賃金アップの時に使える「業務改善助成金」と「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」の違いと使い分け方

最低賃金の引き上げが毎年のように続いている昨今、人件費負担を軽減するためには、助成金の活用が効果的です。

賃金アップに伴って助成金を受給すれば、人件費の増加分をカバーすることができますし、再投資することで経営の改善も可能です。

もっとも、賃金アップに伴って利用できる助成金には、業務改善助成金と、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースの2つが挙げられます。

これを正しく使い分けていくことが大切です。

本稿では、この2つの助成金の違いと、使い分けについて解説していきます。

最低賃金引上げの流れと助成金

働き方改革によって、政府は労働環境の整備を進めています。

これにより、労働者にとって働きやすい環境を作り、定着率向上による労働人口の安定、さらには意欲向上による生産性の増進を目指しており、ひいては経済成長そのものを底上げすることを目指しています。

一口に労働環境の整備と言っても、色々なものが考えられます。

非正規雇用から正規雇用への転換有給休暇の取得促進時間外労働の削減といった待遇の改善もあれば、テレワークのための機器の導入業務効率化のためのコンサルティングなど、業務環境の改善もあります。

 

現在、労働基準法の改正などによって、具体的に進められているのは待遇の改善です。

業務環境の改善となると、それぞれの企業によって必要性も取り組みの規模も異なるため、ひとまず企業に任せる形で適宜支援することしかできません。

しかし、待遇の改善は、本来ならば当然そうあるべき待遇に是正していく意味が強いのだ!

例えば、

  • 本来ならば付与されるべき年次有給休暇の付与を義務化する
  • 本来ならば超えてはならない時間外労働の上限を規制する
  • 本来ならば極端に差が出るべきではない賃金格差を是正する

といった意味が強いのです。

したがって、待遇の改善は業務環境の改善よりも、かなり力強く推進されています。

これにより、会社は労働力の確保が必要になったり、人件費負担に対処したりする必要に迫られているのです。

特に、最低賃金法における最低賃金の引き上げは、ここ数年でかなりスピードアップしているわ。

働き方改革が推進される以前であれば、最低賃金はせいぜい年間1%未満~1%台の上昇にとどまるのが普通でした。し

かし、徐々に引き上げ率は高まっていき、第三次安倍内閣が働き方改革の推進を具体的に開始した2016年以降は年間3%以上の引き上げが続いています。

最低賃金の引き上げは、政府の指定する水準までの引き上げを会社に奨励するものではなく、引き上げを義務付けるものです。

このため、最低賃金を下回っている会社では、罰則の対象となったり、助成金をはじめとした政府の支援を受けられなくなってしまいます

したがって、会社は最低賃金の引き上げに応じていく必要があります。

特に、社内の賃金制度において、最低賃金を下回る恐れがある待遇の従業員がいれば、優先的に賃金引上げの対象として、最低賃金をクリアしていく必要があるでしょう。

当然、人件費負担は大きくなるため、助成金を活用するなどして負担を軽減しつつ、賢く対応していくことが大切です。

そのために利用できる助成金の一つに、業務改善助成金があります。

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業務改善助成金とは?

業務改善助成金とは、中小企業・小規模事業者を対象に(したがって大企業は対象ではない)、生産性の向上を支援するものです。

生産性を向上させるためには、設備や機器の導入、職業訓練の実施、業務効率化のコンサルティングなどが必要ですが、このような取り組みに要した経費の一部を助成してもらうことができます。

業務改善助成金では、単に生産性向上を実施すれば助成金を受給できるものではありません。

生産性を向上し、それによって賃金を引き上げる余裕を生み出し、事業場内最低賃金(自社の事業場において、最も低い賃金)を引き上げることによって、はじめて受給が可能となります。

助成金の支給額は、取り組み時点での事業場内最低賃金が800円未満であるか、800円以上であるかによって変わり、以下のように設定されています。

事業場内最低賃金の引き上げ額 助成率 引き上げる労働者の数 上限額 助成対象の事業場
30円コース(800円未満) 4/5(9/10) 1~3人 50万円 事業場内最低賃金が800円未満の事業場
かつ事業場内最低賃金と地域別最低賃金の
差額が30円以内
及び事業場規模30人以下の事業場
4~6人 70万円
7人以上 100万円
30円コース(800円以上) 3/4(4/5) 1~3人 50万円 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内
及び事業場規模30人以下の事業場
4~6人 70万円
7人以上 100万円

※助成率のカッコ内は生産性要件を満たした場合。

この表を見ればわかる通り、事業場内最低賃金が800円以上の会社で、1人の労働者に対して30円の引き上げという最低の条件でも、上限50万円までの助成が受けられるため、利用価値の高い助成金と言えます。

※業務改善助成金について、本稿ではごく基本的なことだけを説明しています。詳しい説明については、以下の記事を参考にしてください。

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キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)との違い

同じく、賃金アップによって受給できる助成金として、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースがあります。

これも、従業員の賃金をアップした場合に、助成金を受給できるものです。

業務改善助成金とキャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の違いが分かりにくいと思いますが、この両者には以下のような違いがあります。

業務改善助成金

  • 生産性向上を目指すことが前提となる。
  • 増額の対象となるのは、事業場内における最低賃金である。
生産性の向上を前提としたうえで、特に賃金が低い従業員の賃金を増額し、同一事業場内での賃金格差を是正することを目的としている。

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

  • 生産性向上を前提としていない。
  • 増額の対象が、事業場内最低賃金に限定されていない。
生産性に関係なく、賃金規定の改定により、非正規雇用労働者の賃金を増額し、正規雇用労働者との賃金格差を是正することを目的としている。
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両制度の使い分け

以上のように、業務改善助成金とキャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)は、似ているようで異なるものです。したがって、それぞれをしっかりと使い分けていく必要があります。

業務改善助成金を使うべき場合

例えば、

  • 生産性が低く、業績の伸び悩みや財務的な非効率につながっている
  • 資金繰りに余裕がなく、人件費を低くせざるを得ない
  • 従業員のモチベーションが低く、生産性がさらに悪化している
  • 従業員の定着率が低く、労働力も不足している

といった悪循環に陥っている会社では、モチベーションや定着率アップのために、賃金を上げるのが効果的です。

しかし、単に賃金を上げるだけでは負担があまりにも大きくなる!

そこで、賃金アップの前提として生産性向上に取り組み、生産性向上によって業績や財務を改善し、これによって賃金を上げるのです。

このような苦しい会社では、小規模な賃金アップで大きな効果を得るために、事業場内で最も賃金が低い従業員を対象とするのが効果的です。

賃金を50円引き上げる場合、時給1500円のスタッフを対象とする場合と、時給800円のスタッフを対象とする場合では、後者のほうが圧倒的に効果的であり、従業員のモチベーションや定着率の向上につながるでしょう。

以上の理由から、生産性向上の後に事業場内最低賃金をアップする、業務改善助成金が効果的なのです。

さらに効果的な場合

さらに効果的なケースを挙げると、

  • 事業場内での賃金格差が大きい
  • 事業場内最低賃金が政府の最低賃金改定に引っかかりそうである

といった場合には、業務改善助成金が特に効果的です。

政府の最低賃金改定が、事業場内最低賃金を上回る懸念がある場合、好むと好まざるとに関わらず、事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。

どうせ引き上げるならば、業務改善助成金を受給し、生産性の向上を図りながら賃金アップに取り組んだほうがベターです。

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)を使うべき場合

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースを使うべき場合には、いくつかのケースが考えられます。

事業場内最低賃金が1000円以上の会社

まず、事業場内最低賃金がすでに1000円以上の会社では、賃金規定等改定コースを選びます。

業務改善助成金では、事業場内最低賃金が1000円未満の企業を対象としているため、すでに1000円以上を支給している会社では、おのずと賃金規定等改定コースを利用することになるのです。

事業場内最低賃金を引き上げるべきでない会社

業務改善助成金を選ばないほうが良い会社でも、賃金規定等改定コースを利用すべきでしょう!

事業場内の賃金に差をつけている理由には色々あるでしょうが、会社によっては、単純作業であるなどの理由から、あえてその賃金を設定していることがあります。

このような会社では、業務改善助成金を利用することで、作業内容に見合わない賃金設定になってしまう可能性もあるため、無理に引き上げるのは得策ではありません。

それよりも、賃金規定等改定コースを利用し、できるだけ高い効果が見込めるよう、賃金アップを図るべきでしょう。

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まとめ

本稿で解説した通り、業務改善助成金は生産性向上を前提としております。

事業内最低賃金の引き上げを目的としており、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースは生産性の如何に関わらず、非正規雇用と正規雇用の賃金格差を是正することを目的としています。

自社では何を重点的に取り組むべきか、また現在の事業場内最低賃金がいくらであるかなどによって、この2つの制度の使い分けが変わってきます。

正しく使い分けるためにも、双方の特徴をよく知り、社労士とも相談しながら活用することをおすすめします。

助成金

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