会社が事業をしていく上では、必ず税金を支払わなければなりません。
とはいえ、会社にできるだけ多くのお金を残すためにも、節税によって税金の支払い額を少なくしたいものです。
しかし、節税は、正しい知識によって行わなければ、十分に節税できなかったり、却って資金繰りに悪影響を与えたり、節税ではなく脱税になってしまったりすることもあります。
そこで本稿では、節税を考えるにあたっての基礎的な知識となる、益金と損金について解説していきます。
益金とは?
会社の節税を考える際には、益金と損金に関する知識が必要となります。
まず益金ですが、益金は法人税法において、
- 資産の販売に係る当該事業年度の収益の額
- 有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供に係る当該事業年度の収益の額
- 無償による資産の譲受けに係る当該事業年度の収益の額
- その他の取引で資本等以外のものに係る当該事業年度の収益の額
の合計だとされています。
このように見ると難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うならば、以下のような項目が益金とみなされます。
- 売上(販売などによって得られた売上)
- 受取利息(貸付金などに伴って生じる利息)
- 為替差益(外貨を取り扱っている場合に、為替変動によって得た利益)
- 有価証券売却益(株式や債券その他の有価証券を売却して得た利益)
- 固定資産売却益(土地や建物、機械などの不動産を売却して得た利益)
- 保険解約益(保険を解約することで得られる利益)
- 補助金収入(国や自治体から支給される補助金)
- 債務免除益(借入金や買掛金の支払いが免除されることで得られる利益)
- 受贈益(資産を無料や割安で提供されることによって得られる利益)
- 雑収入(その他の利益)
このように、一口に「益金」と言っても、色々なものがあることが分かります。

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お金のやり取りがなくても益金になる
上記に挙げた益金のうち、売上や受取利息などの科目に関しては、取引先や関係会社などから実際に金銭を受け取ることによって得られる益金です。
ですから、分かりやすいと思いますし、間違いなく計上することもできると思います。
しかし、益金の中には、実際にお金のやり取りが行われないものもあります。
そのような益金は、把握漏れが起きやすいもので、益金と計上すべきものを計上せず、確定申告が正確に行われず、後々問題になる可能性もあります。
具体的には、以下のような場合に、益金の把握漏れが起きやすくなります。
無償で資産をもらった場合
どのような形であれ、資産を無償で受け取った場合には、益金として計上しなければなりません。
お金の流れはないのですが、会社には経済的利益がもたらされているからです。
この時、無償でもらった資産の時価を受贈益とみなし、益金として計上します。
例えば、時価100万円相当の資材の提供を受けたとすれば、100万円分の益金を計上しなければならないのです。
割安で資産を譲ってもらった場合
割安、つまり時価よりも低い価格で資産の譲渡を受けた場合にも、益金として計上します。
この場合には、譲渡人に対してむしろお金を支払っているのですから、益金を計上するというイメージが一層湧きにくいかもしれません。
しかし、割安で譲渡してもらったということは、時価との差額分の経済的利益を享受したと考えます。
したがって、この場合には譲渡された資産と時価の差額を益金として計上します。
例えば、時価1000万円の機材を500万円で譲渡してもらった場合には、時価との差額である500万円が受贈益となり、益金として計上します。
債務を免除してもらった場合
借入金や買掛金などの債務があり、それが免除された場合にも、お金の流れは生じません。
単に、自社にとっての債務と、取引先にとっての債権が消滅しただけで、お金のやり取りはありません。
それでも、本来支払うべきだった債務を免除してもらったことで、会社には経済的利益がもたらされているため、免除された債務の額を債務免除益として計上する必要があります。
無利息で貸し付けた場合
非常に漏れが生じやすいのが、無利息での貸付金です。
関連会社や取引先などにお金を貸すとき、無利息で貸し付けることがあります。

むしろ、受け取るべき利息を受け取っていないのですから、どちらかというと損金のようなイメージを抱いてしまうこともあります。
しかし、貸付金の利息を受け取っていない場合には、自社が本来受け取るべきであった利益を以て、相手方に無利息という経済的利益を与えたものと見なします。
このために、貸した側が受取利息相当額を益金として計上しなければなりません。
上記のような場合、お金の流れが発生するものではありませんし、通帳などにも入金記録が残りません。
だからこそ、益金の把握漏れにつながりやすいため、注意が必要です。
把握漏れを防ぐためにも、「どんな形にせよ、会社に何らかの利益をもたらすものは益金として計上する」と考えておくのが良いでしょう(ただし、受取配当金や資産の評価益は益金の対象とはなりません)。

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益金で勘違いされやすいこと
上記の通り、お金の流れが発生しないものは、益金の把握漏れが起きやすいものです。
しかし、この他にも益金で勘違いされやすいものがあります。
それは、益金を計上するタイミングと、子会社の利益についてです。
益金を計上するタイミング
まず、益金を計上するタイミングについて見ていきましょう。益金を計上するタイミングは、
- お金や資産を受け取ったタイミングで計上するのか
- お金は受け取らずとも、別の基準を以て計上するのか
という点について、勘違いされることが多いのです。
よくある勘違いが、「あくまでもお金の流れがあってから(例えば売掛金を受け取ってから)計上する」というものです。
このような勘違いをしている場合には、「売掛金の入金を遅らせてもらって、回収を来期にずらして節税しよう」などという間違いが起きます。
益金を計上するタイミングは、入金に限ったことではなく、「収益を得るために、取引先に対する責任を果たしたとき」を基準とします。
具体的には、入金予定がまだ先であっても、商品の納品や役務の提供が完了した時を、益金計上のタイミングとします。

子会社の利益
子会社を持っている会社、つまり親会社の立場から考えた時、親会社と子会社の利益を合算することは基本的にありません(連結納税を選択した場合のみ)。
このため、子会社はあくまでも別会社と考え、それぞれの会社がそれぞれに納税することとなります。
したがって、親会社が節税したいからといって、親会社での利益を子会社に付け替えたとしても、親会社の税金は減って子会社の税金が増えるだけであり、トータルでは節税になりません。
このように単純ですから、国内に子会社を持つ会社にとっては、益金について疑問や勘違いも起きにくいと言えます。

すなわち、
「日本よりも法人税率が低い国に海外子会社を作り、日本法人である親会社の利益を海外子会社に付け替えれば、トータルでの法人税は安くなるのではないか?」
という勘違いが発生するのです。
このようなことが可能ならば、法人税率が0%の国に海外子会社を作り、所得を付け替えることで法人税の納税額をゼロにすることもできます。
多くの会社が実践すれば、法人税による税収は大幅に減ってしまいます。
もちろん、国もそこまで馬鹿ではありませんから、こんなうまい話はありません。
このようなことが起きないように、「タックスヘイブン対策税制」というものが設けられており、この適用を受けた会社は、海外子会社の所得の全部または一部を、日本法人の親会社の所得と合算しなければなりません。
この税制によって、法人税が低い国に海外子会社を作って、親会社の所得を付け替えたとしても、結局は親会社と子会社の所得が合算され、日本の税率で法人税が発生します。
もっとも、税金対策ではなく、海外の特定の国に子会社を設立して事業を行うことに合理的な理由がある場合には、タックスヘイブン対策税制の適用を受けない場合もあります。

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損金とは?
次に、損金について見ていきましょう。
法人税法では、以下について損金とすることが定められています。
- 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
- 当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
- 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
このように書けば小難しいですが、損金は会計における費用とほぼ一致しています。
そのため、どのようなものが損金になるかを把握するよりも、損金にならないものや勘違いしやすいものについて把握したほうが分かりやすいと思います。
会計における費用と税務における損金について、不一致が生じる代表的なものは以下の通りです。
交際費
交際費とは、取引先などを接待するにあたって発生した支出であり、これは損金となります。
取引先への贈答品も交際費とみなされ、損金となります。
しかし、交際費として計上できる金額には上限があります。
損金として計上できるのもこの限度額までであり、限度額を超えた分に関しては損金になりません。
寄付金
寄付金とは、金銭を始めとした経済的利益を無償で提供するもので、損金の対象となります。
しかし、これも交際費と同様に限度額が設けられており、限度を超えた分は損金となりません。
役員報酬
役員報酬とは、社長を始めとした役員に対して支払われる報酬です。
役員報酬は自由に決められるものであり、損金としての計上も可能であるため、節税に活用することができます。
しかし、いくら損金として計上できるとはいっても、税金逃れのために利益をまるごと役員報酬にするなどということがまかり通れば、国の税収は減ってしまいます。
そのようなことにならないために、税法においては、一定の条件を満たしている役員報酬のみ、損金としての計上が可能となっています。
具体的には、役員報酬は定期同額給与といって、毎月一定の時期に、同額が支払われている場合のみ損金とみなされます。
このため、「今期は利益が1000万円も出たから、社長に1000万円のボーナスを出して利益をゼロにしよう」などと考えても、損金とはみなされないので注意してください。
減価償却費
減価償却費は、固定資産を購入した際に、その資産の税務上の耐用年数にしたがって損金として計上していくものです。
例えば、1000万円の固定資産を購入し、耐用年数が10年であったとすれば、毎期ごとに計上される減価償却費は100万円となります。
しかし、会社によっては独自の償却ルールを設けていることもあります。
例えば、1000万円の固定資産を購入した場合に、耐用年数とは無関係に5年で償却するというルールを設けている会社では、毎期ごとに計上される減価償却費は200万円となります。

したがって、会社の独自ルールによって200万円を計上したとしても、税務上で100万円が上限となるならば、限度額を超える100万円は損金になりません。
引当金
引当金とは、将来的に発生する費用を、事前に見積もって当期の費用に計上するものです。
引当金には、貸倒引当金、退職給付引当金、賞与引当金、修繕引当金などがあり、その会社の事業によって色々な引当金があります。
会計上では当期の費用として計上することから、引当金は全て損金に計上できそうなものですが、実際には貸倒引当金などの一部しか認められないことがほとんどです。
したがって、当期に計上した引当金のうち、税務上で認められない引当金は損金とならないと覚えておきましょう。
期ズレ
期ズレとは、支払いが期をまたいでしまう場合に、その支払いを当期のものとして未払金を計上するものです。
期ズレによって生じる費用は、損金になる場合とならない場合があります。
損金として認められる場合には、債務確定基準という基準によって判断します。すなわち、
- 債務が成立している
- 支払うべき事実が確認できる
- 支払うべき金額が合理的に算出できる
という条件を満たす場合にのみ、損金としての計上が可能です。
評価損
評価損とは、有価証券や不動産、棚卸資産などの資産が、何らかの影響を受け、取得した時よりも価値が下がってしまうことです。
評価損も、損金として認められる場合と認められない場合があります。
まず、固定資産や棚卸資産の評価損は、災害などの影響で大幅に価値が下落している場合には、評価損を損金として計上することができます。
しかし、物価の変動などで発生した評価損は、損金とはなりません。
税金
税金を支払うと、会計上では費用として計上します。
しかし、損金という視点で考えると、税金の中には損金になるものとならないものがあります。
まず、税金の中でも損金とならないのは、
- 法人税
- 法人住民税
- 税金に伴うペナルティ(延滞税や罰金など)
です。
法人税や法人住民税が損金にならないことはよく知られていますが、税金に伴うペナルティとして支払ったものが損金にならないことは、意外に知られていません。
一方、税金の中で損金となるものには、
- 法人事業税
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 事業所税
- 地価税
- 自動車税
- 軽油取引税
- 酒税
- 利子税
- ゴルフ場利用税
などが挙げられます。
これらの税金は、損金としての計上が可能です。
簡単に言えば、法人税や法人住民税、税金関連のペナルティ以外の税金は、全て損金になると考えると分かりやすいでしょう。
なお、これらの税金には、法人が申告して納税する申告納税方式のものと、税務署から通知されて納税する賦課課税方式のものがあります。
申告納税方式の税金は、申告書を提出した事業年度に損金として計上し、賦課課税方式の税金は、納税通知を受け取った事業年度に損金として計上することも覚えておきましょう。
以上のように、損金として計上できないものや、計上できる場合とできない場合がややこしいものがあります。
損金をできるだけ多く計上し、税金を少しでも小さくしていくためにも、損金になるものとならないものを区別し、正確に計上していくことが大切です。

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まとめ
本稿では、益金と損金のそれぞれの関係について書いてきました。
節税は、資金繰りにメリットがありますが、正しくない節税は脱税につながり、後に追徴課税などを求められたり、税金のトラブルが融資にマイナスの影響を与えることもあります。
節税を資金繰りに活かすためには、益金と損金を正しく理解し、正しい節税を行なうこと大切なのです。