受取手形は、取引先が振り出すことで発生するものであり、なおかつ手形の現物が存在します。
自社が単独ででっちあげることはできませんし、現物の提示を求められれば粉飾がばれてしまうため、資産の中でも粉飾が起こりにくい科目と言えます。
しかし、受取手形として計上されている資産の中には、
- 不渡になりそうな手形
- 不渡になった手形
- 正しく仕訳されていない手形
- 本来は手形とは言えない資産
などが含まれていることがあるため、それを鵜呑みにすることはできません。
特に、銀行の融資審査では慎重に把握していく必要があります。
本稿では、受取手形だからといって安心できない理由と、銀行の考え方について解説していきます。
手形でも安心できない理由
一般的に、受取手形は売掛金よりも信頼できるものと考えられています。
売掛金は、たとえ売り上げていない場合でも、伝票一枚で架空の売掛金をでっちあげることができます。
しかし受取手形は、取引先が振り出してこそ発生するものであり、自社が単体ででっちあげることはできません。
正確には、自社で架空の受取手形をでっちあげること自体は可能です。
しかし、銀行から手形の現物を見せるように言われてしまえば、どうしようもなくなってしまいます。
そのリスクを負うより、架空の売掛金を計上したほうが心理的にもラクであるため、架空の受取手形を計上するという粉飾は、あまり起こりません。
このため、銀行が融資の審査にあたって、会社の財務を把握する上でも、受取手形は売掛金よりも安心だと考えられます。
しかし、これはあくまでも「売掛金よりも安心してみることができる」というだけであって、「受取手形に対して一点の疑いも抱かない」ということではありません。
受取手形でも安心できない理由には、以下のような理由が考えられます。
振出人に信用がない
そもそも受取手形とは、取引先への売上を現金ではなく手形で受け取るものであり、後日決済されてはじめて代金が回収されます。
裏を返せば、貸借対照表に受取手形が計上されていたとしても、振出人の信用があまりにも低ければ、手形が不渡りになって代金を回収できない可能性が高いため、その受取手形に資産価値はありません。

もちろん、振出人に信用がない受取手形は、手形割引によって資金繰りに活用することができない。
裏書譲渡に回しても、結局は貸し倒れになって買い戻す必要があるため、やはり資産価値はないものと見ます。

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不渡手形が含まれている
手形が不渡りになれば、売上を回収することは困難となります。
このとき、受取手形勘定から不渡りになったものを除き、不渡手形は不渡手形勘定に計上する必要があります。
しかし、資産内容を悪化させたくないと考えたり、正しい仕訳を怠ったりした結果、不渡手形が受取手形に入れっぱなしになっていることがあります。
銀行が資産内容を正確に把握するためには、計上されている受取手形を鵜呑みにせず、不渡手形を特定し、除外したものだけを資産とみなす必要があります。

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仕訳が正しく行われていない
貸借対照表の受取手形に計上されるのは、営業によって発生した手形だけに限られます。
資産を売却し、その代金を受取手形で受け取った場合など、営業に関係ない場合には別勘定として計上する必要があります。

しかし、会計処理が甘い中小企業では、この仕訳が正確に行われないことがあるわ。
営業に関係ない手形を受取手形として計上していることがあるのです。
この場合にも受取手形を鵜呑みにしてしまえば、融資先の資産内容を見誤る可能性があります。
手形サイトを社長にヒアリングし、「受取手形は〇ヶ月で回収されるから、資金繰りも問題なさそうだ」と思っていたところ、回収まで長い期間を要する営業外の手形が入り込んでおり、実際には資金繰りが不安定な状態だった・・・といったミスにつながることがあるのです。
実態は貸付金である
営業に関係のない手形がきちんと別勘定になっていたとしても、安心することはできません。
例えば、「資産売却受取手形」などの勘定になっている手形があります。
これは、本当に資産を売却して手形を受け取っているならば、何ら問題はありません。
しかし、実際には資産を売却したのではなく、関係会社に資金を貸し付け、その代わりに手形を受け取っているというケースもあります。
この場合には、手形として計上されていたとしても、実態は貸付金にすぎません。
しかも、関係会社に貸し付けているのですから、返済されない可能性もあります。
ならば、銀行はこの手形勘定を資産価値ゼロとしてみなす必要があります。

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不正に振り出された為替手形である
一口に手形と言っても、手形には約束手形と為替手形の二通りがあります。
約束手形とは、一般的な受取手形の形態であり、手形の振出人が支払うことを約束するものです。
一方、為替手形は手形の振出人ではなく、第三者が支払うことを約束するものです。
為替手形は一般的ではありません。
手形は、売り手と買い手の二者間でやり取りするのが普通であり、この場合には買い手が約束手形の振出人となります。
為替手形は、三者間で清算する場合にのみ使う手形であるため、あまりなじみがないのです。

ところが、代金の取り立てのために、為替手形が都合よく使われることもあるんだ。
例えば、本来ならば売り手と買い手の間で約束手形が振り出されるべきところで、買い手が個人事業主や零細企業で当座預金を持っていないために、約束手形を振り出せないことがあります。
この場合、売り手が為替手形を振り出し、受取人は売り手、支払人は買い手とすることがあるのです。
この時、買い手自身が約束手形を振り出したのではなく、売り手から為替手形を引き受けさせられています。
そのため、買い手は手形に対する意識が低く、不渡りになってしまう可能性が非常に高くなります。
その会社が資産として計上している受取手形のうち、一部でもそのような為替手形が含まれていれば、どうなるでしょうか。
その手形が不渡りとなれば、会社の信用は失墜し、経営全般に大きな悪影響となります。
もちろん、半年以内に2回の不渡りを起こせば、事実上の倒産となります。

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まとめ
本稿で解説したとおり、受取手形が売掛金よりも安心できるからといって、銀行がそれを鵜呑みにすることはありません。
鵜呑みにしてしまうと、銀行は大変なリスクを負ってしまう可能性があるため、受取手形の内容についても詳細な把握に努めます。
銀行から疑いを抱かれることなく、融資交渉をスムーズに進めるためには、普段から手形を正しく取り扱い、常にクリーンな状態に保っておくことが大切です。
本稿と関連して、手形による重大な不正である融通手形についても解説しています。
詳しくは、こちらの記事を参考にしてください→
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