「銀行格付け」や「債務者区分」といった言葉は、新聞や経済紙で読んだり、あるいは仕事での関係者から耳にしたりすることもあり、皆さんもご存知かと思います。
多少なりとも知っている人は、それが銀行からの融資に影響することも知っていると思います。
しかし、詳しいところはわからない人もいることでしょう。
銀行格付けが融資の命運を握るのですから、銀行格付けや債務者区分について知っておくことは大切なことです。
本稿では、銀行格付けの基礎知識を徹底解説していきます。
銀行格付けとは何か
まず、「銀行格付け」というものの意味から、簡単に説明していきましょう。
銀行格付けとは、簡単に言えば「銀行による各取引先(融資などの取引のある会社)への評価」のことです。
銀行が会社に対して、色々な観点から査定を行い、独自に評価しているものです。
銀行格付けが始まったのは、それほど昔のことではありません。
バブル崩壊後に金融システムが混乱した際、金融庁が銀行への検査マニュアルを独自に作成しました。
その結果、検査を受ける銀行も検査マニュアルを無視することはできなくなり、金融庁のマニュアルに基づいて取引先の会社を査定するようになったのです。

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銀行格付けが融資条件を左右する
銀行格付けをこのように説明すると、銀行の会社に対する査定は、あくまでも金融システム安定のためであって、個々の会社の命運を握るというような大袈裟なことではないようにも思えます。
しかし、そもそもバブル崩壊と金融システムの混乱というものは、バブルの際に銀行が簡単に融資を出し過ぎたことに端を発しています。
したがって、金融システムの安定のためには、銀行が会社に対して適切な評価を施し、その結果によって融資をしていくことが重要なのです。
したがって、銀行格付けは融資の可否はもとより、融資条件(金利、返済期間、担保条件)などの多岐にわたって影響してきます。
銀行格付けが良い会社は、希望する融資額を低金利・長期・無担保という条件で借りられる可能性もあります。
しかし銀行格付けが低い会社は融資を受けられなかったり、受けられても希望額に満たなかったり、高金利・短期・有担保などの不利な条件に傾きがちとなります。
さらに、既に融資した会社で格付けが下がった場合には、追加融資を受けられなくなったり、担保の追加を求められたり、最悪の場合には銀行が融資の回収に乗り出してくる可能性もあります。
これらのことから、本稿のタイトルである「銀行格付けが会社の命運を握る」という意味も、決して大袈裟ではないことが分かるのではないでしょうか。
しかし、それほど重要なものであるにもかかわらず、銀行が格付けについて説明してくれることは基本的にありません。

このため、銀行格付けに無関心な会社は、自社の格付けが悪化していてもそのことに気付かず、ある時融資を依頼したら断られて資金繰りに行き詰ってしまう、というようなことにもなりかねません。
そうならないためにも、普段から格付けに意識を向け、格付けの悪化を防ぎ、格付けが良くなるように努めていくことが大切です。

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銀行格付けの基準は債務者区分
上記の通り、銀行格付けは金融庁の検査マニュアルに由来しています。
この検査マニュアルは、債務者区分を基準として査定する仕組みとなっています。
債務者区分は、正常先、要注意先、要管理先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先の六つの区分に分けられています。
金融庁が定める、それぞれの内容は以下の通りです。
正常先 | 業績が良好で、財務内容にも問題がない優良な貸付先 | |
要注意先 | 貸出条件に問題がある、 債務の履行状況に問題がある、 業況が低調ないし不安定な債務者、 財務内容に問題があるなど、 今後の管理に注意が必要な貸付先 |
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要管理先 | 要注意先のうち、債務の履行を3か月以上延滞、 または貸出条件の緩和を受けた貸付先 |
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破綻懸念先 | 経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、 再建計画の進捗状況が芳しくなく、 今後、経営破綻に陥る可能性が大きい貸付先 |
|
実質破綻先 | 法的・形式的な経営破綻には陥っていないが、 深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがないなど、 実質的に経営破綻に陥っている貸付先 |
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破綻先 | 法的・形式的な経営破綻(破産、会社更生法適用など)に 陥っている貸付先 |
銀行は、融資先の会社をこのいずれかに分類します。
しかし、この区分だけでは大雑把に過ぎるということで、この区分に銀行の状況なども合わせて考慮し、細分化し、銀行格付けとしているのです。

債務者区分はどの銀行でも共通しているものですが、それに銀行の状況を加味して格付けをするのです。
債務者区分だけで考えた場合と、銀行格付けを考えた場合では、いくらかの誤差が生じることになります。
同じ会社でも、A銀行では融資を受けられたのに、B銀行では融資を受けられなかったり、A銀行とB銀行で融資条件が異なる場合がありますが、これも銀行格付けが各銀行で異なるからにほかなりません。

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債務者区分の基礎知識
とはいえ、査定の中核となるのは金融庁のマニュアルで基準とされている債務者区分です。
債務者区分は悪いのに銀行格付けは良い、あるいは債務者区分は良いのに銀行格付けは悪いということはありません。
債務者区分が基準ですから、銀行格付けも基本的に債務者区分に連動し、その中で銀行によって多少の差が生じるだけです。
したがって、会社は基準となる債務者区分について、ある程度知識を持っておくことが大切です。
金融庁が定める債務者区分の内容を噛み砕くと、以下のようになります。
正常先 | 黒字であり、債務超過でもない、 業績・財務ともに良好な会社 |
|
要注意先 | ここ数年で業績が振るわず、返済に軽度の延滞が見られ、 今後の返済が危ぶまれる会社。 前期が赤字だった、軽微な債務超過状態であるなど |
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要管理先 | 要注意先以上に業績や財務に問題がある会社。 元本や利息を3ヶ月以上延滞している、 返済条件の緩和(リスケジュール)を依頼しているなど |
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破綻懸念先 | すぐに経営が破綻する心配はないものの、 経営難が深刻であり、今後破綻が懸念される会社。 赤字や債務超過状態にあり、 長期間にわたって返済を延滞しているなど |
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実質破綻先 | 法的には経営破綻ではないが、 実質的には破綻している会社。 破綻懸念先の状況に加えて、 短期の資金繰りも困難になっているなど |
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破綻先 | 法的に経営破綻の事実がある会社。 破産や清算、取引停止処分などに陥っており、 資金繰りが全く不可能な会社 |
このように見てみると、銀行が融資先の会社に対し、どの程度のリスクを感じているかということがよく表れています。
もともとは金融庁の検査マニュアルではありますが、銀行にとっては融資先のリスク管理マニュアルになっているとも言えます。

特に、都市銀行などは査定が厳しいため、この傾向が強いです。
地銀や信金などになると、やや査定は甘くなりますが、それでも基本的には要注意先までしか融資を受けることはできません。
銀行から、融資を受けて資金を供給しなければ、会社の資金繰りは困難になります。
したがって、会社は少なくとも要注意先以上の債務者区分を維持する必要があることが分かります。
債務者区分が融資に影響する理由
では、どうして銀行は正常先あるいは要注意先までしか融資しないのでしょうか。
それは、銀行は債務者区分に応じて、「貸倒引当金」を計上する必要があるからです。
貸倒引当金とは、金融庁のマニュアルにより、貸し倒れに備えてあらかじめ利益の中から積み立てておくお金のことです。
融資総額に対し、正常先ならば0.2~0.3%、要注意先・要管理先ならば1~15%、破綻懸念先ならば50~70%、実質破綻先や破綻先ならば100%の貸倒引当金を積み立てる必要があります。
もしこの仕組みがなければ、銀行が貸し倒れリスクの高い会社に安易に融資し、貸し倒れが相次いだ場合、銀行の経営が危機に陥るかもしれません。
そうならないためにも、債務者区分に現れる貸し倒れリスクに応じて引当金を積んでおくのです。

引当金さえ積めばリスクの高い会社にも融資できるようにも見えますが、それでは銀行の活用できる利益が目減りしてしまうこととなります。
だからこそ、債務者区分が低く、貸し倒れリスクの高い会社に対しては、引当金の必要を嫌って融資が行われないのです。
このことから、債務者区分が悪い会社には、金利を高くするなどしてリスクヘッジすればいいというような、簡単な話ではないことが分かります。
いくら高めの金利を取ると言ってもたかが知れていますから、要管理先以下の会社に融資した場合、貸倒引当金のほうがはるかに上回ってしまいます。
以上のような理由から、銀行は債務者区分が低い会社には融資をしません。
例外があるとすれば、信用保証協会の保証付き融資を出す場合です。
この場合、万が一の場合には保証協会が代位弁済してくれるため、銀行の貸し倒れリスクと引当金率は大幅に軽減されます。
そのため、融資を行うことが可能となります(もちろん、経営状況があまりにも悪い会社は、信用保証協会が保証しませんから、債務者区分や引当金による判断を待つまでもなく、融資を受けることはできません)。

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まとめ
本稿の内容から、債務者区分の概要と、それによって決まる銀行格付けの基礎的なことが理解できたことと思います。
債務者区分と銀行格付けが悪ければ、融資を受けることはできませんから、債務者区分・銀行格付けが悪化しないように努めることが重要です。
当サイトでは、本稿のような銀行格付けに関する基礎知識に合わせ、格付けアップのための具体的なアプローチも解説しています。
ぜひそちらも参考にしてみてください。