銀行の与信管理や融資審査では、相手となる会社の業績や財務をできるだけ正確に把握する必要があり、粉飾を見抜いていく必要があります。
特に、中小企業では粉飾が起きやすいため、慎重に分析していくことになります。
粉飾には、銀行を騙そうとする悪質な粉飾もあれば、意図せずに、あるいは特に悪意を持たずにやってしまう粉飾もあります。
悪意のない粉飾も、銀行に正しくない情報を与えているのですから、銀行からの印象は悪化します。
本稿では、悪意のない粉飾に陥りやすい減価償却について解説していきます。
減価償却とは?
減価償却は、固定資産を正しく理解するために重要な要素です。
自社が取得した固定資産を、償却期間に応じて毎年費用として計上していくものであり、損益の上では利益から引かれるものの、手元には利益が残ります。
このため、費用でありながら自由に使えるお金と考えることができ、資金繰りや節税にも活用することができます。
※減価償却について、詳しくはこちら

銀行の融資審査では、減価償却によって粉飾が行われていないかどうかを確認します。

したがって、粉飾を疑われないためにも、減価償却を正しく計上することが大切よ。

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減価償却の計上方法
減価償却を計上する方法は、以下の2通りです。
- 毎年減価償却した分だけ資産を減少させ、脚注にこれまで減価償却した累計額を記載する。
- 資産の取得額自体は減らさず、その下にこれまで減価償却した累計額を記載する。
また毎年の減価償却額にも、定額法と定率法の2通りがあります。
定額法は単純ですが、定率法は残存価格に対して同じ率で減価償却していくため、期間が経過するにつれて減価償却額が減っていきます。
その固定資産の価値や事業への貢献度は、年々低下していくのが普通ですから、定率法のほうが実態に即した償却方法だと言えます。
ただし、建物は定額法でしか減価償却できません。

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銀行が粉飾を疑うケース
では、減価償却の計上がどのようになっているとき、銀行は粉飾を疑うのでしょうか。
それは、償却期間の途中で減価償却の方法を変更し、業績悪化を隠そうとする場合です。
銀行が疑うケースとしてよくあるのが、減価償却の計上方法を定率法から定額法に変更することです。
定率法では、残存価額に応じて毎年一定率で減価償却していくため、最初のうちに多めに計上することになります。
例えば、1億円の機械を10年で償却する場合、定額法と定率法(償却率20%)の毎年の減価償却には以下のような違いがあります。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
定額法 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 |
定率法 | 20,000,000 | 16,000,000 | 12,800,000 | 10,240,000 | 8,192,000 |
6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 | |
定額法 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 9,999,999 |
定率法 | 6,553,600 | 6,553,600 | 6,553,600 | 6,553,600 | 6,553,599 |
定額法ならば、毎年1000万円ずつ減価償却していきますが、定率法は1年目に2000万円の減価償却を行い、そこから少しずつ減価償却の額が減っていき、5年目には定額法を下回る819.2万円になります。
6年目からは約655万円程度を計上していきます。
なお、10年目に1円を残して減価償却を終えていますが、これは資産があったことを忘れないように、帳簿に1円だけ残しておくのです。
利益がたくさん出ているタイミングで減価償却を始めるならば、定率法によって減価償却していくことによって、利益を多めに差し引くことで節税効果も高まります。

しかし、減価償却した結果、利益がマイナスになってしまうこともあるよ!
もし、2年目の利益が1500万円であったならば、定率法で減価償却してしまうと、業績は100万円の赤字になってしまいます。
たとえ、減価償却によって赤字になっているだけのことで、実際には利益が出ているとしても、赤字は見栄えが悪く、融資にもマイナスの影響があります。
また、当初は定率法で問題ないと考えていたものの、その見込みが外れて赤字になるのですから、思いのほか業績が悪化していることは間違いありません。
これにより、その期の利益も100万円の赤字から604万円の黒字となります。
しかし、償却期間の途中で定率法から定額法に変更した場合には、銀行は業績悪化を疑います。
決算書を見れば業績が悪化していることは明らかにわかります。それを隠そうとしているのですから、粉飾(飾ってごまかそうとする行為)に違いないのです。

この場合には銀行員から、定率法から定額法に変えた理由を聞かれるよ。
ほとんどの場合、業績悪化をごまかそうとするためなのですが、「減価償却の費用を均一化し、経営を安定させるためです」などと答えます。
しかし、そのように考えているならば、最初から定額法を選ばない方が不自然ですから、銀行員が納得してくれることはありません。

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償却期間の延長も疑いのもと
このほか、償却期間を延長した場合にも、粉飾を疑われる可能性があります。
固定資産の減価償却は、償却期間一杯をつかって減価償却していくほかに、前倒しで償却できるケースがあります。
例えば、1億円・償却期間10年の資産を5年で償却していくならば、
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
定額法 | 20,000,000 | 20,000,000 | 20,000,000 | 20,000,000 | 19,999,999 |
定率法 | 40,000,000 | 24,000,000 | 14,400,000 | 10,800,000 | 10,799,999 |
という計画になります。
しかし、この期間の途中で業績が悪化し、減価償却すれば赤字になってしまう場合には、それを隠すために償却期間を従来の10年に延ばし、毎年の償却額を減らし、赤字隠しをすることがあります。
定率法から定額法に変更したり、償却期間を延長したりすることは、なんら違法なことではありません。
社長としても、違法性のあることをやっているわけではありませんし、粉飾している意識はないかもしれません。
しかし、銀行にとっては業績悪化を隠そうとしているのですから、合法的な粉飾と考えることができます。
架空の資産を計上するなど、積極的な粉飾に比べればそれほど悪質ではありませんが、銀行は減価償却による粉飾を消極的な粉飾とみなし、信用の悪化につながります。

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まとめ
減価償却の計上方法は一つではなく、定額法と定率法による違い、償却期間の違いなどによって、毎年の減価償却が変化します。
合法的に計上方法を変化させることが可能であり、表面的には業績悪化を隠すこともできます。
しかし、減価償却の方法が変更されたとき、銀行が業績悪化を疑うのは簡単なことです。
そもそも、減価償却の方法を変更しなかったとしても、決算内容を見れば業績の変化は分かるものなのです。
そこで小細工をしてもバレてしまいますし、悪質でないとしても粉飾には違いありません。
銀行からの印象が悪化してしまうので、避けるようにしてください。
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