人材を雇用するにあたり、多くの中小企業が活用できる助成金制度があります。
それは、トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金の二つの助成金があります。
この二つの助成金は、利用の目的や仕組み、助成金額などが異なるため、適切な判断によって使い分けていくことができます。
もっとも、必ずどちらかに限定して利用するのではなく、特定の条件を満たす場合には併用することも可能です。
本稿では、トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金を併用するための条件と、適切に併用するための考え方について解説していきます。
トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金
中小企業が人材不足を解消していくためには、人材を雇用する必要があります。
従業員の数によって人材不足を解消すると同時に、できるだけ有能な人材を雇うことにより、質によっても人材不足を解消していく必要があります。
このため、人材問題に取り組む中小企業は、厚生労働省が実施する助成金のうち、
- トライアル雇用助成金
- キャリアアップ助成金
の二つを活用していくのがおすすめです。
トライアル雇用助成金
有能な人材であれば雇いたい、能力に問題があれば雇いたくないという会社ではトライアル雇用助成金の活用がおすすめです。
「能力に問題がなければ・・・」という条件付きの、慎重な態度での人材雇用に臨む場合、その裏では「能力に問題があれば雇いたくない(問題のない形で解雇した)」と考えています。
しかし、会社都合で退職者を出していると、助成金の受給に支障をきたします。

そこで、トライアル雇用助成金が役立ちます。
トライアル雇用にあたっては、3ヶ月間の有期契約雇用として雇い入れます。
そのため、能力に問題がある場合には、3ヶ月後に契約を更新しないことによって、契約を打ち切ることができるのです。
したがって、トライアル雇用助成金の目的は、助成金が第一ではなく、「問題のない従業員だけを選択的に雇用すること」にあります。
その上で、トライアル雇用の従業員1人あたり毎月4万円、最長3ヶ月で総額12万円の助成金を受給することができます。
なお、受給資格が発生するのは、トライアル雇用期間満了後、契約期間の定めがない常用雇用(無期雇用や正規雇用)で雇い入れた場合に限られます。
トライアルの後、契約を更新しなければ助成金も受給できません。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、能力のいかんによって雇用形態を検討するのではなく、最初から無期雇用や正規雇用を前提として雇用するものです。
有期契約から無期雇用、無期雇用から正規雇用、有期契約から正規雇用など、色々な形での転換が考えられますが、転換の内容によって、以下のように助成金が支給されます。
基本的な支給額 | 生産性が6%向上している場合 | |
有期契約から正規雇用へ転換 | 1人当たり57万円 | 1人当たり72万円 |
有期契約から無期雇用へ転換 | 1人当たり28万5000円 | 1人当たり36万円 |
無期雇用から正規雇用へ転換 | 1人当たり28万5000円 | 1人当たり36万円 |
なお、受給要件を満たすためには、
- 転換日までに6ヶ月以上にわたって継続的に雇用していること
- 転換後、6ヶ月間にわたって継続的に雇用していること
- 転換後の6ヶ月間の賃金が、転換前の6ヶ月間の賃金と比較して、5%以上アップしていること
などの要件を満たす必要があります。
このため、トライアル雇用助成金では3ヶ月間の取り組みに過ぎないのに対し、キャリアアップ助成金では1年間にわたって取り組む必要があります。
長期間の取り組みになりますが、受給金額はトライアル雇用助成金よりもかなり大きくなっています。

そのため、有期契約から正規雇用へ20人転換し、生産性も向上した場合には、最大で1440万円もの助成金を受給できます。
したがって、最初から前向きに無期あるいは正規雇用をしたいと考えている会社では、トライアル雇用助成金よりもキャリアアップ助成金を利用すべきです。

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二つの併用を考える
トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金には、以上のような違いがあります。
個の違いをしっかりと把握して、適切に使い分けていく必要があるものの、
「キャリアアップ助成金を利用したい、しかし人材に不安があるためトライアル雇用助成金を利用しなければならない、しかし助成金が少額になるのはもったいない・・・」
という悩みを抱える会社も多いことと思います。
このような会社では、不安のある人材をトライアル雇用し、トライアル雇用助成金を利用しつつ、さらにキャリアアップ助成金を併用できないかどうかを考えてみましょう。
併用できると聞けば、「最初から、どちらかを選んで利用するのではなく、併用すればよいではないか」と思うはずです。
しかし、これらを併用するためには一定の条件がそろう必要があり、いつでも併用できるわけではありません。
トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金を併用するためには、
- まず、トライアル雇用助成金を利用するところから始める。
- トライアル雇用を終えた際に無期雇用として雇い入れる。(トライアル雇用助成金を受給する)
- その後無期雇用から正規雇用への転換をする。(キャリアアップ助成金を受給する)
という流れを踏む必要があります。

自社で採用する人材に不安があるため、トライアル雇用助成金を利用したいものと考えます。
人材に適性があれば無期雇用として雇い入れる方針でトライアル雇用をし、その後さらに有能であることが分かれば、正規雇用をする可能性もあります。
トライアル雇用を前提に進めていますから、雇い入れても無期雇用となり、正規雇用まで見据えて取り組むものではありません。
しかし、結果的に正規雇用へ転換するならば、キャリアアップ助成金を利用することも可能となります。
トライアル雇用の開始(4月1日)
問題のない人材だけを雇用していくべく、最初はトライアル雇用助成金を利用するために、従業員と3ヶ月間の有期契約を結び、トライアル雇用を開始します。
雇い入れる日は、仮に4月1日とします。
トライアル雇用期間の満了(3ヶ月後、6月30日)
3ヶ月後、トライアル雇用の期間が満了します。
この時点で、従業員の能力に問題があると判断すれば、契約を打ち切ります。
能力に問題がなければ、無期雇用での雇い入れを決め、トライアル雇用助成金の12万円を受給できる権利が発生します。

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無期雇用への転換(7月1日)
トライアル雇用期間が満了した翌日から、対象となる労働者は無期雇用労働者として働き始めます。
トライアル雇用期間が満了するのが6月30日ですから、無期雇用へと転換するのはその翌日にあたる7月1日です。
なお、ここでの転換は正規雇用ではなく、あくまでも無期雇用であることに注意が必要です。
トライアル雇用助成金の受給要件は、トライアル雇用期間満了後に常用雇用することであって、雇用期間の定めがある有期契約ではなく、無期雇用でも受給要件を満たします。

トライアル雇用の対象となる労働者と、3ヶ月の有期契約を結ぶ際にも、「トライアル雇用で頑張ったら、3ヶ月後に無期雇用、6ヶ月後に正規雇用する」などと確約してはいけません。
そのような確約をすると、併用の条件から外れてしまいます。
あくまでも、トライアル雇用の後に無期雇用への転換があるのみで、建前としては正規雇用の可能性を考えていないことにしておく必要があります。
6ヶ月が経過(9月30日)
無期雇用へ転換して3ヶ月が経過、トライアル雇用から数えて6ヶ月が経過すると、キャリアアップ助成金の前提条件である「6ヶ月以上の継続雇用」を満たします。
このとき、無期契約で雇用していた3ヶ月の期間中に、「この従業員はよくやる。正規雇用してもいい」と判断すれば、正規雇用への転換を決定します。

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正規雇用への転換(10月1日)
毎年、原則的に転換の日として定めている10月1日、対象となる労働者を無期雇用から正規雇用へと転換します。
この時、キャリアアップ助成金の要件を満たすためには、転換後の6ヶ月分の賃金が、転換前の6ヶ月分の賃金よりも5%以上アップしている必要があります。

6ヶ月が経過(3月31日)
正規雇用へ転換後6ヶ月が経過し、転換後の賃金もきちんと支払われていたならば、キャリアアップ助成金の受給要件を満たします。
この場合、有期契約から無期雇用への転換はトライアル雇用満了時に行われているため、無期雇用から正規雇用へ転換した際の助成金額(28.5~36万円)が受給額となります。
キャリアアップ助成金単体には劣る
以上のように、特定の条件下では、トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金の併用が可能となります。
トライアル雇用助成金によって有期契約から正規雇用へ転換した場合には、12万円しか受給することができません。
しかし、トライアル雇用助成金で有期契約から無期雇用へ、さらにキャリアアップ助成金で無期雇用から正規雇用へと転換した場合には、受給総額は40.5~48万円へとアップすることになります。
ただし、トライアル雇用助成金を利用することなく、最初からキャリアアップ助成金で有期契約から正規雇用へと転換していれば、受給額は57~72万円となるため、併用した場合よりも多くなります。
このため、最初から無期雇用あるいは正規雇用を前向きに検討しているならば、トライアル雇用助成金を利用することなく、キャリアアップ助成金を利用すべきと考えてください。

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まとめ
トライアル雇用助成金とキャリアアップ助成金は、特定の条件で併用が可能となります。
しかし、あくまでも対象となる労働者の能力に不安があり、
「正規雇用は難しいだろう。ひょっとすると、無期雇用で雇えたらいいが・・・」
という気持ちで、トライアルで雇用するところが出発点となります。
そのうえで、うまくいけば無期雇用へと転換、その後さらにうまくいけば正規雇用へと転換することで、当初予定していたよりも多額の受給に至るという流れです。
イレギュラーな場合にもチャンスを逃さないための考え方と思ってください。
最初から正規雇用を見据えているならば、トライアル雇用を挟まずにキャリアアップ助成金で取り組んだほうが良いため、このような違いをしっかりと認識しておくことが大切です。
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