キャリアアップ助成金によってパート社員の定着と生産性向上を実現した会社の実例

人材不足に悩む会社は、採用にそれほどコストをかけられず、それによって人材確保に苦労しているケースが多いです。

採用にコストをかけられないのは、財務的にそれほど余裕がないためですから、どうしても非正規雇用労働者を多く雇うことになります。

また、製造業などでは、工場での製造などに従事する従業員が多いことからも、非正規雇用労働者が多くなります。

このような会社では、非正規雇用労働者が重要な労働力となるため、非正規雇用労働者をいかに定着させるか、また非正規雇用労働者の生産性をいかに高めていくかが重要となります。

本稿では、助成金をフル活用して、パートタイマーの定着と生産性向上に成功した会社の実例を紹介していきます。

Y社の概況

本稿では、食品製造業者のY社を例とします。

Y社は、1960年創業の会社で、半世紀以上の長きにわたって経営を続けてきました。

現在は、正社員20名、パートタイマー50名を雇用しています。

特に工場における製造業務にあたるパートタイマーが非常に重要な労働力となっています。

近年、Y社の手掛ける食品の分野では、価格競争が激しくなってきており、

  • 利益が薄くなったことで、生産量によってカバーする必要があり、より多くの労働力が必要である
  • 同時に、利益を高めるために、生産性の向上が必要である

という大きな課題を抱えていました。

ところが、Y社ではパートタイマーの雇用がなかなか安定せず、これが労働力不足と生産性の低下を招いていました。

雇用が安定せず、容易に離職してしまうということは、

  • 労働意欲が低いからこそ容易に離職してしまう。
  • 労働意欲の低さは、生産性の低下にもつながる
  • 離職した従業員の穴を埋めるために、新規に雇用したパートタイマーは、経験や知識を身に着けるために一定以上の期間を要する。
  • それまでの期間、生産性が低下してしまう

というように、定着率の低さが生産性の低下につながっていたのです。

さらにY社の工場は、同業他社の工場も多く立地している工業団地内にあります。このような特殊な事情によって、

  • パートタイマーは他社と自社の待遇を比較でき、待遇に不満があれば他社の工場に転職してしまうため、人材の流出が起きやすい
  • 求職者も、他社とY社の待遇を比較して就職先を選ぶため、工業団地内で待遇が劣っているY社は、新規採用に苦労しやすい

といった意味でも、人材確保に苦労していました。

生産性の向上が必要でありながら、生産性の低下に苦しんでいたY社は、長期的な業績の悪化の末に赤字転落、翌期も赤字の二期連続赤字となり、メインバンクとの借入れも難航する苦境に陥りました。

そこでY社は、メインバンクへの借入れ交渉の一環として、自社の業績悪化の根本的な問題が離職率の高さにあり、それさえ解消すれば経営は好転することを力説しました。

そして、具体的な取り組みとして、

  • 職務評価と連動した賃金制度の整備
  • 正社員への転換制度の整備

という処遇改善への取り組みによって、人材不足の解消を図ることを伝え、なんとかつなぎ資金の融資を受けることができました。

また、これらの取り組みにあたっては、受給できる助成金を積極的に受給することで負担の軽減にも努めました。

経営破綻まったなし」の状態にあったY社は、これらの取り組みによって、どのように経営を改善したのでしょうか。

また、どのような助成金を受給できたのでしょうか。

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人材不足、生産性の低下、業績悪化、取引銀行の撤退、資金繰り破綻・・・Y社の状況はかなり厳しいわね。

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職務評価と連動した賃金制度の整備

まず、パートタイマーを定着させるために、最も顕著な効果があるのは賃金のアップです。

賃金が高くなれば、同じ工業団地内の他社に人材が流れることも少なくなりますし、採用活動もスムーズになります。

業績・財務が厳しい状況であれば、賃金を増額するどころか削減して、従業員にも一緒に苦労してもらおうと考える経営者は多いものです。

無駄があることによって経営を悪化させている会社では、そのようなリストラも効果的です。

しかしY社には、削減すべき無駄はなく、賃金制度に問題があることはわかっていたため、あえて賃金アップに取り組みました。

この時、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースを利用し、助成金の受給にも取り組んでいます。

賃金規定等改定コースについて

賃金規定等改定コースとは、賃金規定を改定することで賃金を増額した場合に、助成金を支給する制度です。

賃金の増額率と、増額対象とする労働者の人数によって、以下のように助成金額が異なります。

【全ての有期契約労働者に対して2%増額の場合】

対象労働者数 有期契約労働者全員に2%増額の場合
基本的な支給額 生産性が6%向上している場合
1~3人 1事業所あたり9万5000円 1事業所当たり12万円
4~6人 1事業所あたり19万円 1事業所当たり24万円
7~10人 1事業所あたり28万5000円 1事業所当たり36万円
11~100人 1人当たり2万8500円 1人当たり3万6000円

【全ての有期契約労働者に対して3%増額の場合】

対象労働者数 有期契約労働者全員に3%増額の場合
基本的な支給額 生産性が6%向上している場合
1~3人 増額率2%の場合の基本的な支給額に加えて、1人当たり1万4250円の加算 増額率2%で生産性要件を満たした場合の支給額に加えて、1人当たり1万8000円の加算
4~6人
7~10人
11~100人

【一部の有期契約労働者に対して2%増額の場合】

対象労働者数 有期契約労働者の一部に2%増額の場合
基本的な支給額 生産性が6%向上している場合
1~3人 1事業所あたり4万7500円 1事業所当たり6万円
4~6人 1事業所あたり9万5000円 1事業所当たり12万円
7~10人 1事業所あたり14万2500円 1事業所当たり18万円
11~100人 1人当たり1万4250円 1人当たり1万8000円

【一部の有期契約労働者に対して3%増額の場合】

対象労働者数 有期契約労働者の一部に3%増額の場合
基本的な支給額 生産性が6%向上している場合
1~3人 増額率2%の場合の基本的な支給額に加えて、1人当たり7600円の加算 増額率2%で生産性要件を満たした場合の支給額に加えて、1人当たり9600円の加算
4~6人
7~10人
11~100人

(※1年度1事業所当たり100人まで、申請回数は1年度1回のみ)

賃金規定等改定コースを受給することによって、賃金アップに伴う人件費負担を大幅に軽減することができます。

また、賃金が高くなればパートタイマーの家計は潤い、働き甲斐も出てくるため、意欲の向上と生産性の向上にも一定の効果が見込めるでしょう。

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苦しい会社では賃金増額が難しいこともあるね。でも、賃金増額が特効薬になることもあるから、助成金で負担を軽減しながら増額することが大切だ!

職務評価

Y社は、賃金をアップによる意欲向上・生産性向上の効果を一層高めるために、職務評価にも取り組みました。

それまでにも、Y社ではパートタイマーの能力や勤続年数などに応じて、昇給を実施してきました。

しかし、何をどう評価して昇給するのかが曖昧であり、明確な基準による昇給が行われていませんでした。

パートタイマーたちも、どのように働けば昇給されるのか分からないため、昇給のために頑張ることができず、意欲的な姿勢が生まれにくい環境でした。

そこでY社は、明確な人事考課の実施のために、職務等級規定を導入しました。

以下のように区分を明確化し、その上で賃金規定を増額改定したのです。

職務等級 職務要件 時給
4等級 高度熟練判断業務 1、担当業務全般の立案・推進ができる。

2、作業リーダーとして、業務の監督指導ができる。

3、業務に必要な実務的・専門的知識・技能を用いて下位者を指導できる。

4、品質について専門的知識を有している。

1150円
3等級 定型(熟練)業務 1、担当業務全般の流れについて把握している。

2、上位者がいなくても自己判断で業務処理ができる。

3、業務に必要な実務的・専門的知識・技能を用いて下位者を援助できる。

4、品質についてある程度の知識を有している。

1000円
2等級 定型(半熟練)業務 1、定型業務に従事し、一定の基準に従って業務を処理できる。

2、品質について初歩的な知識を有している。

900円
1等級 補助(未熟練)業務 1、上司の直接的監督の下、指示を受けて業務処理ができる。

2、上級者の補助者として、定型的・簡素な業務処理を行うことができる。

850円

職務等級は、スキル・責任感・管理能力などに基づく人事考課によって、決定される仕組みです。

評価表は、知識やスキル、仕事への姿勢などの細かい評価項目に分けられており、総合評価に応じて等級が決定されます。

パートタイマーには、評価表の内容と自身への評価が公開されます。

このためパートタイマーは、自分の評価が悪い項目や身に着けるべきスキルを知ることができ、職務等級と賃金をアップさせるための取り組みもわかります。

このように、Y社では賃金規定の改定と職務評価をセットで実施することにより、パートタイマーの賃金への不満を解消すると同時に、「頑張れば時給が上がる」という意識を浸透させ、意欲的な姿勢を引き出したのです。

さらに、賃金規定等改定コースでは、職務評価とセットで実施した会社には助成金を加算しています。

賃金規定等改定コースのそれぞれの場合の支給額に対して、

1事業所当たり19万円(生産性が6%向上している場合には24万円)

の加算を受けることができるのです。

Y社では、賃金を増額と職務評価を同時に実施することで、様々な不満の解消、定着率の向上、意欲の向上などにつなげ、助成額の加算も受けることに成功しました。

助成金制度では、特定の場合に増額を実施していることがよくあるので、Y社のように積極的に取り組み、受給額の最大化を目指すのがポイントです。

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職務評価を実施することで増額を受けられるし、意欲の向上にもつながって、いいことづくめなのね。

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正社員転換制度を整備

賃金規定等改定コースの次にY社が取り組んだのは、パートタイマーから正社員への転換制度を整備することです。

職務評価に取り組み、賃金アップの基準を明確化・透明化すると同時に、職務等級制度と連動させて正社員転換制度を作ったのです。

Y社では、職務等級が最も高い4等級として評価されたパートタイマーについて、本人の希望と上司の推薦によって正社員に転換できるよう、就業規則に転換規定を設けました。

転換制度の効果

正社員になった従業員は、パートタイマーのように簡単に離職することはなくなります。

有期契約労働者のように、契約期間満了を理由として、退職することもありません。

つまりY社では、職務等級が4等級のパートタイマーを正社員化することで、優秀な人材の流出を防ぎ、長く働いてもらえる環境を作ることができるのです。

また、同じ工業団地内の他社の工場には、正社員化制度が整備されていない工場も多かったため、他社の従業員が「Y社で働いて、正社員を目指したい」と考えて、Y社に移ってくるケースも増えました。

これに加えて、生産性も大幅に向上しました。なぜならば、

  • 転換規定について、パートタイマー全員に周知したことにより、「頑張れば正社員になれる」という認識が浸透し、仕事への意欲が大きく高まった
  • 正社員への転換のためには、他のパートタイマーより良い評価を受ける必要があるため、パートタイマーの間に程よい競争意識が芽生え、パートタイマー全体の平均的な能力が向上した
  • パートタイマーから正社員に転換した従業員が、パートタイマー時代の経験や知識を生かして、パートタイマーのマネジメントを行なった

など、様々なメリットが得られたからです。

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正社員への転換が会社に与える影響は、思っているよりずっと大きいのだ!

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正社員化コースの受給

この時Y社は、キャリアアップ助成金の正社員化コースによって助成金を受給しています。

正社員化コースとは、有期契約から無期雇用や正規雇用へ、あるいは無期雇用から正規雇用へといった転換を実施することで、助成金を受給できる制度です。

それぞれの転換の場合に、以下の助成金を受給することができます。

基本的な支給額 生産性が6%向上している場合
有期契約から正規雇用へ転換 1人当たり57万円 1人当たり72万円
有期契約から無期雇用へ転換 1人当たり28.5万円 1人当たり36万円
無期雇用から正規雇用へ転換 1人当たり28.5万円 1人当たり36万円

(※すべての転換を合わせて、1年度1事業所当たり支給申請上限人数は20人まで)

Y社では、パートタイマーから正社員への転換ですから、有期契約から正規雇用への転換で、1人当たり57万円、生産性要件を満たした場合には72万円の助成金を受給することができます。

転換制度の整備によって、非常に多くのメリットが得られるのは上記の通りですが、それに加えて助成金も漏れなく受給していくことが大切です。

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助成金のように、金額に換算できないメリットが色々あるんだ。でも、やっぱり助成金はありがたいものだね!

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まとめ

本稿では、食品製造業者のY社をモデルとして、キャリアアップ助成金の活用事例について解説してきました。

賃金規定等改定コースにせよ、正社員化コースにせよ、制度の概要を学んだだけでは、実際にどのように活用すればよいのか、活用した場合にどのような効果が得られるのか、といったことが分かりにくいものです。

ぜひ、当サイトで助成金の活用事例も学んでいただければと思います、