労働人口の減少に対応するために、政府は、外国人労働者の受け入れを徐々に進めています。
今年4月には改正入管法が施行され、特定技能ビザが新設されることとなりました。
すでに、大企業などでは外国人労働者を取り込むための動きが活発化しています。
国内の労働人口の減少は改善の見通しが立たず、今後は日本経済における外国人労働者の重要性が高まると考えられます。
では、中小企業が外国人労働者の雇用に取り組むにあたって、活用できる助成金にはどのようなものがあるのでしょうか。
本稿で、人材開発支援助成金の活用について学んでいきましょう。
外国人労働者と人材開発支援助成金
人材問題に取り組みにあたり、今や助成金の活用は常識となりつつあります。外国人労働者の雇用に取り組んでいく際にも、助成金を活用していくことが大切です。
なにしろ、外国人労働者を今のように積極的に受け入れていくことは、これまで前例がありません。企業も政府も、試行錯誤しながら取り組むほかない状況です。
豊富な資金力、多くのノウハウ、優れた頭脳などを揃えている大企業では、試行錯誤しながら、外国人労働者をうまく取り入れていくこともできるでしょう。
しかし、そのような余裕がない中小企業では、試行錯誤ばかりしているわけにはいきません。
もちろん、試行錯誤は避けられないでしょうが、試行錯誤による負担の増大をできるだけ避け、着実に効果あげていくことが重要です。

だからこそ、助成金を活用して負担を軽減していくことが欠かせないのだ!
外国人労働者の雇用に活用できる助成金には色々なものがありますが、中でも人材開発支援助成金に興味を抱く経営者は多いと思います。
外国人労働者を雇用する際の大きな問題と言えば、外国人労働者の日本語力に問題があったり、感覚にズレがあったり、技術に格差があったりすることです。
人材開発支援助成金でも、外国人労働者に実施する訓練でも、日本人労働者への訓練と同じように、助成金を受給することができます。

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ややこしい人材開発支援助成金
訓練の実施によって、外国人労働者がより役立つようにしていきたいものですが、人材開発支援助成金を外国人労働者に適用するとき、解釈がややこしい部分があります。
なぜややこしいのかと言えば、政府が人材開発支援助成金で目的としていることと、外国人労働者を雇う企業の認識にズレがあるからです。
例えば、
- 日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習、話し方教室など、趣味教養としての要素が多い訓練
- マナー講習など、社会人としての基礎的なスキルを習得するための講習(職業または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの)
などの訓練・研修は助成の対象とはなりません。訓練の対象が外国人労働者でも同様です。
しかし、経営者の中には「日本人労働者にとっては普通のことでも、外国人労働者にとっては普通ではない」と考え、助成金が受給できると思い込んでいる人も少なくありません。
このような、政府の意図と企業の認識のズレが、ややこしさの原因になっているのです。

しかし、基本的な考え方を押さえてしまえば、判断は難しくないはずだ!
すなわち、政府の意図に沿った取り組みでなければならないこと、そのためには「当然やるべき取り組み」ではなく「プラスアルファの取り組み」でなければならないことです。
これを基準として考えることで、人材開発支援助成金を受給できるかどうかが分かりやすいと思います。
参考として、以下に勘違いしやすいものを挙げていき、皆さんの参考に供したいと思います。

基本的には、日本人労働者も外国人労働者も受給要件は同じと考えよう。

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受給できない取り組み
当然やるべき訓練を実施した場合には、人材開発支援助成金を受給することはできません。
例えば、法令などで義務付けられている講習がありますが、これは法令に基づいて当然実施すべき訓練・講習・研修であり、これによって助成金を受給することはできません。
これは、人材開発支援助成金に関する厚生労働省のパンフレットを見ても明らかで、資料には
法令等で講習等の実施が義務付けられており、事業主にとっても、その講習を受講しなければ業務を実施できないものは助成対象外となります
(例)労働安全衛生法第59条第3項の特別教育、第60条の職長等の教育、第99条2の労働災害防止業務従事者労働災害再発防止講習等
と明記されています。
これは、対象者に「外国人労働者」という要素が加わっても同じことです。
外国人労働者であっても、業務に従事させるにあたって守るべき法律があり、そのために講習や訓練が必要です。
安全衛生や労災防止のための教育にあたっては、
- 外国人労働者が内容を理解できる方法によって、安全衛生教育を実施する。このとき、使用する機械や原材料などの危険性や有害性、取り扱い方法などについて、きちんと理解できるように説明する
- 外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解することができるようにするため、必要な日本語や基本的な合図等を習得させること
が必要となります。
しかし、安全衛生や労災防止のためのこれらの取り組みは、法律に基づいて当然実施されるべき取り組みです。
すなわち、
事業主は外国人労働者について、
- 労働関係法令及び社会保険関係法令は国籍にかかわらず適用されることから、事業主はこれらを遵守すること。
- 外国人労働者が適切な労働条件及び安全衛生の下、在留資格の範囲内で能力を発揮しつつ就労できるよう、この指針で定める事項について、適切な措置を講ずること。
という厚生労働省の方針に沿って取り組む必要があるため、これらの講習や訓練の実施は助成金の支給対象とはなりません。
基本的な日本語能力に問題がない外国人労働者でも、業務のための用語はわからないことが多く、その場合には日本語教育としての要素も含まれます。
考え方によっては、外国人労働者に対するこれらの講習・教育は、日本人労働者に実施する訓練よりも手間がかかり、会社にとってはプラスアルファの負担があるとも考えられます。
しかし、法令で義務付けられていることに取り組むのですから、人材開発支援助成金の対象とはなりません。

義務づけられている取り組みに助成金を支給していたら、財源が枯渇しちゃうしね。

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受給できる取り組み
受給できない取り組みを見れば、外国人労働者に対する訓練も、日本人労働者に対する訓練も、判断基準はほぼ変わらないことが分かると思います。
外国人労働者を雇用することで生じる実質的な負担と受給要件は、切り離して考える必要があります。
受給できる取り組みも同じように考えます。
日本人労働者でも受給できる取り組みであれば、外国人労働者でも受給できるのです。
なお、その訓練や研修が受給対象になるかどうかについては、明確な線引きはされておらず、受給できる可能性がある・受給できる可能性がないという考え方をします。
受給できる取り組みと組み合わせる
ここでポイントとなるのは、訓練計画の内容とバランスです。
厚生労働省の判断では、訓練一部に支給対象外の取り組みが含まれていても、訓練の軸が支給対象の取り組みであれば、訓練全体に対して助成金を支給するケースがよくあります。
例えば、外国人労働者の雇用で問題となる日本語力について、
- 業務に必須の日本語能力の訓練(日常会話レベルの日本語訓練など)
- 法令で定められている日本語の訓練(労災防止のための日本語訓練など)
などのみ実施する場合には、助成金は支給対象外となります。
しかし、この範疇に収まらない訓練が主体となっていれば、その按分にもよりますが、同じ日本語教育でも受給できる可能性があるのです。
これについて、厚生労働省の人材開発支援助成金に関するQ&Aが参考になります。このQ&Aの資料には、以下のような記載がみられます。
Q、海外顧客とのコミュニケーションに必要な英語力を身につけさせるために英会話学校での英語研修を予定しています。日常会話とビジネス会話が 混在する内容ですが助成対象になりますか。
A、職務に直接関連する内容の訓練であり、日常会話程度の語学の習得のみを目的とした訓練でなければ対象となります。
例・・・訓練時間30時間
- うち日常会話レベルの研修10時間
- うち専門的なビジネスレベルの研修20時間
→専門的なビジネスレベルの研修が20時間以上 となるので、研修内容次第では助成対象となる可能性があります。
Q、グローバル人材育成訓練の対象となる訓練は、どのような訓練ですか。
A、具体的には次のような訓練が考えられます。
- 語学力・コミュニケーション能力向上のための講座
- リーダーシップ、文化理解などグローバルな行動特性を養成する講座
- 国際法務、国際契約、海外マーケティング、地域事情に関する講座
Q、新たに雇い入れた社員に海外拠点との折衝業務に従事してもらうためタイでタイ語の語学研修を行います。5日間 35 時間の短期間の研修ですが、このような研修は対象になりますか。
A、対象となります。海外で実施する訓練についても 30 時間以上であればグローバル人材育成訓練として助成対象となります。
このように、同じ語学教育でも、専門的な内容が中心となっている場合、プラスアルファの部分でスキルアップになる場合、新規事業展開に伴う人材育成などであれば、助成金の支給対象となる可能性が高いのです。

考え方次第で、支給対象外になったり支給対象になったりするぞ。
具体的な活用例
外国人労働者の雇用に伴う法令でも、安全衛生や労災防止に伴う日本語教育は義務付けられており、助成金は支給対象外です。
しかし、そのレベルを超えた部分での日本語教育は義務付けられておらず、プラスアルファの部分で企業が取り組んでいくものですから、人材開発支援助成金が利用できる可能性があります。
判断しづらいのがマナー訓練ですが、日本人労働者に対するマナーの訓練でも、
- 社会人としての基本的なマナーの訓練→支給対象外
- 高級ホテルでのハイクオリティなマナーの訓練→支給対象
というように判断されることがあります。
線引きは不明確ですが、支給対象となる可能性はあるため、その訓練の専門性について、訓練計画でよく説明する必要があるでしょう。

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まとめ
本稿で解説した通り、外国人労働者への訓練でも、基本的な訓練は助成の対象になりません。いかに専門性を加えつつ、様々な訓練を実施していくかが重要となります。
専門性を加えながら教育していくことは、難しいと感じる会社もあるでしょう。
しかし、今後は外国人労働者の受け入れは広がっていくはずですから、国籍に関わらず期待値の高い労働者に訓練を実施するために、外国人労働者への訓練についても考えていく必要があります。
人材開発支援助成金のように、受給対象の線引きが曖昧な助成金は、計画の組み立て方次第で受給できる可能性が高まります。
外国人労働者に対する訓練でも、柔軟に活用し、応用し、受給を狙っていきましょう。
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