雪国の企業で、季節労働者の通年雇用に取り組む会社では、「通年雇用助成金」を利用することができます。
通年雇用助成金で助成対象となっている措置には、色々な措置があります。
それらの措置の特徴を知り、適切に使い分けていくことによって、人材確保にも最大限に役立てていくことができます。
本稿では、通年雇用助成金の措置のうち、基本的な措置について、詳細な内容と活用のポイントを解説していきます。
通年雇用助成金とは?
積雪や寒冷の影響を強く受ける地域では、冬期には操業できなくなる会社もあります。
特に、第一次産業や観光業がそれにあたりますが、このため、労働者は冬期の間、離職を余儀なくされ、安定した就労ができなくなってしまいます。
また、企業側としても、毎年のように冬期に離職者を出していると、冬期が明けてからの労働力を確保するために、採用コストが無駄にかかってしまったり、労働力を確保できなかったりすることがあります。

そこで、政府は季節労働者の通年雇用を促進するために、「通年雇用助成金」を実施しています。
通年雇用助成金で、助成対象となる取り組みには色々なものがあります。
本稿では、基本的な措置についてみていきましょう。

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事業所内就業・事業所外就業
まず、事業所内就業もしくは事業所外就業という措置が挙げられます。
【事業所内就業】
事業所内就業とは、季節労働者を冬期間も継続して同一の事業所で就業させる措置です。
【事業所外就業】
事業所外就業とは、季節労働者を他の事業所で配置転換・労働者派遣・在籍出向により就業させ、冬期間も継続雇用する措置です。
また、この措置では以下の条件が設定されています。
- 対象労働者:9月16日以前から雇用され、翌年1月31日において雇用保険の特例一時金の受給資格を得ており、支給を受けることが見込まれる労働者
- 対象期間:12月16日から翌年3月15日
- 継続雇用予定期限:対象期間経過後の同年12月15日まで
事業所内就業・事業所外就業措置の支給額
この措置を実施した会社には、支給対象者1人につき、以下の表の金額が1年ごとに最大3回支給されます。
支給額は、新規継続労働者と継続・再継続労働者で異なります。
対象労働者 | 支給額 |
新規継続労働者 (第1回目の支給対象者) |
対象期間に支払った賃金2/3 (上限額71万円) |
継続、再継続労働者 (第2、3回目の支給対象者) |
対象期間に支払った賃金の1/2 (上限額54万円) |
また、指定地域外の地域で、請負契約に基づき事業を行い、就業をさせるために住所または居所の変更に要する経費を負担した場合、以下の表のように距離に応じて、移動に要した経費相当額が支給されます。
移動距離 | 往復での上限額 |
400km以上800km未満 | 3万円 |
800km以上1200km未満 | 6万円 |
1200km以上1600km未満 | 9万円 |
1600km以上2000km未満 | 12万円 |
2000km以上 | 15万円 |
なお、この場合に経費対象となるのは、交通費(移動に伴う経費)、宿泊費(移動に伴う宿泊費)となっています。
事業所内就業措置の具体例
例えば、1人の労働者に対して事業所内就業措置を実施し、12月16日~翌年3月15日までの3ヶ月間に月20万円、計60万円の賃金を支払い、これを3年間継続した場合には、
- 60万円×2/3=40万円(第1回目の賃金助成)
- 60万円×1/2=30万円(第2回目の賃金助成)
- 60万円×1/2=30万円(第3回目の賃金助成)
となり、合計100万円の支給を受けることができます。
この時、一定の移動を伴った場合には、移動のための経費助成も加算されます
事業所内就業・事業所外就業措置のポイント
この措置が、最もスタンダードな措置となります。
通年雇用助成金では、この措置を基本として組み立てられている措置が多いので、まずは事業所内就業・事業所外就業の措置を押さえておきましょう。
この措置を実施すれば、冬期も継続雇用するだけで、賃金の大部分を助成してもらうことができます。

助成金をもらいながら通年雇用することによって、冬期が明けてから人材募集をする必要がなくなり、コスト低減にもつながります。

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休業措置
この措置は、季節労働者を冬期も継続して雇用するものの、期間中一時的に休業させる措置です。休業期間中には、休業手当を支払います。
この措置では、以下の条件が設定されています。
- 対象労働者:9月16日以前から雇用され、翌年1月31日において雇用保険の特例一時金の受給資格を得ており、支給を受けることが見込まれる労働者
- 対象期間:12月16日から翌年3月15日
- 継続雇用予定期限:対象期間経過後の同年12月15日まで
- 休業手当:12月16日から翌年1月15日の賃金締切日の翌日から、4ヶ月後の賃金締切日までの期間中、対象労働者が本来働くべき所定労働日のうち、休業させた日数分の休業手当
休業措置の支給額

①事業所内就業・事業所外就業を実施した場合の、支給対象者に対する賃金の支給額
対象労働者 | 支給額 |
新規継続労働者(第1回目の支給対象者) | 対象期間に支払った賃金2/3(上限額71万円) |
継続、再継続労働者(第2、3回目の支給対象者) | 対象期間に支払った賃金の1/2(上限額54万円) |
または、
②休業に対する支給額
休業助成の申請回数 | 支給額 |
1回目 | 1月から4月に支払った休業手当(最大60日分) および対象期間に支払った賃金(休業手当を除く)の合計額の1/2 (上限額新規継続労働者71万円、継続・再継続労働者54万円) |
2回目 | 1月から4月に支払った休業手当(最大60日分) および対象期間に支払った賃金(休業手当を除く)の合計額の1/3 (上限額54万円) |
のいずれか(年度ごとに選択した額)が支給されます。
ただし、支給対象者1人あたり、①の助成は最大3回、②の助成は最大2回、両方あわせて最大3回の支給となります。
休業措置の具体例
例えば、1人の労働者に対して事業所内就業措置を実施し、12月16日~翌年3月15日までの3ヶ月間に月20万円、計60万円の賃金を支払い、これを3年間継続した場合には、
- 60万円×2/3=40万円(第1回目の賃金助成)
- 60万円×1/2=30万円(第2回目の賃金助成)
- 60万円×1/2=30万円(第3回目の賃金助成)
となり、合計100万円の支給を受けることができます。
しかし、様子を見ながら継続雇用に取り組むため、1年目は60日(2ヶ月間)、2年目は30日間(1ヶ月間)の休業期間を設定します。
休業手当を通常の賃金(月20万円)の6割(月12万円)と仮定すると、この助成金の支給額は、
【1年目】
所定労働期間=30日間(1ヶ月間)、休業期間=60日間(2ヶ月間)
- 20万円×2/3=13.3万円(第1回目の賃金助成)
- 12万円×2ヶ月間×1/2=12万円(第1回目の休業助成)
- 計25.3万円
【2年目】
所定労働期間=60日間(2ヶ月間)、休業期間=30日間(1ヶ月間)
- 40万円×1/2=20万円(第2回目の賃金助成)
- 12万円×1ヶ月間×1/2=6万円(第2回目の休業助成)
- 計26万円
【3年目】
所定労働期間=90日間(3ヶ月間)、休業期間=0日間(0ヶ月間)
- 60万円×1/2=30万円(第3回目の賃金助成)
- 計30万円
となり、3年間での合計受給額は81.3万円となります(※休業手当については、ざっくりとした計算です)。
休業措置のポイント
賃金などを同じ条件にして、事業所内就業・事業所外就業の受給額と比較すれば、休業措置の受給額は少なくなるでしょう。
しかし、人材不足解消の観点から、冬期の継続雇用を検討しているものの、継続雇用の負担が大きい会社もあると思います。
そのような会社では、
「冬期の継続雇用に取り組みたいが、冬期全体で継続雇用するには不安がある。一定の休業期間も設けながら、継続雇用に取り組もう」
と考えて、休業手当の一部と、冬期の賃金の一部の助成を受けつつ、継続雇用に取り組むことができます。
通年雇用が難しい会社は、いきなり事業所内就業・事業所外就業に取り組むよりも、まずは休業措置から徐々に取り組むのも一つの手です。

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季節トライアル雇用
季節トライアル雇用は、一般的な「トライアル雇用助成金」を季節労働者向けに設計した措置です。
季節労働者を継続雇用するにあたり、3ヶ月間のトライアル期間を設けて雇用し、トライアル期間終了後に、常用雇用として雇い入れた場合に、助成金の対象となります。
季節トライアル雇用の支給額
この措置では、常用雇用に移行した日から起算して6ヶ月の期間に支払った賃金の1/2の額から、トライアル雇用を行うことによって支給されたトライアル雇用助成金(最大3ヶ月12万円)の額を減額した額(上限額71万円)が支給されます。
季節トライアル雇用の具体例
季節労働者をトライアル雇用すれば、常用雇用に移行することで、通常のトライアル雇用助成金として最大3ヶ月12万円が支給されます。
その上で、常用雇用に移行した、6ヶ月分の賃金を支払った場合に、通年雇用助成金が支給されます。
例えば、トライアル雇用の後に、常用雇用に移行した労働者に対し、月々20万円の賃金を支払っていれば、
- 20万円×6ヶ月=120万円(常用雇用後の賃金)
- 120万円×1/2=60万円(助成率)
- 60万円-12万円=48万円(トライアル雇用助成金の支給額を差し引く)
という計算によって、48万円が支給されます。

季節トライアル雇用のポイント
トライアル雇用助成金は、従業員としての適正に不安がある人を雇い入れるとき、トライアル期間を設けることで適正を見定めるときに用います。
したがって、季節トライアル雇用は休業措置とは異なり、
「休業期間は設けず、継続雇用に積極的に取り組みたい。
だが、継続雇用すべきかどうか、従業員の適正はしっかり見極めたいので、トライアル雇用期間を設けたい」
という考えで利用するものです。
このように取り組めば、継続雇用すべき従業員をしっかり見極めることができ、失敗のリスクを下げることができます。
トライアル雇用期間を設けずに事業所内就業・事業所外就業措置、あるいは休業措置を実施するよりも、受給額は少なくなってしまいますが、低リスクでじっくり取り組みたい会社に向いています。

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まとめ
本稿で解説した通り、一口に通年雇用といっても、
- 冬期の全てで継続雇用する
- 休業期間を設けながら継続雇用する
- トライアル期間を設けながら継続雇用する
など、様々な措置があります。
これにより、通年雇用が難しい会社でも、自社のペースでゆっくり取り組んでいくことも可能です。対象地域・業種に該当する会社であれば、ぜひ活用してみてください。
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