融通手形は取引の実態がないにもかかわらず、銀行で割り引いてもらうためだけに発行される手形です。
資金繰りが苦しい企業が、相手先に謝礼を支払うことなどを条件として振り出してもらいます。
こういった取引実態のない手形を銀行も警戒しており、融通手形を見抜く方法はいくつもあります。
仮に融通手形だと見抜かれてしまうと、今後の関係性にも影響が出るでしょう。
本記事では、「融通手形の基礎知識」と、銀行から簡単に見抜かれる理由」について解説していきます。
融通手形とは?

手形における粉飾の最たるものが、「融通手形」です。
受取手形は、架空の手形を計上する粉飾があまり起きません。
なぜなら、融資の審査などで手形の現物を見せるように言われたとき、粉飾がばれてしまうからです。
そのリスクを負うよりは、架空の売掛金を計上したほうが弁解しやすいため、架空の売掛金によって粉飾するケースが多いです。
しかし、まったく粉飾が起きないわけではなく、「融通手形」による粉飾が行われる可能性があります。
「融通」には、なんとなくうまくやってのけること、臨機応変に処理していくこと、お金をうまくやりくりすることなどの意味があります。
「ちょっとお金を融通してくれませんか」というように、お金を貸し借りする際にも使う言葉です。
融通手形は「お金をやりくりするためにうまい具合に振り出された手形」とも表現できます。
取引の実態がないにもかかわらず、取引があったように見せかけて、取引先に受取手形を振り出してもらい、その受取手形を銀行に割り引いてもらうことで資金を調達します。
融通手形の振出人

融通手形という無理な相談が通るのですから、相手先の会社はかなり親密な会社だといえます。
関係会社、同業者、親密な仕入先などに融通手形の振り出しを依頼するのが一般的です。
関係会社は、融通手形の振り出しにもっとも都合が良いでしょう。
自社より力が弱い関係会社ならば、多少の無理も通ります。
同業者も、同業のよしみで融通手形を振り出すことがあります。
親密な仕入先も、関係に傷をつけたくないと考えて、融通手形の振り出しに応じることがあります。
ほかにも、親密な相手先に対し、「融通手形によって調達した資金のいくらかを謝礼として支払う約束」で融通手形を振り出してもらうことも良くあります。
融通手形はバレる?

このように特殊な流れで振り出されるため、融通手形はかなり特徴的な手形だと言えます。
関係会社の場合
上記で、関係会社は融通手形を振り出すのにもっとも都合が良い相手だと書きました。
もちろん、関係会社の間で取引をして相乗効果を期待することもあるため、全ての手形が融通手形とは言えません。
しかし、融通手形が発生しやすい環境であることは間違いないため、銀行も疑いを抱きやすくなります。
本当に融通手形を発行した場合は恐らくすぐにバレてしまうでしょう。
同業者の場合
次に同業者ですが、同業者間で手形の振り出しが行われる場合、怪しい部分が多くなります。
たとえば、車業界を想像してみてください。
完成車メーカーのT社とH社は同業者の関係にあり、どちらも同じものを製造、販売しています。
このような取引関係になりにくい同業者間で手形が振りだされていると、融通手形として疑われやすいです。
親密な仕入先の場合
親密な仕入先からの融通手形は、特にわかりやすいです。
普通、自社が商品を買う相手なのですから、自社から手形を振り出すことはあっても、仕入先から手形を受け取ることは不自然です。
融資手形であることを隠すために、「値引き分を手形で受け取った」などと理由をつけることがありますが、これも不自然です。
値引きや返品を行う場合は、わざわざ手形を振り出さずに次回以降の取引で相殺するのが一般的でしょう。
銀行は融通手形とどう向き合う?

関係会社や同業者、仕入先などから振り出されており、それが疑わしいものであっても、それだけで融通手形だと断定することはできません。
銀行は、当座預金の異動照会を確認することで融通手形を発見します。
口座情報を確認したときに、50万円や100万円などキリのいい手形がよく決済されているならば、融通手形の可能性を疑います。
普通の商売では、端数までしっかり請求するのが普通ですから、端数のない金額が頻繁に決済されるのは不自然です。
ところが、それを知っている会社では、わざと端数をつけるて銀行から怪しまれないように工夫することがあります。
こういった事情もあり、銀行が完全に融通手形を特定するのは非常に難しいです。
融通手形の断定よりも融資審査の資料に使う

銀行はわざわざ融通手形を断定することはあまりしませんが、融通手形を疑う場合は「融資審査」や「与信管理」の参考にすることが多いです。
融通手形を疑った場合、その会社の資金繰り状況がどうなっているかに注意します。
資金繰りが非常に厳しい会社であれば、資金調達のために融通手形に手を出す可能性は高まります。
資金繰りが厳しく、融通手形である可能性も高まったら、貸借対照表に計上されている資産にも疑い目を向けます。
何かしらの粉飾がないかを確認するためです。
直接、融通手形を指摘されることはあまりない
銀行から、「これは融通手形ですよね?」などと言ってくることはあまりありません。
融通手形でなかった場合には会社を怒らせることになりますし、仮に融通手形であっても、「はい、融通手形です」と認めるとは考えられないからです。
融通手形の可能性があると思えば、銀行は何も言わずに黙って疑い、取引に慎重になっていきます。
今後、融資交渉をする際に、「融通手形の疑いがある会社」という前提で交渉を進めていきます。
融通手形は、何ら根本的な解決にはつながらず、銀行との関係が悪化するリスクすらあると認識してください。
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まとめ:融通手形の利用はリスクが高い
融通手形の特定は難しいため、「うまくやれば、バレることはないだろう」と考える人もいます。
しかし、融通手形の特定は難しくとも、融通手形を疑うことは簡単です。
融通手形を使ってしまうと、銀行から疑われて信用を損なう可能性が高いです。
そのうえ、融通手形に取引の実態はなく、資金繰りの根本的な解決にはなりません。
融通手形の振り出しに高い謝礼を払っている場合は、資金繰りに悪影響を与えます。
融通手形にメリットはほぼないため、ほかの資金調達方法やファクタリングの利用を検討してみてください。


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