創業時に融資を受けるにあたり、必要となる提出資料はたくさんあります。
しかし、その中でも最も重要となるのが創業計画書です。
創業計画書とは、創業計画と創業後の事業計画を表す書類です。
実績も信用もない起業家が、事業の実現によってのみ融資を引き出すうえで非常に重要なものです。
事業の実現性を示すこの書類がいかに有効なものであるかということは、松下幸之助が事業計画書によって融資を引き出したケースからも明らかです。
本稿では、松下幸之助の事例も参考にしつつ、創業計画書の重要性を学んでいきましょう。
創業融資で必要となる書類
創業時には、普通の銀行から借り入れることが難しいため、日本政策金融公庫の創業融資や、地方自治体の制度融資を利用して資金調達をすることがほとんどです。
しかし、これから起業という人にとって、事業資金の融資を受けることなど初めてでしょうから、どのような資料が必要になるのかわからないことと思います。
まず知っておきたいのが、公的金融機関から融資を受ける際にも、民間の金融機関から融資を受ける際にも、求められる資料はほぼ同じということです(書式が違うことはあります)。
融資を申し込む際に必要となる書類を知り、窓口に相談に行く際には資料を揃えてから行きましょう。
そうすることで、適切なアドバイスを受けやすくなります。
融資申し込みの際に必要となる書類は、以下の通りです。
融資申し込みの際の必要書類
- 借入申込書
- 会社の登記事項全部証明書
- 創業計画書
- 企業概要書
- 前年度の収入が分かるもの(源泉徴収票など)
- 資金使途を示す書類(購入予定の設備の見積書、契約書、カタログなど)
- 担保関連書類(不動産の登記事項売証明書、固定資産の評価証明書など)
日本政策金融公庫から融資を受ける際には上記の書類が必要となります。
地方自治体の制度融資を利用するならば、制度融資の条件を満たすことを証明する書類が必要となります。
また、保証協会の保証がセットになるため、保証協会関連の書類も必要です。
制度融資の場合には、上記の書類に加え、以下の書類を用意してください。
- 法人と代表者個人の印鑑証明書
- 制度融資の条件を満たすことを証明する書類(自治体窓口へ電話などで確認)
- 信用保証委託申込書
- 信用保証委託契約書
- 個人情報取り扱いに関する同意書

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追加提出を求められる可能性がある資料
上記の資料に加え、必要に応じて追加提出を求められる可能性があります。
- 公的機関が発行する写真付き証明書の写し(運転免許証やパスポートなど)
- 会社の通帳
- 直近6ヶ月以上の代表者個人の通帳(給与の振り込み、公共料金の支払いなどで普段から使っているもの。自己資金の根拠や借金[特にサラ金]の有無の確認などのため)
- 住宅ローンの毎月の支払額やローン残高を示す書類(借入金を返済している通帳口座の写しなど。住宅ローンのない場合には不要)
- 代表者個人の借入金情報
- 店舗や事務所の存在を示す書類(賃貸借契約書、保証金の領収書など)
- 開業にあたって必要となる資格や免許を証明する書類(資格や免許が必要ない場合は不要)
- 個人事業時代の確定申告書のコピー(個人事業から法人成りする場合)

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資料は充実させよう
もっとも、上記に挙げた資料は、最低限の資料と、一般的に追加で求められる可能性がある資料です。
それ以外にも、必要に応じて資料を添付することで、融資に有利になる場合があります。
例えば、創業計画書の実現性を裏付けるためには、発注書や仮契約書といった資料があると効果的です。
また、自社が競合他社よりも明らかに優位な商品やサービスを取り扱っているならば、それを示すカタログやサンプルなどを提示することも必要です。
このほか、業績の良い同業他社のデータを集めることで、業界的にも将来性があることを説明するのも良い方法でしょう。
このような、自社にプラスになる資料を積極的に提出していくことによって、担当者が稟議書を書く際、その会社に融資を出してもよい理由をいくつも見つけ、盛り込んでいくことができます。
つまり、上席者が見た時にも、融資を出してもよいと思える稟議書が出来上がるわけです。

個別に見ればマイナス要素になる材料であっても、別の材料と結び付ければプラスに変わる可能性もあるのです。
したがって、何でも提出すればよいというものでもありませんが、プラス材料になりそうな資料は積極的に提出していくことを心がけましょう。

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松下幸之助に見る事業計画書の効果
上記の通り、日本政策金融公庫の創業融資や、地方自治体の制度融資を利用して創業資金を引き出すならば、色々な資料が必要です。
しかし、これらの資料の中でも最も手間がかかり、なおかつ最も重要な資料は創業計画書です。
創業時や、創業間もない頃に融資を受ける際に作成する創業計画書は、非常に大きな意味を持つものです。
金融機関から見てみれば、これから創業する会社や、創業して間もない会社に融資するのは、リスクの高い行為です。
なにしろ、その会社がうまくいくかどうか、何の保証も無い状況で貸し付けるのであり、返済の保証もどこにもないのです。
そのような状況で借り入れるのですから、事業の実現性・現実性をできるだけ詳細に説明し、事業計画がうまくいくものであると説得する必要があります。
そのために作るのが創業計画書です。
※なお、創業計画書に類似したものに、事業計画書があります。
両者の違いを簡単に言えば、創業にあたって作るものは創業計画書、創業期以外に作るものは事業計画書です。
創業時に作る創業計画書は、創業計画と創業後の事業計画を表すものであり、事業計画書は事業計画を表すものという違いがあります。
しかし、本質的にはどちらも事業の実現性を示すものであり、その点で同じものだと考えてください。

最初は小さな会社から始め、時に不況などの荒波を乗り越え、資金繰りもなんとかこなしつつ、今や世界的知名度を獲得している企業は多いものです。
そのような会社も創業時には創業計画書を、それ以降の資金調達の際には事業計画書を作成して資金調達をし、会社を育ててきました。
日本の起業家にとって好例となるのが、経営の神様といわれる松下幸之助の事例です。
松下幸之助が創業したのは1918年であり、事業計画書の力によって融資を受け、会社を躍進へと導いたのは1929年のことでした。
まだ創業後10年程度の松下電気器具製作所の頃であり、ヒット製品はあったものの、後の規模には遠く及ばない頃のことです。
融資依頼は1929年になされていますが、当時の日本は金融不況の真っただ中にあり、また電気産業は不景気にありました。
一介の町工場への融資は厳しい状況でした。

生産や販売の状況、資金回収の状況などを詳細に示し、返済の目途が立つことも説明しました。
その説明には、夢や情熱も込められていたことと思います。
銀行は、事業計画書に対しては一定の理解を示したものの、まだ一介の町工場に過ぎない松下電気が、不況の中で拡大に向かうことのリスクを踏まえ、担保をとることを条件とします。
それでも松下幸之助は、事業計画書によって銀行を説得し、なんとか無担保で融資してくれと粘ります。
無担保融資を受けることで、世間からの信用をつけることが目的でした。
このことを、津本陽氏の著書『不況もまた良し』では、以下のようにドラマチックに描いています。
数日後、竹田支店長の返事があった。
「ご入用の十五万円は、ご用立てさせてもらいます。
しかし、全額を無担保で貸し出すのはむつかしおますね。
十五万円の貸し付けの担保には二十万円以上の担保物件が必要でっけど、おたくには適当な担保がないと思いますので、こんど買いいれられる土地と、建設される建物を、担保にしてください。
銀行としては、不動産担保はできるだけとらないようにしていますが、足りない分は信用で融通させていただきまっさ。
しかし、長期契約は無理だっせ。
二年以内にご返済願いたいのですが、その見込みはどうでっしゃろ」
銀行に差し当たって担保に入れるものは、五万五千円の土地しかない。
建物はできあがってから担保に入れるが、銀行としてはよほどの優遇であろう。
しかし不動産を担保に入れると登記をするので、担保借り入れの借金を持っていることが世間に知れ、松下電気の信用にかかわる。
幸之助は頼んだ。
「支店長はんのいわはる通り、信用貸しにひとしいのやさかい、たいへんありがたいことやと思うとります。
しかし不動産に、その価値以上の借用登記をするのは、松下の信用にかかわりますのや。
ここまでうちの立場を理解してくれはる銀行さんに、申し上げにくいことでっけど、この際なんとか無条件に貸し付けということにしてくれはらしませんか。
返済は二年間に十分やれます。
土地の権利書と、できあがった家屋の保存登記権利書は、銀行にお預けさせていただきまっさかい、どうぞ私をご信用願って、よろしゅうお取りはからい願います」
支店長は拒絶しなかった。
「あんたのお考えは、よう分かります。
なんとか本店に承認をしてもらいましょう」

不況下に隆盛のいきおいが衰えない松下電気の将来性を、銀行が認識したのである。
本店と本店工場の建設にとりかかると、業界ではさまざまの噂が飛びかった。
しかし、担保借金もないというので、信用に動揺は及ぼさなかった。
「津本陽著『不況もまた良し』より引用」
時代こそ違えど、本質的には同じです。
実績や信用の乏しい会社が好条件で融資を引き出すにあたっては、事業計画書によって将来性を示し、銀行が「この会社には貸したい」「この機に貸して、この会社と付き合っておかなければ損だ」と思わせるようにすることが重要なのです。
創業時は創業計画書で評価を受けるしかない
創業時における創業計画書も、これと同じ意味、つまり創業後の事業の実現性を示すために重要なものです。
将来性を計って融資の可否を決める公的融資制度を利用するならば、なおさら重要だと言ってよいでしょう。
これから起業する会社や、起業後間もない会社を評価するための材料は、創業計画書しかないのです。
創業計画書を見れば、事業計画をもとに収益性や成長性と実現性を判断することができます。
つまり、
- その会社はどのような計画で事業を始めるのか?
- その計画に実現性はあるのか?
- 実現性があるならば、実現のためにどれくらいの資金が必要となるのか?
- 資金を供給して計画を実行したあかつきには、回収は可能なのか?
といったことを、創業計画書から検討していきます。
創業融資を申し込む際に必要な資料は色々ありますが、その中でも創業計画書が最も重要なのはこのためです。
創業計画書が認められないということは、その事業が金融機関にとって魅力的ではなかったということです。
公的金融機関や保証協会は、これまでたくさんの創業計画書によって融資や保証の可否を検討してきた、いわば創業計画書を見るプロです。
そこで認められなかったということは、事業としての実現性が低いと判断されたということと同じなのです。
創業計画書のポイント
創業計画書のポイントは、金融機関だけから共感を得ることではなく、誰もが共感する内容を心がけることです。
創業計画書には、起業家の熱意が表れます。
その熱意を見れば、金融機関だけではなく、将来的な取引先やお客さん、従業員など、事業に関係する人たちが応援したくなるような創業計画書を心がけることが大切です。
また、文章、図や表、数字などを用いながら、誰もが「この事業はうまくいきそうだ」と、事業の実現性を信じてくれる内容を心がけましょう。
もちろん、取引先やお客さんに創業計画書を見せる機会はないでしょうが、創業計画書の内容を通じて取引先やお客さんとの関係が生まれるのです。
ですから、創業計画書が悪ければ取引先やお客さんとの関係も期待通りにはいきません。
逆に、創業計画書が良いものであれば、その内容が取引先やお客さんとの関係に反映されていきます。

創業計画書の内容を従業員に理解してもらうということは、会社の理念や事業プランなどを共有するということですから、全員で同じ方向を向いて進んでいくことができます。
また、創業計画書を作成する過程で、今後予測されるリスクとその対処法なども検討していくことでしょう。
事業計画を通して事前に全社でリスクを認識しておけば、いざというときの対応力も高まります。
このような創業計画書ならば、金融機関も受け入れてくれる可能性が極めて高いでしょう。

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まとめ
創業融資を受ける際に必要となる資料には色々ありますが、中でも最も重要な資料は創業計画書です。
創業計画書によって、事業計画の実現性が高いと納得できなければ、融資は受けられないのです。
このことは、事業計画書によって計画の実現性を説明し、不況の時代に小さな会社で、好条件での融資を引き出した、松下幸之助の事例からも良くわかることと思います。
これから創業計画書を作る皆さんは、ぜひ松下幸之助のような情熱を持って、説得力の高い創業計画書を作ってほしいと思います。