日本の企業は、従業員の規模が一定以上になれば障害者を雇用する義務が生じます。
現在、障害者雇用の義務がない会社でも、事業を拡大すれば従業員を増やす必要があり、それによって雇用義務が生じることとなります。
また、この雇用義務は2021年に拡大が予定されているため、今後ますます、経営と障害者雇用の関係は近くなっていくはずです。
障害者雇用に効率的に取り組むためには、助成金の受給によって負担を軽減することが重要です。
特に、障害者雇用に関する助成金では、雇用期間が受給額に比例することが多いため、しっかりと配慮し定着を促すことが欠かせません。
本稿では、障害者の職場定着に効果的な職場支援員の配置と、それによって助成金を受給できる「障害者職場定着支援コース」について解説していきます。
障害者雇用に取り組む負担、取り組まない負担
障害者雇用に積極的に取り組めない、雇用しなくて済むならばそうしたいと考える中小企業は多いでしょう。
昨今、中小企業の人材不足は深刻化しており、有能な人材はもちろんのこと、可もなく不可もなしといった水準の人材を確保することにも苦労しています。
そのような会社では、人材確保のためのコスト負担に苦しむことも多く、障害者雇用にコストをかけるならば、一般の雇用にコストを割きたいと思うのは当然です。
このような率直な言い方・考え方は憚られるでしょうが、人材不足に悩み、台所事情も決してラクではなく、障害者雇用まで取り組むのはどうしても辛いという会社が多いことも事実なのです。
ところが、障害者雇用に取り組まない会社では、障害者雇用を避ける以上の抱えることになります。
確かに、短期的には、障害者雇用にコストをかけずに済むため、負担が軽くなるようにも思えます。
ならば、障害者雇用に取り組んでも負担になる、障害者雇用に取り組まなくても負担になるという、「進むも地獄、退くも地獄」なのかといえば、そうではありません。
障害者雇用に取り組んだ会社は、様々な形で助成金を受給することができます。これによって、
- 障害者雇用に取り組む→助成金を受給して負担を軽減できる
- 障害者雇用に取り組まない→納付金やペナルティといった負担を一方的に受ける
ということになります。
だからこそ、様々な負担があるとしても、障害者雇用に取り組んだ方が、却って軽い負担で済むのです。
会社は、様々な形で社会に貢献し、それが利益になるというのが普通のあり方です。
障害者福祉に努めることは社会貢献になりますし、取り組めるならば取り組んだほうが良いでしょう。
しかし、その一点張りでは成り立たないことも多いのがビジネスです。
障害者雇用によって負担が増大しないように、理想は一旦置いておき、純粋に負担によって障害者雇用を考え、助成金の活用に取り組むことも重要です。

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障害者雇用関連の助成金は特殊
障害者雇用に取り組むにあたって、助成金を活用していくためには、障害者雇用関連の助成金の特殊な仕組みを知る必要があります。
一般的に、助成金の多くは受給要件を満たせば、規定の助成金を全額受給できるものです。
取り組む期間を分割し、段階的に支給するものもありますが、全体から見ると少数です。
良い例が、特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースです。
このように、一般的な助成金は取り組みの内容と結果、つまり質を重視するのに対し、障害者雇用関連の助成金では雇用期間を重視することが多いのです。
これはおそらく、雇用する会社と、雇用される障害者の双方に配慮して作られた仕組みなのでしょう。
障害者を雇用する会社では、合理的な配慮の義務が課せられるため、配慮による負担を抱えることになります。
このうえさらに、雇用した障害者の生産性や待遇などに様々な条件を課してしまうと負担が増大し、企業が障害者雇用に消極的になり、障害者雇用を促進するという目的から遠ざかってしまいます。
雇用される障害者側から見ても、会社の負担が増大して配慮が不十分になれば、働きづらくなり、会社に定着しにくくなります。
したがって、受給する助成金を最大化し、障害者雇用の負担を軽減するためにも、雇用した障害者を長期にわたって雇用し続けることがポイントとなります。
障害者雇用に取り組む会社では、このような仕組みを十分に理解することが重要です。

障害者雇用を敬遠している会社も、とりあえず長く働けるように配慮することを考えて、気軽に取り組んでみよう!
職場支援員を配置しよう
障害者を長期間雇用していくためには、障害者が働きやすくなるように配慮する必要があります。
例えば、身体障害者ができるだけ大きな動作をせずに済むよう、簡単な操作で高さを変えられる机を設置したり、それぞれの障害者の障害特性に合わせた業務を与えたりするのです。
このような、分かりやすい配慮も欠かせませんが、これだけで十分な配慮とは限りません。
障害特性を細かいところまで理解し、設備や業務内容以外でも適切にフォローしなければならないのです。
それができなければ、試行錯誤しながら配慮した結果、却って障害者が働きにくい環境になり、離職につながることもあります。
このような会社では、職場支援員を配置するのがおすすめです。
職場支援員とは、障害に関する正しい知識を持っており、仕事をしやすいようにフォローする人材のことです。
職場支援員を配置すれば、会社の配慮が行き届かない部分もしっかりフォローできるため、障害者が働きやすくなり、定着率が高まります。
もちろん、障害者をフォローするにあたって、職場支援員から会社に対して色々な配慮が求められるでしょうから、会社としても障害者への配慮の正しいあり方を学び、経験を積むことができます。

配慮がよくわからずに困っている会社は、職場支援員の協力が欠かせないね!

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障害者職場定着支援コースを活用しよう
職場支援員の配置をおすすめしたい理由は、上記のようなメリットもさることながら、職場支援員の配置そのものによっても助成金を受給できることです。
障害者雇用安定助成金の障害者職場定着支援コース(以下、障害者職場定着支援コース)では、障害者の配慮と定着促進につながる様々な配慮をした会社に、助成金を支給しています。
※障害者職場定着支援コースについて、詳しくはこちら
助成金の支給額
障害者職場定着支援コースで助成金の支給対象となる措置は、全部で7つ設けられています。
そのなかの一つに、職場支援員の配置措置があり、職場支援員を雇用・委託・委嘱などによって配置することで、以下の助成金が支給されます。
【職場支援員を雇用または業務委託によって配置した場合】
雇用または業務委託によって配置した場合には、支援する障害者1人当たり、
支給対象者 | 支給月額 | 支給対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
短時間労働者以外 | 4万円 | 2年 | 24万円×4期 |
短時間労働者 | 2万円 | 2年 | 12万円×4期 |
が支給されます。
なお、支援対象が精神障害者の場合には、支給対象期間は3年6期となり、多めに受給することができます。
精神障害は目に見えない障害であり、配慮も難しいものです。
最近、支援の対象として注目されている発達障害も精神障害の一種ですが、精神疾患による精神障害とは本質的に異なる障害であり、知識も十分に広まっていないため、配慮に苦労することも多いはずです。
それだけに、職場支援員を配置する効果も大きいといえます。
【職場支援員を委嘱によって配置した場合】
委嘱によって配置した場合には、支援1回あたり1万円の支給となります。
配置方法の違い
雇用・委託・委嘱の違いが分かりにくいかもしれませんが、厚生労働省はそれぞれの配置方法を以下のように区別しています。
【雇用】
- 雇用保険被保険者として、支援を実施し、それに引き続き雇用され支援できること
- 対象労働者の週所定労働時間以上の労働時間が定められていること
- 対象労働者と同一の事業所に勤務し、常時見守りつつ、必要に応じて面談や就労上の相談ができること
【委託】
- 対象労働者ごとに契約が締結されること
- 少なくとも月に1回以上、雇入れ事業主の事業所を訪問し対象労働者と面談を行うこと
- 雇い入れ事業主が費用を負担すること
【委嘱】
- 必要なときに支援を行うものであり、職場支援員との間で対象労働者ごとに契約が締結 されること
- 対象労働者に対する面談を、雇入れ事業主の事業所を訪問して行うこと
- 雇入れ事業主が費用を負担すること
このように、雇用は常時支援する、委託は最低月に1回支援する、委嘱は必要なときに随時支援するという違いがあります。

職場支援員の配置方法には色々ある。自社に最適な方法を選ぼう。
受給対象となる職場支援員
障害者職場定着支援コースを受給するには、厚生労働省が職場支援員として認める人材を配置する必要があります。具体的には、以下のような人材を職場支援員とします。
- 精神保健福祉士、社会福祉士、作業療法士、臨床心理士、産業カウンセラー、看護師、保健師又は障害者雇用促進法第24条に規定する障害者職業カウンセラーの試験に合格しかつ指定の講習を修了した者
- 特例子会社又は重度障害者多数雇用事業所での障害者の指導・援助に関する実務経験が2年以上ある者
- 障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などの障害者の就労支援機関において、障害者の就業に関する相談の実務経験が2年以上ある者
- 障害者職業生活相談員の資格を有する者であって、資格取得後3年以上の実務経験がある者
- 職場適応援助者養成研修修了者である者
- 労働安全衛生法第13条に基づく必置の産業医以外の医師
なお、これらの職場支援員を雇用・委託・委嘱などによって配置する際、
- 支援を受ける障害者と職場支援員が同じ職場で働くこと
- 1人の職場支援員につき、支援できる障害者は3人までであること
なども要件となっています。

職場支援員といっても、色々なパターンがあるんだね。

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職場支援員はぜひ「雇用」で
以上のように、様々な人材を職場支援員と定めています。
しかし、精神保健福祉士や社会福祉士などの資格を持っている人材や、障害者の支援に一定期間携わった経験を持っている人材は、なかなか見つからないでしょう。
そのために、委託や委嘱による配置も助成金の支給対象となっているわけですが、雇用も不可能ではありません。
上記の通り、「職場適応援助者養成研修修了者である者」も職場支援員として認められています。
つまり、自社の従業員にこの研修を受けさせることで、職場支援員を雇用によって配置した区分で助成金を受給できるのです。
雇用管理サポート講習会をはじめ、障害者雇用に役立つ様々な取り組みを実施しているのですが、その一つが職場適応援助者養成研修です。
職場適応援助者養成研修は、集合研修と実技研修によって構成されており、毎年複数回実施されています。
研修は無料で受けることができ、日程も集合研修が3日間、実技研修が4日間と1週間程度で修了となります。
実技研修は、各都道府県の障害者職業センターで受けることができます。
自社の従業員に職場適応援助者養成研修を受けさせ、職場支援員としての資格を取得したのち、その従業員を職場支援員として任命すれば、それを以て職場支援員の雇用とみなされ、障害者職場定着支援コースの受給要件を満たすことができます。

職場支援員を雇用するといっても、新規雇用しなくてもいいんだ!
職場支援員を雇用する効果は大きい
雇用・委託・委嘱と複数の配置方法がある中で、最も効果が大きいのは雇用です。
委託や委嘱と比較して、職場支援員を雇用した場合には、障害者を常時見守りながら支援することができます。
月に1回だけ、あるいは単発で支援するよりも、何かあればいつでもサポートできる体制のほうが、障害者にとって働きやすい環境となります。
また、職場支援員として任命されたからといって、その従業員が障害者につきっきりで支援するわけではありません。
障害者職場定着支援コースの要件では、
「支援対象の障害者が勤務している事業所と同一の事業所に勤務し、常時見守りつつ、必要に応じて対象労働者との面談や就業上の支援ができること」
としており、つきっきりで支援するものではありません。
職場支援員として働く従業員には、何らかの手当を支給することになるでしょうが、それも障害者職場定着支援コースの受給でカバーできます。
委託や委嘱を依頼して費用をかけるよりも、自社の従業員に職場支援員として働いてもらうことを考えてみましょう。

自社に職場支援員がいれば、障害者雇用へのハードルはぐっと低くなるだろう!

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まとめ
障害者人口が増加を続けている今、政府は障害者雇用の促進に取り組んでいます。
2021年には雇用義務の拡大が予定されていますが、それ以外にも様々な形で経営に影響してくる可能性があります。
このとき、障害者雇用に後ろ向きな会社では、負担の増大を避けられません。そうならないように、早い段階で障害者雇用ができるだけ容易になるよう取り組み、助成金も受給していくべきです。
その際に、職場支援員の協力が非常に役立ちます。自社の従業員に研修を受けさせることも含めて、職場支援員の配置を考えていきましょう。
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