障害者雇用で会社の負担となるのが、配慮の難しさです。
十分な配慮ができなければ、障害者が働きにくく感じて離職してしまったり、一般の従業員がどう接していいかわからずに配慮が空回りし、生産性の低下につながることもあります。
そこで重要となるのが、社内の理解を促進することです。
社内理解の促進のためには、障害に関する講習によって知識や情報を共有することが欠かせません。
本稿では、社内理解の促進のための講習によって受給できる、障害者職場定着支援コースの措置について解説していきます。
社内理解の促進の必要性
障害者雇用を実施する会社では、雇用した障害者に対して合理的配慮を提供する義務も負います。
これは、障害者雇用を成功させるためにも必要なことであり、会社にとって負担になるばかりではなく、プラスの側面も持っています。
しかし、この配慮は会社全体で取り組まなければ、絶対にうまくいくものではありません。
経営者や一部の担当者が障害者に理解を示し、配慮に取り組んだとしても、実際に現場で障害者と一緒に働く一般の従業員の理解がなければ、配慮が行き届くことはないのです。
このため、社内理解の促進を含めて障害者雇用に取り組まない会社では、十分な配慮はできず、せっかく雇用しても離職しやすくなります。
これが、くり返し採用と配慮に取り組む負担や、雇用に伴う助成金を十分に受給できないことにつながり、会社の負担は増大していきます。
だからこそ、社内理解の促進に努め、社内の雰囲気づくりに取り組んでいくことも、障害者雇用では欠かせません。

会社全体で障害者を支えていく雰囲気を作っていこう。
社内理解の促進で助成金を受給できる
政府は現在、障害者雇用の促進にも力を入れています。
日本では長きにわたって、障害者人口が増え続けてきました。
2018年4月の厚生労働省の発表によれば、体や心に障害を持つ人の数は936.6万人と推計されており、これは日本の全人口の7.4%を占めています。
主に、高年齢の障害者が増加傾向にあるともされていますが、一般的に生産年齢人口とされる年齢においても障害者は増加しています。
同時に、人口減少に伴う労働人口の減少も深刻化しつつあるため、社会的な負担の増大に対処するべく、政府は障害者雇用を促進しているのです。
したがって、障害者雇用に伴って受給できる助成金は多岐にわたります。
障害者トライアル雇用助成金や特定求職者雇用開発助成金など、障害者を雇用することによって受給できる助成金があるだけではなく、雇用後の配慮によって受給できる助成金も設けられています。
雇用後の配慮で受給できる助成金の代表的なものは、障害者雇用安定助成金です。
障害者雇用安定助成金の障害者職場定着支援コース(以下、障害者職場定着支援コース)では、障害者の職場定着を促すための様々な措置を実施する会社に対して、助成金を支給しています。

障害者雇用関連の助成金は多い。一つ一つをうまく活用していくことが大切だよ。
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障害者職場定着支援コースで社内理解の促進を
障害者職場定着支援コースでは、合計7つの措置が設定されています。
実施する措置の順序やバランスには関係なく、会社に必要な措置を必要なタイミングで実施することで、助成金を受給できます。
この措置の一つに「社内理解の促進」措置が設けられています。
これは、その名の通り社内の一般の従業員に講習を実施し、障害者雇用に対する理解を促す措置です。
人材開発支援助成金など、講習や研修によって受給できる助成金は他にもありますが、人材開発支援助成金で受給できるのは、例えば建設会社におけるクレーン運転技能講習のように、業務に直接関係のある講習・研修に限られます。
社内の雰囲気づくりに役立つ知識を習得するための講習・研修は、助成の対象になりません。
しかし、障害者雇用に伴って、社内理解を促進するための講習・研修であれば、障害者職場定着支援コースを利用することで、助成金を受給しながら取り組むことができます。
障害者職場定着支援コースの社内理解の促進措置の概要は、以下の通りです。

社内理解の促進にもつながるし、社外でも障害者への配慮に役立つ講習だから、社会貢献にもなるね。
措置の内容
社内理解を促進するための措置では、1回につき1時間以上(講習の対象者が同じであり、内容に連続性がある講習については、初回から最終回までを1回の講習とみなす)の講習を実施します。
また、受給要件を満たすためには、以下のいずれかの内容でなければなりません。
専門知識を持っている人による講習
まず、障害に関する知識と、障害者の就労を支援するための知識を習得させるために、専門的な知識、あるいは経験を持っている人によって講習を実施するものです。
講習を務める講師は、
に限られます。
情報共有のための講習
現在、既に雇用する障害者の障害特性や配慮事項について、情報を共有するための講習も、助成の対象となります。
支援機関による講習
支援機関が実施している、障害者支援に関する講習も、助成の対象となります。

色々な講習が助成の対象となっているぞ。
支給額
社内理解の促進措置によって受給できる助成金は、講習に要した経費を助成するものです。
要した経費額に応じて、以下のように設定されています。
要した経費 | 支給額 | 支給対象期間 |
5万円以上10万円未満 | 3万円 | 1年 |
10万円以上20万円未満 | 6万円 | 1年 |
20万円以上 | 12万円 | 1年 |
この表の通り、支給対象期間は1年となっています。これは、6ヶ月を1期とし、2期を一単位と考えます。
例えば、1期目と2期目の合計で15万円の経費を要した会社では、支給上限額は6万円の区分となります。
必要経費として認められるのは、
- 外部講師謝金
- 外部講師旅費
- 会場使用料
- 教材費
- 資料代
- 外部機関が実施する講習の受講料
- 講習に参加する労働者の賃金
です。
講習に参加する労働者の賃金を経費とする場合、労働者1人あたり1時間800円として換算します。
内容に連続性のある講習は、上記の通り初回から最終回までを1回とみなすため、その全てに参加している従業員のみ経費とすることができます。

講習に必要な経費はだいたいカバーされているね。

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活用のポイント
全ての助成金に共通する活用のためのポイントは、自社に適した方法で取り組むことにより、メリットを最大化することです。
社内理解の促進によって助成金を受給する際にも同様です。
活用のポイントを見ていきましょう。
自社に適した講習を
社内理解の促進のためには、自社で現在雇用している障害者が働きやすくなること、また将来的に雇用していく障害者が働きやすくなることを目的として、自社に最も適した講習を実施する必要があります。
そのためには、自社の従業員の理解レベルに合わせて講師や講習内容を選ぶことが大切です。
例えば、自社が障害者雇用の経験に乏しい場合、従業員の理解レベルは低いと思います。
その場合には、
- 理解のための初歩的な知識をまとめた教材を購入する
- 障害に関する一般的な知識を習得するために、専門の医療従事者や支援従事者に講師を依頼する
といった取り組みから始めるのが効果的です。
理解が進んできたら、より深く狭い部分での理解を深めるために、自社で雇用している障害者を講師として講習を開き、その障害者自身が困難を感じている障害特性や、実際に配慮してほしいと思っていることについて話してもらうと良いでしょう。

従業員の理解度に応じたカリキュラムを組んでいこう!

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障害者を講師にすると効果的
自社で雇用している障害者を講師に据えることは、理解促進のために大きな効果があります。
特に、精神障害や発達障害といった障害は、表面的にはわかりづらく、個々の障害者で症状も様々であるため、一般的で平易な知識や支援策が適用しにくい場合も多いものです。
一般的な知識や支援策が合わず、十分な配慮ができないといったミスを防ぐためにも、現に雇用している障害者を講師とすることは非常に重要です。
さらに、この場合には雇用している障害者自身の声を伝えることができるため、自分が理解されている実感も得られます。
日本社会では、障害者などのデリケートな問題に触れようとしない、表面上は関心を装うものの実際には無関心という人も多く、障害者の中には他者からの理解に飢えている人も多いものです。
このため、雇用している障害者を講師とすることで、障害者の満足度やモチベーションの向上にもつながります。
様々な点でメリットの大きい取り組みと言えるでしょう。

当たり前だけど、一般の人は障害を経験したことがないし、理解しづらいことが多いよね。
具体的な支援のイメージを掴むためにも、障害者の声に耳を傾けていこう。
継続的な講習が効果的
社内理解の促進のためには、継続的な講習を実施することも大切です。
この助成金の支給対象期間は1年となっていますが、支給申請回数には上限がないため、毎年講習を実施することができます。
毎年継続して講習を実施すれば、新たに雇用した従業員の理解を促進することができます。
雇用する障害者が変わった場合には、その障害者に配慮するための、新たな知識を与えることもできます。
もちろん、同じ障害者を雇用し続けている場合にも、継続して雇用する中で新たに把握した障害特性や配慮事項を常に共有していくためには、継続的な講習が欠かせません。

1回きりで終わりにするのではなく、必要に応じて継続的に取り組んでいこう!

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まとめ
障害者雇用は、社内の理解なくしては成り立ちません。
そのためにも、様々な形で講習を実施し、社内理解の促進に努めることが重要です。
障害者職場定着支援コースを利用すれば、助成金を受給しながら社内理解を促進することができます。
これにより、雇用される障害者も、周りで一緒に働く一般の従業員も働きやすくなり、生産性にも良い影響を与えるでしょう。
もちろん、障害者の職場定着に大きな効果をもたらし、離職することなく雇用を継続することができ、助成金を受給できる機会も増えていきます。

障害者雇用に取り組む会社は、ぜひ障害者職場定着支援コースを活用していこう!
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