助成金を活用するためには、手続きを正確に進めて受給要件を満たすためにも、助成金の専門家である社労士のサポートを受ける必要があります。
もちろん、社労士に依頼した場合には、社労士報酬を支払う必要があります。
では、社労士報酬はいったいどれくらい支払うものなのでしょうか。
また、見積もりが適正であるかどうかを判断するためには、どのように考えるべきなのでしょうか。
本稿では、社労士報酬を正しく考えるために、社労士が求める費用の内訳と適正額について解説していきます。
社労士に依頼するときにかかかる費用
厚生労働省が実施している助成金制度では、受給要件を満たした会社に対して、それぞれ決められた助成金を支給しています。
応募した会社から支給先を採択する補助金とは異なり、受給要件を満たした会社は必ず受給することができるため、多くの会社で積極的に活用することができます。
ただし、受給要件を満たしているかどうかについては、かなり厳しく審査されています。
ここで審査を甘くすると、助成金の不正受給につながり、助成金制度がうまく機能しなくなってしまうためです。


このため、経営者自ら助成金の手続きをすることもできますが、受給要件に漏れが生じたり、思わぬトラブルによって受給できなくなる可能性も高いです。
そこで、助成金を利用する際には、助成金の専門家である社労士に依頼するのが一般的です。
当然ながら、社労士に依頼する際には、社労士に報酬を支払う必要があります。
かつて、社労士報酬は全国社会保険労務士会連合会が基準額を設定していたため、社労士間で報酬額がほぼ同じ(都道府県によって異なる場合があった)となっていました。
しかし、現在では報酬額が自由化されているため、低価格の社労士もいれば高価格の社労士もいます。
とはいえ、極端な低価格では経営が成り立たず、極端な高価格では客がつきません。
そのため、請求される料金の名目や報酬額は、大きくぶれることが少なくなっています。
社労士に依頼したとき、請求される費用は大きく分けて着手金、成功報酬の2種類です。
ただし、契約によっては助成金の申請を機に顧問契約を結び、それ以降は毎月の顧問料金が発生する契約になっていることもあります。
これらについて、順番に見ていきましょう。

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社労士に請求される費用「着手金」
着手金は、助成金の申請を依頼するにあたり、最初に支払う費用です。
助成金は、受給要件を満たせば必ず受給できますが、そうでなければ必ず受給できません。
もし、社労士の求めに会社がなかなか応じなかったり、受給のための取り組みに会社が消極的であったりすれば、助成金は受給できなくなります。
契約内容によって変わりますが、基本的には助成金が受給できない場合でも、着手金が返金されることはありません。
着手金を求める理由
社労士によって、着手金を求める場合と、求めない場合があります。
しかし、多くの社労士が着手金を求めます。
着手金を求める理由は、いくつか考えられますが、主に次のような理由です。
- 助成金を受給できなかった場合にノーギャラになることを防ぐため
- 取引関係を築くため
- 会社の取り組みを促すため
ノーギャラになってしまう事を防ぐため
会社によっては、社労士に依頼しさえすればすべてうまくいくと考え、社労士に丸投げする会社もあります。
しかし、そのような非協力的な関係であれば、助成金を受給できない可能性が非常に高いです。
着手金を事前に受け取っていれば、受給できなかった場合にも社労士が全くのノーギャラになることはありません。
取引関係を作って取り組みやすくするため
また、着手金のやり取りをすることによって、取引関係を分かりやすい形で作ることができます。
着手金がゼロであれば、社労士は報酬が全く確定していない状態です。

会社側も、全く報酬を支払っていないことから、社労士が助成金の手続きを後回しにしても、催促などをしにくくなります。
つまり、着手金をやり取りしていないことによって、取引が開始したという明確なラインがわかりにくく、円滑なやり取りができなくなるのです。
着手金を受け取っていれば、社労士は責任をもって取り組みやすく、会社も責任を求めやすくなります。
会社の取り組みを促すため
さらに、着手金を支払うことで、会社の取り組みを促すこともできます。
着手金を支払っていても、社労士に任せきりにして、受給できなくなる会社は少なくありません。
着手金がゼロになれば、そのような会社が増えてしまうことは容易に想像できます。
報酬を全く支払っていない状態ですから、社労士が会社に情報を求めたり、取り組みを示したりしても、「今は忙しいし、1円も払っているわけじゃないから、最悪受給できなくても問題ない」と考え、手続きが進まなくなるのです。

社労士の求めに応じず、手続きが進まずに受給できなくなれば、会社は着手金を丸損することになります。
社労士が資料や情報を求めたら、できるだけ早く提供しようと努めるため、手続きをスムーズに進めていくことができます。
着手金に本気度を見るため
以上のように、着手金を求めるには相応の理由があります。
受給できない可能性を考えると、着手金を支払うのは無駄だと考える人もいるでしょう。
しかし、着手金を求める社労士は、着手金を求めない社労士よりも、しっかり受給に向けて動いてくれる、本気度の高い社労士が多いのです。
着手金の有無によって、社労士の性質を一概に判断することはできませんが、着手金を求める社労士に依頼したほうが、良い結果につながる傾向があることは確かです。
着手金は必要経費と割り切るようにしましょう。

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社労士に請求される費用「成功報酬」
成功報酬は、助成金を受給できたときに支払うものです。
受給金額の10~20%が相場となっています。
高めの報酬に注意
社労士の報酬設定は自由ですから、社労士によっては高め(30%など)の成功報酬を請求してくる場合もあります。
せっかく助成金を受給するのですから、自社の手残りはできるだけ多く確保すべきです。

成功報酬が10%の社労士でも、30%の社労士でも、受給要件を満たせるように手続きを進め、受給要件を満たせば受給でき、受給金額も同じです。
したがって、社労士によって大きな差が出るものではないため、あえて成功報酬が高い社労士に依頼する必要はありません。
あくまでも、10~20%を適正水準と考えるべきです。
低めの報酬にも注意
ただし、成功報酬が低ければ低いほどいいとは限りません。
なぜならば、成功報酬を低く設定している社労士は、どこか別のところで費用を設定していることも多いからです。
したがって、成功報酬が低めに設定されている場合には、別の名目で請求される費用があるかどうかを確認することが大切です。
この確認を怠ると、「着手金は○万円、成功報酬は低めの○%。会社の手残りが多いから、この社労士に依頼しよう!」と考えていたところ、最終的には想定していたよりも手残りが少なくなってしまう可能性があります。
成功報酬が低いものの、他に費用が掛かるケースの代表例として、下記のように顧問契約を結ぶケースが挙げられます。

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社労士に請求される費用「顧問料金」
これは、社労士と顧問契約を結んだ場合の費用です。
助成金の内容によっては、長期間の取り組みによって受給要件を満たしていくものもあります。
社労士と顧問契約を結び、長期にわたって取り組んでいくならば、助成金に関する顧問業務に伴い、毎月顧問料金を支払う必要があります。
したがって、助成金の申請依頼に合わせて顧問契約を結ぶならば、顧問料金も考慮しておかなければなりません。

顧問料金が低く設定されていれば安上がりに感じるかもしれませんが、実際には顧問料金が加算されることにより、必ずしも安上がりとは言えなくなります。
さらに、顧問契約を獲得した社労士は、その会社が別の助成金を受給したいとき、その業務を全て受注することを目的としています。
もちろん、顧問料金は顧問契約を結んでいる限り発生し続けるものであり、助成金申請を依頼していないときでも支払い続けることになります。
なお、この顧問料金は、あくまでも助成金に関するアドバイス料に相当するものであり、労務その他を全般的に依頼できる契約ではありません。
顧問契約の必要性をしっかり検討しておく
顧問契約が発生する社労士に対しては、慎重に検討する必要があります。
検討にあたっては、自社における助成金の必要性によって検討していきます。
顧問契約しても良い場合
- 自社が積極的に助成金を活用したいと考えている
- 社労士もその期待に応えられだけの積極性・知識・経験を持ち合わせている
- 社労士から本当に自社に役立つ助成金を提案してくれる
このような状況ならば、顧問契約を結び、アドバイス料としての顧問料金を支払う価値は十分にあります。
特に、成長期にある会社などでは、これから労働環境の整備を進めたり、従業員を雇い入れたりする機会が多くなるため、その都度助成金を受給できるように、社労士との顧問契約が役に立ちます。
毎月の顧問料は発生しますが、使える助成金を提案してもらえることが多く、顧問料金以上のメリットが得られることでしょう。
顧問契約しないほうが良い場合
逆に、助成金を頻繁に使う予定がなく、たまに発生する助成金申請を依頼したいと考えているだけであれば、顧問契約は結ぶ必要はありません。
- 経営規模が小さい
- 業容を拡大する予定もない
- たまたま助成金を受給できるチャンスが出てくれば利用する
例えばこのような会社であれば、必要になった時だけ単発で社労士に依頼するのがベストです。
このような会社では、労働環境が大きく変化することはなく、一定していますから、労働環境を整備できる範囲が限られています。

社労士と顧問契約を結んだところで、社労士も提案できる助成金がなく、ただ顧問料金を支払うだけの関係になってしまいます。
いくら社労士が有能であっても、こればかりはどうにもなりません。
必要のない無駄な費用を払い続けることになってしまいます。
それよりも、やや高めの成功報酬で顧問契約は不要としている社労士に依頼したほうが安上がりです。
悪質な社労士に要注意
注意したいのは、成功報酬を低く設定することによって、安く見せかけようとしているだけの社労士です。
顧問契約によってメリットを提供するつもりはあまりなく、ともかく顧問料金によって、成功報酬の値下げ分を補填することを重視している社労士もいるのです。
裏を返せば、このような社労士は、成功報酬を低めに設定しなければ客がつかない、能力の低い社労士なのかもしれません。
顧問契約を結んだところで、ろくに提案せずに顧問料金だけをせしめたり、会社が本当に求める提案をできなかったりする可能性があります。
最悪の場合には、件数をこなすことで成功報酬をたくさん受け取ることを考え、なんでもかんでも提案して受給させます。
会社に必要のない制度が乱立し、経営に悪影響をもたらす可能性もあります。
したがって、助成金を活用できる会社が顧問契約を望むならば、あくまでも優秀な社労士と契約することを考えるべきです。
コンサル料金は不要
なお、社労士に依頼する場合には、コンサル料金といった名目での費用は不要です。
もし、助成金の手続きにあたって、「コンサル料金」「ノウハウ提供料」などの名目で費用を請求してくるならば、悪質な社労士の可能性が高いです。
コンサルティング会社が助成金に関する業務を行っている場合には、コンサル料金が妥当と言える場合もあります。
例えば、勤怠管理システムを導入するなど、今後の助成金活用を促すための仕組みづくりをしてくれるならば、その費用としてコンサル料金を支払うのも良いでしょう。

手続きの必要から、就業規則などを作成することもありますが、それは「就業規則作成費用」などとして請求されるべきです。
また、助成金活用を促進するための仕組みづくりに協力してくれる場合にも、その料金はコンサル料金としてではなく、顧問料金として請求されるべきです。
したがって、社労士がコンサル料金、あるいはそれに類する費用を請求してきた場合には、疑いの目を向けるべきでです
このほかにも、よくわからない費用が含まれている社労士は避けたほうが無難でしょう。
基本的に、社労士の報酬は着手金と成功報酬であり、場合によっては顧問料金が含まれ、諸費用については納得できる説明があるものと考えましょう。
会社の手残りを考える
上記のことを踏まえて、実際に社労士に依頼し、報酬を考える際には、「最終的に、会社にはどれくらい残るか?」という視点で考えることがポイントです。
さらに、より良い条件で依頼するためには、複数の社労士から見積もりを取りましょう。
料金の内訳を聞いたうえで、最も条件の良い社労士に依頼することも大切です。
社労士報酬の比較の例
会社の手残りをできるだけ大きくするために、複数の社労士に依頼した場合を想定して、シミュレーションしてみましょう。
キャリアアップ助成金の正社員化コースを利用し、3人の従業員を有期契約から正規雇用へと転換した場合、基本的な受給額は1人当たり57万円、生産性要件をクリアした場合の受給額は1人当たり72万円となります。
ここでは、基本的な受給額の合計である171万円の受給を目指し、3人の社労士に依頼したところ、それぞれ以下の見積もりを受け取ったとします。
【社労士A】
- 着手金:5万円
- 成功報酬:20%
- 顧問料金(年間):なし
【社労士B】
- 着手金:10万円
- 成功報酬:10%
- 顧問料金(年間):12万円(1万円/月で顧問契約あり)
【社労士C】
- 着手金:なし
- 成功報酬:30%
- 顧問料金(年間):なし
このように、それぞれ異なるプランを受け取ったとき、果たして会社の手残りはいくらになるかを計算してみると、以下のような結果となります。
(単位:万円)
着手金 | 成功報酬 | 顧問料金 | 合計金額 | 会社の手残り | 手残り率 | |
社労士A | 5 | 34.2 | 0 | 39.2 | 131.8 | 70.3% |
社労士B | 10 | 17.1 | 12 | 39.1 | 131.9 | 70.4% |
社労士C | 0 | 51.3 | 0 | 51.3 | 119.7 | 57.1% |

しかし、あくまでも顧問料金は年額で考えているため、顧問契約の期間が長くなるほど、会社の手残りは減っていきます。
積極的に助成金に取り組み、顧問料金以上のメリットを享受するならばよいでしょうが、そうでないならば、社労士Aに単発で依頼したほうが手残りは大きくなるでしょう。
なお、社労士Cについては、着手金が無料であることに魅力を感じる人もいるでしょうが、上記の通り着手金を無料とすることによって、良くない影響が出てくることもあります。
さらに、着手金がゼロであっても、成功報酬が高いことから、会社の手残りは最も少なくなっていることが分かります。
このようなパターンもあるため、特定の費用だけで判断するのではなく、全ての費用を考慮したうえで自社にいくら残るかを計算し、比較することが大切です。
必要経費と割り切る
受給要件を満たしている会社は、手続きさえすれば助成金をもらうことができるため、なにやら簡単そうなイメージを抱く人もいます。
簡単な手続きであるにもかかわらず、40万円も50万円も支払うのですから、もったいないと思う人もいるでしょう。
しかし、社労士に依頼しなければ、受給要件を満たすことができず、受給できない可能性が高まります。
また、うまくできたとしても、そのためにたくさんの時間や労力を費やすこととなります。
その時間と労力を、経営者本来の仕事に注ぎ込めば、40万円や50万円はすぐにペイできるはずです。
何より、40万円の社労士報酬を支払っても、130万円の助成金が手元に残るのですから、それで良しとすべきです。
社労士報酬は必要経費と考えましょう。

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まとめ
本稿では、本格的に助成金を活用すべく、社労士への依頼を考えている人のために、社労士報酬の考え方を解説してきました。
社労士報酬はこれくらい、という相場観を持っていない経営者も多く、そのために助成金の利用を後回しにしている経営者もいると思います。
そのような人が、本稿を読んで相場観を掴み、適切な報酬で社労士に依頼し、助成金を受給することができればうれしく思います。
社労士とうまく連携しつつ、助成金を活用していきましょう。
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