賃金の上昇が続いていることによって、企業の人件費負担が重くなっています。
財務的に余裕がない中小企業の中には、この流れに苦慮している会社も多いはずです。
このような変化に対応するには、助成金の活用が欠かせません。賃金増額によって受給できる助成金もあるため、積極的に獲得していくべきです。
しかし、賃金上昇の流れに助成金で対応する考え方は、「賃金増額→助成金受給」という考え方だけではありません。
本稿では、賃金上昇の流れと助成金活用について、すこし広い視点で考えていきましょう。
平均時給は1000円超へ
近年、政府は最低賃金の引き上げを推進しており、毎年2~3%の幅で上昇を続けています。
政府は、いずれ最低時給を1000円以上にまで引き上げることを目標としています。
最低賃金が上がれば平均賃金も上がっていきますが、最近は最低賃金引上げばかりではなく、人材確保のために高い賃金を設定する企業が増えています。

2019年4月には、アルバイト募集時の全国平均時給が1035円にまで上昇しています。
中小企業の多くは資金的に余裕がありませんが、人材が不足し続けることも大きな問題ですから、賃金を高めに設定して採用せざるを得なくなっています。
また、新規に採用する人材の賃金が高くなれば、既存の人材も賃金を増額してほしいと考えるものです。
しかし、そこまでの余裕がない会社も多く、不満が生まれるきっかけにもなっています。
働き方改革による雇用・労働環境の変化や、採用活動での変化は、中小企業にとっては逆風になっています。
このような現状にしっかり対応していかなければ、今後ますます苦戦を強いられることでしょう。

賃金の増額に伴って利用できるのは次のような助成金です。
- キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
- 業務改善助成金
これらをしっかり活用していくことによって、変化への対応がスムーズになります。

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キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
キャリアアップ助成金は、従業員の処遇を改善するときに利用できる助成金です。
いくつかのコースに分けられているうち、賃金規定等改定コースでは賃金を増額することで助成金を受給することができます。
賃金規定等改定コースで助成金の対象となる労働者は「すべてまたは一部の有期契約労働者等」となっています。
そのため、アルバイトの新規採用で時給を高く設定し、既存のアルバイトとの不公平感が出てしまった場合には、賃金規定等改定コースを活用しながら賃金を引き上げ、助成金を受給していきましょう。
受給のためには、基本給の賃金規定を増額改定し、2%以上もしくは3%以上増額する必要があります。
したがって、賃金規定等改定コースの助成金は、次の4パターンに分けられます。
- 全ての有期契約労働者の賃金を2%以上アップする
- 全ての有期契約労働者の賃金を3%以上アップする
- 一部の有期契約労働者の賃金を2%以上アップする
- 一部の有期契約労働者の賃金を3%以上アップする
支給額は以下の通りとなります。
全ての有期契約労働者の賃金を2%以上アップする場合
対象労働者数 | 有期契約労働者全員に2%以上増額の場合 | |
基本的な支給額 | 生産性が6%以上向上している場合 | |
1~3人 | 1事業所あたり9万5000円 | 1事業所当たり12万円 |
4~6人 | 1事業所あたり19万円 | 1事業所当たり24万円 |
7~10人 | 1事業所あたり28万5000円 | 1事業所当たり36万円 |
11~100人 | 1人当たり2万8500円 | 1人当たり3万6000円 |
全ての有期契約労働者の賃金を3%以上アップする場合
対象労働者数 | 有期契約労働者全員に3%以上増額の場合 | |
基本的な支給額 | 生産性が6%以上向上している場合 | |
1~3人 | 増額率2%以上の場合の基本的な支給額に加えて、 1人当たり1万4250円の加算 |
増額率2%以上で生産性要件を満たした場合の支給額に加えて、 1人当たり1万8000円の加算 |
4~6人 | ||
7~10人 | ||
11~100人 |
一部の有期契約労働者の賃金を2%以上アップする場合
対象労働者数 | 有期契約労働者の一部に2%以上増額の場合 | |
基本的な支給額 | 生産性が6%以上向上している場合 | |
1~3人 | 1事業所あたり4万7500円 | 1事業所当たり6万円 |
4~6人 | 1事業所あたり9万5000円 | 1事業所当たり12万円 |
7~10人 | 1事業所あたり14万2500円 | 1事業所当たり18万円 |
11~100人 | 1人当たり1万4250円 | 1人当たり1万8000円 |
一部の有期契約労働者の賃金を3%以上アップする
対象労働者数 | 有期契約労働者の一部に3%以上増額の場合 | |
基本的な支給額 | 生産性が6%以上向上している場合 | |
1~3人 | 増額率2%以上の場合の基本的な支給額に加えて、 1人当たり7600円の加算 |
増額率2%以上で生産性要件を満たした場合の支給額に加えて、 1人当たり9600円の加算 |
4~6人 | ||
7~10人 | ||
11~100人 |

職務評価を活用しよう!
なお、賃金規定等改定コースでは職務評価を実施することで、追加助成を受給することができます。
職務評価とは、従業員の職務に応じて適切な賃金を支払うための評価です。
既存のアルバイトと新規のアルバイトの時給による不満の多くは、
「新人は簡単な職務しかこなせないのに、あの時給はおかしい。あの職務であの時給なら、私の時給はもっと多くていいはずだ」
という、職務と賃金のアンバランスによって生まれます。
賃金規定等改定コースで賃金を増額しても、理解が得られずに不満が残ることも多いです。
そこで、職務評価を実施して、職務内容に応じた賃金が支払われる仕組みを作ったうえで賃金を増額するのが効果的です。
新人は、
採用時の賃金は高くないが、新人の職務を見れば当然だな。職務の範囲が広がれば時給○円になるから頑張ろう
と考え、高くない賃金でも納得しやすくります。
賃金を増額するための職務内容も明確ですから、モチベーションアップにもつながります。
また既存のアルバイトも、
新人の賃金がすこし高い気がしたけど、職務評価を通して考えると妥当だな。自分の職務と賃金の関係も納得できるし、賃金も増額されてありがたい
と考え、不透明な不公平感から生じる不満は解消されます。
職務評価を実施した会社には、上記のそれぞれの場合の支給額に対して、1事業所当たり19万円(生産性が6%向上している場合には24万円)の加算を受けることができます。
せっかく賃金を増額するのですから、増額によって助成金を受給するだけではなく、職務評価によって不満の解消を図り、追加助成も受給するのがベストです。


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業務改善助成金
業務改善助成金は、正確には賃金を増額した会社に助成金を支給する制度ではなく、業務改善によって生産性向上した会社に、助成金を支給する制度です。
労働者一人当たりの生産性が向上すれば、より少ない人員で事業を回していけるようになり、人件費負担が軽減されて余裕が出てきます。
この余裕を従業員の賃金アップに充てた会社に対し、業務改善に要した経費を助成するのが、業務改善助成金です。

業務改善助成金では、
- 事業場内最低賃金が800円未満の事業場かつ事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内及び事業場規模30人以下の事業場
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内及び事業場規模30人以下の事業場
のいずれかによって、助成金の支給額が以下のように異なります。
事業場内最低賃金の引き上げ額 | 助成率 | 引き上げる労働者の数 | 上限額 | 助成対象の事業場 |
30円コース (800円未満) |
4/5(9/10) | 1~3人 | 50万円 | 事業場内最低賃金が800円未満の事業場 かつ事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が 30円以内及び事業場規模30人以下の事業場 |
4~6人 | 70万円 | |||
7人以上 | 100万円 | |||
30円コース (800円以上) |
3/4(4/5) | 1~3人 | 50万円 | 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が 30円以内及び事業場規模30人以下の事業場 |
4~6人 | 70万円 | |||
7人以上 | 100万円 |
※助成率のカッコ内は生産性要件を満たした場合。
業務改善助成金の仕組みはやや特殊で、賃金がより低い会社で、より低い賃金が適用されている従業員に対し、賃金を増額することが要件となっています。
すなわち、次のように対象が限定されているのです
- 支給対象となる会社は、事業場内最低賃金が1000円未満の会社のみ
- 支給対象となる労働者は、事業場内最低賃金を適用している労働者のみ
なお、「事業場内最低賃金」とは、会社の賃金規定で最も低い賃金のことです。
このような制限があるものの、業務改善に取り組むことで確保すべきアルバイトの人数が少なくなれば、高い賃金を設定してアルバイトを新規採用する機会も減ります。

また、事業場内最低賃金をアップするだけではなく、新規採用に充てるはずだった人件費を既存のアルバイトに回すこともできますから、これも不満の解消につながります。
したがって、業務効率などに問題があって改善の余地が大きい会社では、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースではなく業務改善助成金を利用し、業務改善に取り組むことを検討しても良いでしょう。

その他の助成金も
賃金上昇への対応に役立つ助成金は、賃金増額に関する助成金だけではありません。
賃金増額で受給できる助成金以外にも、賃金の負担を軽減するために活用できる助成金がたくさんあります。
分かりやすいのは、キャリアアップ助成金の正社員化コースや、両立支援等支援助成金の育児休業等支援コースなどです。
なぜ、これらの助成金が賃金負担の軽減するのかと言えば、賃金以外の魅力につながる可能性があるからです。

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キャリアアップ助成金「正社員化コース」
例えば、キャリアアップ助成金の正社員化コースを利用し、パートやアルバイトを正規雇用に転換するための規定を設けたとします。
要件を満たした場合に正規雇用に転換できるようにすれば、正規雇用を目指す人材がアルバイトとして応募してくることが増えます。
応募してくるアルバイトは、その会社でアルバイトをすることで賃金を得られることよりも、正規雇用の可能性があることに魅力を感じています。
「時給は高いもののアルバイトのまま」という会社よりも魅力を感じる人もいるでしょうし、賃金を高く設定せずとも、人材を確保できるチャンスが増えるはずです。
このように、賃金以外に働きたいと思える要素によって、賃金の上昇を抑えつつ、人材確保を図ることができるのです。
両立支援等支援助成金
両立支援等支援助成金の活用も同じです。
育児休業等支援コースを利用し、パート・アルバイトの従業員でも育児休業を取得できるようにすれば、アルバイトしたいと思う人は増えるでしょう。
最近では、正社員の育児休業を促進すべしという論調が強くなっていますが、パート・アルバイトなどの非正規雇用労働者に対して、そのような意見必要はまだまだ少ないです。
アルバイトの人材は専門性も低く、代わりが利く人材でもあります。このため、アルバイトが育児休業を希望しても、簡単には受け入れられないことが多いです。
だからこそ、アルバイトでも育児休業を取得しやすい会社では、賃金を高く設定していなくても人材を確保できる可能性が高まります。
このように考えていけば、賃金を抑えながら人材を確保できることが分かるでしょう。
会社に適した取り組みは色々でしょうが、その取り組みにあたって助成金を受給できることも多いと思います。
キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースや、業務改善助成金以外の助成金も、しっかりと活用していきましょう。


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まとめ
本稿では、賃金上昇の流れに対応するために、活用すべき助成金について解説しました。
賃金上昇の流れは今後も続くことが予想されるため、賃金増額に伴って受給できる助成金があることを知り、賃金増額の際には積極的に活用していくべきです。
また、助成金を柔軟に活用していけば、「賃金上昇×育児休業」というように、一見関係なさそうな助成金が賃金問題の緩和に役立つことも多いです。
当サイトの情報を参考にしつつ、必要に応じて社労士のサポートも受けながら、助成金を活用してほしいと思います。
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