ファクタリングとは、自社が保有している売掛債権をファクタイリング会社に売却することによって、資金を調達する方法のことです。
近年、日本においてもようやく浸透してきた方法であり、資金調達のために非常に役立つ方法です。
しかしながら、ファクタリングはまだまだ完全に浸透しているものではなく、利用した時に会計処理に悩む人も多いようです。
ファクタリングの会計処理を理解するためには、ファクタリングの仕組みや流れとともに理解する必要があります。
ファクタリングとは?
近年、ファクタリングという言葉が知られるようになって来ました。
ファクタリングサービス自体は非常に歴史が古く、欧米においては100年以上前から、日本においても数十年前には存在していました。
しかし、日本の商習慣にはなかなか馴染まなかったこともあり、近年になってようやく普及し始めてきました。
ファクタリングとは何かというと、自社が保有する売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことによって、資金調達を行う方法のことです。
企業間取引においては、現金取引が行われることは基本的にはなく、ほとんどの場合において売掛金や手形などの売掛債権を介した取引が行われます。
買い手側企業にとって、支払いを数ヶ月先に遅らせることができれば、資金繰りに余裕ができます。
もし現金取引しかできなければ、仕入れのための現金を常に保有しておかなければならず、それが不可能な企業も多いことでしょう。

とはいえ、このことは売り手企業にとってはあまり好ましいことではありません。
確かに、掛売りや掛買いというシステムがあることによって、現金に乏しい企業でも取引相手にできることは、メリットということができるかもしれません。
また、売り手企業も、販売する製品を製造するための原材料などを掛買いで仕入れているのですから、ある意味ではこのシステムの恩恵を受けているといえます。
しかし、売掛債権は流動性に乏しい資産です。
原材料を仕入れ、製品を製造し、販売をして初めて売掛債権が発生します。
ですが、その回収は早くて1〜3ヶ月、遅ければ半年ほども先のことになります。
売掛債権を回収するまでは、製造や販売にかかったコストを埋め合わせることはできず、売掛債権の回収よりも早い段階で買掛債務の決済を行わなければならないこともよくあります。
そのため、製品などを販売した企業としては、できるだけ早く売掛債権を回収したいと思うのです。
しかし、それは自社の都合だけでできることではありませんから、資金繰りがなかなかうまくいかない企業も出てくるのです。

財務状態が悪く、支払い能力がなければ、売掛債権の回収が遅れたり、全く回収できなくなってしまうこともあり得ます。
資金繰りが厳しい企業は、少しでも早く売掛債権を回収したいと思っているものですから、その回収が遅れてしまえば、資金繰りがはますます厳しくなります。
貸し倒れの影響はそれ以上に甚大です。
例えば、利益率10%で販売したとき、1000万円の売掛債権が貸し倒れになってしまったとしましょう。
その損失を埋め合わせるためには1億円もの売上をあげなければならないのです。
このようなことにならないためにも、売掛債権管理をしっかりと行なっていく必要があるのですが、それでも不良債権の発生確率をゼロにすることは不可能です。
取引先の倒産によって、不良債権が複数発生したり、あるいは金額が大きい売掛債権が貸し倒れになってしまえば、企業はその被害に耐えられないかもしれません。
つまり、売上はあるにもかかわらず倒産してしまう「黒字倒産」に至り、しかもその原因は取引先の倒産である「連鎖倒産」に至ってしまうのです。
資金繰りを改善するため、あるいは売掛債権回収がうまくいかないことから生じる黒字倒産や連鎖倒産といった事態を防ぐために、ファクタリングが大いに活躍してくれます。

資金繰りが厳しく、支払い期日まで待つのが難しいような場合には、ファクタリングによって売掛債権を資金化することで、資金繰りを改善することができます。
また、後述のとおり、ファクタリングをした売掛債権は、権利が完全にファクタリング会社に移るのが普通です。
そのため、売掛債権につきものである回収遅延や回収不能といったリスクを、ファクタリング会社に移転することができます。
つまり、売掛債権をファクタリングすれば、売掛債権の回収が難航することで経営に悪影響を及ぼすという事態を免れることができるのです。

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ファクタリングの流れ
では、実際にファクタリングを利用するとなった場合には、どのような流れで利用することになるのでしょうか。
ある会社が取引をして売掛債権が発生した場合を想定して、一般的なファクタリングの流れを見ていきましょう。
売掛債権の発生
A社は、B社に1000万円分の製品を販売することに成功しました。
支払いは3ヶ月後に定め、売掛債権が発生しました。
買掛決済しなければならなくなる
A社はもともと現金に乏しく、資金繰りが楽ではありませんでした。
A社に対する売掛債権の回収がまだ訪れないタイミングで、C社へ800万円の買掛債務の決済をしなければならないのですが、そのために現金を工面することができませんでした。
支払い遅延となれば、C社からの信頼を損なうことはもちろんのこと、業界内での評判も落ちてしまいます。
それは避けなければならないと思い、銀行に融資を申し込んだのですが、財務内容に問題ありとの判断から融資を拒否されてしまいました。
ファクタリングの利用を検討
資金繰りに行き詰ってしまったA社は、資金調達のためにファクタリングを利用することにしました。
複数ある中から良さそうなファクタリング会社を選び、B社に対する売掛債権をファクタリングするべく申し込みを行いました。
審査〜買取料決定
ファクタリング会社は申し込みを受け、対象となる売掛債権のリスクなどを調べます。
買い取った売掛債権がきちんと回収できるかどうかを判断するため、B社に対して信用調査を行ったのです。
その結果、B社の支払い能力が問題ないと判断され、買い取りのための手数料は売掛債権額の15%であるとしました。
ファクタリング会社と契約
買取金額の見積もりを受け、それで問題ないとしたA社は、ファクタリングを行うことを決めました。
A社とファクタリング会社はファクタリング契約を結び
- 買取率は15%であること
- 償還請求権は放棄すること
- B社には知らせずに二社間ファクタリングとすること
などを決めました。
契約を結んだ時点で、B社に対する売掛債権はファクタリング会社に譲渡され、債権はファクタリング会社に帰属します。
資金調達成功
売掛債権の譲渡を行い、契約通りの金額がファクタリング会社からA社に支払われました。
こうしてA社は、数ヶ月先にしか入らなかったはずの1000万円の売掛債権から、850万円の現金を得ることができました。
これによって、C社に対する買掛債務の決済も可能となりました。
支払い代金をファクタリング会社へ
後日、あらかじめ決められていた支払い期日になると、B社からA社に対して1000万円の支払いが行われました。
A社は、支払われた代金をそのままファクタリング会社の口座にスライドさせます。
ファクタリング会社が振り込みを確認すると、ファクタリング取引は完了となります。

A社のように、資金繰りが厳しい場合にはファクタリングを利用していきます。
売掛債権の回収を早めることによって、「買掛債務が支払えない、借入金の返済ができない」などの事態を回避することができるのです。

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二社間ファクタリングと三社間ファクタリング
さて、ファクタリングの流れに登場した「二社間ファクタリング」とは、いったいどのような取引のことなのでしょうか。
二社間ファクタリングとは、その名の通り、自社とファクタリング会社(例ではA社とファクタリング会社)の二社間だけで行われるファクタリングのことです。
流れを見ればわかる通り、二社間ファクタリングでは売掛先(例ではB社)に、ファクタリングをしていることを知られる恐れがありません。

したがって、売掛債権をファクタリングによって資金化していることが売掛先に知られると、自社の資金繰りがうまくいっていないことを売掛先が知ることとなります。
また、それがまだ日本ではあまり知られていない方法なのですから、売掛先が抱く印象は悪いことが多いのです。
財務状態が悪化しているのか、経営がうまくいっていないのか、などという疑いを抱かせることがあります。
売掛先の判断によっては、取引に慎重になることも考えられます。
そのような事態を避けるために、二社間ファクタリングを利用することによって、売掛先に知らせずにファクタリングを行うのです。
三社間ファクタリング
現在の日本においては、二社間ファクタリングが主流です。

三社間ファクタリングとは、「自社と売掛先とファクタリング会社の三社間」で行うファクタリングであり、ファクタリングによって売掛債権が譲渡されることを、売掛先に通知します。
そうすることによって、ファクタリング会社は売掛先から直接支払いを受けられるというメリットがあります。
欧米ではファクタリングが浸透しており、多くの会社が積極的に活用しています。
そのため、ファクタリングをしたからといって売掛先に疑いを抱かせることは少なく、三社間ファクタリングが主流となっているのです。
二社間ファクタリングと三社間ファクタリングの違いは、売掛先への通知の有無や、代金支払いの流れだけではありません。

二社間ファクタリングでは10〜20%程度の買取率になるのに対し、三社間ファクタリングでは5%以下の買取率になります(買取率は売掛先の信用力によって変動)。
なぜこれほどまでに差があるのかといえば、それは二社間ファクタリングではファクタリング会社の抱えるリスクが大きいからです。
というのも、二社間ファクタリングでは、売掛先が支払った代金はファクタリングの依頼企業に支払われ、その上でファクタリング会社に振り込まれます。
もし、依頼企業が「倒産してしまったり、流用してしまったり、逃げてしまったり」したならば、ファクタリング会社は得られるべき利益を得られないことになってしまいます。
このようなリスクへの対策として、高い買取手数料を取っているのです。

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償還請求権の有無
次に、ファクタリングの流れで出てきた、償還請求権という言葉を解説しておきましょう。
償還請求権とは、もしファクタリングした売掛債権が貸し倒れになった場合に、依頼企業に弁済を求められる権利のことを言います。
- 償還請求権放棄→売掛債権が貸し倒れになった場合に、弁済を求める権利を放棄している(弁済を求めることができない)
- 償還請求権留保→売掛債権が貸し倒れになった場合に、弁済を求める権利を留保している(弁済を求めることができる)
ファクタリング契約では、基本的に償還請求権放棄となっています。
つまり、売掛債権が貸し倒れになった時のリスクを、ファクタリング会社が全て引き受けてくれるということです。

通常であれば、企業は売掛債権が貸し倒れになれば大きな被害を受けます。
そうならないよう取引先の信用調査を詳しく行い、支払い能力があることを確認した上で販売を行うでしょう。
発生した売掛債権はしっかりと管理して回収に努めることで、貸し倒れにならないようにします。
しかし、ファクタリングを利用すれば貸し倒れリスクはすべてファクタリング会社に移転することができます。
そのため、売掛債権をしっかりと回収するために必要となる業務の負担が大幅に軽減されます。
もっとも、基本的には償還請求権放棄となっているものの、償還請求権留保での契約も可能です。
ファクタリングにリスク移転効果を求めるならば、契約の際には償還請求権が放棄されていることをしっかりと確認した上で、契約をしなければなりません。
ファクタリングした場合の会計処理
さて、ファクタリングの概要は上記の通りですが、ファクタリングを利用した場合の会計処理はどのように行われるのでしょうか。
ファクタリングはあくまでも売掛債権という資産の売却です。そのため借入ではなく、負債にはならないものです。
このような特殊性があるため、経理の人にファクタリングに関する知識がなかった場合には、ファクタリングの際の会計処理に戸惑うことも多いようです。
また、会社で利用している会計ソフトの中に、ファクタリングという項目の勘定科目がないことからも、仕訳が分からないことがあります。
ファクタリングの会計処理は、次のように行います。
まず、取引によって1000万円の売掛債権が発生した場合です。
借方 | 貸方 |
売掛金 10,000千円 | 売上 10,000千円 |
この売掛債権をファクタリングによって、買取率15%でファクタリング会社に譲渡すると、以下の通りとなります。
借方 | 貸方 |
未収入金 10,000千円 | 売掛金 10,000千円 |

その代わりに未収入金が発生します。
売掛債権も未収入金は流動資産であり、貸借対照表上の流動資産がそのまま未収入金に置き換わるのです。
ちなみに、売掛債権とは営業取引で発生した流動資産であるのに対し、未収入金は営業外の取引によって発生する流動資産のことです。

そして、ファクタリング会社から資金が提供された場合の会計処理は以下の通りです。
借方 | 貸方 |
未収入金 10,000千円 | 売掛金 10,000千円 |

ファクタリングの際の会計処理は、このように行われます。
ファクタリングを行った際には、基本的にはすべてこのような会計処理が行われます。
ファクタリングの仕組みと流れを理解しておけば、会計処理も案外単純なものであることがわかると思います。

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まとめ
ファクタリングは、企業の資金繰り改善や売掛債権管理のために、非常に役立つものです。
また、本校で紹介したように、仕組みと流れさえ理解しておけば、会計処理も難しいものではありません。
ファクタリングを未知のものとして捉えているうちは、ファクタリングという取引そのものも、会計処理も、なんだかよく分からずに尻込みしてしまうかもしれません。
しかし、それほど難しいものではないので、ぜひファクタリングを経営改善に活かしてください。