従業員が離職したとき、退職金を支給する制度を「退職金制度」といいます。
退職金制度を導入している会社は多いのですが、中には導入していない会社もあり、規模が小さい会社ほどその傾向が強くなります。
退職金制度の導入は、人材確保に役立ちます。
人材不足に悩んでおり、退職金制度を導入していない中小企業では、積極的に導入を検討したいものです。
本稿では、退職金制度の基本的な情報に合わせて、導入にあたって受給できる助成金について解説していきます。
退職金制度とは?
厚生労働省では、退職金制度を以下のように定義しています。
退職給付(一時金・年金)制度とは、任意退職、定年、解雇、死亡等の事由で雇用関係が消滅することによって、事業主又はその委託機関等から当該労働者(又は当該労働者と特定の関係にある者)に対して、一定の金額を支給する制度をいう。
つまり、退職金制度とは、雇用していた従業員が色々な理由で離職するために、社内で退職金を留保しておいたり、外部機関に委託して積田立てておいたりする制度を指します。
もっとも、退職金制度は会社に義務付けられているものではなく、退職金制度を導入するかどうかは会社の自由です。
このため、企業規模が小さくなればなるほど、退職金制度を導入していない会社や、経営不振などを理由に廃止している会社が多くなります。
退職金制度は導入すべき?
退職金制度を導入し、運用していくためには、会社には負担が生じます。
退職金は、会社が得た利益の中から掛金を支払うことで作っていくのですから、当然といえば当然のことです。
したがって、財務的な負担を嫌うならば、退職金制度を導入せずに経営を続けることもできます。
しかし実際には、退職金制度を導入している会社は多く、財務的な負担以上のメリットがあるからこそ導入しているといえます。
退職金制度の最大のメリットは、なんといっても人材確保に役立つことです。
まず、退職金制度を導入している会社で人材を募集するとき、求職者は退職金制度がない会社よりも、退職金制度がある会社で働きたいと考えます。
このため、少なくとも退職金制度がない会社よりも、人材確保で優位に立つことができます。
また、退職金制度がある会社の従業員は、何らかの理由で離職する場合に退職金をもらえるとわかっているため、安心して働くことができます。
退職金がもらえなければ、離職したときの生活が不安ですから、退職金制度のある会社へと転職する人も多く、労働力がなかなか安定しません。
さらに、退職金制度を導入するにあたって退職金規定を定める必要があり、その中で退職金を支給するための要件(雇用形態や勤続年数など)や、退職金の支給方法などを定めます。
これによって従業員は、
- 退職金をもらえるよう、最低でも○年は働きたい
- 退職金が増えるよう、できるだけ長く働きたい
などと考えるため、職場への定着率アップが期待できます。

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退職金制度の現状
上記の通り、退職金制度を導入している会社は多いものの、会社の規模が小さくなるにつれて、退職金制度を導入していない会社が多くなります。
これは、厚生労働省の公表しているデータからもあきらかです(下記は全て、厚生労働省の公表している平成25年データ)。
企業の規模に関わらず、全体で退職金制度の導入状況を見てみると、導入していない会社は24.5%となっています。
全体の7割以上は退職金制度を導入しているのです。
しかし、企業規模別に導入状況を見ていくと、退職金制度を導入していない会社の割合は、
- 従業員1000人以上の会社:6.4%
- 従業員300~999人の会社:10.6%
- 従業員100~299人の会社:18.0%
- 従業員30~99人の会社:28.0%
となっています。
このデータから、企業規模が小さい会社ほど、退職金制度の導入が進んでいないことが分かります。

規模が小さい会社ほど、退職金制度の負担が苦しいことが分かるね。

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利用できる助成金
以上のことから、中小企業ほど退職金制度の導入を考える機会があり、また導入によるメリットも期待できると言えます。
これまで、入職率や定着率の低さによって人材不足に苦しんできた会社では、退職金制度の導入によって入職率・定着率を改善できる可能性があります。
また、中小企業で退職金制度を検討すべき理由は、導入にあたって助成金を受給できるからでもあります。
ただし、助成の対象となっている退職金制度は限定されており、退職金制度さえ導入すれば助成を受けられるわけではありません。
対象は中退共制度
一口に退職金制度といっても、色々な種類があります。
- 退職一時金制度
- 中小企業退職金共済制度
- 特定退職金共済制度
- 退職金保険制度
- 厚生年金基金制度
- 確定給付企業年金制度
- 確定拠出年金制度
などが代表的です。
この中で、特に中小企業を対象にしている退職金制度は「中小企業退職金共済制度(以下、中退共制度)」です。
中小企業では、財務的に余裕がない会社が多く、そのような会社では社内で退職金制度を運用することが困難です。
退職金制度を導入し、運用しようとしても、資金繰りが厳しい時に積み立てた退職金を使い込んでしまうなどして、うまくいかないことが多いのです。
中退共制度は、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する制度であり、中小企業退職金共済法という法律に基づいて運営されています。
中退共制度に加入した中小企業では、契約した掛金を毎月支払って積み立てていき、従業員の退職時にはそこから退職金を支払うことができます。
退職金は中退共から従業員に直接支払われるため、会社が退職金を管理する手間もかかりません。
また、毎月の掛金は損金として計上することができ節税効果が得られるほか、掛金の減額や退職金制度の廃止には厳しい基準が設けられているため、当初の計画通りに積み立てやすい仕組みになっています。

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助成の内容
中退共制度に新規に加入した会社は、国から掛金の一部を助成してもらうことができます。
助成の内容は、
- 助成額:従業員1人当たりの掛金金額の2分の1(助成上限は1人当たり5000円)
- 助成期間:12ヶ月間
となっています。
もし、従業員30人の会社が中退共に加入し、1人当たりの掛金が10000円である場合には、
10000円×1/2×30人×12ヶ月=180万円
となり、180万円もの助成金を受給することができます。
また、掛金を増額した場合には、増額分の3分の1を12ヶ月間にわたって助成してもらうことができます。
ただし、増額による助成の対象となる掛金は、18000万円が上限となっています。
もし、掛金10000円に設定していた上記の会社で、掛金を6000円増額した場合には、
6000円×1/3×30人×12ヶ月=72万円
となり、72万円の助成を受けることができます。

従業員が多い会社では、たくさんの助成金を受給できるよ!

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まとめ
退職金制度を導入することで、人材確保に役立つ様々なメリットを得ることができます。
にもかかわらず、退職金制度を導入していない中小企業の多くは、掛金の負担が厳しいと思っているはずです。
しかし、中退共制度を導入してから12ヶ月間は半分を助成してもらうことができますし、増額後も12ヶ月間にわたって3分の1を助成してもらえます。
この助成金をうまく使えば、掛金の負担がある中で資金繰りを回していくためにはどうすべきかを考え、掛金負担に耐えられる財務を目指していくことも可能かもしれません。
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