中小企業の多くが、人手不足に悩んでいることと思います。
中には、一部の有能な従業員によって成り立っている会社もあるはずです。
そのような会社で、大切な従業員が重い病気にかかり、「離職もやむなし、新規雇用を検討する」、「治療と仕事の両立を図り、会社にとどまってもらう」という二つの選択を迫られたとき、どちらを選ぶべきなのでしょうか。
当然、後者を選択するに越したことはありませんが、そのための環境は整備できているでしょうか。
本稿では、治療と仕事が両立できる環境の重要性と、環境整備に活用できる助成金について解説していきます。
働き方改革の背景
近年、政府が取り組んでいる働き方改革の目的は、「多様な働き方ができる社会を作ること」です。
では、なぜ多様な働き方ができる社会を目指しているのでしょうか。
それは、日本の人口はすでに減少を始めており、今後も増加に転じるとは考えられないからです
これはすなわち、生産年齢人口も減少し、ひいては日本の経済成長が停滞・後退することも意味しています。
経済の成長の要素は、
- 労働者一人当たりの生産性は変わらないものの、労働人口が増えることによって、生産力が高まり、経済が成長する
- 労働人口は変わらないものの、労働者一人当たりの生産性が高まることによって、生産力が高まる
のいずれか、あるいは両方です。
生産年齢人口が減少している今、日本の経済成長のためには、労働人口の減少を極力とどめつつ、生産性の向上を図る必要があります。
このような理由から、政府は働き方改革・一億総活躍をスローガンとして、高年齢者、女性、障害者、傷病者なども働きやすい環境の整備を目指しているのです。

治療と仕事の両立を推進している
色々な事情がある中で、多くの人が働きやすい社会を作っていくにあたり、政府が力を入れている取り組みの一つに、「治療と仕事の両立支援対策事業」があります。
その名の通り、病気を理由に働きづらい事情を抱えている人が、治療と仕事を両立できる社会を作っていこうとするものです。
これは、平成25年度に始まった取り組みですが、この中で企業を対象としたアンケート調査を見ると、病気を抱えながら仕事をしている人が非常に多いことが分かります。
アンケート結果によれば、疾病を理由として1ヶ月以上連続して休業している従業員を抱える企業の割合は、メンタルヘルスが38%、がんが21%、脳血管疾患が12%となっています。
また、「平成22年国民生活基礎調査」に基づく推計によれば、仕事を持ちながらがんで通院している人の数は、32.5万人にも上ります。
さらに、一般的な健康診断の結果、血圧や血中脂質などから脳・心臓疾患のリスクがあるとされる人の割合は増加の一途をたどっており、平成26年には53%に上っています。
この結果から、治療と仕事の両立が難しい病気にかかる人が増えており、今後さらに増えていく可能性が高いことがわかります。
治療と仕事の両立を支援していかなければ、両立できずに離職する人が増え、労働人口は減少し、経済成長にも悪影響をもたらすことになります。
だからこそ、政府は治療と仕事の両立支援対策事業を通して、対策を図っているのです。

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中小企業こそ両立支援に取り組むべき
以上のような政府の姿勢、社会的背景は、企業活動とも深く関わっています。
特に中小企業では、大きな影響を受けると考えられます。
何と言っても、中小企業は経営に余裕がないことが普通であり、人材確保も難しく、労働力不足に陥っていることが多いです。
会社によっては、一部の有能な従業員や有資格者によって、事業が成り立っていることも多いでしょう。
そのような従業員が離職してしまうと、同じような人材を再び獲得することは難しく、経営に大きな痛手となるのはもちろんのこと、経営が回らなくなってしまう可能性もあります。
重要な従業員ではなくとも、ある程度の経験や技能を持っている従業員が抜けてしまえば、それもやはり痛手となります。
新規に雇用した従業員が、離職したベテラン従業員と同じように活躍するまでには長い時間がかかるため、生産性の低下は避けられません。
そのような従業員が離職しないためにも、処遇の改善などに積極的に取り組んでいる会社は多く、その際に利用できる助成金もたくさんあるので、ぜひ積極的に取り組んでいくべきです。

従業員が重病になったら?
しかし、その従業員が重い病気に罹ってしまったらどうでしょうか。
いくら処遇の改善に勤めていても、治療と仕事を両立できる環境を整えていなければ、従業員は治療と仕事のどちらかを選ばなければなりません。
このため、治療と仕事の両立ができない従業員は、本来ならば通院すべきところを通院を断念したり、病気休職を申請しないまま退職したり、病気休職をした後に復職せずに退職したりすることになります。
したがって、人材の確保が困難であり、有能な従業員の離職が経営に大きなダメージとなる会社では、まだ治療と仕事の両立が必要ではない時期から、両立のための制度を整備し、従業員に周知していくことが大切です。
これにより、従業員が重い病気にかかったときにも、「離職しよう」と考えずに「治療と仕事を両立しよう」と考える流れを作ることができます。
もちろん、まだ両立の必要がない従業員も、「この会社なら、万が一の時にも治療と仕事を両立できるから安心だ。長く働きたい」と考えるため、安心感を抱いたり、会社への忠誠心が高まったり、職場への定着率が高まったりすることで、人材不足の緩和にも役立ちます。

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治療と仕事の両立支援助成金とは?
では、治療と仕事の両立のためには、どのように取り組んでいくべきなのでしょうか。
これは、会社が独自に制度を作り上げていくのは困難ですから、専門家にも協力を依頼しながら取り組んでいくことになります。
最も良いのは、政府の実施する助成金制度を活用することです。
助成金を受給するためには、受給要件を満たす必要があり、計画の策定や制度の整備、実施などの流れを踏んでいくことになります。
したがって、治療と仕事を両立を目指す会社でも、「治療と仕事の両立支援助成金」という助成金制度を利用することで、両立支援の計画から制度を整備まで、順序立てて取り組んでいくことができます。
さらに、助成金の手続きも社労士などの協力によって進めていくことで、確実に受給要件を満たしていく(確実に制度を整備していく)ことによって、助成金を受給し、制度の整備にかかった費用負担を軽減することも可能です。
このほか、治療と仕事の両立支援助成金は、対象となる労働者がいないうちから環境整備に取り組むことで受給できるだけではなく、対象となる労働者を抱えてから取り組む場合にも受給できます。
治療と仕事の両立支援助成金は、事前に制度を整備する場合には「環境整備コース」、事後に制度を活用する場合には「制度活用コース」を利用します。

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環境整備コース
環境整備コースは、労働者の傷病の特性に応じた治療と仕事を両立させるため、柔軟な勤務制度や休暇制度を導入します。
なおかつ両立支援コーディネーターを配置した事業者に助成金を支給するものです。
助成額は20万円であり、助成金の支給は1回限りとなっています。
制度活用コース
制度活用コースは、がんなど(がん以外にも脳卒中、心疾患、糖尿病、肝炎など)の反復・継続して治療が必要となる傷病を抱える労働者のために、両立支援コーディネーターを活用して社内制度を運用し、就業上の措置を行った会社に対して、助成を支給するものです。
助成金額は、対象労働者が有期契約の場合に20万円 、対象労働者の雇用期間に定めのない場合にも20万円となっており、助成金の支給はそれぞれについて1回限りとなっています。
※治療と仕事の両立支援助成金の環境整備コースと制度活用コースについて、詳しくはこちら

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まとめ
重い病気にかかったとき、その従業員は悲観的になっていることもあり、「治療と仕事は難しいだろう」という決めつけから、離職を考えてしまうことが多いです。
会社としても、病気を抱えた従業員に対して、「辞められては困る、なんとか頑張ってくれ」とは言いにくいでしょう。
これでは、有能な従業員を失ってしまいます。
そうならないためには、治療と仕事を両立できる環境づくりを日ごろから心がける、あるいは環境が整備できていなくとも活用できる制度を検討するなど、従業員をとどめる道を模索していきましょう。
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