支出が収入を上回り、資金が足りなくなることを資金ショートと言います。
資金ショートを起こすと、取引先への支払いや銀行への返済が滞ることになりかねず、信用を大きく失う可能性があります。
では、資金ショートを防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。
また、資金ショートに陥った場合にはどうすればよいのでしょうか。
本稿では、資金ショートへの対応を解説していきます。
資金ショートとは?
「資金ショート」と聞いた時、意味を正確に把握していなくとも、よいイメージを抱く人は少ないでしょう。
第一、ショートという言葉自体、「電源がショートする」などといったことから、「バチンッ」と火花が散って壊れてしまうといったイメージを抱かせます。
電源ショートとは、本来回路に流れると想定されているよりも過剰な電流が流れ込んでくることにより、異常な発熱が起こり、焼損してしまうことです。
資金ショートも、これから連想されるイメージでほぼ間違いありません。
資金ショートとは、会社の収入では支出を賄うことができなくなり、資金繰りが破綻してしまうことなのです。
資金ショートを起こしてしまうと、取引先への支払いが困難になりますし、銀行への返済も困難になりますから、会社の存亡にかかわる問題であると言えます。
だからこそ、会社は普段から資金繰り表を作っておくのが良いでしょう。
今の状態のまま経営を続ければ、どこで資金ショートが起きるかを想定し、事前に融資を受けるなどして賄う必要があるのです。
資金繰り表とは、資金ショートの起きる時期と、不足する金額を把握するためのものであると言えます。
もし、資金ショートが一時的なものであれば、借り入れによって賄うことになりますし、一時的でないならば、根本的な改善が必要となります。
資金ショートの原因
では、何を原因として資金ショートが発生するのでしょうか。
それは大きく分けて、
- 収入が減少する
- 支出が増加する
のどちらか、あるいは両方が原因となります。
より具体的には、
収入の減少
- 売上が下がった
- 利益率が下がった
- 支払期日に売掛金を回収できなかった
- 売掛金が回収不能になった
- 過剰な在庫を抱えてしまった
支出の増加
- コストが増加した
- 大型の受注によって支払いが先行した
- 仕入単価が上がった
- 借入が増え、返済も増加した
などが原因となります。
そもそも、商品やサービスを販売した時、現金での取引になることはそれほど多くありません。
取引先に掛け売りし、後日売掛金を回収することになります。
つまり、売掛金を回収するまでは、自社で代金を立て替えていることになります。
しかし、その間にも色々な経費の支払いは発生します。

運転資金を借り入れたとしても、支払うべき費用と借入の合計額を、売掛債権や在庫が上回っている限り、資金繰りに問題はありません。
売掛債権を回収したり、在庫を販売したりすることによって現金が手に入り、支払うべき費用や借り入れの返済に充てることができるからです。
- 売上や利益が減った
- 売掛債権の回収が遅れた
- 売掛債権が貸し倒れになった
- 在庫があまって不良在庫が出た
などの事態に陥ると、支払うべき費用と借入の合計額が、ことになります。
また、売掛債権や在庫をうまく現金化できたとしても、支払うべき費用や借入額が大きくなれば、同じ状況に陥ります。
そうなれば、支払いや返済ができなくなってしまい、売掛債権や在庫の合計を上回ってしまいます。
そして、資金ショートに陥るわけです。

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資金ショートに陥ったらどうする?
では、資金ショートに陥ってしまったならば、どうすればよいのでしょうか。
この時、まずは焦ることなく、現状の把握に努めてください。
ショートの原因が分からなければ対策も分からないからです。
収入と支出を分析する
原因を探るためには、収入と支出を分析していきます。
収入の分析
収入について分析した結果、売掛金の回収が遅れているとわかったならば、すぐに取引先に督促を始め、売掛金を回収してショートを防ぐ必要があります。
取引先が倒産したことによって、売掛金が回収困難になってしまっているならば、より敏速な対応が求められます。
例えば、納入していた商品を引き上げたり、早期に法的手段に出て取り立てたりすることによって、少しでもショートを緩和するよう努めます。
しかし、このような取り組みをしたとしても、ショートが完全に回避できるとは限りません。
支払いが遅れた売掛金の回収には時間がかかりますし、倒産した会社の売掛金は回収が非常に困難だからです。
したがって、原因に合わせた対策と同時に、社内での資金調達を図ります。
具体的には、
- 社長や役員から借り入れる
- 積立預金を解約する
- 手形を割引する
- 売掛金をファクタリングする
- その他資産を換金する
などの方法を検討してみるのです。
会社の内部で資金を調達することができれば、急場をしのげる可能性が高まります。

具体的には、
- 銀行に資金ショートの理由を説明し、融資を要請する
- 生命保険を積み立てているならば、中途解約によって解約返戻金を受け取る。あるいは契約者貸付制度を利用して、解約返戻金の範囲内で融資を受ける。
- 小規模企業共済に加入しているならば、融資を要請する(掛金総額の70~90%で融資を受けられる)。
- 経営セーフティ共済に加入しているならば、融資を要請する(掛金の10倍まで無利息で借りられる)。
- 日本政策金融公庫を利用し、経営環境変化対応資金や金融環境変化対応資金、あるいは取引企業倒産対応資金などによる融資を要請する。
などの方法が考えられます。
支出の分析
収入の分析を行なうと同時に、支出の分析も必ず行います。
収入に大きな問題が見つかったからといって、そちらにかかりきりになっていてはいけません。
収入に問題があるだけではなく、さらに支出にも問題がある可能性も否定できないからです。
支出を見直すと、意外なほどにカットできる部分が多いことに気づくかもしれません。
例えば役員報酬が多い、支払いサイトが短い、無駄な経費が多いなどが良くあるケースです。
どうしようもない時は
収入と支出を分析し、原因を特定したとしても、対策が必ずうまくいくとは限りません。
場合によっては、どうにも対策しようがないということもあるでしょう。
この場合には、最終手段として、取引先の支払いや銀行への返済を一時的に延期してもらうように交渉する必要があります。
もちろん、これらの交渉は取引先や銀行に迷惑をかけることですから、やり方一つで重大な信用不安に陥る可能性があります。
したがって、後述の通り、細心の注意を払いながら交渉する必要があります。

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突発的な資金ショート
資金ショートの原因は上記の通りです。
これを防ぐには、資金繰り表を作成して収支をしっかりとコントロールするのです。
そして、不足分を計画的な借り入れで補うことによって、かなりの程度まで防ぐことができます。
しかし、それでも資金ショートのリスクがゼロになることはなく、突発的な資金ショートに見舞われることもあります。
突発的な資金ショートには、以下のようなものがあります。
大口の取引先が倒産し、多額の不良債権が発生した
取引高がそれほど大きくない、一般の取引先が倒産した場合ならば、資金ショートの対策も講じやすいのですが、大口の取引先が倒産した場合は資金繰りに大きな被害をもたらします。
それまでは問題なく回収できていたとしても、親会社や大口の顧客が倒産したことから取引先が連鎖倒産し、自社もそのあおりを受ける可能性があります。
このほか、大口の取引先から支払いの繰り延べや手形のジャンプを要請された場合には、完全に回収不能ではないものの、資金繰りに大きな悪影響を及ぼし、突発的な資金ショートのリスクが高まります。
材料価格が高騰した

世界情勢の変動によって、自社の事業に欠かせない原材料の価格が高騰すれば、仕入れ価格も高騰し、資金繰りに大きな影響を及ぼします。
為替相場の急変も、同様に突発的な資金ショートのリスクを高めます。
債務保証先が倒産した
債務を保証していた会社が倒産すれば、自社が債務を履行しなければなりません。
これも、突発的な資金ショートを招きます。
訴訟によって損害賠償を請求された
自社の商品が訴訟の対象となったり、顧客データが流出して提訴されたり、自社が引き起こした公害が提訴されたりした場合には、損害賠償を請求されます。
程度によりますが、これも突発的な資金ショートの原因です。
その他
その他にも、考えられる原因は色々です。
例えば盗難によって損害が発生した、社内で横領が発生した、売上偽装が発覚した、詐欺に巻き込まれたなどが、資金ショートの原因となります。

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トラブルを招かない交渉と注意点
突発的にしろ、突発的でないにしろ資金ショートを招き、手の施しようがない場合には、支払いの繰り延べを依頼するほかありません。
支払いを遅らせることができれば、支出すべきものをひとまず支出せずにすむため、効果は大きいです。
しかし、自社にメリットが大きい分、相手にはデメリットが大きいです。
大きな迷惑をかけることを認識したうえで、自社の苦しい状況をきちんと伝え、繰り延べを依頼することが大切です。
例えば、

〇ヶ月後にはB社からまとまったお金が入りますから、それまで待っていただけないでしょうか。

わが社の対策としては、これこれの取り組みによって状況が改善する見通しですから、支払いを少し猶予してもらえませんか。
など、事情と対策を説明するのです。
この時に注意したいのが、繰り延べの依頼をしたことによって、関係する他社に悪い噂が流れないようにすることです。
ある仕入先に繰り延べを依頼したことで、他の仕入れ先に「あの会社は資金ショートを起こしているから、取引すべきでない」などの噂が流れてしまうと、その後の経営に多大な悪影響を及ぼすことになります。
多くの会社はリスクに敏感ですから、このような悪い噂はスピーディに、なおかつ大袈裟に広がっていくものです。
そこで、繰り延べを依頼するならば、信頼関係が確立されており、情報を流される心配がない取引先にだけ、依頼する必要があります。

そうすることで、良い付き合いができる会社もおのずとはっきりしてくるものですから、緊急時に頼れる取引先を明らかにすることにも役立ちます。
また、繰り延べを依頼するにあたって、自社の要求を一方的に通すのではなく、取引先にもいくらかメリットがあるように工夫すると効果的です。
例えば、資金ショートを解消したのちは取引量を増やすことを約束したり、利息を支払ったりすることを申し出るのです。
誠意をもって交渉し、取引先にもメリットが生じるように工夫すれば、むげに断られることは少なくなります。

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全社的な取り組みを
さて、ここからは資金ショートへの対応をより具体的に考えていきましょう。
まずは資金ショートに陥った場合の社内での対応姿勢、続いて資金ショートに備えての日頃からの対応姿勢というアプローチで考えていきます。
全社的な対応における、各部門の取り組みは以下の通りです。
経理部門
まず、資金ショートに陥った場合には、全社的な対応が求められます。
資金管理は経理部門の仕事だからと言って、経理部門だけで対応できるものではありません。
必ず、社内の各部門が連携を取りながら対応していく必要があります。
経理部門は、その中心となる存在です。
経理部門の働きは、対応の中心となって、各部門の調整を図ることです。
資金ショートに陥ったことを各部門に伝え、状況を改善するための方針を説明し、姿勢を共有します。
この時、口頭で伝えるのではなく、書面にして掲示するなどして、確実な共有を図りましょう。
また、資産の現金化を図ったり、融資を受けられる機関に借入交渉を進めていくのも、経理部門の仕事です。
経営陣
経営陣が先頭きって対応したいものですが、やはり中心は経理部門です。
経営陣は、資金繰りの状況を常に把握していることが好ましいのですが、それができていないために資金ショートに陥っていることも多いです。
したがって、経理部門から資金ショートの報告を受けた経営陣は、上層部としての対策を練ります。
もし自社がグループ会社の一つならば、親会社に情報をいち早く伝えて対策を仰いだり、援助を依頼するのも経営陣の役目です。
営業部門
営業部門は、とにかく売ることが重要と考えられがちで、経理部門との連携が取れていないことが多々あります。
もちろん、それが営業部門の本来の仕事ですから、資金ショートに陥ったからと言って、営業活動を緩める必要はありません。

例えば、見直した結果として無理な訪問販売をしていたり、売上至上主義に陥って利益のほとんど出ない販売をしていたりしたならば、それを中止して効率的な営業を検討することが重要です。
また、資金ショートの際に、さらに売掛金に関するトラブルが発生してしまえば、資金ショートは深刻化してしまいます。
そこで、売掛金をきちんと回収できるように営業部門が努力することも重要です。
具体的には、売掛債権を抱えている取引先と残高と期間をリストアップし、スムーズな回収に備えます。
もし、この時点で滞留している債権が発覚したならば、優先順位を検討しながら効率的な回収を検討していきます。
購買部門
購買部門は、信用不安に陥らないように、仕入先と調整するのが仕事です。
支払手形の期日を今までより長くしてもらう、買掛の期間を延長してもらう、現金決済があれば手形決済に変えてもらうなどの交渉が考えられます。
購買部門は、支払先をリストアップして整理し、トラブルなく交渉できる取引先を検討し、効率よく交渉していくことを考えます。
製造部門

仕入れた原材料や製造済みの商品などの在庫を減らし、過剰在庫の処分に努めます。
同時に、製造にかかわる設備や製造工程も洗い出し、無駄があればカットに努めます。
不要な設備などがあれば、売却して現金化することもできますし、不要でない設備でもセール&リースバックによって現金に換えることができます。
このように、製造部門では在庫や設備の現金化や、製造におけるコストカットに取り組みます。
総務部門
総務部門は、現在加入している保険を検討します。
必要ならば解約して返戻金を受け取ったり、契約者貸付制度からの融資を受けるために交渉を行います。
このほか、全体的な経費の削減を検討したり、リースへの切り替えを検討したりするのも、総務部門の役目です。
貸し倒れによって資金ショートに陥っていれば、法的手段に出ることもあるでしょう。

日頃からできる対応
資金ショートに陥ってからの対応以上に重要なのが、日頃から対応しておくことです。
これによって、万が一突発的な資金ショートに見舞われたときにも、スムーズに対応が可能となります。
積立預金をしておく
日頃から積立預金をしておけば、資金ショートの際にもすぐにカバーすることができます。
類似の方法として、解約できる生命保険に加入しておく方法や、有価証券に投資しておくなどの方法も考えられます。
保険に加入する
生命保険に加入して解約返戻金を受け取れる状況を作っておくほか、損害保険や賠償保険に加入しておくことも良い方法です。
これによって、自然災害などの不可抗力による資金ショートの場合、保険金によってカバーすることができます。
銀行と当座貸越契約を結ぶ
当座貸越とは、一定の上限額を設けておき、その範囲内まで自由に融資を受けられるものです。

経営セーフティ共済に加入する
経営セーフティ共済に加入し、毎月掛金を払い込んでおくと、万が一の際には掛金の10倍までの資金を無利息で借りることができます。
類似の方法として、小規模企業共済への加入も良い方法です。
こちらは、掛金総額の70~90%の資金を借りられるほか、緊急時には経営安定貸付けなどの制度を利用することもできます。
ファクタリングの活用
ファクタリング業者を利用し、普段からファクタリングをしておくことも有効です。
ファクタリングによって売掛債権を売却すれば、貸し倒れリスクをファクタリング業者に転嫁することができるため、早期に資金化しつつ、貸し倒れリスクを回避することもできるのです。
与信管理の徹底
普段から与信管理を徹底しておくことは、最も根本的かつ有効な方法です。
与信管理によって取引先の信用状況を調査しておけば、不安な取引先とは取引を停止したり、与信限度額を下げたりすることによって、資金ショートのリスクを低く抑えることができます。
弁護士を見つけておく
資金ショートの際には、法的手段によって対応していくこともあるのですが、すぐに良い弁護士を見つけられるとは限りません。
このため、普段から良い弁護士を見つけておき、いざという時にすぐに依頼できる体制を作っておくことも大切です。
まとめ
会社経営において、資金ショートは極力避けるべき事態です。
そのためには、常に資金繰りを把握しておき、資金ショートに備えて運転資金を借り入れたり、売掛金管理を徹底したりする必要があります。
また、突発的な資金ショートに備えて、普段から保険となる制度にお金を積み立てておいたり、銀行と信頼関係を築いておいたりすることも大切です。
資金ショートへの対応は、資金ショートに陥ったタイミングでの対応よりも、むしろ日頃からの取り組みが重要です。
ぜひ、本稿を参考にして、資金ショートに備えてほしいと思います。