現在の日本では、生産年齢人口の減少により、人材確保に苦労している会社が増えています。
特に近年、政府が働き方改革を推進し、有給休暇の取得や時間外労働の上限などが法的に規制されています。
これにより、人材不足が深刻化している会社が少なくありません。
これに対処していくためには、助成金を活用しながら負担を軽減し、人材確保に努める必要があります。
本稿では、特に人材確保の支援に特化している「人材確保等支援助成金」について、まとめていきます。
人材確保等支援助成金とは?
厚生労働省の実施している助成金制度には、トライアル雇用助成金やキャリアアップ助成金など、多くの会社で活用しやすい制度もあります。
助成金の活用を始めるとき、このような活用しやすいものから活用していくのは大切なことです。
しかし、このような「多くの会社で活用できる助成金」は、言い換えるならば
「会社ごとの事情をあまり考慮することなく利用できる助成金」
であり、
「支援内容が、必ずしも自社にベストとは限らない助成金」
でもあるのです。
自社にベストな条件の助成金を活用するためには、
- 取り組みの対象となる事業者・労働者の属性が細かく指定されている
- 受給するために必要な取り組みが細かく指定されている
など、対象が限定的な助成金を活用すべきです。

そのような助成金の一つに、人材確保等支援助成金があるぞ。
この助成金は、単に雇用したり、待遇を改善したりするだけで受給できる助成金ではなく、主に
です。
この取り組みを通して、会社は従業員の定着率を向上させることができ、結果的に人材確保につながります。
あくまでも、雇用管理制度や職場環境の整備、設備の導入などを進め、定着率向上・離職率低下によって人材を確保するためのものです。
したがって、人材の雇用やキャリアアップによって人材を確保するものではありません。
コースは全10コース
人材確保等支援助成金は、たくさんのコースに分けられており、わかりにくいという印象を抱いている人も多いことでしょう。
そこで、それぞれのコースの特徴を簡単にまとめてみました。
本稿でまとめたコースは、
- 雇用管理制度助成コース
- 介護福祉機器助成コース
- 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
- 中小企業団体助成コース
- 人事評価改善等助成コース
- 設備改善等支援コース
- 働き方改革支援コース
- 雇用管理制度助成コース(建設分野)
- 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
- 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
の10コースです。

自社に活用できるコースがないか、チェックしてみてね。

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雇用管理制度助成コース
雇用管理制度助成コースは、人材確保等支援助成金の中でも代表的なコースです。
雇用管理制度を新たに導入・実施し、適切に運用することで、実際に従業員の離職率を低下させた会社に助成金が支給されます。
新たに導入・実施する雇用管理制度には、
- 評価・処遇制度
- 研修制度
- 健康づくり制度
- メンター制度
- 短時間制社員制度
などが挙げられています。
このような雇用管理制度の導入を計画し、計画通りに実施したのち、離職率を低下させた会社には、57万円の目標達成助成が支給されます。
生産性要件を満たした場合には、72万円に増額されます。
介護福祉機器助成コース
このコースは、介護事業者向けに設けられているコースです。

介護事業を取り巻く環境は厳しく、介護労働者の身体的負担が問題となっているんだ。
それを軽減するための介護福祉機器を新たに導入し、離職率を低下させた会社には助成金が支給されます。
助成対象経費は、
- 介護福祉機器の導入費用
だけではなく、
- 導入した機器を使うための研修費用
- 機器の保守契約費用
も対象となっています。
助成金の支給は機器導入助成と目標達成助成に分けられており、以下のように設定されています。
【機器導入助成】
これは、介護福祉機器を導入・運用し、導入の効果を把握することで支給されるものです。
助成金の支給額は、取り組みにかかった費用の25%であり、上限は150万円となっています。
【目標達成助成】
目標達成助成は、介護福祉機器の導入・運用の結果、離職率を低下させた場合に支給されます。
支給額は、取り組みにかかった費用の20%、上限は150万円です。
また、生産性要件を満たしている場合には助成率が35%にアップします(上限は150万円のまま)。
介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
このコースは、介護事業者と保育事業者向けのコースです。
介護労働者または保育労働者の賃金制度を整備し、職場への定着を促し、離職率を低下させた会社に助成金が支給されます。
賃金制度の整備とは、労働協約または就業規則を変更することで、
- 現在賃金制度を定めていない事業所で、新たに賃金制度を定める
- 職場への定着を促すために、現行の賃金制度を改善する
ということです。

助成金の支給は、制度整備助成と目的達成助成に分けられているよ。
【制度整備助成】
賃金制度の整備を計画し、計画通りに実施した会社では、50万円の助成金を受給できます。
【目的達成助成】
賃金制度の整備・実施により、離職率を低下させた場合、57万円が支給されます。
生産性要件を満たしている場合には、72万円に増額されます。
この助成を受けてから3年経過するまでの期間、離職率が維持されていた場合には、さらに85.5万円(生産性要件を満たしている場合には108万円)が追加で支給されます。
- 雇用管理制度助成コース
- 介護福祉機器助成コース
- 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
上記の3コースにおいて、目標達成のための離職率の低下目標は、以下のように設定されています。
雇用保険一般被保険者の人数 | 1 ~9人 |
10 ~29人 |
30 ~99人 |
100 ~299人 |
300人 以上 |
低下させる離職率 | 15% | 10% | 7% | 5% | 3% |

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中小企業団体助成コース
中小企業団体助成コースは、平成29年度まで「職場定着支援助成金」のコースの一つとして設置されていたものです。

平成30年度より、人材確保等支援助成金に統合されたものの、制度内容は全く変更されていないわね。
このコースは、事業主団体(同業種の事業主の団体)が、傘下の事業者の人材確保や従業員の職場定着 を支援するために一定の事業(中小企業労働環境向上事業)を行った場合に助成金を支給するものです。
助成金の支給額は、1年間の中小企業労働環境向上事業に要した経費の2/3であり、支給上限額は組合の規模に応じて、それぞれ以下のようになっています。
- 大規模認定組合等(構成中小企業者数500以上):上限額1000万円
- 中規模認定組合等(構成中小企業者数100以上500未満):上限額800万円
- 小規模認定組合等(構成中小企業者数100未満):上限額600万円

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人事評価改善等助成コース
このコースは、生産性向上のために人事評価制度を整備し、定期的な昇給以外にも賃金制度を定め、生産性の向上、賃金の増額、離職率の低下に取り組んだ会社に助成金を支給するものです。
このコースは、制度整備助成と目標達成助成に分けられています。
【制度整備助成】
人事評価制度の整備計画を立て、整備を実施した場合、50万円の助成金が支給されます。
【目的達成助成】
目標達成助成を受給するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 賃金を2%以上増額し、それを引き下げていないこと
- 人事評価制度の実施の翌日から1年間の離職率が、人事評価制度等整備計画の提出前の1年間の離職率と比較して、維持または低下していること(雇用保険一般被保険者が300人以下の場合には離職率の維持、301人以上の場合には1%以上の低下)
- 生産性要件を満たしていること
以上を満たした会社には、目標達成助成として80万円が支給されます。
設備改善等支援コース
このコースは、生産性向上のために設備等を導入することにより、雇用管理改善(賃金アップ等)と生産性向上に取り組む会社に助成金を支給するものです。
助成金は目標達成の際に経費助成を支払うものです。

計画期間を1年間に設定した場合と、3年間で設定した場合で支給額が異なるぞ。
【1年計画】
- 生産性向上のために設備を導入し、賃金を計画前より2%以上アップした場合に、助成金を受給
- 賃金が計画前より6%以上アップしており、なおかつ生産性要件を満たしている場合に、上乗せ助成を支給
【3年計画】
- 設備を導入し、賃金を計画前より2%以上アップし、生産性要件(1年間で0%以上の伸び)を満たしている場合に1回目の助成金を支給
- 賃金を計画前より4%以上アップし、生産性要件(2年間で2%以上の伸び)を満たしている場合に2回目の助成金を支給
- 賃金を計画前より6%以上アップし、生産性要件(3年間で6%以上の伸び)を満たしている場合に上乗せ助成を支給
詳しい助成額は、以下の表を参考にしてください。
計画期間 | 設備導入費用 | 計画達成 (1回目) |
計画達成 (2回目) |
上乗せ助成 | 総額 |
1年間 | 175万円以上 1000万円未満 |
50万円 | – | 80万円 | 130万円 |
3年間 | 240万円以上 5000万円未満 |
50万円 | 50万円 | 80万円 | 180万円 |
5000万円以上 1億円未満 |
50万円 | 75万円 | 100万円 | 225万円 | |
1億円以上 | 100万円 | 150万円 | 200万円 | 450万円 |
働き方改革支援コース
こちらのコースは、働き方改革の推進に伴って生じる、中小企業の負担を軽減することを主な目的としています。
受給の前提として、他の助成金制度である時間外労働等改善助成金の支給を受けていることが要件となっています。

すぐにこのコースを利用できるわけではないんだな。
しかし、働き方改革の推進によって負担が生じ、時間外労働等改善助成金によって対策を図ったものの、なお人材確保に苦労している会社では、働き方改革支援コースを利用するのがおすすめです。
働き方改革支援コースを利用すれば、人材確保のために新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を図った場合に助成金を受給できます。
助成金の支給は、計画達成助成と目標達成助成の2パターンに分けられます。
【計画達成助成】
時間外労働等改善助成金の支給を受けている会社が、雇用管理改善計画を立て、6ヶ月以内に新たに対象労働者を雇い入れた後、雇用管理改善計画を実施した場合に、助成金を受給することができます。
ただし、対象労働者を1年を超えて雇用しており、計画開始前よりも計画完了後の雇用保険被保険者数が多くなっている必要があります。
支給額は新規に雇用した労働者1人当たり60万円(短時間労働者の場合には40万円)となっています。
【目標達成助成】
計画達成助成の支給を受けた後、継続して雇用管理に努め、計画開始から3年経過したときに雇用保険被保険者数が増えており、なおかつ生産性要件を満たしている場合に、労働者1人当たり15万円(短時間労働者の場合には10万円)の支給を受けることができます。
建設分野に特化したコース3つ
人材確保等支援助成金では、建設分野を対象としたコースを3つ設置しています。

これは、建設分野では現場での事故などの影響により、他の業種よりも離職率が高いことから、助成金での支援が充実しているのよ。
人材確保等支援助成金で実施されている3つのコースについて簡単にみていきましょう!
(要件がかなり細かく設定されているため、詳細は厚生労働省のパンフレットを参照してください。)
雇用管理制度助成コース(建設分野)
これは、上記でも解説した雇用管理制度助成コースを、特に建設分野向けに提供するものです。
建設業の中小事業主が、
- 雇用管理改善の導入・実施を通じて若年者及び女性の入職率をアップした場合
- 雇用する登録基幹技能者の賃金テーブル又は資格手当を増額改定した場合

このどちらかの条件を満たした場合、助成金が支給されるんだ。
助成金の内容は、制度整備助成と登録基幹技能者の処遇向上支援助成で異なり、以下の内容となっています。
制度整備助成では、
- 1回目の支給が114万円(生産性要件を満たしている場合には144万円)
- 2回目の支給が85.5万円(生産性要件を満たしている場合には108万円)
となっています。
登録基幹技能者の処遇向上支援助成では、登録基幹技能者当たり年間6.65万円(生産性要件を満たしている場合には8.4万円)となっており、2年目、3年目も同様の条件で受給できます。
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
このコースは、建設業の事業主等が、若年及び女性労働者の入職や定着を促すために取り組む場合、あるいは建設工事における作業についての訓練に取り組む場合に助成金を支給します。
支給額は、取り組みによって3パターンに分けられており、
- 事業主経費助成:取り組みに要した経費の3/5
(生産性要件を満たしている場合には3/4)
(一事業年度につき200万円を上限) - 事業主団体経費助成:取り組みに要した経費の2/3
(建設事業主団体の規模に応じて、一事業年度につき1000万円、2000万円、3000万円の上限あり) - 推進活動経費助成:取り組みに要した経費の2/3
(訓練を実施する人数により上限額に変動あり)
があります。
作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
このコースは、建設業の中小事業主等が、被災三県(岩手県、宮城県、福島県)に所在する
- 作業員宿舎
- 作業員施設
- 賃貸住宅
を賃借する、または自ら施工管理する建設工事現場に、
- 女性専用作業員施設
を賃借する場合に助成金を支給するものです。
このコースでも、取り組みに応じて以下のように設定されています。
- 作業員宿舎等経費助成:取り組みに要した経費の2/3
(賃貸住宅は1人当たり最大1年間まで支給、月額3万円を上限)
(一事業年度当たり200万円を上限) - 女性専用作業員施設設置経費助成:取り組みに要した経費の3/5
(生産性要件を満たしている場合には3/4)
(一事業年度当たり60万円を上限) - 訓練施設等設置経費助成:取り組みに要した経費の1/2(5年間で3億円を上限)

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まとめ
人材確保のためには、人材を増やす、あるいは人材を減らさないという二通りのアプローチが考えられます。
職場への定着率が高く離職率が低ければ、事業を拡大したり、事業環境が大幅に変化したりしない限り、雇用する必要はありません。
むしろ、離職の穴を埋めるために雇用する場合には、採用や教育にコストがかかりますし、経験を積むまでに時間もかかります。

できるだけ長く働いてもらえるように、工夫していくことが大切なんだね!
定着率や離職率に悩んでいる会社では、ぜひ人材確保等支援助成金の活用をおすすめします。
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