「助成金」と聞いたとき、「厚生労働省の助成金制度」を思い浮かべる人は多いと思います。
しかし、助成金を実施しているのは厚生労働省だけではなく、都道府県などが実施している助成金制度もあります。
特に助成金制度に積極的な都道府県は、東京都です。
東京都は、全国の都道府県の中でも「働き方改革の旗手」といってよいほど、働き方改革に伴う助成金の実施に力を入れています。
本稿では、東京都が実施する助成金の中でも、特に利用しやすい「TOKYO働き方改革宣言企業制度」について解説していきます。
東京都が実施する助成金がある
働き方改革の推進に伴い、厚生労働省が実施する助成金に注目が集まっています。
しかし、助成金を実施しているのは厚生労働省だけではありません。
もちろん、厚生労働省が中心となって実施しているものの、都道府県単位で実施されている助成金もあります。

中でも、盛んに取り組んでいるのが東京都なのよ。
東京都産業労働局では多くの助成金制度を実施しており、働き方改革を推進するための助成金にも力を入れています。
TOKYO働き方改革宣言企業制度について
そのうちの一つに、「TOKYO働き方改革宣言企業制度」というものがあります。
これは、東京都内の企業の働き方改革を推進するための制度であり、長時間労働の削減、年次有給休暇の取得の促進により、働き方・休み方を改善することを目的としています。
また、働き方・休み方の改善により、
- 人材の確保・定着
- 経営力の向上
- 社員のモチベーションアップ
- 生産性向上
なども目指しています。
このような取り組みのために、
従業員の長時間労働の削減・年次有給休暇の取得促進について、今後2~3年間の目標と取り組みを設定し、TOKYO働き方改革宣言を行う会社のことを、
「TOKYO働き方改革宣言企業」
といいます。
さらに、その企業を支援する仕組みを「TOKYO働き方改革宣言企業制度」といい、様々な支援が行われています。
例えば、
- 最大で110万円の助成金を受給することができる
- 生産性向上支援のコンサルティングを無料で受けることができる
- 専門家による助言を受けることができる
などの支援を受けることができます。

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支援の内容
TOKYO働き方改革宣言企業制度では、宣言のための出発点において、働き方改革宣言奨励金を活用するかどうかによって進め方が大きく異なります。
働き方改革宣言奨励金を活用しない会社では、目標と取り組み内容を設定するだけでTOKYO働き方改革宣言企業に認定されます。
一方、働き方改革宣言奨励金を活用して宣言する場合、奨励金の受給に伴って詳細な取り組みを設定したり、制度整備を実施したりする必要があります。

では、それぞれの場合について、支援の内容を見ていこう。
働き方改革宣言奨励金を活用しない場合
上記の通り、働き方改革宣言奨励金を活用せずに働き方改革宣言をする場合には、手続きは簡単です。
これは、奨励金を受給しないことから、審査も簡単に済むためです。

応募が「随時受付」となっているのも、産業労働局が構える必要がないからだろう。
働き方改革宣言企業の対象となるのは、
- 都内で事業を営んでいること
- 都内に勤務する、常時こうする労働者を2名以上、かつ6ヶ月以上継続雇用していること
などが要件となっています。
かなり低いハードルに設定されていることが分かります。
この要件を満足している会社が、
- 働き方改革に向けた目標と取り組み内容を設定する
- 宣言企業の承認申請書類を提出する
- 宣言企業の承認決定を受け、TOKYO働き方改革宣言企業ウェブサイトで宣言書(1で定めた目標や取り組み内容を記載したもの)が公表される
この手続きを完了すれば、TOKYO働き方改革宣言企業に認定されたことになります。

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働き方改革宣言奨励金を活用する場合
働き方改革宣言奨励金を活用しつつ、働き方改革宣言をする場合には、奨励事業に取り組む必要があるため、ややハードルが高くなります。
まず、対象企業は奨励金を活用しない場合と同様で、
- 都内で事業を営んでいること
- 都内に勤務する、常時こうする労働者を2名以上、かつ6ヶ月以上継続雇用していること
などが要件となっています。
この要件を満たした企業は、
- 働き方改革宣言事業
- 制度整備事業
の2つの奨励事業に取り組んでいきます。

このうち、働き方改革宣言事業は必須ですが、制度整備事業は任意よ。
したがって、働き方改革宣言事業だけを実施することも可能です。
働き方改革宣言事業(必須)
必須となる働き方改革宣言事業を実施した会社には、30万円の奨励金が支給されます。

支給要件を満たすためには、以下のすべての取り組みを実施する必要があるよ。
- 長時間労働の削減、年次有給休暇の取得促進に向け、問題点を抽出する
- 社内のプロジェクトチームにて、抽出した問題の原因を分析し、対策の方針を検討する
- 検討に基づき、目標と取り組み内容を設定する
- 目標と取り組み内容を社内に周知する
必須となる働き方改革宣言事業ですが、この流れを見てみれば、それほど難しくないことが分かるでしょう。
奨励金を受給しない場合でも、目標・取り組みの検討は行うはずですから、特に理由がない限り働き方改革宣言事業に取り組み、奨励金を受給したほうが良いと言えます。
制度整備事業(任意)
制度整備事業は任意となっています。
こちらは、働き方改革宣言事業とは異なり、単に検討すれば受給できるものではなく、実施を伴うため負担も大きく、だからこそ任意に設定されています。
制度整備事業を実施した場合、最大で40万円の奨励金が支給されます。
実施できる取り組みと奨励金の支給額は、
- A、【働き方の改善】の対象制度を1つ以上整備する→10万円
- A’、Aの取り組みにおいて、テレワーク制度または在宅勤務制度を整備している→10万円
- B、【休み方の改革】の対象制度を1つ以上整備する→10万円
- C、【働き方の改善】と【休み方の改善】の対象制度を、どちらも1つ以上整備し、合計5つ以上整備する→10万円
となっています。
受給要件における
は、以下の通りです。
- フレックスタイム制度(始業時間と終業時間を労働者にゆだねる制度)
- 短時間勤務制度(正社員の短時間勤務を認める制度)
- テレワーク制度(情報通信技術を活用し、場所を選ばず働くための制度)
- 在宅勤務制度(情報通信技術を活用し、在宅勤務を実施するための制度)
- 勤務間インターバル制度(勤務終了から次の勤務開始までの間、一定の休息時間の確保を義務付ける制度)
- 時差出勤制度(始業時刻を30分以上前倒し、ゆう活や 時差出勤を推進すること)
- 週休3日制度(すべての暦週において3日以上の休日を 設けること)
- 業務繁閑に応じた休業日の設定(閑散期の飛び石休日を連続休暇にする 等、業務繁閑に応じた休業日の設定)
- 年次有給休暇の計画的付与制度(ゴールデンウィークや夏季・冬季等の機会 を捉えた、年次有給休暇の計画的付与制度)
- 記念日等有給休暇制度(誕生日・記念日等の決まった日や申告し た日を有給休暇とし毎年付与する制度)
- 時間単位での年次有給休暇制度(年次有給休暇を時間単位で取得できる 制度)
- 連続休暇制度(5営業日以上の連続休暇制度)
- リフレッシュ等休暇制度(リフレッシュやリカレント教育のための 休暇制度)
- 柔軟に取得できる夏季休暇制度(夏季において、労働者の申請に基づき取得できる3日以上の休暇制度)
これらの対象制度については、しばしば変更が加えられているため、最新のものをしっかり把握することが大切です。

このような変更には注意が必要だぞ。
これらの取り組みを、以下の流れで実施していきます。
- 1事前エントリー(2019年度は5月10日にエントリー受付開始)
- 2エントリー確定の連絡を受けたら、研修を受講する
- 3奨励金の交付申請書類を提出する
- 4交付決定後、事業実施期間として東京都が定める2~3ヶ月間で、奨励事業を実施する
- 5奨励事業が完了したら、実績報告書類を提出する。このとき、宣言企業の申請も行う
- 6実績を審査し、奨励金が支給される
- 7宣言企業の承認決定を受け、TOKYO働き方改革宣言企業ウェブサイトで宣言書(1で定めた目標や取り組み内容を記載したもの)が公表される
できるだけ多くの奨励金を受給するためには、対象制度の組み合わせをよく考えると良いでしょう。
テレワーク制度や在宅勤務制度に関心がある会社であれば、それを実施するだけでA’もクリアするため、20万円を受給することができます。
また、労働基準法の改定によって、2019年4月1日から年次有給休暇の付与が義務化されているため、それに対応することも含めて取り組むと、休み方の改善も実施できると思います。
自社で無理なく実施できる制度を整備していけば、合計5つ以上を実施し、40万円の支給を受けられる会社も少なくないはずです。
なお、制度整備事業に取り組むことができるのは、働き方改革宣言事業を行った会社のみとなります。
このため、両方に取り組もうと考えている会社では、制度整備事業から取り組むことはできず、あくまでも働き方改革宣言事業から始める必要があります。

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TOKYO働き方改革宣言企業に認定されたのちの支援
ここまで書いてきた通り、働き方改革宣言奨励金を活用するかどうかによって流れは変わるものの、それぞれの流れを踏んだのちにTOKYO働き方改革宣言企業に認定されます。
TOKYO働き方改革宣言企業に認定されると、さらにいくつかの支援を受けられるようになります。受けられる支援は、
- 生産性向上支援コンサルティングを無料で受けられる
- 働き方改革助成金を最大40万円受給できる
- 専門家によるフォローを受けられる
というものです。
生産性向上支援コンサルティング
宣言企業は、専門家によるコンサルティングを無料で受けることができます。
このコンサルティングは、東京都が民間の専門家(中小企業診断士、人事労務支援経験者など)に委託して実施しているものです。
コンサルティングの範囲は、
- 専門家
- 業務改革
- IT推進
- 生産管理・設備
- 人材育成・教育
などとなっています。
制度的にもしっかりとしたものであり、コンサルティングは以下のような流れで、計5回にわたって行われます。
1回あたりの相談時間は2時間程度です。
- ニーズの把握(課題とニーズの深堀り、実施体制とスケジュールの確認)
- ゴール設定(生産性向上によって実現したいことを明確化、自社の強みや弱み、魅力などの把握)
- 現状把握(関係者へのヒアリング、社内状況・業務状況の把握)
- 原因分析・明確化(現状把握による課題の優先度付け、課題の可視化と共有)
- 計画・改善アドバイス(実現性が高い解決策と、具体的な実施方法やスケジュールを提案)
このように、優良でコンサルティングを受けた場合と比較しても、全く遜色ないサポートを受けることができます。

このようなコンサルティングは、経営改善の方針に悩んでいる会社にとっては、かなり利用価値が高いわね。
本来ならば、コンサルティング料を支払わなければならないところを、宣言企業になれば無料で受けられるのですから、宣言企業になる価値がよくわかると思います。
働き方改革助成金
働き方改革助成金は、以下の会社を対象として支給されるものです。
- TOKYO働き方改革宣言企業であること
- 働き方改革宣言奨励金の制度整備事業を実施していること
- 宣言企業の承認決定後3ヶ月以内に、新たに「奨励金の制度整備事業の要件を満たす制度整備」を実施していること(奨励金を活用しないで宣言した場合も含む)

この受給要件を見ればわかる通り、制度整備事業を実施していることが要件となるんだ。
奨励金を活用しないで宣言した会社にもこの要件が適用されるため、助成金を受給するならば、結局は制度整備事業を実施する必要があるということです。
このため、働き方改革助成金を受給したければ、当初から奨励金を受給しながら取り組んだほうが効率的と言えます。
働き方改革助成金の支給額は、1制度の実施につき10万円であり、最大40万円まで受給することができます。
ただし、働き方改革助成金の受給のためには、宣言企業に認定されてから3ヶ月以内に申請し、申請の計画期間内で計画通りに整備を進める必要があります。
宣言企業に認定後、あまり時間的な猶予がないことに気を付ける必要があります。
専門家によるフォロー
3つ目は、専門家による巡回・助言を通したフォローであり、これは宣言企業の全てに対して実施される支援です。

注意したいのは、宣言企業がフォローを望まない場合でも、専門家は必ず巡回・助言するということなんだ。
積極的に取り組む会社にとってはありがたい支援でしょうが、消極的な会社(無料コンサルティングや奨励金・助成金のためだけに宣言した会社)にとっては、多少迷惑なことかもしれません。
しかし、これは支援であると同時に、宣言企業が宣言通りに取り組んでいるかどうかを確認する意味合いもあるのです。
したがって、巡回したところ働き方・休み方の改善につながっていない会社では、助言というよりも指導を受けるような形になるかもしれません。
もっとも、抜き打ちチェックのようなものではないため、安心してください。
専門家による巡回・助言は以下の流れで行われます。
- 宣言企業として認定を受けた約3ヶ月後にアンケートに回答し、訪問日を調整する
- その約1~3ヶ月後、専門家の訪問を受け、ヒアリングなどを通して助言を受ける(訪問時間は1~2時間)
- 巡回・助言の実施後、宣言企業には専門家から「ヒアリング結果報告書」が送付される
また、宣言通りに取り組みが進んでいなかったとしても、宣言企業としての認定を取り消されるようなこともありませんので、助言を参考にしつつ、じっくり取り組むことができます。

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まとめ
助成金を支給しているのは、厚生労働省というイメージが強いのですが、実際には都道府県が実施している助成金制度などもあります。
助成金の活用の基本は、厚生労働省の実施する助成金をうまく活用していくことにあります。
しかし、自社の営業している地域で、厚生労働省以外から支給される助成金があるならば、それにも視野を広げて活用をしていくべきです。
特に、東京都の実施する助成金は充実しており、本稿で解説したTOKYO働き方改革宣言企業制度は、対象事業者のハードルが低く、かなり支援を受けやすい制度となっています。
このような助成金も、経営に役立てていきましょう。
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