人材不足に悩んでいる会社では、人材確保のために様々な取り組みを実施していることと思います。
しかし、根本的な問題を見過ごしているために、十分な効果が得られないことも多いです。
根本的な問題の一つに、離職率の高さがあります。
離職率が高い会社における採用活動は、あたかも穴の開いたバケツに水を溜めようとするようなもので、人材不足がいつまでも解消されません。
離職に至る原因には色々ありますが、本稿では「働き方への不満から起こる離職」を取り上げ、具体的な対処を解説していきます。
離職率は確実に下げていく事ができる
離職率が高い会社は、人材不足に悩むことがほとんどです。
なぜならば、せっかく人材を雇用しても、会社が期待するような貢献もなく離職してしまい、再び採用活動を実施する必要があるからです。
もっと言えば、雇用した人材の指導や教育にかかったコストも無駄になってしまい、財務的な負担や生産性の低下も招きます。
このような離職率の問題について、すでに認識している会社も多いはずです。
そして、離職率を下げるべきだとわかっていても、これまで離職率の高さに悩んできた会社にとって、それを下げることは非常に困難な取り組みに思えることも多いでしょう。
しかし、離職率を下げることは可能です。
もちろん、簡単な取り組みによって、短期間で大幅に低下させることは不可能です。
ですが、一般的な離職の原因を知り、一つずつ解消していくことによって、離職率は確実に低下していくのです。

でも、問題を小さな単位で考えて、少しずつ改善していけばいいんだよ。
若年者の離職率低下こそ重要
離職が起こる原因には、様々なものがあります。
それを知るためには、厚生労働省による「若年者雇用実態調査」の結果が参考になります。
この調査は若年者の離職を対象としており、若年者以外は対象としていません。
しかし、企業が長期にわたって人材を確保していくためには、若年者の離職率の改善は避けて通れません。
なぜならば、若年者はこれから何十年も労働に従事していく存在だからです。
中高年者の従業員は、若年者よりも先に退職します。
長く働いてくれる若年者を離職させることなく、中高年層の技術を継承させ、新陳代謝を促し、時代にマッチするよう変えるべき部分は変えてこそ、長期的に安定した経営が実現するのです。
したがって、厚生労働省の若年者雇用実態調査をよって若年者の離職の原因を知り、その中から自社に該当するものをピックアップし、一つずつ解決していくことが重要です。

若年者の離職の理由
平成25年度の調査では、若年者の離職の理由は以下のようになっています。
グループ | 初めて勤務した会社をやめた主な理由(複数回答3つまで) | 割合(単位:%) | 合計(単位:%) |
A | 仕事が自分に合わない | 18.8 | 28.4 |
自分の技能・能力が活かせられなかった | 7.9 | ||
責任のある仕事を任されたかった | 1.7 | ||
B | 会社に将来性がない | 12.4 | 80.9 |
賃金の条件が良くなかった | 18.0 | ||
労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった | 22.2 | ||
不安定な雇用状態が嫌だった | 8.7 | ||
人間関係が良くなかった | 19.6 | ||
C | 健康上の理由 | 8.2 | 33.4 |
結婚・子育てのため | 9.5 | ||
介護・看護のため | 0.9 | ||
独立して事業を始めるため | 1.0 | ||
家業を継ぐまたは手伝うため | 1.1 | ||
倒産、整理解雇または希望退職に応じたため | 4.4 | ||
雇用期間の満了・雇い止め | 4.4 | ||
1つの会社に長く勤務する気がなかった | 3.9 | ||
D | その他 | 16.9 | 26.6 |
不明 | 9.7 |
この表から、若年者が離職する理由として多いもの、少ないものが良く分かります。
合計が100%になっていないのは、3つまで回答できるためです。
この表では、離職の理由ごとに大まかなグループ分けをしています。
それぞれのグループは、
- A・・・働き方に不満があり、離職につながっているもの
- B・・・会社の雇用環境に不満がある
- C・・・離職せざるをえない特殊な理由を抱えている
- D・・・その他の理由
を意味しています。

※Bグループ、Cグループへの対処について、詳しくはこちら

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原因を把握する大切さ
離職率を下げようとしても下げられない会社では、原因を深く考えることなく、漠然と取り組んでいることが多いです。
例えば、次のようなケースです。
- 賃金を上げれば離職率は下がるだろうと考えて、全員一律で賃金を上げた。
しかし、離職の真の原因は賃金の金額にあるのではなく、職務に応じた賃金が正確に支払われていないことにあったため、賃金の不公平性は改善されず、離職率は低下しなかった
- 職場の人間関係を理由に辞めた従業員がいたため、コミュニケーションを促し、人間関係の改善に取り組んだ。
しかし、人間関係悪化の真の原因は、正確な能力評価がなされず、単に勤続年数が長い無能な従業員が上司となり、部下である有能な従業員に不的確な指導をしていることが原因であったため、離職率は低下しなかった

したがって、離職の原因に一つずつ対処していくためには、自社での離職がどの原因によって頻発しているかを正しく把握する必要があります。
これを特定すれば、原因ごとに対処していくことができます。
具体的には、以下のような対処が考えられます。

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Aグループ「働き方への不満」の対処例
Aグループは、働き方への不満です。
具体的には、会社が従業員に求める働きと、従業員が会社に求める働きが合っておらず、従業員が望む働き方ができていないことによって、離職に至るケースです。
Aグループの対処の難しいところは、
- 会社が従業員に求める働き方に問題がある
- 従業員が会社に求める働き方に問題がある
という両方のケースが考えられることです。
このギャップを見落としていると、離職率を下げようとしても、的外れな取り組みになる恐れがあります。
そのため、面談などを通じて会社側と従業員側がしっかりと対話し、会社の求めていることを伝え、また従業員の求めていることを把握し、ギャップを埋めていくことが重要となります。
仕事が自分に合わない
仕事が合わないと考えて離職する従業員に対しては、具体的に何が合わないと感じているのかを把握します。
把握した内容に応じて、指導や配置転換を実施することで、離職を防ぐことができます。

適切な指導や配置転換によって、離職率を大幅に下げられる可能性があります。
例えば従業員が、
「営業マンとして入社した。しかし、営業の仕事が自分には向いていないとわかった。だから、この仕事は合っていない」
と考えているとします。このような理由で離職を考えるケースには、
- 知識や経験が不十分な段階で判断している
- 知識や経験が十分備わった段階で判断している
という二通りが考えられます。
従業員が十分な知識・経験を持たずに離職を考えているならば、教育を施すことが効果的です。
この例であれば、営業の仕事に役立つ研修を受けさせたり、先輩従業員の営業のフォローに就かせたりすることで、知識や経験を積む機会を与えるのです。その結果、
「仕事が合わないのではなく、知識や経験が不足していただけなのだ。」
と気づき、離職を思い直す可能性があります。
また、それなりに指導したうえで合わないと感じている場合にも、それまで会社が指導しながら感じてきたこと、従業員自身が感じてきたことなどを話し合えば、合う仕事が見つかるかもしれません。
例えば、
「営業マンには向いていなかったかもしれない。しかし、これまでの営業の経験から、経理部との連携で営業部が働きやすくなることも分かった。
ならば経理部で働き、営業部をサポートする立場に回ってみてはどうか。」
などと考えて、配置を転換するのです。
営業部での仕事が合わないとしても、他の部門の仕事が合う可能性は十分にあります。
離職を受け入れるのは、配置転換を実施してからでも遅くはありません。

自分の技能・能力が活かせられなかった
次に、技能や能力が活かせられないことによって、7.9%従業員が離職しています。
古いタイプの経営者であれば、「若いうちは技能や能力を主張するのではなく、言われたことをやればいい。そうすれば結果はついてくる。若いくせに、自己アピールが過ぎる」と思う人もいるでしょう。
しかし、技能や能力を活かせないことは、離職の大きな原因となります。

人間は、誰しも承認欲求を持っているものであり、技能や能力、性格、容貌などを認められることを喜び、認めてくれる人の下で働きたいと思うのです。
古代中国の格言にも、「武士は己を知る者のために死す」という言葉がある通り、いつの時代も、人は認めてほしいと感じているものなのです。
会社が、従業員の技能や能力が活かしきれていないということは、従業員の技能や能力を認めていないということでもあります。
これが欲求不満につながります。
特に、従業員が様々な経験をしたり、大学で学んだりしたことで身に着けた技能・能力であれば、その技能・能力がアイデンティティの一部になっています。
それが活かされないということは、従業員のバックボーンを無視しているとも言えます。
これが、離職につながることが多いです。
具体的には、
「大学で学んだマーケティングの知識を活用したくて、販売課に就職した。
しかし、人手不足を補うために現場で作業したり、営業のフォローをしたり、マーケティングの知識はほとんど活用する場がない。
何のために採用されたのか分からない。学生時代にスポーツをやっていたから、縦社会に慣れていて、体力もある“便利屋”として採用されたのだろうか?」
といった不満・不信感です。

従業員の認識(マーケティングに強みがあるという認識)が勘違いでなければ、従業員の技能・能力を活用できず、有能な人材を流出させているのですから、大きな損失となります。
この例で言えば、マーケティングを得意とする人材を、現場作業や営業のフォローなどに従事させることは、技能・能力を正しく評価した結果とは言えません。
やりがいを抱かせることもできず、離職するのも時間の問題でしょう。
離職するまでの期間、この従業員が低いモチベーションで働けば、職場の雰囲気の悪化や、生産性の低下にもつながります。
このような場合には、会社が従業員の技能や能力をしっかりと把握し、活用する方法を考えることが重要です。
従業員の離職を防ぐためには、これまでに把握した技能や能力を正しく評価し、それを活かせる職務に就かせるべきです。
特に、なし崩し的に職務が拡大しない環境を作ることが大切です。なし崩し的に職務が拡大すれば、従業員は
- 「何をやっているのか分からない」
- 「何を期待されているのか分からない」
- 「能力をどう伸ばしていいか分からない」
- 「働き甲斐もないし、将来も見えない」
などの不満を抱きます。
能力を活かせる職務に限定して従事させれば、このような不満は生まれにくくなります。
経験を積ませるために、一見能力に関係がない職務を与えるとしても、間接的に関係していることを理解させることが重要です。
これにより、従業員は自分のやっていること、求められていることが把握でき、よりよい仕事のための工夫や能力向上にも努めやすくなります。
職務限定正社員制度を新たに規定し、有期契約労働者を職務限定正社員に転換した場合には、キャリアアップ助成金の正社員化コースで追加助成も受給できるため、積極的に検討したいものです。

責任のある仕事を任されたかった
最後に、極めて少数派の意見ですが、責任のある仕事を任されないことによって、離職する場合があります。
これは、能力や技能が優れており、責任ある仕事をこなせる自信にあふれている従業員が抱きやすい不満です。
しかし、若年者の従業員には、責任の大きな仕事をさせられない会社がほとんどです。
もし、大きな問題を起こしてしまったとき、経験に乏しい若年の従業員では的確な対処ができず、傷を広げてしまう可能性も高いためです。
したがって、若年の従業員に責任ある仕事を任せないという判断は、間違いではありません。
それによって起こる離職を防ぐためには、単に責任ある仕事を任せないのではなく
- 責任ある仕事の一部を担当させる
- ごく一部に限定して責任を与える
- 責任ある仕事を指揮するリーダーの近くで働かせたりする
ことが効果的です。
例えば、プロジェクトのごく一部で責任を担わせるのであれば、失敗しても周りがフォローでき、大きな支障にはなりません。

また、責任の大部分を担うリーダー役の近くで仕事をさせ、コミュニケーションを促すことによって、責任のある仕事を任される意味を学ぶことができます。
これにより、
「責任のある仕事を任されたかった。しかし、任されなかった」
と考えて離職するのではなく、
「責任のある仕事を任されたいが、若年者の手に負えるものではなく、今はまだその段階にない。
いずれ、責任のある仕事を任される立場になれるよう、頑張っていきたい」
と考え、定着を促すことができます。
もちろん、このような考えを促して離職を防ぐためには、その従業員の成果をしっかりと評価し、成果に応じて少しずつ責任の範囲を広げていくことも重要です。


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助成金の活用も加速
厚生労働省の調査によれば、若年者が入社3年以内に「仕事が合わない」「技能・能力を活かせない」「責任ある仕事を任されない」という理由で離職してしまう割合は、28.4%に上ります。
このデータは複数回答が可能となっているため、回答が重複していることも考えられますが、これらの原因を防ぐことによって離職率低下に大きな効果が期待できることは間違いありません。
離職率が低下すれば、新規に雇用して人材不足をカバーする必要が少なくなり、経営が安定します。

助成金の多くは、受給までに一定期間を要します。
取り組みの最中に、対象労働者が離職すれば受給できなかったり、離職率に関する要件を満たせずに受給できなかったりするため、離職率の高さは助成金活用の妨げとなるのです。
従業員の適正によって仕事を与え、技能や能力の活用を模索し、適度に責任を与えることで離職率が低下すれば、離職や離職率を原因に助成金が受給できないケースが減ります。
助成金によって着実に負担を軽減しながら、人材確保や生産性向上に取り組み、経営を安定させることもできるのです。
離職率を低下させることの延長線上に、助成金の活用や、助成金活用によって好循環を生み出すことも見据えて、しっかりと取り組んでいきましょう。


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まとめ
本稿で解説した通り、仕事が合わない、技能や能力が活かせない、責任ある仕事ができないという理由で離職する人は多いです。
このような原因に対処していくことで、人材不足を解消し、助成金の活用も加速します。
自社で離職が起こっている原因を探ったとき、本稿で取り上げた原因が大きな問題になっているならば、ぜひ改善に取り組んでほしいと思います。
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