入金次第回収という流れで考えています。

8月末まで6ヶ月の短期融資であれば問題ないと思います。取引先はB社ですから、入金遅れの可能性も低いかと。」

上司「うん、融資するとしたらそれしかないな。長期はちょっと出せないから。」

担当者「あくまで短期での検討になるかと。」

上司「契約書は?」

担当者「本契約は来週の予定です。」

上司「じゃあ、契約したらすぐにコピーをもらうように伝えておいて。当行宛の入金も念押ししておいた方がいいだろう。稟議をあげてくれ。」

担当者「わかりました。」

経営者自身から説明を受けておらず、熱心な依頼もされていないだけに、上司の姿勢はいたって冷静です。

このため、融資担当者以上に問題点を意識し、リスクをどのようにカバーしていくかを徹底的に確認していることが分かります。

しかし、経営者が提出していた具体的な資料や、短期融資での融資依頼などがリスクのカバーにつながり、上司も融資の方向で稟議を進めてよいとの判断に至りました。

借入過多の会社が融資を受けるためには、たくさんの障害を乗り越えていかなければならない様子が分かります。

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それにつけても、説得の材料を充実させる重要性が分かるだろう。

稟議書の例

以上の流れを踏まえて、ようやく稟議書を作成するところまでたどり着きました。

稟議書は、稟議の軸となる資料であり、これを作るのは融資担当者です。

経営者が面談で伝えた内容や、上司との協議の内容を踏まえて、融資を実行しても問題ないかどうかを検討していきます。

A社のように融資交渉した場合、以下のような稟議書が作られることとなります。

概況

業歴30年以上の建設業者。当行長年の主力先。受注基盤は確立されており、業績も安定推移中。

ただし、当社の受注工事は工期の長いものが多く、立替負担による借入総額が多い状態。

資金使途

つなぎ資金。受注工事代金回収までの立替資金に充当されるもの。

融資条件

手貸、金額30百万円、期間6ヶ月の一括返済、利率2.15%。

保全

全額無担保扱い許容。

受注先は上場企業のB社であり、なおかつ工事代金回収までの短期つなぎであるため、返済に不安はないものと思料。

資金調達余力

会社および代表者に見るべき資産はなし。マル保も限度額一杯まで利用しており、当面は保証余力もないもの。

狙い

当行長年の主力先。

今回、上場企業から大型工事の新規受注であり、今後も継続的な受注が期待でき、当社の業績への寄与が期待できるもの。

工事代金回収までのつなぎ資金でもあり、本件主力行として支援いたしたい。

 

この稟議書を見れば、交渉の当初は「借入過多なので融資は難しいです」と言っていた担当者が、「支援しましょうよ」という姿勢で稟議書を作っていることが分かります。

融資担当者がこのような姿勢を持っているかどうかによって、稟議の結果はかなり変わります。

担当者が消極的な気持ちやフラットな気持ちで稟議書を作っていれば、稟議書を読んだ人達は「それなりにリスクをカバーしているけど、やっぱり借入過多だし、この会社に深入りするのはちょっと・・・」などの態度になりやすいものです。

しかし、担当者が「ぜひとも実行を」という姿勢で稟議書を作れば、「まあ、借入過多ではあるけれども、リスクもカバーできているし、やってみようじゃないか」と考える可能性は高まります。

稟議もうまく進んだ結果、融資実行という判断に至れば、運転資金を短期のつなぎ融資として融資を受けることができます。

借入過多について正しく知り、ポイントを抑えた交渉をしていき、融資実行に至るまでには様々な障害を乗り越えていかなければなりません。

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借入過多だからこそ、そのような苦労をするのは仕方のないことだ!

借入過多でも融資を引き出せるように交渉術を磨くと同時に、借入過多にならないように健全な資金繰りを意識し、融資を引き出しやすい環境を作っていくように努力していきましょう。

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まとめ

本稿で、融資交渉と稟議の流れを詳しく見てきました。

これを読めば、融資担当者との交渉は非常に重要であること、うまく交渉すれば借入過多の会社でも融資を引き出すことは可能であることが分かったと思います。

借入過多は、銀行にとって大きな懸念点ですが、それが必ず融資拒否につながるわけではありません。

銀行のリスクを正しく汲み取り、交渉によってリスクの引き下げを図れば、最終的に融資実行となることも多いです。

このポイントを抑えておけば、担保などの交渉材料がなくても、具体的な資料の提供や短期融資での依頼などによって、交渉材料を作っていくことさえ可能です。

ぜひ、融資交渉に活かしてほしいと思います。

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