近年、障害者雇用の義務が拡大の流れにあります。
この流れは今後も続き、徐々に経営への影響も大きくなってくることと思います。
障害者の雇用義務がある会社では、障害者雇用と積極的に向き合うことで、多くのメリットを得ることができます。
障害者雇用は、真剣に取り組めば取り組むほど受給できる助成金も増え、円滑な雇用につながるのです。
本稿では、障害者雇用のための様々な措置によって受給できる、障害者雇用安定助成金の障害者職場定着支援コースについて解説していきます。
障害者雇用と助成金
近年、国内の障害者人口は大きな上昇を見せており、これを社会でどう支えていくかということが大きな課題となっています。
これまでも、政府はこの問題に対し、障害者雇用促進法などの法律によって対処してきました。
障害者雇用促進法が企業に与える影響は大きく、これによって一定以上の規模の会社では、障害者の雇用義務が課せられるようになりました。
法定雇用率は、2021年に2.3%へと引き上げを予定されており、引き上げ後は常用労働者44人から雇用義務が発生することになります。
今後、障害者雇用に対する企業の責任は大きくなっていくでしょう。
雇用の際に助成金を活用するかどうかによって、大きな差が出てくるところでもあります。

今のうちから、障害者の受け入れ態勢を作っておきたいね。

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障害者雇用で使える助成金
特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)
障害者を初めて雇用する会社の負担を軽減し、初回雇用のハードルを下げることを目的とする助成金です。
障害者雇用の経験が乏しい会社での雇用を促すための制度で、障害者雇用の初回雇用によって120万円の助成金を受給することができます。
※障害者初回雇用コースについて、詳しくはこちら
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースは、初回雇用かどうかに関わらず、障害者やその他の求職が困難な人材を雇用することで助成金を受給できるコースです。
障害者の区分や雇用形態によって受給額が異なりますが、80~240万円の助成金を受給できます。
※特定就職困難者コースについて、以下の記事で詳しく解説しています
障害者トライアル雇用助成金
通常のトライアル雇用助成金の障害者雇用バージョンであり、障害者のトライアル雇用によって助成金を受給できるものです。
障害者雇用に取り組む会社には、障害者に対して合理的な配慮をする義務が生じます。
自社でも十分な配慮が可能かどうかを判断するためには、トライアル雇用期間を設けることが役立ちます。
※障害者トライアル雇用助成金について、詳しくはこちら

障害者雇用で使える助成金はたくさんあるぞ。
障害者雇用の負担にどう対応するか
上記のような、雇用の際に使える助成金を活用していくことで、障害者雇用による負担はかなり軽減することができます。
業容が小さいうちは、雇用しなければならない障害者の人数も少ないため、これらの助成金の活用だけでも十分でしょう。
しかし、業容が大きくなれば雇用すべき障害者の数は増えていきます。
今後の政府の方針によっては、雇用義務を課せられる水準がさらに下がっていき、より多くの障害者雇用に取り組むことになるかもしれません。
雇用する障害者の人数が増えていくと、特定求職者雇用開発助成金や障害者トライアル雇用助成金だけでは、負担を十分に軽減できない会社も出てくるでしょう。
なぜならば、雇用する障害者が多くなるほど、会社に求められる配慮が複雑になってくるからです。
配慮の範囲が広がる
例えば、1人の障害者を雇っている状況では、その1人の障害者の特性に合わせた配慮をすればよいため、負担はそれほど大きくありません。
しかし、雇用する障害者が2人になれば、配慮すべき範囲は広がります。
もちろん、雇用する障害者の類型を統一する、例えば視覚障害者のみを雇う、聴覚障害者のみを雇うといった取り組みによって、配慮をある程度共通化することもできます。
しかし、最近の政府は、精神障害者や発達障害者といった障害者の雇用を促進しています。
このような障害は、一般的にあまり正しい知識が普及しておらず、目に見える障害でもなく、個々の障害者で抱える問題の種類や程度には大きなばらつきがあります。
障害者雇用を成功させるには、雇用する障害者ひとりひとりの特性に合わせて業務を割り振ったり、サポートしたり、様々な配慮が求められます。
障害者を雇用する人数が増えるにつれて、新たに求められる配慮も増えていき、負担も増大し、無理が生じ、十分な配慮が困難になり、障害者雇用に失敗することがあるのです。

受け入れ態勢や配慮への姿勢が不十分だと、大きな負担になりかねないのだ。

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一層の整備が求められる
配慮の範囲が広がれば、職場環境の整備にも取り組んでいかなければなりません。
障害者雇用にあたって、十分に環境を整備したとしても、その環境が次に雇用する障害者にも適しているとは限りません。
もちろん、自社の整備した環境で働ける障害者を雇用することも重要で、そのために障害者トライアル雇用助成金が役に立つのですが、自社に都合の良い障害者雇用を雇用できる保証はないのです。
そもそも、障害者福祉の基本的な精神とは、障害者が健常者や社会に合わせていくものではなく、健常者や社会が障害者に合わせていくものです。それが配慮というものです。
雇用する障害者が増えていけば、それに合わせて就業規則を改めたり、制度を整備したり、職業支援員を配置したりする必要があり、これによる負担も増大していきます。

障害者の雇用人数による負担増にどう対処するか。以下で詳しく見ていこう。
障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)を使おう
以上のように、障害者雇用に取り組む機会が多くなるほど、会社の負担は大きくなっていきます。
この時にも、特定求職者雇用開発助成金や障害者トライアル雇用助成金などによって負担軽減を図ることはもちろんですが、それに加えて、環境整備によって受給できる助成金を活用していくべきです。
障害者雇用のための環境整備に取り組む会社では、障害者雇用安定助成金の障害者職場定着支援コース(以下、障害者職場定着支援コース)が利用できます。
障害者職場定着支援コースとは、障害者が職場に定着できるよう、適切な措置に取り組んだ会社に助成金を受給するコースです。
支給対象となっている措置は色々ありますが、全ての措置に同時に取り組む必要はなく、自社に必要なタイミングでいずれかの措置を実施したとき、それぞれの措置における助成金が支給されます。
障害者雇用によって求められる措置は多岐にわたります。
会社によって必要となる措置はバラバラですから、自社に必要なタイミングで利用できる障害者職場定着支援コースは大いに利用価値があるのです。

雇用した障害者ごとに必要となる配慮は違うだろう。その都度、障害者職場定着支援コースを利用していこう。
障害者職場定着支援コースの7つの措置
障害者職場定着支援コースで、助成金の支給対象となる措置と、助成内容を簡単に見ていきましょう。
措置1:柔軟な時間管理・休暇取得
一つ目の措置は、雇用する障害者の事情や体調に合わせて、勤務時間や休暇の付与を調整する措置です。
障害を理由として、通常の勤務時間に沿った勤務が困難な場合は多いものですし、長時間の通勤が困難な場合もあります。
そのような場合に、勤務時間を調整したり、通勤時間を短縮するために勤務地を変更したりする措置を実施すれば、助成金を受給できます。
また、通院や入院を必要とする障害者に対して、有給休暇制度以外の特別な有給休暇を与えることも、支給の対象となっています。
※柔軟な時間管理・休暇取得の措置について、詳しくはこちら
措置2:短時間労働者の勤務時間延長
この措置によって受給できる助成金は、以下の通りです。
支給対象者 | 措置の内容 | 支給額 | 支給対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者 | 20時間未満から30時間以上へ延長 | 54万円 | 1年 | 27万円×2期 |
20時間未満から20時間以上30時間未満へ延長 | 27万円 | 1年 | 13.5万円×2期 | |
20時間以上30時間未満から30時間へ延長 | 27万円 | 1年 | 13.5万円×2期 | |
上記以外 | 20時間未満から30時間以上へ延長 | 40万円 | 1年 | 20万円×2期 |
20時間未満から20時間以上30時間未満へ延長 | 20万円 | 1年 | 10万円×2期 | |
20時間以上30時間未満から30時間へ延長 | 20万円 | 1年 | 10万円×2期 |
※短時間労働者の勤務時間延長措置について、詳しくはこちら
措置3:無期雇用・正規雇用への転換
三つ目の措置は、有期契約として雇用した障害者を無期雇用や正規雇用に転換する、あるいは無期雇用として雇用した障害者を正規雇用に転換する措置です。
有期契約に比べて、無期雇用や正規雇用は安定した就労につながるため、政府はこれを強く促しています。
人材不足に悩む会社では、障害者雇用ではなく一般の雇用によって無期雇用や正規雇用に取り組み、人材不足の解消に役立てたいと思うかもしれません。
そのような会社でも転換を促すため、障害者に対する転換措置に取り組んだ会社には、通常の転換よりも多くの助成金を支給しています。
具体的には、転換する障害者1人当たり、以下のように助成金が支給されます。
支給対象者 | 措置の内容 | 支給額 | 支給対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者 | 有期雇用から正規雇用へ転換 | 120万円 | 1年 | 60万円×2期 |
有期雇用から無期雇用へ転換 | 60万円 | 1年 | 30万円×2期 | |
無期雇用から正規雇用へ転換 | 60万円 | 1年 | 30万円×2期 | |
上記以外 | 有期雇用から正規雇用へ転換 | 90万円 | 1年 | 45万円×2期 |
有期雇用から無期雇用へ転換 | 45万円 | 1年 | 22.5万円×2期 | |
無期雇用から正規雇用へ転換 | 45万円 | 1年 | 22.5万円×2期 |
なお、転換する障害者に無理が生じないよう、また会社が様子を見ながら取り組めるよう、有期契約から無期雇用へ転換し、その後無期雇用から正規雇用へ転換し、両方で助成金を受給することも可能です。
※障害者の転換措置について、詳しくはこちら
措置4:職場支援員の配置
四つ目の措置は、職場支援員を配置する措置です。
職場支援員とは、雇用した障害者が働きやすいようにサポートするための存在です。
業務の遂行に必要な援助や指導を行い、障害者の悩みを取り除き、職場への定着を図ることが目的です。
職場支援員の配置は、職場支援員の資格を持つ人材を雇用するか、あるいは職場支援員を業務委託や委嘱によって配置する方法があります。
このような措置をとった会社では、以下の助成金を受給できます。
【職場支援員を雇用または業務委託によって配置した場合】
支給対象者 | 支給月額 | 支給対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
短時間労働者以外 | 4万円 | 2年 | 24万円×4期 |
短時間労働者 | 2万円 | 2年 | 12万円×4期 |
【職場支援員を委嘱によって配置した場合】
委嘱による支援1回あたり1万円
※職場支援員の配置措置について、詳しくはこちら

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措置5:職場復帰支援
五つ目の措置は、職場復帰支援です。
両立支援等支援助成金などにも、職場復帰支援というものがあります。これは、何らかの理由によって一定期間にわたって休職しなければならない従業員に対して、それを理由に解雇などせず、再び仕事ができるように支援するものです。
これによって、やむを得ない理由を抱えている人材でも離職する必要がなくなり、雇用の安定につながります。
障害者雇用では、特に職場復帰支援の必要性は大きいと言えます。
なぜならば、障害を理由として長期間の休職を必要とする人もいるからです。
そのような場合に休職を認め、なおかつ復職後の勤務時間に配慮したり、休職前の業務が困難な場合には職務開発に取り組んだりといった職場復帰を支援した場合に、助成金を受給できます。
※職場復帰支援措置について、詳しくはこちら
措置6:中高年障害者の雇用継続支援
会社が障害者雇用に取り組む中でも、特に難易度が高いのは中高年障害者の継続雇用です。
障害者雇用に取り組み、順調に継続雇用してきた会社でも、その障害者が年齢を重ねるにつれて、負担が大きくなっていく場合があります。
もともと抱えている問題が、年をとったことで障害者自身にとって大きな負担になってしまい、業務の継続が困難になることがあり、会社も一層の配慮を求められることがあるのです。
この場合、会社はその障害者の能力や体調に応じて、可能な職務を新たに検討したり、サポートのための機器を導入することで、継続雇用が可能となるかもしれません。
※中高年障害者の雇用継続支援措置について、詳しくはこちら
措置7:社内理解の促進
最後の措置は、社内理解の促進です。
この措置は、障害者雇用が必要になった会社では、早い段階で取り組むべき措置です。
障害者雇用では、一般の従業員が障害者に理解を示さなければなりません。
それができなければ、障害者に適切な配慮はできず、健常者にとっても障害者にとっても働きにくい環境となります。
したがって、障害者雇用に取り組む会社では、社内の理解が欠かせません。
そこで、障害者の就労支援に関する講習を実施し、社内理解の促進に努めた会社では、要した経費に応じて以下の助成金を受給することができます。
要した経費 | 支給額 | 支給対象期間 |
5万円以上10万円未満 | 3万円 | 1年 |
10万円以上20万円未満 | 6万円 | 1年 |
20万円以上 | 12万円 | 1年 |
※社内理解の促進のための措置について、詳しくはこちら

障害者の定着に役立つ措置がたくさんあるんだね!
障害者雇用がスムーズになる
障害者職場定着支援コースで、助成金の支給対象となる措置をひとつずつ見ていきました。
これを見れば、全て障害者の職場定着のための措置であることが分かるでしょう。
政府としては、障害者の職場への定着を促すことが目的ですが、これは会社にとっても大きなメリットがあります。
障害者雇用で悩まなくてよくなる
障害者の雇用義務があるものの、職場への定着がうまくいかない会社は、いつまでも障害者雇用に悩まされることになります。
雇用義務を果たさなければ、企業規模によっては毎月納付金を徴収されることになります。
雇用せず、生産にもつながらず、納付金を徴収されるならば、完全にマイナスです。
それよりも、障害者雇用に取り組み、可能な限り生産につなげ、納付金ではなく人件費を支払ったほうが、確実にプラスになります。
しかし、障害者が職場に定着しなければ、このようなプラスの効果は期待できませんし、雇用する障害者ごとに配慮を考える必要もあるため、非効率になってしまいます。
そうならないためにも、職場への定着を促し、雇用義務を満たした状態を維持していくことが重要です。
障害者雇用がスムーズになる
障害者の職場定着のためには、さまざまな配慮が必要となります。会社は、障害者雇用を通して経験を積むことで、的確な配慮ができるようになっていきます。
配慮の向上は、雇用する障害者の生産性を高めることにもつながりますし、次に雇用する障害者の配慮にも役立ち、障害者雇用と職場定着がスムーズになります。
助成金の受給がスムーズになる
さらに、職場定着の促進によって、助成金の受給もスムーズになります。
障害者雇用に伴う助成金の特徴は、「○万円×○期」というように、雇用期間に応じて支給されるものが多いということです。
しかし、支給のペースは「40万円×6期」であり、6期3年間にわたって継続雇用することで、初めて満額の240万円を受給できる仕組みになっています。
せっかく、重度障害者の雇用に取り組んでも、1期だけで辞めてしまえば受給額は40万円だけです。
それまでの間、職場定着のために配慮に努め、様々な形で負担が生じていると思いますが、それも全て無駄になってしまいます。
障害者雇用に伴う助成金は雇用期間がカギになるため、助成金を満額受給できるよう、職場定着を促すことが重要なのです。
また、職場定着への取り組み=障害者雇用への取り組みであり、障害者雇用を真剣に考えるきっかけにもなります。
配慮のレベルも高くなるでしょうし、経営者に真剣な姿勢があってこそ、職場の従業員も配慮に努めてくれるようになります。
もちろん、自社に最適な障害者雇用のありかた、それに伴う助成金の活用などへの気づきにもつながり、助成金の受給はさらに加速していくことでしょう。

障害者雇用に積極的に取り組めば、必ず会社にプラスの効果が得られる。そのためには助成金の活用が欠かせないぞ!

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まとめ
障害者雇用に取り組む会社では、障害者のための措置もセットで考える必要があります。
職場への定着率を上げることで、障害者の雇用義務を着実に果たすこと、助成金を満額受給すること、経営への負担を軽減してプラスの効果を高めていくことなどにつながるのです。
そのためにも、障害者職場定着支援コースの活用は欠かせません。配慮の実践によって受給できるものですから、積極的に受給してほしいと思います。
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