起業したいと考えながらも、資金調達に苦労している人は多いと思います。
一般的に「お金を借りるところ」と認識されている銀行などの民間の金融機関では、基本的に起業者への融資に慎重であり、容易に融資してくれないからです。
しかし、起業したい場合に融資してくれる機関もあります。
日本政策金融公庫が代表的な機関であり、また地方公共団体から紹介を受けて民間金融機関から融資を受けられる可能性もあります。
本稿では、創業時の資金調達に活用できる機関と、融資を受けるためのポイントを解説していきます。
創業融資を受けるのは難しい
近年、起業を目指す人が増えているといいます。
高校生起業家が優れたアイデアによって数億円単位の資金を集めることもありますし、大学生となるとそのようなケースはもっと多くなります。
そのような大学生の中には、事業に熱中するあまり単位の取得を怠り、大学を中退して事業を選ぶことも多いといいます。
一旦は社会人として働く道を選び、社会の型にはまってしまった人の中にも、やはり縛られて生きることをよしとせずに起業する人も多いです。
このように、古くから日本人には起業精神が乏しいとされてきましたが、そのような状況は大きく変わりつつあるようです。
資金繰りの知識を得るために当サイトを見ている人の中にも、何らかのアイデアを持っていたり、人の下に就くのではなく自分で商売をしたいと考えたりして、創業のための資金を集める方法を模索している人も多いと思います。

起業をする際には、必ず起業のための資金が必要になるのですが、その資金を供給してくれる個人や組織の判断は非常に厳しいものがあるのです。
個人投資家からの出資を受けて起業する若者の話をしばしば耳にしますが、そのような若者は往々にして革新的と言える知識を持っているものです。
そのアイデアを武器にして資金集めを成功させているのは、いわば例外的と言えるケースです。
銀行や投資家は実績をみる
お金を貸してくれる代表的な組織である銀行も、創業時の融資には非常に厳しい判断をします。
以下に詳述しますが、銀行にもそのような窓口があり、信用保証協会を通すことで融資を受けられる可能性があります。
しかしの、基本的な要素から考えると融資は簡単ではありません。
その理由は、銀行が融資にあたって審査を行う際には、会社の業績や財務内容などを見て判断するからです。
これから起業したいと考えている人には、当然ながら経営実績がないため、銀行は融資を出しづらいのです。
銀行の融資判断の根幹となるのは、「この会社に融資した場合、きちんと回収して利益を得ることができるか?」ということです。
実績を見ることができなければ確実な判断は非常に難しくなります。
銀行は基本的にはリスクを避ける組織ですから、どうしても融資許可の根拠に乏しい融資はしないのが普通であり、創業融資も非常に通りにくいのです。

投資家に受け入れられるためには良い決算を発表する必要があり、そのためには融資の回収が難航したり、不可能になったりすることは避けなければなりません。
そのリスクを避けるためにも、創業融資には厳しい判断をすることが多いのです。
日本には、2017年のデータによると、1.1万社の大企業と、380.9万社の中小企業があります。
これらの会社のうち、無借金経営をしているのはごく一部であり、ほとんどの会社には何らかの資金需要があります。
銀行は、起業家に創業資金を融資してリスクを冒すよりも、借りたい会社はいくらでもあるのです。
ですから、よりリスクが少ない会社に貸し付けておいた方がずっと安全であり、あえて創業融資を出すリスクを冒す必要はないのです。
以上のような理由から、出資と融資の両方において、創業資金を工面するのは非常に難しいことが分かります。
では、創業資金を調達するにはどうすればよいのでしょうか。

もし今、資金繰りにお困りなら、こちらの窓口に相談されてみてはいかがでしょうか。
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日本政策公庫の活用がおすすめ
起業の際に資金を調達したいならば、出資や銀行融資に頼るのではなく、日本政策金融公庫を頼るのがおすすめです。
日本政策金融公庫の株式は100%政府が保有しており、また日本政策金融公庫法という法律によって運営されています。
日本政策金融公庫からの資金調達も融資によるものですが、銀行などの民間の金融機関による融資とは全く異なります。
というのも、民間の金融機関は利息による収益が目的であるのに対し、日本政策金融公庫は日本経済の発展と国民生活の向上を目的としているからです。
日本政策金融公庫は、民間金融機関の補完として機能している(民間金融機関の利益を奪わないため)ため、民間金融機関では対応しにくい色々な用途の資金に対応しています。

日本政策金融公庫では、起業前あるいは起業後間もない会社に対して、創業融資を行なっています。
金融業や風俗業などを除いたあらゆる業種に対応しているため、皆さんが起業したいと考えている業種でもおおむね活用可能だと思います。
実際、このような柔軟性を活用し、毎年2万社が創業融資を受けています。
また、民間金融機関よりも金利が低いのも特徴です。
上記において、日本政策金融公庫は民間金融機関の利益を奪わないために、補完的役割を担っていると書きましたが、これも金利の低さが理由です。
日本政策金融公庫がもっと手広く融資を行えば、より金利が高い銀行で借りようと思う人はいなくなり、利益が損なわれてしまうのです。
日本政策金融公庫の金利は、国の政策に則った固定金利が適用され、常時おおむね1.5~4.0%となっています。
銀行でもこの範囲内の金利で借りられることがありますが、平均して日本政策金融公庫の方が低くなることは間違いありません。
このほか、銀行の信用保証協会保証付融資で融資を受けると、どうしても信用保証協会への保証料が重荷になってきますが、日本政策金融公庫では信用保証協会を介さないため、その意味でもメリットがあります。
では、日本政策金融公庫の創業融資について見ていきましょう。
日本政策金融公庫の創業融資には、以下の通り事業や起業者によって、活用できるものが異なります。
新創業融資制度
新創業融資制度は、新たに事業を始める人や起業後間もない人に対する融資です。

担保にできる資産もなく、保証人をつけることもできない裸一貫の人は、銀行で融資を受けることはほぼ不可能なのですが、新創業融資制度ならば利用できる可能性があります。
ただし、他の融資制度よりも借入限度額が低く、最大3000万円(うち運転資金1500万円)となっているほか、金利は他の制度より高めになっています。
新創業融資制度は、本稿をお読みの人にとっても、最も興味のある部分になってくると思います。
融資の要件を詳しく見ておきましょう。
申請の要件
新創業融資制度に申し込むためには、以下の要件を全て満たす必要があります。
- 新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を2期終えていない人。
- 「雇用の創出を伴う事業を始める人」、「現在勤めている企業と同じ業種の事業を始める人」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援事業を受けて事業を始める人」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める人」等の一定の要件に該当する人。既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した人。
- 新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を1期終えていない人は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)を確認できる人。
上記は全てを満たすことが要件です。
さらに、以下の10の要件のうち、いずれかを満たすことも必要です。
- 雇用の創出を伴う事業を始める人。
- 技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める人。
- 現在働いている企業と同じ業種の事業を始める人で、現在の企業に継続して6年以上働いている人、あるいは現在の企業と同じ業種に通算して6年以上働いている人。
- 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上働いている人で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める人。
- 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める人。
- 地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて事業を始める人。
- 公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める人。
- 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める人。
- (1)~(8)までの要件に該当せず事業を始める人であって、新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると公庫が認めた人で、1,000万円を限度として本資金を利用する人。
- 既に事業を始めている場合は、事業開始時に(1)~(9)のいずれかに該当した人。
新規開業資金
新規開業資金は、新創業融資制度とは異なり、融資にあたっては担保と保証人が必要となります。
しかし、融資上限額が7200万円(うち運転資金4800万円)となっており、金利も低めです。
返済期間は、設備資金の場合は15年以内、運転資金の場合は7年以内となっています。
申請の要件
新規開業資金に申し込むためには、以下の10の要件のうちいずれかに該当する必要があります。
- 現在働いている企業と同じ業種の事業を始める人で、現在働いている企業に継続して6年以上働いている人、あるいは現在働いている企業と同じ業種に通算して6年以上働いている人。
- 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上働いている人で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める人。
- 技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める人。
- 雇用の創出を伴う事業を始める人。
- 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める人。
- 地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて事業を始める人。
- 公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める人。
- 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める人。
- (1)~(8)までの要件に該当せず事業を始める人であって、新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると公庫が認めた人で、1,000万円を限度として本資金を利用する人。
- (1)~(9)のいずれかを満たして事業を始めた人で事業開始後おおむね7年以内の人。
その他の活用できる制度
以上が代表的な創業融資ですが、この他にも申し込む人の属性によって、利用可能な制度が色々あります。
女性・若者・シニア起業家支援資金
民間金融機関の融資では、女性や若者(30歳未満)やシニア(55歳以上)への融資を積極的には行ないません。
ただでさえ融資を受けにくいこれらの人々が、さらに起業するとなると、資金集めはさらに難航することでしょう。
そこで、日本政策金融公庫の「女性・若者・シニア起業家支援資金」という制度を利用するのがおすすめです。

女性または35歳未満か55歳以上の人であって、 新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人。
融資上限額は7200万円(うち運転資金4800万円)。
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
一度会社を倒産させてしまった人も、民間金融機関から融資を受けることは難しいです。
多くの場合、倒産というのは資金繰り困難ゆえの倒産であり、取引先や融資を受けている銀行などにも迷惑をかけて倒産しています。
銀行から見れば要注意人物であり、そのような人物が再挑戦したいと考えて資金調達しようとしても、銀行が融資することはありません。
そこで利用可能なのが、日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」です。
この融資制度では、
- 新たに開業する人または開業後概ね7年以内の人で、次の全てに該当する人。
- 廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること。
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること。
- 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること。
を要件として、融資を受けられる可能性があります。

生活衛生新企業育成資金
生活衛生関連事業は、国民生活を向上させるために重要なことです。
今でこそ、生活衛生ということに関して鈍感になっていますが、生活衛生事業とはいわば日常生活に欠かすことができない事業のことです。
これがなければ生活の根本的な質が脅かされる事業であり、国としても支援すべき事業なのです。
「生活衛生新企業育成資金」では、生活衛生関係の事業を創業しようとする人又は創業後おおむね7年以内の人を対象としています。
一般貸付ならば設備資金最大4億8000万円、新興事業貸付ならば振興計画認定組合の組合員に最大7億2000万円(うち運転資金5700万円)の融資が行われます。
申請から融資実行までの流れ
上記のように、日本政策金融公庫の創業融資には色々な種類のものがあります。
これらに申し込んでから融資実行に至るまでの流れは、以下の通りとなります。
1.申し込み
日本政策金融公庫の窓口(法人で創業する場合には本店所在地の最寄りの支店、個人で創業する場合には創業予定地の最寄りの支店)かインターネットで、借入申込書を提出して申し込む。
インターネットから申し込むと、早い場合には翌日に連絡をもらえることもある。
2.面談と審査
申し込み後、日本政策金融公庫から連絡を受け、数日~1週間後に面談が行われる。
この時、事前連絡に従って用意した創業計画書や企業概要書などを提出し、それをもとに面談する。
3.融資実行
融資可能と判断されれば、契約手続きを行う。
数日後、融資金が振り込まれる。
日本政策金融公庫の厳しさ
上記の通り、日本政策金融公庫は営利を目的としておらず、経済の振興が目的です。
財源は税金であるため、有効活用することが非常に重要です。
だからこそ、しっかりとした事業計画があれば、「この会社ならば税金の有効活用になりそうだ」という視点で融資を検討してくれます。
しかし、そうではない会社に貸し付けてしまうと税金の無駄になりかねないため、融資は受けられません。
また、特別な事情がない限り返済には厳しく、返済日に返済できないことが2回続くと、それ以降の新規融資は受けられなくなります。

ただし、きちんと返済しており、業績も順調であれば、担当者が追加融資の案内をしてくれたり、新しい融資制度を紹介してくれたりすることもあります。
日本政策金融公庫と付き合うにあたって、銀行ではないからと甘く考えるのではなく、真剣な付き合いをしていくことが大切です。

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銀行から融資を受けられないわけではない
これまで書いてきた通り、銀行の融資審査では決算書を中心に判断を下していきます。
これから起業する人には経営実績がないため、創業前や創業直後の融資は大変困難です。
そこで役立つのが創業融資であり、上記の日本政策金融公庫の融資制度もこのひとつなのですが、銀行にも創業融資制度が存在します。
銀行だけでは融資を出すのはほぼ不可能ですから、都道府県や市町村などの地方自治体と信用保証協会を通し、銀行の創業融資を利用していくのです。

起業したいと考えている人から、すでに経営を続けて来た中小企業まで、お金を借りたくて銀行に相談しても、容易に融資を受けられない人がいます。
そのような人でも資金調達をするために、会社の公的な保証人になってくれるのが信用保証協会です。
つまり、経営者が金融機関に融資を申し込んだ時、信用保証協会が保証人になり、万が一返済できなくなった場合には借入残高の80%を返済してくれるのです。
それならば、銀行は貸し倒れリスクを大幅に下げることができますから、融資を出すことも可能になります。
信用保証協会保証付融資は、創業融資だけではなく、様々な用途で利用される融資です。
ただし、信用保証協会も慈善事業でやっているわけではなく、「中小企業の資金調達の円滑化」という使命を帯びています。
どのような依頼でも無差別に保証し、倒産が相次いで銀行への補償がかさむと、信用保証協会は立ち行かなくなります。
だからこそ、信用保証協会は保証する会社を精査し、事業内容や経営計画をもとに可否を決めていきます。
保証を受けることによって資金を調達できた会社は、信用保証協会に保証料を支払う仕組みです。
信用保証協会の保証を利用した創業融資制度の仕組みは、以下の通りです。
この制度では、創業を目指す人に対して、地方自治体が金融機関や信用保証協会と協力を促し、融資を実施することを目指します。
地方自治体が、一定の資金を金融機関に預け、金融機関が中小企業に融資を行います。
この時、次の三つの条件を全て満たす必要があります。
- 対象となる企業や創業予定の人が、地方自治体が管轄する地区に在住していること
- 信用保証協会が保証する業種であること
- 地方自治体の管轄地域に事業所があること

- 地方自治体に創業融資のあっせんを申し込み、審査を受ける。
審査に通ったならば、地方自治体の紹介状をもらうことができる。 - 指定された金融機関に紹介状を提出し、融資を申し込む。
- 同時に、金融機関経由で信用保証協会に保証の申し込みも行う。
- 信用保証協会の担当者と面談し、審査を受ける。
- 保証が可能となった後、金融機関の審査を受ける。
- 金融機関の審査に通ったら、融資が実行される。
自治体を通した創業融資では、平均して1000万円程度の融資となるため、目標金額がもっと高い場合は、やはり日本政策金融公庫を利用すべきでしょう。
しかし、地方自治体の政策として行われていることから、日本政策金融公庫よりもいくらか金利が低めに設定されており、場合によっては利子補給や保証料補助を受けられることもあります。
なお、日本政策金融公庫と地方自治体の創業融資は併用が可能です。
日本政策金融公庫で目標金額の借入ができなかった時などは、地方自治体の融資と組み合わせて目標金額を目指すという方法も可能です。

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創業融資が欲しければ事業計画書が重要!
日本政策金融公庫から創業融資が欲しい場合に重要となるのが、事業計画書です。
なにしろ、経営実績から判断することができないのです。
過去(経営実績)ではなく未来(事業計画)を判断基準として融資を行なうため、事業計画書が最も重要となります。
したがって、日本政策金融公庫の審査に落とされてしまう人は、事業計画書に問題があります。
よく見られる原因は以下の通りです。
- 書かれている内容が独善的であり、社会的に有意義と思えない。
- 書きたいことだけを書いており、担当者が知りたい内容が不明である。
- 事業に対する熱意が伝わっても、具体的な事業計画が書かれていないため実現性が見えてこない。
- 図表などを用いておらず、ほとんど文字だけで埋め尽くされていることから、イメージを掴みにくい。
多くの原因はこのようなものです。
なぜこのような失敗に陥るのかと言えば、事業計画書の本質が見えていないからという場合が非常に多いです。
つまり、

と勘違いしているのです。
自分が事業を始めたいと考えた理由、事業が社会に与える影響、事業の理念、理念に基づく計画などを熱く語るのです。
それによって審査員が感動し、「ここがよかった」「あそこもよかった」とプラスの印象を重ねた結果、融資が通ると思い込んでいるのです。
しかし、日本政策金融公庫の審査は、このような加点方式ではなく減点方式によって審査されます。
審査すべき項目はあらかじめ決まっており、事業計画書で説明すべきことが漏れていると減点となります。

つまり、独りよがりの意見や書きたい放題書いた意見、熱意だけの意見では100点になることはありません。
いくら熱意を伝えても、熱意以外が伝わらなければごっそりと減点され、審査に通らないのです。
このことから、事業計画書を作成するためには、減点されないようにまんべんなく、丁寧に作成することが重要であることが分かります。
事業計画書に盛り込むべき内容
審査員は、審査項目と事業計画書を照らし合わせて審査していきます。
この審査項目は非公開ですが、これまでの傾向や募集要項、また日本政策金融公庫の理念などから考えると、盛り込むべき内容が見えてきます。
まず、事業計画書の骨となる部分は、以下の通りです。
- 創業する業種と業態の説明
- どのようなターゲットに向け、どのような商品やサービスを、どのような方法で展開していくのか
- その商品やサービスのセールスポイントはどのようなものか
- 市場規模はどれくらいであるか
- ユーザーのニーズをきちんと把握し、それを満たすための方法はどのようなものか
これらを、自分の言葉で説明できるかどうかを試してみてください。
説明できなければ、もっと事業計画を深堀りする必要があるでしょう。

- 事業計画名
- 事業の概要(起業する本人の経歴や強み、事業の動機、事業のビジネスモデルと収益性)
- ユーザーと市場規模
- ユーザーのニーズ
- 事業における課題と解決方法
- 他社との差別化
- 販路の広げ方
- 事業の実施体制
- 事業に必要となる設備
- 事業投資の具体的な目標
- 損益計画
これらを漏れなく盛り込んでいくことが非常に重要です。
重点的に説明すべき箇所
しかし、文章は平たんなものよりも、力を入れるべきところに力を入れ、メリハリをつけることによって説得力が増すものです。
そこで、日本政策金融公庫がどこを重点的に見ているかということを考え、注力すべき箇所を探っていきます。
すると、新創業融資制度と新規開業資金で満たすべき項目のうち、
- 現在働いている企業と同じ業種の事業を始める人で、現在の企業に継続して6年以上働いている人、あるいは現在の企業と同じ業種に通算して6年以上働いている人。
- 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上働いている人で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める人。
の二点が共通していることが分かります。
このことから、日本政策金融公庫の創業融資では、その事業の実現性を見るにあたって、創業予定の人の経験や熟練度などの能力面を重視していると予測できます。
これは、具体例を考えてみると良くわかります。
例えば、以下のような動機で融資を依頼したらどうでしょうか。

私が知人に紹介するお店はもれなく好評で、自分の味覚に自信を持つに至りました。
そこで、自分でお店を出して、日本中の名店の味を味わえる店づくりをしていきたいと考えています。
これでは、実現性は見えてきません。
味覚が優れていることと、料理の腕が優れていることは必ずしもイコールではありません。
紹介した知人から好評を得られたということも、真実かどうかわからず、何人に紹介して何人に好評だったのか分かりません。
審査員は、「結局、事業として成功するの?」という疑問が残って、融資は通らないでしょう。
では、以下の例ならばどうでしょうか。

料理に非常に関心があり、年間〇回の外食をしており、日本中の名店を食べ歩いてきました。
ある時、B級グルメを体験する中でインスピレーションを得て、お店で地元の食材を生かしたオリジナルメニューを出したところ、大変な好評になり、今ではお店の売り上げの〇%を占めているほどです。
これ以外にも、作りたいメニューのアイデアは色々あり、お店の常連さんもぜひ作ってほしいといっています。
しかし、雇われの身では新メニューの提案も受け入れられないことが多いため、独立開業を決意した次第です。
これならば、経験は違いなくありますし、「お店の売り上げの〇%」という実績も見えてきます。
お店の常連さんからの声もあり、開業後も問題なく集客できる可能性が高いと判断することも可能です。
実際、日本政策金融公庫の事業計画書には、創業の動機や創業予定の人の略歴を記入する欄があります。
創業の動機が納得できるもので、それを成し遂げるだけの経歴があるかどうかによって、実現性にも納得がいけば、審査はかなり有利になります。

事業計画書は減点方式ですから、ここで不十分と思われて大きく減点されてしまうと、一気に審査に通りにくくなってしまいます。
質問も想定しておく
事業計画書は減点方式であり、あくまでもまんべんなくカバーされている必要があります。
したがって、動機や略歴以外にも書くべきことをきちんと書き、さらに面談で質問されたことにはきちんと答えられる必要があります。
特に質問されやすいのが、事業に革新性があり、なおかつ事業計画が実現できるかどうかということです。
質問を想定するならば、おそらく以下のような質問がなされると考えられます。








もちろん、これら以外の質問もあるでしょうが、事業の内容を詳細に把握し、実現性を図るための質問ですから、このような質問がされることと思います。
事業計画書に書いていることを、なぜ質問するのだろうと思うかもしれません。
それは、この質問では、事業計画書をもっと深く知るために質問をしているというだけではなく、創業予定の人がきちんと事業の立ち上げに携わっているかを見るためでもあるからです。
創業予定の人に色々質問をしたとき、その解答が事業計画書と矛盾していれば、面接者は「この人は本当に事業を理解しているのだろうか」「この事業計画書は、専門家が作っただけのもので、この人はあまり事業を理解していないのでは?」などの印象を抱き、融資にマイナスに働く可能性があります。
もっともこれは、専門家に協力を仰ぐことを否定しているのではありません。

ただし、税理士は説明の補足をする程度の働きしかせず、基本的には創業予定の人が全てを説明します。
全て税理士が説明しているようでは、マイナス評価になるからです。
したがって、税理士が同席してくれるからと言って安心するのではなく、面接のシミュレーションを行い、自分で何でも説明できるようにしておくべきです。
なお、信用保証協会を利用して創業融資を受ける際には、税理士の同席は不可能です。

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まとめ
民間の金融機関の融資は、安全性を第一に考えられていることから、創業時の融資を受けるのは簡単なことではありません。
しかし、日本政策金融公庫を頼ったり、地方自治体からの紹介状をきっかけとして信用保証協会保証付融資を受けたりと、方法がないわけではありません。
これらの方法によって、数千万円単位の融資を受けることも可能です。
ただし、融資を受けるためには、説明すべきことをまんべんなく説明した事業計画書を練り、質問などにもきちんと答えられるようにしておく必要があります。
それができれば融資を受けられる可能性は十分にあるので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。