事例から学ぶ、業務改善助成金の活用方法

生産性の低下に悩んでいる会社は、生産性向上にコストをかける余裕がなく、やむを得ず低い生産性に甘んじていることが多いものです。そ

のような会社では、生産性向上によって助成金を受給できる「業務改善助成金」を利用し、負担を軽減しながら生産性向上に取り組むのがおすすめです。

この助成金では、事業場内最低賃金の引き上げも要件となっているため、生産性向上と同時に、働き方改革によって進められている、最低賃金の引き上げに対応することにもつながります。

本稿では、業務改善助成金の具体的な利用について、実際の事例をもとに学んでいきましょう。

業務改善助成金とは

政府が実施している助成金は、主に中小企業を対象として、労働環境の整備や生産性向上に取り組んだ会社に支給されるものです。

働き方改革が推進されている昨今では、働き方改革による企業の負担を軽減することを目的して、様々な助成金が支給されています。

働き方改革によって、すでに有給休暇の付与の義務化時間外労働の上限規制などが実施されており(時間外労働の上限規制は、大企業は2019年4月1日施行、中小企業は2020年4月1日施行予定)、会社では労働力の確保が難しくなってきています。

このような改革に対応する方法の一つに、生産性の向上があります。

労働者1人当たり生産性が10の会社において、働き方改革による労働時間の減少によって生産性が8に低下したならば、業務効率化などによって生産性向上に取り組み、再び生産性を10に引き上げればよいのです。

したがって、働き方改革に伴う助成金では、業務改善・生産性向上も大きなテーマとなっているよ!

そのような助成金の一つに、「業務改善助成金」があります。

この助成金制度は、生産性向上に取り組んだのち、事業場内最低賃金を引き上げた会社に対して、生産性向上に要した経費を助成するものです。

支給対象となるのは、中小企業または小規模事業者に限定されており、また事業場内最低賃金が1000円未満の会社に限られます。

そのような会社で、事業場内最低賃金を引き上げた場合に、以下のような助成金を受給することができます。

事業場内最低賃金の引き上げ額 助成率 引き上げる労働者の数 上限額 助成対象の事業場
30円コース(800円未満) 4/5(9/10) 1~3人 50万円 事業場内最低賃金が800円未満の事業場かつ
事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が
30円以内及び事業場規模30人以下の事業場
4~6人 70万円
7人以上 100万円
30円コース(800円以上) 3/4(4/5) 1~3人 50万円 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が
30円以内及び事業場規模30人以下の事業場
4~6人 70万円
7人以上 100万円

※助成率のカッコ内は生産性要件を満たした場合。

業務改善助成金のメリットは、生産性向上と賃金アップに同時に取り組むことができる点です。

働き方改革によって、最低賃金の引き上げが続いているため、賃金引き上げによる人件費の負担に悩んでいる会社も多いはずです。

そこで、単に賃金をアップするのではなく、業務改善助成金を利用して生産性の向上に取り組み、なおかつ最低賃金引き上げに対応していくことにより、働き方改革の波に乗ることができるのです。

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活用事例に学ぶ

とはいえ、業務改善助成金に興味を抱いたとしても、実際にどのように取り組めば生産性向上につながるのか、いまいちわからない会社も多いと思います。

せっかく取り組んでも、生産性向上の効果が得られなければ、事業場内最低賃金を引き上げられるだけの余力は生まれてきません。

経費助成を受けるために賃金を引き上げると、それだけ経営は苦しくなってしまいます。

つまり、業務改善助成金を本当に活用していくためには、生産性をしっかり向上させることが大前提となるのだ。

この前提のもとに取り組み、生産性要件も満たした場合には、より多くの経費助成を受給することにもつながります。

そこで、どのように取り組めば生産性向上につながるのか、具体例によって学んでいくことが役立ちます。

事例1:多機能付きレジスターの導入と従業員のIT研修の実施

業務改善助成金の経費助成の対象は、生産性向上のための設備・機器の導入、従業員への教育などです。

ある飲食業者の例を見てみましょう。従業員は5人以下という、かなり小規模なA社の例です。

A社は、収益の拡大を目指していたものの、生産性が低いことが悩みでした。

小規模ゆえに資金繰りにも余裕がなく、レジ作業や集計業務は従業員が電卓を使った計算によって対応していたことにより、業務が非効率になっていたのです。

そこでA社は、業務改善助成金の利用によって、生産性向上を図りました

集計レポート機能と顧客管理機能がついたレジスターを導入し、また従業員に研修を受けさせてレジスターの使い方を学ばせることにより、精算業務と管理業務の効率化を図ったのです。

これにより、導入前と比較して、レジ作業や集計業務、顧客情報の確認や管理にかかる作業時間を大幅に短縮することができ、サービスの充実に労力を振り分けられるようになりました。

サービスの向上とともに、提供するメニューなども充実させ、また顧客管理によって新規顧客の拡大を図った結果、業績の向上につながりました。

A社では、事業場内最低賃金を40円(平成27年度の事例のため)引き上げ、レジスターの導入と従業員のIT研修にかかった経費の助成を受け、少ない負担で生産性向上を実現しました。

事例2:POSレジシステムの導入

B社は、小規模なクリーニング業者です。

B社では、価格以外で競争力をつけるべく、サービスの利用の際にポイントを付与する取り組みを始めたのですが、いざポイント制度を導入してみると、以下のような問題が起きてきました。

  • これまで存在しなかった「ポイント」という概念が加わり、顧客管理に混乱が生じ、ポイントの計算・付与のミスが起きた
  • この混乱により、顧客をレジで待たせる時間が長くなり、顧客満足度の低下にもつながった
  • 顧客満足度の低下に対処するために、ポイントの加算などで対応し、売上を圧迫していた
  • 新制度への慣れや従業員の能力によって、業務効率に大きな差が生じた
B社は、計算ミスや待ち時間を解消すること、従業員の業務効率を標準化することを考え、業務改善助成金により、POSレジシステムを導入しました。

通称POSレジと呼ばれるものですが、これは顧客と金銭のやり取りをした時点で、販売情報が管理されるシステムを搭載したレジのことです。

POSレジを導入したことで、顧客ごとに販売情報を蓄積できる体制を作り、ポイントの計算・付与もスムーズになりました。

また、POSレジの操作を習得しさえすれば、全ての従業員の業務効率が標準化されます。

これにより、B社ではポイントの計算にかかる時間を短縮でき、計算ミスも発生しなくなりました。レジ業務1回あたりの接客時間は、半分も削減することができたのです。

顧客満足度の低下も起こらなくなったことで、ポイントの加算なども不要となり、売上への圧迫も解消されたのだ!

このような生産性向上によって業績も上向き、店舗と工場の連携を改善したり、従業員の資格取得を奨励したり、顧客サービスの向上を図ったりすることにより、B社はさらなる生産性向上を目指しています。

事業場内最低賃金は50円(平成27年度の事例のため)引き上げ、POSレジ導入費用の経費助成も受けることができました。

事例3:高性能クッキングマシンの導入

食品製造業のC社は、消費者の嗜好の変化に柔軟に対応した商品の提供を強みとしていました。

C社で提供した商品が好調な時に、大量受注を受けることがあったものの、C社の生産ラインの生産能力の限界を超えてしまうことがありました。

このような場合、従業員の残業時間が大きく伸びてしまうほか、残業によっても受注を消化しきれず、収益機会の損失も起きていました。

働き方改革が推進されている今、時間外労働の上限規制も進んでいるため、やがて残業による対応も厳しくなってくるでしょう。

そこでC社は、業務改善助成金を利用することで、大型の高性能クッキングマシンを導入しました。これは高価な設備ですが、中古の設備でも助成の対象となっているため、C社は中古のマシンを導入しました。

その結果、生産時間が導入前の1/2に短縮され、さらに生産量を3倍まで伸ばすことができました。

生産性が大幅に向上したことで、生産ラインの人員を他の業務に割り当てることも可能となり、柔軟な人員配置による業務効率化にもつながりました。

さらに、導入前はあまりにも忙しく、会議を不定期的に実施するのみでしたが、毎月実施できるようになりました。

これにより、新商品や改善点の検討を行う機会が増え、さらなる生産性向上・業務改善が進んでいるのよ!

事業場内最低賃金を35円(平成29年度の事例のため)引き上げ、経費助成も無事に受給することができました。
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事例4:経営情報一元管理システムの導入

D社は、物品や建設機械・器具などのリース業者です。

D社も生産性の低さに悩んでいました。特に、様々な情報を一元的に管理するシステムがなく、売上管理・仕入管理・原価管理などを別々のシステムで管理していることに問題がありました。

各情報を複数の従業員が手動で入力し、その結果を互いに照らし合わせることで管理していたため、非常に手間がかかっていたのです。

また、ミスによってシステム間の整合性が取れなくなり、混乱をきたした場合には、ミスを特定するために無駄な労力を費やすこともありました。

そこで、業務改善助成金を利用して、経営情報を一元管理できるシステムを導入しました。

これにより、それまでバラバラに管理されていた情報をまとめて管理できるようになりました。

入力も一人の従業員がこなせばよいため、他の業務に労働力を割り当てることも可能です。

また、システム間を行き来して情報管理する手間もなくなり、情報処理量は3倍に向上しました。

情報管理にかかる時間が短縮され、生産性が向上したことにより、事業場内最低賃金を50円(平成27年度の事例のため)引き上げることができました。もちろん、経費助成も受給できました。

事例5:新型ボイラーの導入

E社は、共同浴場を営む会社です。

それまで、旧式のボイラーを利用していたE社では、温度管理のために毎日20~30回、ボイラー室を確認する必要がありました。

従業員の業務は受付と温度管理ですが、受付はほとんど労力がかからないため、受付業務と温度管理に従業員を一人ずつ配置するのではなく、一人の従業員がどちらもこなす体制です。

このため、

  • 受付と温度管理を掛け持ちすると、頻繁に受付とボイラー室を往復する必要があるため、従業員の負担が大きくなり、従業員の定着率が低く、常に人材不足である
  • お客さんが受付に来た時に、従業員がボイラー室確認のために受付を空けており、受付業務がスムーズにいかないときがある
  • スポットで温度管理をすることになるため、常に温度が常に一定ではなく、無駄な燃料を使ってしまう

などの問題が起こっていました。

そこでE社は、業務改善助成金を利用して新型ボイラーを導入しました。
この新型ボイラーは、パソコンと連携させることで、パソコン上で温度管理ができます。

つまり、従業員は受付にいながら、手元で温度管理ができるようになるため、受付とボイラー室を往復する必要がなくなります

これにより、従業員の業務負担が軽減され、職場への定着率が向上したのだ!

また、従業員が常に受付にいる状態となり、受付業務がスムーズになったほか、温度を常に一定に保ちつつ、燃料費を削減することにもつながりました。

温度管理を効率化したことによって生産性が向上し、事業場内最低賃金を40円(平成27年度の事例のため)引き上げ、経費助成も受給することができました。

まとめ

本稿では、業務改善助成金の5つの事例を紹介していきました。

中小企業や小規模事業者では、システムや設備に投資することができず、古いものを使い続けることによって、生産性が低下しているケースが少なくありません。

そのような会社で、新型の設備や大型の設備を導入すれば、目に見えて生産性が向上します。

業務改善助成金に取り組む効果は大きいと言えるでしょう。

古いシステム・設備を使っている会社では、いずれ更新しなければならないでしょう。

取り組むのが早いか遅いかの違いだけであり、ならばできるだけ早めに取り組むべきです。

その際には、業務改善助成金によって負担を軽減しましょう。

これにより、政府が進めている最低賃金の引き上げに対応することもできるため、まさに一挙両得の取り組みとなります。

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