助成金は、会社にとって非常にありがたい制度であり、積極的に活用していくべきものです。
しかし、助成金の仕組みや手続きについて理解している経営者はあまりおらず、助成金ビジネスの食い物にされてしまう会社が後を絶ちません。
助成金ビジネスとは、会社に助成金の受給を持ち掛け、会社の事情を考えずにめったやたらに受給させ、多額の報酬を受け取るビジネスのことです。
このようなビジネスを手掛けるコンサル会社が、中小企業に無作為に営業をかけています。
本稿では、助成金ビジネスの危うさ、コンサル会社の悪質性、それに騙されない考え方などについて解説していきます。
悪質な助成金ビジネスに要注意
当サイトで、助成金の活用についてある程度読んだという中小企業の経営者であれば、助成金を利用したいと考えていることと思います。
しかし、いざ実際に利用しようとすると、助成金の選び方や進め方など、よくわからないことも多いでしょう。
「助成金が役立つことは知っているけれども、実際に活用するとなるとハードルが高く感じられ、先送りしている」というケースが少なくありません。
少しでも基本を知っている人ならば、とりあえず社労士に相談してみよるという気にもなるのですが、それも知らない、あるいは知っても先送りしている会社では、助成金ビジネスの被害に遭ってしまう可能性があります。
助成金ビジネスとは、会社に電話やDM、FAXなどで助成金の受給を持ち掛け、多額のコンサル費用や着手金、成功報酬などを稼ぐビジネスです。
コンサル会社や一部の社労士がそれを手掛けており、その営業に乗ってしまうと、自社では色々な問題が発生します。

- 一般的な社労士に依頼するよりも費用が割高であり、会社に残るお金が少なくなる
- 正しい知識を持っていないコンサル会社に依頼した結果、助成金を受給することはできず、コンサル費用や着手金だけを払うことになる
- 会社のためにならない助成金も見境なく受給させられ、会社の負担が大きくなってしまう(人件費が重くなりすぎる、必要のない制度だけが残るなど)

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特に注意すべきはコンサル会社
このような営業に乗せられてしまうと、助成金を活用することはできません。
社労士は、士業同士の横のつながりも強く、横のつながりによって経営が成り立っている側面もあるため、業界内で悪い評判が立つことを嫌うのが普通です。
したがって、社労士が自ら、悪質な助成金ビジネスを手掛けていることはそれほど多くありません。
しかし、コンサル会社には要注意です。
コンサルタントという肩書で営業を持ち掛けられると、コロッと信用してしまう経営者がたくさんいるのですが、国家資格の裏付けがある社労士とは異なり、コンサルタントは誰でも名乗れるものです。

コンサルタントの信用を裏付けるのは実績であり、実績のあるコンサルタントであれば、電話・DM・FAXなどで無作為に営業をかけることはあまりありません。
長期的に付き合う太い顧客を抱えているほか、評判を聞いて相談してくる顧客もいます。
既存の顧客の紹介も多いでしょう。このため、手広く営業をかける必要がないのです。
助成金の受給を持ち掛けてくるコンサル会社は、実績がないからこそ、無作為な営業をかけている可能性が高いです。
そのようなコンサル会社に助成金のサポートを依頼すると、「割高である、申請に失敗する、会社のためにならない助成金を利用する」などのリスクが高まります。
コンサル費と着手金を無駄した実際の事例
実際の事例を見てみましょう。
ある会社では、かねがね助成金に興味を抱いていたところ、コンサル会社から助成金の受給を持ち掛けられました。
コンサル会社から話を聞いていると、この会社では育児休暇を与えた社員がいたため、両立支援等助成金の育児休業等支援コースが利用できると言われました。
両立支援等助成金では、次のような場合に28.5万円の助成金を受給できる制度です。
- 就業規則を整備しする
- 社員が3ヶ月以上の育児休業を取得する
- 育児休業後に職場復帰を果たし、6ヶ月以上の勤務をした

何の準備もしていない会社が、たまたま育児休暇を与えたからといって受給できるものではありません。
育児休暇前に育児休業規定を定めたり、仕事の引継ぎをしたり、上司と面談したりしなければなりません。
ところが社長は、コンサル会社の「育児休業を与えた社員がいるなら、受給できます」という案内を信じ、コンサル費用や着手金を支払い、申請を依頼しました。
もちろん、コンサル会社の説明はでたらめであり、受給できないものを受給できると案内しているのですから、受給できるはずがありません。
提携する社労士がいるとの説明も受け、必ず受給できると言われていたのですが、社労士が扱ったところで無理なものは無理です。
結局、コンサル費用と着手金が無駄になったことは言うまでもありません。

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コンサル会社は社労士よりも報酬が割高
以上のように、専門家ではないコンサル会社に依頼したとき、専門知識や経験の欠如によって間違った案内をし、助成金が受給できないケースが良くみられます。
中には、最初からコンサル費用と着手金だけを目当てに、嘘の案内をするコンサル会社もあります。
もちろん、コンサル会社が社労士と提携しており、助成金の受給自体はできることも多いです。
しかし、ならばコンサル費用を支払ってコンサル会社に依頼するよりも、直接社労士に依頼したほうが安上がりです。
コンサル会社は、「あなたの会社に適している助成金を選んであげます」という名目で、営業をかけてきます。
しかし、それもコンサル会社ではなく社労士に相談すればよいだけの話で、むしろ「自社⇔コンサル会社⇔社労士」という流れで無駄な仲介を噛ませるよりも、「自社⇔社労士」としてやり取りしたほうがスムーズです。
このことから、助成金の受給をコンサルタントするというスタンス自体、荒唐無稽だと言えます。
人材不足に悩み、助成金の受給に望みをかけている中小企業を食い物にしているのですから、このようなコンサル会社はかなり悪質な存在です。
さらに問題なのが、コンサル会社の案内で手続きすると、どうしても割高になってしまうことです。
助成金の受給にあたり、専門家でもないコンサルタントの提案に応じてしまうのですから、おそらく提案に乗ってしまう経営者は、助成金の周辺知識があまりないはずです。
助成金申請代行の相場も知らない可能性が高いです。
そこにつけこまれ、無駄な費用をたくさん支払い、自社の手残りがかなり少なくなってしまうのです。

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一般的な相場との比較
悪質なコンサル会社の見積書は、以下のような内容になっていることが多いです。
【悪質コンサル会社の相場】
- 受給予定金額:150万円
- コンサル費用:30万円
- 着手金:10万円
- 成功報酬:20%(30万円)
依頼にあたって必要となる費用は、コンサル費用と着手金の計40万円です。
専門家ではないコンサルタントのおかしな営業に乗ってしまい、受給できなかった場合でも、この費用は戻ってきません。
コンサル会社は、これだけでもかなりおいしい売上になります。
そのあとは、まともに手続きせずに失敗してもいいですし、提携する社労士に「着手金5万円、成功報酬10%」といった内容で依頼してもいいでしょう。
150万円の受給に至ったとき、会社に残る金額は80万円です。
半分近くをコンサル会社に支払うこととなります。

【一般的な社労士の相場】
- 受給予定金額:150万円
- コンサル費用:なし
- 着手金:10万円
- 成功報酬:10%(15万円)
社労士に依頼した場合、このようなプランになっていることが多いです。
コンサルティングをするわけではなく、コンサル費用が請求されないことにより、会社の負担がかなり軽くなっています。
万が一受給できなかったとしても、会社の損失は着手金10万円だけです。
150万円の受給となれば、最終的に会社に残る金額は125万円、80%以上の手残りとなります。
社労士の一般的な相場では、受給した助成金の大部分が会社の手残りになるケースが多いです。
もちろん、受給する金額が小さいものであれば、社労士報酬のウェイトが重くなり、会社の手残りが少なくなることもありますし、金額が大きいものであれば、会社に残る割合は高くなります。
社労士報酬の中心となるのは成功報酬ですが、成功報酬は10~20%に設定している社労士が多いです。
上記の例で成功報酬を20%としても、会社の手残りは約73%となります。
このように比較してみると、無駄なコンサル費用を支払うことによって、コンサル会社の見積もりがかなり割高になっていることが分かるでしょう。
コンサル会社に依頼した実際の事例
ある会社では、コンサル会社からDMを受け取り、かねてから助成金に興味があったことから、問い合わせてみることとしました。
コンサル会社には次の事を言われました。
契約社員がいる会社であり、無期雇用あるいは正規雇用に転換した場合には、キャリアアップ助成金を受給できる
これ自体は嘘ではなく、キャリアアップ助成金の正社員化コースでは、次のようにの受給が可能となっています。
- 有期契約から正規雇用への転換では57~72万円
- 有期契約から無期雇用、あるいは無期雇用から正規雇用への転換では28.5~36万円
そこで社長が「今後、正社員に雇用に切り替えたい社員がいるが、助成金はでるのか」と聞いたところ、コンサル会社は「可能です」とのこと。

キャリアアップ助成金を受給するためには、次の流れを踏むことで、受給要件を満たします。
- 転換を見据えたキャリアアップ計画を作成する
- 労働局に提出して認可を受ける
- 転換前に6ヶ月以上の継続雇用
- 転換にあたって賃金を5%以上アップ
- 転換後に6ヶ月の継続雇用
コンサル会社は、このような説明もしたうえで、コンサル費用と着手金として40万円を受け取りました。
その後、提携する社労士を使って手続きを進めていき、従業員2人を有期契約から正規雇用へ転換したことで、114万円の受給となりました。
事前の説明によって、社長は150万円程度受給できると思っていたのですが、それはあくまでも生産性が6%以上アップし、1人当たりの助成金が57万円から72万円へと増額された場合の金額です。
社長の勘違いであったと言われればそれまでなのですが、その結果、見込んでいたよりも会社の手残りは少なくなりました。
コンサル費用と着手金で40万円、成功報酬は22.8万円(受給金額の20%)、会社の手残りは50%以下となったのです。
もし、社労士に直接依頼し、着手金10万円、成功報酬10%の条件で受給していれば、80%以上が会社の手残りになっていました。
コンサル会社の口車に乗ってはいけない
社労士に依頼した場合の一般的な相場を知っていれば、コンサル会社の見積書を見たとき、「高すぎる」と気づくはずです。
それを知らないこともありますが、コンサル会社の口八丁手八丁によって乗せられてしまうこともあります。
例えば、次のように営業をかけるのです。
「助成金は、返済不要の資金です。150万円の受給でしたら、諸費用を差し引いても半分以上が残ります。
80万円がそのまま収入になりますが、これを事業で稼ごうとすれば大変ですよね。
利益率10%の会社であれば、800万円も売り上げなければいけません。
申請するだけでもらえるものですから、ぜひおすすめしますよ」
悪質なコンサル会社ほど、「(割高な見積なのに)半分以上“も”残る」「申請する“だけ”」などと強調します。
助成金に関する専門的な知識や、利用することによって会社に生じる負担などを説明しません。
また、提案を受けた会社が社労士や税理士に相談すれば、あまりにも割高であることがバレてしまいます。
このため、次のように持ち掛けます。
「助成金は、申請期間を過ぎてしまうと受給できなくなります。もうあまり猶予がないので、すぐに取り掛かったほうがいいですよ」

コンサル会社を利用する際の注意点
もちろん、優秀なコンサル会社が助成金を提案しているケースもないわけではありません。
そのようなコンサル会社では、多少割高になったとしても、助成金をフル活用できるように指導してくれますから、役立つこともあります。
コンサルタントを使って助成金をフル活用したい、身近な社労士が頼りないといった場合には、コンサル会社を利用する方法も考えられます。
しかし、コンサル会社の中にはあの手この手で利用を持ち掛け、会社を食い物にしようとする悪質な会社がたくさんあるのも事実です。
そこで、コンサル会社の能力を見極めるためにも、
- 助成金に関する専門知識や経験が十分である
- 助成金を受給し、活用へと導いた実績がある
- 労働法についてもアドバイスをしてくれる
- 助成金の受給に伴い、会社に発生する負担やリスクを説明してくれる
- 経営者からの質問に、的確に答えられる
- 経営の実態に即して、活用すべき助成金を選ぶことができ、納得のいく説明もしてくれる
といったことから、見極めていくことが大切です。
基本的なことですが、悪質なコンサル会社では、これらの要求に応じられないため、その会社が悪質かどうかを簡単に見抜くことができます。

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まとめ
本稿で説明した通り、助成金ビジネスには様々なリスクが潜んでいます。
助成金を受給できるからと言って、悪質コンサル会社の提案に乗ってしまうと、助成金を活用して経営を改善していくことなど不可能です。
コンサル会社に依頼するくらいならば、最初から助成金の専門家である社労士に依頼したほうが受給できる可能性は高いです。
さらに費用的にも安く、活用のためのアドバイスも期待できます。
基本的には、コンサル会社は利用せずに社労士を利用する、もしコンサル会社を利用したければしっかり見極めることを心掛けてください。
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