会社にとって、手元資金ができるだけ潤沢であることは非常に重要です。
そのため、利益の流出をできるだけ少なくすることが必要であり、そのためにも適切な節税を図り、支払う税金を少なくすることが求められます。
多くの会社で活用できる節税策として、減価償却資産の処理を工夫することで、短期間で費用化したり、もれなく費用化したりすることが可能です。
本稿では、その知識をお伝えしていきます。
資産取得による節税のポイント
節税策には色々なものがあり、本当に効果があるものから、効果があると思われているものの実際はそれほど効果がないものまで、多種多様です。
- 一生懸命稼いだ利益をできるだけ手元に残す
- 資金繰りに活かしていく
- 会社の成長に役立てていく
このような事のために、税金による利益の流出はできるだけ避ける必要があります。
そのために、節税を正しく理解することが大切です。
節税によく利用される方法であり、なおかつ正しく使うことで節税効果が得られる方法としては、保険への加入や資産の取得、各種控除の活用などが代表的なものです。
これらのいずれも、正しく利用することで節税効果が得られるものですが、よく考えることなく利用することによって、却って資金繰りを圧迫している場合もあります。
本稿で解説する、資産の取得による節税ですが、これも正しく利用すれば大きな節税効果が得られるものの、よく考えずに利用すればマイナスになることもあります。

この時、資産によっては10年や20年といった長期間にわたって償却していく必要があります。
しかし、正しい知識によって節税すれば、本来長期間にわたって償却すべきところを、短期間で経費化して節税に役立てることができます。
資産の多くは、経年と共に貢献度が低くなっていくものです。
例えば、機械設備で考えると良くわかるのですが、機械設備は時間の経過によって収益性が悪化していくのが普通です。
また、応接のためのテーブルやイスといった資産にしても、経年と共に劣化していき、応接用のものとしてはふさわしくない、収益への貢献度が低いものとなっていきます。
しかし、収益性が経年によって変化することとは無関係に、長期にわたって一定額を計上していくとすれば、収益性が高い時期にも低い時期にも一定額を計上するのですから、節税効率は悪くなります。
そこで、このような資産に対し、できるだけ短期間のうちに経費化することを心がければ、収益性が高いうちに経費として計上することができます。
それにより、課税所得が大きい時期にできるだけ多く経費化することで、節税効率も高まるのです。
このような節税策は、設備投資をした際には特に役立つものですから、ぜひ活用していきたいものです。

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固定資産を短期間で償却する知識
通常、10万円以上の固定資産は、減価償却によって費用化していくものです。
しかし、例外的に短期間での償却を認められる場合もあります。
具体的には、以下のような例外措置があります。
一括償却資産
固定資産のうち、20万円未満の資産は一括償却資産とされ、3年間で損金とすることができます。
償却費は、
取得にかかった費用÷当期の月数/36ヶ月
として年間の損金算入額を計算します。
翌期以降に売却や廃棄などで手放した場合にも、3年間にわたって償却費を計上する必要があります。
資産ごとに償却するのではなく、対象となる資産をまとめて償却する点に注意が必要です。
例えば、ある会社では利益が大きく出たため、節税を図ることとし、期末の最終月に15万円のパソコンを10台購入しました。
その場合に一括償却資産として処理をするならば、
15万円÷12/36ヶ月×10台=50万円
となり、50万円をその事業年度の損金として計上できます。
2年目、3年目も同様に50万円ずつの計上となります。
少額減価償却資産
資本金が1億円以下の中小企業では、取得額が30万円未満の資産を少額減価償却資産とみなし、全額を損金とすることができます。
ただし、300万円が上限となっています。
上記の例のように、期末の最終月に15万円のパソコンを10台購入した場合、一括償却資産ではなく少額減価償却資産として処理すれば、150万円を一事業年度でまとめて損金とすることができます。
両者の使い分け
一括償却資産にしろ、少額減価償却資産にしろ、通常の方法で処理するよりもかなり節税に役立ちます。
このことは、上記の例と同じく、期末の最終月に15万円のパソコンを10台購入し、通常の方法で減価償却した場合を考えると明らかです。
パソコンの耐用年数は4年間であり、定率法における償却率は0.5です。
このため、初年度に償却できるのは、
15万円×0.5×1/12ヶ月×10台=6万2500円
となります。
初年度で損金とできる金額は、次のようになります。
- 一括償却資産として処理した場合には50万円
- 少額減価償却資産として処理した場合には150万円
- 通常の方法で減価償却した場合には6万2500円

したがって、期中のどこで購入するかにもよりますが、場合によっては通常の方法で減価償却するのではなく、一括償却資産や少額減価償却資産として処理したほうが節税に役立つことが多々あります。
この両者の使い分けに関しては、初年度にたくさんの利益が出た場合には少額減価償却資産として処理し、一気に損金として節税に役立てましょう。
それほど利益が出ていない場合には一括償却資産として3年にわたって償却することで、平均的に節税に役立てるのが良いでしょう。

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見積書の工夫で節税につながる
一括償却資産や少額減価償却資産として処理することによって、短期間で節税可能になる場合があることを学びました。
この知識は、節税に役立てることが可能です。
例えば、まとまった単位で資産を購入した場合には、一括償却資産や少額減価償却資産として処理することができないこともあります。
しかし、それを小さな単位に分割することができれば、10万円未満の請求は固定資産にする必要がなくなりますし、20万円未満(中小企業では30万円未満)となれば一括償却資産または少額減価償却資産での処理が可能になるからです。
これは、見積書を工夫することで可能になる節税ですから、ぜひ活用していきたいものです。
単位を分割して節税につなげる
一括償却資産や少額減価償却資産として処理できるかどうかの判断は、1単位ごとの金額によって判断していきます。
例えば、作業用のテーブルとイスを購入した場合、この設備はテーブルだけ、あるいはイスだけでは事業の役には立ちませんから、この二つを合わせて一つの単位とみなします。
他にも、オフィスの窓にブラインドをつける場合、ブラインド1枚ごとに計上することはできず、その部屋の窓全てのブラインドで一単位と考えます。

しかし、見積書を工夫する際には、できるだけ単位を小さくすることによって節税につながるかもしれません。
例えば、会社の全ての窓にブラインドをつけるために、業者に発注したとします。
このとき、業者は全てのブラインドと取り付けの工費をまとめて、60万円という見積書を出してきました。
60万円という価格でそのまま発注すれば、一括償却資産や少額減価償却資産での処理はできず、通常の耐用年数で償却する必要があります。
そこで、見積書の内訳を業者に聞いたところ、社長室や応接室など計5部屋に対するブラインド本体と工費の合計が60万円であり、各部屋で分割すれば12万円×5部屋であったことが分かりました。
このような場合には、業者にお願いして各部屋に対する見積書を作ってもらい、全ての部屋でかかる費用を一括償却資産または少額減価償却資産として処理することができます。

会社の利益や資金繰りの状況に応じて、選択すべき償却方法は異なるものですが、選択肢は多ければ多いほど適切な節税を検討しやすくなります。
したがって、少額資産を節税に活かしていくならば、見積書の単位を細かく記載してもらうことをおすすめします。
見積書はしっかりチェックしよう
見積書と節税の関係について、もう少しお話ししておきましょう。
見積書(請求書なども同じ)の内容を、それほど注意深くチェックすることなく処理している会社は少なくありません。
しかし、見積書や請求書といった書類は、注意深くチェックすることによって、税金を無駄に負担してしまうことを避けられる場合があります。
これは、見積書の内訳を細かくチェックした時、個別に損金にできるものが固定資産に含まれて計上されていることがあるからです。

見積書の内訳を見てみると、次のような内訳でした。
- 機械本体の価格は80万円
- 設置に伴う諸費用に10万円
- 機械のメンテナンスに必要となる消耗品に10万円
もし、100万円の見積書を特にチェックすることなく、そのまま処理していたとすれば、100万円を取得費用として処理してしまうかもしれません。
しかし、この100万円に含まれる消耗品の10万円は、固定資産に含む必要はありません。
固定資産の取得価格として考える必要があるのは、その資産の購入代金と、購入に伴って直接必要となった費用だけです。
資産の実際の運用に必要となる消耗品は、資産の取得に伴って必要なものとは見なしません。
このように、見積書を注意深くチェックしていれば、資産の取得価格を正確に処理することができます。
その結果、上記の例ならばメンテナンスのための消耗品は固定資産の取得費用に含まず、その事業年度の損金とすることで、節税に活かすことができるのです。
資産の取得価格と混同しがちな費用
これと同じように、その事業年度に損金とできるものでありながら、資産の取得価格に含めて考えたために、損金を取りこぼしてしまうケースがしばしばみられます。
よくみられるものを以下に挙げていくので、注意しておくことをおすすめします。
- 不動産の購入に伴って生じる不動産取得税や登録免許税、その他登記・登録にかかる費用(司法書士の報酬など)
- 自動車の購入に伴って生じる自動車取得税
- 建物の新増設に伴う事業所税
- 建物の建設に伴って、測量などの様々な調査費用、基礎工事等を行ったことにより、建設計画の変更にあたって不要となったものにかかる費用
- 減価償却資産の取得のために契約を交わし、その後契約を解除したうえで異なる資産を取得した際に生じた違約金
- 減価償却資産を取得するために借入をしたことで生じる利子
- 割賦契約などで減価償却資産を取得し、分割払いに伴って生じる利子や支払手数料などの費用
このように、資産の取得に伴って必要となった費用に対して、損金にできるものがないかどうかをチェックすることを習慣づけるようにしましょう。

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中古の資産を購入して節税
ここまで見てきた通り、減価償却資産を取得した場合には、償却期間に工夫を施すことによって短期間で費用化し、節税に活かすようにします。
しかし、この減価償却期間の根拠となっているのは耐用年数であり、耐用年数は全て新品を基準に決められています。
このため、中古の資産を購入した場合には、特別に耐用年数を計算して適用する必要があります。
耐用年数が一部を経過している場合
まず、購入した中古資産が、一部だけ耐用年数を経過している場合を考えます。この場合には、
(耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
で計算します。
例えば、耐用年数10年の資産を購入し、既に5年が経過していた場合には、
(10年—5年)+5年×20%=6年
となり、6年間にわたって償却していくことが分かります。

例えば、耐用年数5年の資産を購入した時、既に4年が経過していた場合には、
(5年—4年)+4年×20%=1.8年
となります。
耐用年数の計算の結果、1年未満の端数が生じた場合には切り捨てとなるため、この計算では1年となります。
したがって、耐用年数は2年とみなします。
耐用年数をすでに経過している場合
次に、購入した中古資産が、取得時点で既に耐用年数を全て経過している場合には、
新品基準の耐用年数×20%
で計算します。例えば、耐用年数20年の資産を中古で購入し、すでに20年以上が経過している場合には、
20年×20%=4年
となり、4年を耐用年数とします。
なお、こちらも耐用年数を一部経過した資産と同じく、計算の結果2年未満となる資産については、2年と考えます。
例えば、耐用年数5年の資産を購入し、既に5年以上が経過していた場合で計算すると、
5年×20%=1年
となります。
この場合、耐用年数は2年とみなします。

もし、耐用年数に端数がある場合には、月単位で計算します。
例えば、経過年数2.5年の資産ならば、経過期間を30ヶ月として考え、最終的に年換算して耐用年数を割り出します。
中古資産で節税できるか?
上記のことを踏まえて、中古資産で節税するためには、それに適した資産を検討する必要があります。
この場合におすすめできるのが、乗用車です。
会社の営業やその他の目的で車両の購入を検討しているならば、節税を考慮しながら購入することによって、節税メリットを得られる可能性があります。
新車の耐用年数は6年とされています。このため、例えば耐用年数が4年経過した中古車を購入するならば、
(6年—4年)+4年×20%=2.8年
となります。
中古資産の耐用年数では、計算結果として生じた1年未満の端数は切り捨てとなりますから、この車両を購入した場合には、2年で償却できることが分かります。
このように計算してみて、最短の2年で償却できる中古車を購入するように意識すれば、車両の購入を節税に活かすことができるでしょう。
また、耐用年数2年の車両の償却率は、定額法では50%、定率法では100%となっています。

ただし、減価償却は月単位で考えるものです。
したがって、期の最初の月に購入したならば12ヶ月分を減価償却することができますが、途中で購入したならば月数按分が必要となり、期末の最終月に購入した場合には1ヶ月分しか減価償却できません。
したがって、中古資産の取得によって節税を図りたいならば、できるだけ期首の末日までに購入することが望ましいでしょう。
3月決算の会社ならば、4月末日までに購入するのです。
そうすることによって、100%の経費化も可能となります。

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まとめ
会社を経営していれば、色々な設備を購入することがあります。
そのとき、減価償却について色々な知識を持っていれば、
- 少額の資産に対して適切な処理を図ったり
- 見積もりを工夫して短期間での処理を図ったり
- あるいは見積もりの内訳をチェックすることで損金にすべきものを見つけ出したり
することが可能となります。
また、適切な耐用年数の中古車を購入することで、100%の費用化を図ることも可能です。
減価償却資産の取得にあたっては、ぜひ本稿の知識を活かしてほしいと思います。
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