助成金は、主に中小企業を対象に実施されているものであり、中小企業の多くが活用できるように設計されています。
しかし、あくまでも助成を受けられるのは、助成金本来の目的に沿っている会社だけです。
助成金の目的の一つに、労働環境の整備を促すことがあります。
このため、労働者にとって安心して働けない会社では、特に解雇や退職勧奨を行っている会社は、支給の対象外となってしまいます。
本稿では、解雇・退職勧奨が助成金の利用に与える影響と、支給対象外にならないための労使交渉について解説していきます。
助成金を受給できない会社とは?
働き方改革の推進によって、会社と労働者の関係が大きく変わりつつあります。
これにより、会社のあり方にも変化を求められてきています。
労働環境を整備したり、生産性を向上したり、政府の方針に従ってポジティブな変化に取り組む会社は、色々な場面で助成金を受給できます。
今後は、助成金活用する会社としない会社で、大きな差が出てくることでしょう。
ただし、助成金を活用したくとも、支給対象から漏れてしまう会社もあります。
どのような会社が対象外になるのかを簡単に言ってしまえば、
が対象外となります。
助成金は、政府の方針によって支給するものですから、政府の方針に反している会社、政策の推進に抵抗する会社が支給対象外となるのは当然のことです。
支給対象外とみなされる会社で分かりやすいのが、
- 労働関係の法律を守っていない
- 労働関係に関わらず、違法行為を行っている
- 過去に助成金を不正受給したことがある
といった会社です。
このように、明らかに問題がある会社であれば、助成金を利用できないのも当然です。
しかし、図らずも支給対象外になってしまう会社もあります。
例えば、
- 半年以内に会社都合の退職者を出している
といった会社も、助成金の支給対象外となる可能性があるのです。
このような会社では、半年から1年間は支給申請が認められなくなります。
辞めさせたくても辞めさせられない理由
もちろん、やむを得ない理由によって、会社都合の退職者が出ているだけであれば、支給対象外にはならないこともあります。
しかし、そのような場合でも支給対象外になってしまう可能性は十分にありますし、会社都合でしばしば退職者を出しているような会社は、間違いなく支給対象外となります。
会社としては、期待通りの働きをしてくれない従業員や、やる気が見られない従業員などがいれば、解雇してもっと良い従業員を雇いたいと思うでしょう。
このようなことは、どの会社でもあることですし、会社の考え方が間違っているとも言えません。
しかし、労働環境の整備により、働き方改革を推進している政府としては、理由はどうあれ会社都合での解雇や退職勧奨を認めるわけにはいきません。

そこでグレーゾーンを作ってしまうと、労働者が安心して働ける環境を整備していくことはできなくなるからだ。
だからこそ、助成金の受給要件には「半年以内に会社都合の退職者を出していないこと」が含まれています。

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メリットが大きいほうを選択する
以上の理由から、辞めさせたい従業員がいる場合にも、一旦慎重になる必要があるでしょう。
助成金の活用を考えている会社では、解雇や退職勧奨の影響を考えると、我慢して雇い続けたほうが良い場合もあります。
解雇・退職勧奨に踏み切って良い場合があるとすれば、
- 今後の半年から1年の間で、助成金を活用することによって得られるメリット
- 今後の半年から1年の間で、その従業員を辞めさせることによって得られるメリット
を比べてみて、後者のほうが明らかに大きい場合です。
しかし多くの場合、両方のメリットを比較すれば、助成金を活用するメリットのほうが大きくなることが多いです。
助成金を活用すれば、何十万円、何百万円という助成金を受給することができ、人材不足を解消したり、業務効率を改善したり、様々な取り組みを進めていくことができます。
一方、その従業員を解雇することで得られるメリットは、+-半年から1年は助成金が使えなくなる代わりに、その期間の人件費をカットすることくらいです。
その他にもメリットがあるかもしれませんが、辞めさせるメリットのほうが非常に大きくなるような従業員であれば、会社に大きな損害を与えているのでしょうから、そもそも解雇事由に当てはまる可能性が高いです。
解雇することで、人件費が浮く程度のメリットしか得られないのですから、とりあえず継続して雇用し、助成金の活用を心掛けたほうが良いでしょう。
そうすることで、
- 助成金を活用しながら経営改善に取り組める
- 辞めさせたい従業員でも活躍できる道を模索し、そこでも助成金を受給できる可能性がある(対象となる従業員に研修を受けさせ、助成金を受給するなど)
- 従業員側から退職を願い出てくる可能性がある
など、よい結果を得られる可能性が高いです。

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自己都合で退職させるテクニック
解雇・退職勧奨に該当しないために注意したいのは、退職に伴う労使交渉の際に、解雇・退職勧奨と取られてしまう言動を避けることです。
特に、辞めさせたいと思っている従業員が退職を願い出てきたとき、慎重に交渉すべきです。
経営者は「よかった」と思うことでしょうが、交渉次第では、解雇・退職勧奨に該当してしまうこともあります。
退職勧奨に該当する例
これについて、具体的な例で見ていきましょう。
A社では、従業員のBさんを辞めさせたいと考えていました。
なぜならば、Bさんは勤怠に問題があるわけではないものの、成績がほとんど伸びておらず、全くやる気が見られないからです。
A社の社長としては、Bさんを辞めさせて、もっと貢献してくれる従業員を雇いたいと考えて当然です。
しかし、助成金の活用を考えると辞めさせるわけにもいかず、「辞めてくれればいいのだが」と考えていました。
1月、Bさんは「今年度いっぱい(3月31日まで)で辞めさせてください」と意思表示してきました。
その通りに退職することになれば、Bさんの自己都合で辞めてもらうことができ、助成金の活用にも何ら問題ありません。
しかし、退職までには3ヶ月あります。
Bさんの性格から考えて、まもなく辞めることが決まれば、さらにやる気のない態度で働く可能性も高く、他の従業員にも良くない影響が出てくるかもしれません。
また、できるだけ早く辞めてもらうことができれば、無駄な人件費を払う必要はなくなり、職場の環境も良くなり、採用活動も進めやすくなります。
そこで社長は、「3月31日を待たず、すぐにでも辞めてほしい」と考えました。
この時、労使交渉の進め方によっては、会社都合での解雇・退職勧奨とみなされる可能性があるので、注意が必要です。
もし社長が、
そうしてくれると、会社としても動きやすいんだけど」
などと言ってしまうと、退職勧奨になってしまいます。
もちろん、このように言われたならば、Bさんは喜んで応じるでしょう。
会社都合で辞めさせられたほうが、失業保険の支給額が大きくなるからです。
自己都合で退職させるには?
ただし、退職勧奨にならないよう気をつけながら交渉し、結果的にBさんが「では、2月末で辞めます」と言えば問題ありません。
これは、Bさんが自発的に「今年度までで辞める」から「2月末で辞める」へと希望を変えただけであり、どちらも自己都合になるからです。
そのためには、交渉をじっくりと進めることが大切です。
Bさんが退職を希望するにあたって、「今年度まで」というタイミングに強いこだわりがなく、「とりあえず、きりのいいタイミングで」くらいに考えているならば、交渉の余地は十分にあります。
案外、「すぐにでも辞めたいけれど、引継ぎも必要だろうし、すぐには辞められないだろう」などと考えて、とりあえず今年度いっぱいは働こうと考えているだけかもしれません。
したがって、まずは「どうして今年度いっぱいで辞めたいのか」をBさんに聞いてみる必要があるでしょう。
この時、
「今すぐに辞めると生活できないからです」
などの明確な理由があれば、3月末までは待ったほうが良いでしょう。
しかし、
「引継ぎなどもあるでしょうし、ある程度の猶予はあったほうがいいでしょうから」
などの曖昧な理由であれば、
などと言ってみるのです。
その結果、「ならば、そうさせてください」となれば、予定よりも早く自己都合で円満退職となります。
なお、自己都合での離職であることを明確にするためには、Bさんから「一身上の都合による退職願」を必ず提出してもらう必要があります。
これがあれば、後でBさんが「会社から退職勧奨を受けた」などと主張した場合にも、自己都合であったことを証明できます。

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まとめ
助成金を活用するためには、すべての会社に求められる受給要件を満たしていることが前提となります。
中でも、解雇や退職勧奨をすることによって助成金が受給できなくなることには、注意が必要です。
辞めさせたい従業員がいるとき、交渉次第で自己都合になる場合もあれば、会社都合になる場合もあります。
自己都合で辞めさせることができたものを、交渉のミスによって会社都合で辞めさせることになってしまうと、一定期間は助成金が利用できなくなってしまいます。

そのような失敗がないよう、解雇・退職勧奨にならない交渉を心掛けましょう。
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