創業融資を受けるためには、民間金融機関の支援はほとんど期待できず、日本政策金融公庫に依頼することになります。
これは、もはや創業にあたっての常識になりつつありますが、なぜ民間金融機関ではなく日本政策金融公庫から借りるのか、深い理由まで知らない人も多いものです。
この違いを明らかにしておくと、民間金融機関からの支援を期待して無駄な労力を費やすこともありませんし、その後の銀行交渉の考えかたにも役立ちます。
本稿では、民間金融機関で創業融資が受けられない理由を解説していきます。
日本政策金融公庫と民間金融機関の違い
日本政策金融公庫と民間金融機関の根本的な違いは何かといえば、日本政策金融公庫は政府が運営する金融機関であるのに対し、民間金融機関は民間企業が運営する金融機関であるということです。
このように書けば単純ですが、この違いによって、両者の基本的な運営方針や融資方針にはかなり大きな差が生じています。
まず、日本政策金融公庫は政府系金融機関であり、政府の経済・金融政策の推進が目的となっています。これに対して民間金融機関では、他の事業法人と同じように営利目的での営業を行っています。
もちろん、経済や金融システムの重要な役目を担っていることから、民間金融機関に公的使命がないわけではないのですが、営利目的があるかどうかというのは非常に大きな違いです。
利益になる会社には優先的に融資する、不利益になる会社には融資しないという判断も生じます。

しかし、起業家は創業に必要となる資金を調達する必要があるわ。
これまで会社勤めなどをしながら貯めてきた資金や、親や知人などから出資してもらった資金などによってお金を集めることでしょうが、企業経営では大きなお金が動くため、どうしても足りないことがほとんどです。
したがって、足りない部分を金融機関からの融資でカバーしていく必要があるのですが、創業資金を調達する際に、日本政策金融公庫と民間金融機関の違いが顕著に表れます。
創業資金の調達先として、日本政策金融公庫と民間金融機関を比較してみましょう。

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民間金融機関が創業融資をできない理由
まず、民間金融機関ですが、創業資金に対して民間金融機関が積極的に対応することはほとんどありません。
なぜならば、民間金融機関では、創業融資に対応できる仕組みが確立されていないからです。
民間金融機関が融資するとき、金融庁「金融検査マニュアル」によって融資先を債務者区分に当てはめ、さらに金融機関が独自に信用を格付けし、それによって融資審査を行います。
しかし、この信用格付けは2~3期分の決算書をもとに行われるものですから、まだ決算をしていない創業前の会社は格付けすることができません。
つまり、既存のシステムでは、創業を計画している事業に融資してよいかどうか、その見極めが不可能であるため、「貸し倒れリスクが低いから融資しよう」という判断ができないのです。
会社を詳細に分析し、信用格付けを行ったうえで融資しても、貸し倒れをゼロにすることはできません。
信用格付けもできない創業前の会社には、融資できないと考えても当然です。

これが、民間金融機関が創業融資に対応できない根本的な理由と言えるのだ!
営利目的も大きな原因
信用格付けの根拠となっている、金融庁の「金融検査マニュアル」は1999年に制定されたものです。
信用格付けによって創業融資に対応できなくなっているならば、金融検査マニュアルが制定される前は、民間金融機関は創業融資に応じていたはずです。
しかし、金融検査マニュアルが制定される前、つまり民間金融機関の融資審査で信用格付けが用いられていなかった時代にも、創業融資には対応していませんでした。
なぜならば、民間金融機関は営利を目的としているからです。
民間金融機関が営利の観点から考えたとき、創業資金はおいしい話とは思えませんし、むしろあまり関わりたくないものです。
金融機関が融資する目的は、元金と一緒に利息を回収して儲けたり、その会社との長期的な付き合いの中で様々な手数料などを稼いでいくことです。
元金を回収できるかどうか、その会社が長期的に経営を続けていけるかどうかということが重要となります。
しかし、これから起業すると考えている会社には、まだ経営実績がありません。
起業家が持っているのは将来の展望だけであり、金融機関にとっては信用してお金を貸せる相手とは考えにくいものです。
もちろん、ほとんどの人が何らかの計画を抱いて起業を志すのですから、実現性が高いか低いかといった判断はある程度できます。
しかし、起業した会社のほとんどが倒産を余儀なくされており、中小企業庁のデータを見ても、2006年に起業した会社は2015年までの10年間で、約90%が倒産していることが明らかになっています。
業融資はハイリスクローリターン
データによって、生き残っていく会社があまりにも少ないことが明らかなのですから、生き残りを期待して支援することは「ハイリスク」と言えます。
通常、リスクとリターンは表裏一体ですから、ハイリスクの融資案件ならば、高金利に設定するなどしてリターンを高める必要があります。
しかし、創業期には資金繰りが厳しいものですから、高金利に設定してリターンを高めようとすれば、支払利息が資金繰りを圧迫し、リスクがさらに高まってしまいます。

このため、創業融資では、リターンを高めるための融資条件を設定することが困難だ。
融資したところで、得られる利息収入は融資額の1~3%程度でしょう。
さらに、創業期にはまだ担保にできる資産もほとんど持っていないのが普通ですから、担保によって保全を図り、リスクを引き下げることもできません。
したがって、創業融資を実行するとすれば、金融機関はハイリスクローリターンという、採算性が非常に悪い条件を呑まなければなりません。
民間金融機関は投資・投機を嫌う
自信のある起業家の中には、
「確かに、今はハイリスクローリターンにしか見えないかもしれない。しかし、創業計画通りに事業が進展していけばリスクは下がっていくだろうし、銀行の取引メリットも大きくなっていくから、いずれはリスクとリターンが一致する。
だから、創業計画を評価して融資してほしい」
と考える人もいると思います。
しかし、創業時には生き残っていくと自信を語る起業家がほとんどであり、最初から倒産するかもしれないと考えて起業する人は基本的にいません。
それでも、約90%の会社は起業後10年以内に倒産しているのです。

これはもはや融資というよりも投資・投機に近い考え方よ。
民間金融機関は、人々から集めた預金を融資などによって運用しています。
預金をしっかりと管理し、保護していく義務があり、安全性の高い運用を心掛なければなりません。
したがって、起業家の自信を買って融資するというような、投資・投機に近い資金運用はできないのです。

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より安全で堅実な融資を
営利を重視する民間金融機関としては、創業融資を希望する起業家の中から、10年後も生き残っている10%を見極めて融資するよりも、すでに経営を確立している会社に融資するほうが確実に安全です。
すでに経営している会社は、これまで積み重ねてきた経営実績や、銀行との取引実績や、今後の経営計画などから、融資にあたってのリスクをかなりの精度で判断していくことができます。
また、これまで会社を存続してきたことから、経営者個人としても、会社組織しても、能力をある程度評価することができます。
会社の資金繰りには、金融機関からの融資は決して欠かすことができないものであり、金融機関に融資を依頼してくる会社はたくさんあります。
その中には、業績が安定して推移しており、小さなリスクで融資できる会社もたくさんあります。
極端に言えば、民間金融機関はそのような会社に融資していれば、大過なく収益を得ることができます。

わざわざ、創業融資を検討して、リスクを抱える必要はないのだ。
今後は流れが変わるかも
以上のような理由から、民間金融機関が創業融資を嫌う理由がよくわかることと思います。
「融資と言えば銀行へ」と考えている人もいますし、相談した友人や知人から民間金融機関を勧められる人も多いと思いますが、実際には時間の無駄になるだけです。
ただし、昨今の金融緩和などの影響もあり、民間金融機関のあり方は大きく変わろうとしています。
このため、創業支援を前向きに取り入れていく雰囲気も少しずつ出てきていると話す銀行員もいますから、いずれは民間金融機関でも創業融資を受けられる時代が来るかもしれません。
とはいえ、現段階では民間金融機関での創業融資はあまりにも難易度が高く、やるだけ無駄だと考えたほうが良いでしょう。

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創業融資と日本政策金融公庫
一方、日本政策金融公庫は民間金融機関のように、収益性を根拠に割り切った考えをするものではなく、政府の政策から考えていきます。
起業という経済行為は、国家の経済からみれば好ましいものです。
起業した会社が発展すれば雇用も生まれますし、その会社が画期的な商品やサービスや技術を開発すれば、経済は活性化します。
新興企業が新興技術を開発し、その分野の旗手となって活躍すれば、シリコンバレーのような世界的な技術特区が誕生する可能性もあります。
このように、起業という経済行為は、一国の経済から見て非常に好ましいものであり、推進すべきものです。

だからこそ、政府は日本政策金融公庫を通して起業家を支援しているわけね。
日本政策金融公庫の融資は税金が原資となっていますから、国民の血税を使ってでも、起業によって経済を盛り上げていきたいことが分かるでしょう。
したがって、創業資金を審査していく際、公庫の利益になるかどうかではなく、国家経済に利益があるかどうかを基準に考えます。
計画している事業が、国家的・経済的・社会的にどれくらい有益であるか、収益や資金繰りはどのように計画しているか、その計画にはどれくらい実現性があるかを審査していきます。
その結果を踏まえて、有益で実現性も見込める場合、起業後10年以内に倒産する可能性が高いことを承知の上で、税金から貸し付けて支援していくのです。
創業融資を受けたいと思って事業計画書を持ち込むならば、民間金融機関よりも日本政策金融公庫を選ばなければなりません。
日本政策金融公庫だからこそ、事業計画を前向きに聞いてくれますし、融資の可能性もあります。民間金融機関ならば、どれだけ労力を費やしても無駄になるだけですが、日本政策金融公庫ならば費やした労力の分だけ期待できる成果は高まります。

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まとめ
本稿で解説した通り、民間金融機関では、実績のないものを審査するシステムがないこと、そして貸し倒れリスクが高いことや収益性が低いことを嫌って、創業融資に対応していません。
したがって、創業融資を依頼するにあたっては、最初から日本政策金融公庫に狙いを定めて準備していくべきです。
また、創業後にできるだけスムーズに融資を受けられるように、民間金融機関が経営実績や収益性から融資を判断することを踏まえて、融資につながりやすい経営をしていくことも意識しましょう。
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