資金繰りのためには融資を受けるのが普通であり、ほとんどの会社の決算書には借入金が計上されています。
銀行が融資を実行した場合、その融資資金が借入金として計上されることになりますから、銀行員にとって借入金という科目は重視すべきところです。
具体的には、借入金がどのように使われ、どのような効果をもたらすかを非常に気にしているようです。
その見方について、銀行員の話を聞いていきましょう。
借入金と売上をセットで見る理由
その通りです。
借入金を軸とした情報も、財務分析の対象となります。
当たり前のことですが、財務内容を見た時に借入金があるということは、資金繰りを維持するために借り入れの必要があったということです。
運転資金や設備資金が必要となったとき、手元資金だけでは不可能な資金繰り状況にあるのですから、借り入れによってまかなったのです。
資金繰りのために借り入れをしているということだけは、ともかく間違いないことでしょう。
当たり前のことですが、これは結構大切なポイントです。
借入金の増減を見てみて、借り入れが増えていたとすれば、それは資金繰りの維持のために多くのお金を必要としたことになります。
もちろん、事業拡大のために借り入れをすることもありますから、借入金が増えているから悪いということでもありません。
ですから、
「借入金が増えている→資金繰り維持のために必要なお金が増えた→それはなぜだ」
と考えて、その増加が好ましいかどうかを検討する必要があります。
借入金が増えた理由が良いか悪いかを知るためには、売上と比較するのがベストです。
売上が伸びて増加運転資金が発生し、それを借り入れによってカバーしたならば、売上と借入金がどちらも増加することになります。
売上が伸びていけば、売るための仕入れや製造も増えるわけですから、必要経費も増えますね。
それを借入で賄って、売上も増えていれば何の問題もありませんし、むしろ業績は好調で好ましいと考えることもできます。
しかし、売上は横ばいで借入金が増えるというパターンも考えられますね。
この場合、売上が変わらない理由を見ていく必要があります。
借入金の内容が設備投資であれば、借入金は大きく増えることもあります。
しかし、その投資が売上につながるまでには時間がかかります。
ですから、売上が横ばいで借入金が増えることになりますが、重大な問題とは言えません。
しかし、投資に失敗して売上が横ばいで、借入金だけが増えたというパターンもあります。
売上を伸ばすことを考えて新しい商品を取り扱ってみたり、既存の商品の生産を増やしたりしてみたところ、思ったように売れなかったというようなケースです。

この場合には、借入金を投じても効果が得られなかったことが分かるわね。
大して効果はなかったのに、借入金の返済負担はあるわけですから、資金繰りは悪化します。
このように、売上は変わらずに借入金だけ増えているならば、その内容によって資金繰りは大きく変化しますから、決算書から借入金がどこに使われたかを特定することが大切です。
最悪のケースは、売上が減っているのに借入金が増えている場合です。
売上が減れば利益も減ります。
しかし借入金が増えれば、返済負担は大きくなります。

借入金の返済には基本的に利益を充てるのですから、資金繰りが悪化していると考えてほぼ間違いないだろう。
本来、売上が減っているということは、事業に必要となる運転資金も減少し、借入金の必要性も減るのです。
上記の通り返済負担を考えると、売上減少の状況下では、借入金を増やさないほうがいいという判断が普通です。
しかし、それでも借入金が増えているのは、あえて借り入れる必要があったということです。
多くの場合、売上減少によって赤字になり、その補填のために借り入れをしています。
売上減少によって資金繰りが悪化し、その悪化を借り入れによって補い、さらに資金繰りは厳しくなるという状況です。

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銀行員が一番嫌う借入金は・・・
売上と借入金がどちらも増えているならば、プラス評価になります。
もちろん、売上増加と借入金増加のバランスは重要ですが、基本的にはプラスの見方ができます。
売上は横ばい、借入金は増加というならば、その内容によって判断が変わることは既にお話ししました。
借入金が無駄になっていれば資金繰り悪化しているので要注意です。
まだ売上アップの効果が出ていないだけであれば、今後の資金繰りがどうなっていくかを見ていきます。
しかし、恐らく経営者が関心を抱くのは、売上が減っていて、借入金は増加している場合ではないでしょうか。
厳しい状況にあることは経営者自身が一番知っているでしょうし、だからこそ融資を受けなければ立ち行かないので、そこから融資が期待できるかというのが関心事でしょう。
結論から言えば、かなり厳しいです。
銀行員が融資すべきではないと考える理由は色々ありますが、売上が減っているということは、
です。
なおかつ、そのような状況に至って、なお融資を依頼してきているのですから、そこもまたマイナスです。
個人レベルで考えても、稼ぎが減って家計が厳しくなったからお金を借り、返済負担で家計はもっと厳しくなり、またお金が足りないから貸してくれと言われたとします。
そのような人に安心して貸せる人はいないでしょう。
銀行も同じです。
このような会社を評価するとき、かなり注意するのが普通ですし、融資できないという判断になることも多いでしょう。

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借入金を資産項目から考える
そうかもしれませんね。
そもそも利益や現預金は分析するという見方で見る人が少ないでしょう。
分析という意味では、
- 保有している不動産の価値がどうであるか
- 有価証券の価値がどうであるか
といったといったイメージが大きいかもしれません。
もちろん融資の際の財務分析でも、資産項目全体を見ていきます。
これまでお話しした売上、利益、現預金、借入金といった要素は、その会社の資金繰りを大局的につかむことに役立ちますし、それによって融資すべきかどうか、かなりの程度まで判断できます。
しかし、そこで大丈夫だから融資できるということではなく、資産全体をきちんと分析しなければ正確な判断とは言えないでしょう。
その上で資産を把握するのはなぜでしょうか。
融資先の資産項目がなぜ大切かというと、それこそその会社のお金の使い道に他ならないからです。
資産項目の増減を見ていくと、その会社が何にお金を使ったのかを把握することができます。
借入金と資産項目を一緒に見れば、借入金がどの資産に向かったかということも分かりますから、これも資金繰りの把握に役立ちます。
売上や利益、現預金、借入金などを見ていく中で、資金繰りに困っている状況が分かっていたならば、なぜ資金繰りに困っているかを資産項目から見極めていくこともできます。
実際、資金繰りが大丈夫そうだという印象を受けていたとしても、資産項目を見たところ必ずしも大丈夫ではないという印象を受けることもあります。

ですから、資産項目の増減をチェックすることも、融資先の資金繰りをみるうえで非常に重要なんだ。

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資産項目の分析で良い評価をされるケース
銀行員の見方の癖によって、手順は色々だと思います。
しかし、目的や全体的な方法はそれほど変わらないでしょう。
私が稟議を組成していたころは、まず借入金の増減をチェックすることから始めていました。
これまでの話でも、借入金の増減はチェックしてきましたが、まだ売上と比較しただけですね。
ここからは、借入金の増減をチェックして、それを資産項目と絡めて見ていきます。
例えば、新規の融資を申し込まれたとして、過去数期分の決算書を提出してもらったとします。
過去2期分、つまり前々期と前期の貸借対照表を比較してみたところ、借入金が短期と長期の合計で2000万円増加していることが分かったとしましょう。
この時、銀行はこの2000万円がどのように使われたかを見ていきます。
先ほども、借入金が増えていて売上に効果がない場合、借入金の使い道によって評価が変わると話しましたが、借入金がどのように使われたかを知るためには資産をみるのが一番です。
それが難しいところです。
それぞれの勘定科目を前々期と前期でそれぞれ増減を算出しますが、それぞれが不規則に増減しているのが普通です。
2000万円全てがひとつ科目に代わっていれば特定も簡単ですが、そうでないことも多いです。
これについては、銀行員の経験によって使い道を推測していくようなところもありますから、一概にどう判断しているとは言いにくいです。
色々な考え方がありますし。

基本的な見方を言えば、増減の大きい項目から検討していくといった考え方がありますが、それも絶対ではないのよ。
しかし、会社としても、融資を受けた大切なお金を使うわけですから、事業に役立つように使いたいと考えていることは間違いありません。
ですから、借入金がどの資産に代わったかを考えるとき、事業により役立つ資産に代わった可能性が高いと考えるのが普通です。
したがって、銀行員が資産の増減をチェックしていく際には、事業に役立つ項目に置き換わった可能性を優先的に考えていきます。
これが、一つの典型的な見方と言えるかもしれません。
たしかに、役立つことに使われるのが当たり前ですから、そこに焦点を当てるのは合理的ですね。
では、どの勘定科目が事業に役立つものと考えているのでしょうか。
- 現預金
- 運転資金
- 有形固定資産
- その他の流動資産
- 最後に投融資やその他固定資産
という順序が一般的だと思います。
現預金の重要性は、すでにお話しした通りです。
普通、借り入れたお金を、全て一度で使ってしまうことは少ないでしょう。
ある目的のために借りた2000万円を、目的のために必要に応じて徐々に投じていくのですから、一部は手元に残っているのが普通です。

もちろん全く手元に残らないケースもあるよ。
例えば、設備投資をするにあたって融資を受けて、一部を自己資金、残りを借り入れによって賄う場合などは、借入金を全て投入することもあります。
しかし、そうでない場合に、借入金の増加と現預金の増加が同時にみられるならば、借入金の一部は現預金として温存されているとみるのが妥当です。
例えば、貸借対照表で現預金が500万円増えていたとすれば、借入金2000万円のうち500万円はこれに置き換わっていると考えられます。
もちろん、現預金の増加分が必ず借入金とは限りません。
資産を売却していたり、保険の返戻金を受け取ったり、利益の増加分が現預金になっていることもあるでしょう。
しかし、それも貸借対照表から分かります。
固定資産を売却していれば、貸借対照表の固定資産の項目が減少しています。
保険を解約して返戻金を受け取っていたならば、貸借対照表の保険積立金が減少するでしょうし、損益計算書の保険料が減少しているでしょう。
利益については、現預金の増加分と利益の増加分が一致していないならば、やはり現預金の増加分は借入金であるとみることができます。
運転資金は、現預金に次いで大切なものだと考えます。
借入金の目的として最も多いのが運転資金ですし、借入金の一部がそれに置き換わったと考えるのは自然な見方です。
運転資金という勘定科目はありませんが、売掛債権と棚卸資産を足して、そこから買掛債務を差し引けば運転資金が分かります。
例えば、貸借対照表を見たところ、
- 買掛債務は増減なし
- 売掛債権は400万円増加
- 棚卸資産は300万円増加とすれば
- 運転資金は700万円増加
ということが分かります。
運転資金が増加するとき、それを全て自己資金で賄うよりも、増加分を融資でまかなうのが普通ですから、借入金の一部が運転資金に置き換わったと推測することができます。
次に、有形固定資産を見てみて、同じ会社の貸借対照表で、1000万円増加していたとしましょう。
これも借入金で賄った可能性を考えると、現預金、運転資金、有形固定資産で2200万円が借入金によって増加したと推測していることになります。

このほかの科目に大きな増減がなければ、借入金の使い道はこのように推測することができるぞ!
200万円のズレがありますが、借入金2000万円がどの資産に置き換わったかをおおまかに見ることが目的ですから、それが現金、運転資金、設備資金に代わったと大きく把握することができれば問題ありません。
このように見た時、現預金も運転資金も設備資金も、どれも事業に関係のあるものですから、銀行は安心できます。
借入金は増えること自体は、資金繰りを圧迫する原因になることがありますが、それをすべて事業に関係していることにしっかり使っているならば問題ありません。
借入金を効果的に使っているかどうかについては、まだ明らかな判断はできていませんが、借入金をしっかりコントロールできていることは銀行にとってプラスです。
経験的に言っても、このような会社は資金繰りもしっかりしていたり、財務内容も良好ということが多いですから、その意味でもプラスになります。
資産項目の分析で悪い評価をされるケース
もちろんその通りです。
そのような会社では、借入金を事業に活かせていないのですから、事業の利益から返済してもらう銀行側としては、融資するのは避けたい相手と言えます。
危険と判断できるパターンは色々ありますが、借入金が事業に活用されていない場合に危険視しますから、典型的なケースを見てみましょう。
最初に見るのは現預金ですが、借入金は増加しているのに現預金はほとんど変わっていなかったり、減っていたりすることがあります。
この場合、借入金が現預金に置き換わっていないことが分かります。
もし、借入金をすべて事業に投じたから現預金が変わっていない、あるいは現預金と借入金を一緒に投じたことで、現預金が減少したというならば、大して問題ないこともあるでしょう。

しかし、そのように決めつけるのは危険よ!
現預金が減少することは、基本的に好ましいことではありませんし、借入金を手元に留められない、何か差し迫った理由があるのかもしれません。
または、計画的な資金繰りができないために、手元にお金を残せなかった可能性もあります。
むしろ、このようなネガティブな原因を考えるべきでしょう。
次に運転資金を見ていきますが、売掛債権や棚卸資産の増加、あるいは買掛債務の減少などによって運転資金が増加していれば、借入金の一部はこれに使ったとみることができるでしょう。
運転資金の増減で問題があるケースもありますが、それはあとで詳しくお話ししましょう。
次に有形固定資産を見てみると、これも増減なし、あるいは減少というケースであれば、借入金は設備投資にも使われていないことが分かります。
その他流動資産はどうかと見てみると、これもほぼ増減なし。
事業に関係あるところで増加が見られず、最後に投融資とその他固定資産を見てみたところ、借入金の増加分相当がここで増加していることがわかりました。

すこし極端な例に感じるかもしれませんが、このような会社も実際にありますし、ここでは分かりやすくするためにあえて例に挙げているよ!
借入金の増加から資産項目の増減を見てみて、事業に関係するところよりも関係していないところに借入金が流れていれば、それは大きな問題です。
投融資に投じられているとわかった場合にはかなり印象が悪いです。
事業に直接結びつきくいだけではなく、内容によっては全て無駄になってしまうかもしれません。
売上・利益に問題がなく、現預金や借入金の関係にも大きな問題が見られない会社でも、借入金+資産項目で分析してみたら、借入金の使い道にこんな問題が見つかることがあります。
銀行としては、そのような会社には融資したくないというのが正直なところです。

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まとめ
会社経営には借入はつきものですから、決算書で借入金の増加を計上することも当然あると思います。
借りすぎにならないように計画的に借り入れ、しっかりと事業に活用しているならば、その借入金が問題とみなされて融資に不利になることはありません。
銀行員は、借入金が売上につながっているかどうか、事業にどのように使われているのかを重く見ます。
借入金が増えた・減ったという単純な見方ではなく、そこから資金繰りの様子を把握することに努めるのです。

融資を受けて資金繰りを回していく際には、その使い方が見られていることを意識する必要があるよ!
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