先日、政府は最低賃金の引き上げを加速する方針を打ち出し、今年の最低賃金は5%増額を目指すという意見も出ています。
もちろん、中小企業への影響は大きいため、これがすんなり通るとは思えませんが、最近の数年で、政府が着実に最低賃金を挙げてきたこと、引き上げ率を高めてきたことは事実であり、予断を許さない状況です。
本稿では、もし最低賃金が5%アップとなった場合、また最低賃金1000円アップの加速に至った場合に、中小企業が対応していくための考え方、助成金の活用について解説していきます。
※やや長文ですが、中小企業経営者にとってはかなり深刻な問題であるため、あえて「徹底解説」という形をとらせていただきます。
政府、最低賃金1000円へ照準
近年、最低賃金の引き上げが続いています。本格的な引き上げが始まったのはここ数年のことで、平成28年からは毎年3%ペースでの上昇が続いています。
これによって、人件費負担に悩んでいる会社も多いと思います。
2018年に定められた全国加重平均での最低賃金は874円ですが、政府はさらなる引き上げを図り、最終的には最低賃金1000円を目指しています。
もし、今後も毎年3%ペースで最低賃金を引き上げていくと、1000円を突破するのは2023年です。わずか5年しかないと考えると、かなりキツい上昇になるでしょう。
しかし、政府の方針を見てみると、「2023年に最低賃金1000円突破」という流れは、まだ時間的にいくらか猶予があります。
政府の最近の方針を見ていると、どうやら最低賃金1000円への引き上げをスピードアップすることを考えているらしく、2023年を俟たずに1000円を突破する可能性があるのです。
政府は今月21日の閣議決定で、「経済財政運営と改革の基本方針」に、最低賃金1000円の早期実現を目指すと明記しました。
さらに、自民党は7月の参院選で、これを公約に掲げるとしています。
具体的には、今年は最低賃金の引き上げペースを加速させるとしており、経済財政諮問会議では5%の引き上げについても触れています。
また、厚生労働省が開く中央最低賃金審議会でも、引き上げ幅を3~5%で調整するとしています。
過去3年間は3%程度の引き上げとなりましたが、今年は最低でも3%、場合によっては5%の引き上げとなる可能性もあります。
これは、10月に増税を控えているため、その時期に合わせるための引き上げだといわれています。

最低でも3%、場合によっては5%。よほどしっかり対策しないと、大変な負担になるかもしれないぞ。
賛否両論、議論紛々
政府が最低賃金引上げの方針を明確に打ち出していることから、今後も引き上げが続くことは間違いありませんし、引き上げペースがアップする可能性も十分にあります。
ただし、これが中小企業にとって確実に負担になることは事実であり、反対意見も多数出ています。
自民党は、最低賃金1000円を目指し、これを参院選で公約するとしていますが、中小企業にとっては大きな負担になるため、参院選への影響を懸念する声も上っています。
というのも、最低賃金引き上げによって負担増加となれば、日本商工会議所などの中小企業関係団体が政府の方針に反発する可能性があるためです。

最低賃金をどうするか、選挙に使われることは迷惑だね。経営者にとって、最大の関心ごとは経営への負担。これはどうなるのかな。
中小企業への影響は?
日本商工会議所は、最低賃金の引き上げについて、「中小企業の経営が圧迫され、従業員の削減や廃業に追い込まれかねない」として、最低賃金1000円を目指すという方針に反発しています。
日本商工会議所の発言の通り、最低賃金アップは企業にとって確実に負担になります。
最低賃金ギリギリのラインで、ギリギリの人数を雇っている会社などでは、3%程度の賃上げでも苦しいでしょう。
それが5%ともなれば、
- 人員を削減しなければ人件費負担に耐えられない
- 人員を削減したら人手が足りない
- 事業が回らなくなり、事業の規模を縮小したり、廃業したりするほかない
という会社も出てくるはずです。
このような流れに陥ってしまうと、政府の目論見は完全に外れることになります。
労働者目線で最低賃金の引き上げを進めてきたものの、それに耐えられずに雇用主である会社が事業規模縮小や廃業となれば、労働者は最低賃金どころか就労先を失ってしまうことになるのです。
もちろん、経済的にもマイナスの影響が出ることになります。
人材獲得競争は激化
さらに、採用活動が今以上に切実なものとなり、人材の獲得競争が激化する懸念もあります。
なぜならば、賃上げによって人件費負担が増大すれば、その負担によって得られる効果を最大化することが求められるからです。
このため、企業が労働者に求める働きの水準が上がり、優秀な人材を求めて競争が激化し、一方で能力や経験に乏しい人材が採用されにくくなる流れが予想されます。
今でさえ、採用活動がうまくいかず、人材不足に悩んでいる中小企業は多いのです。
そのような会社は、人材獲得競争が激化することにより、さらなる人材不足に悩まされることになるかもしれません。
高い賃金を支払っても求める人材を雇うことができず、ミスマッチな人材で事業を回していくほかなくなれば、やがて経営困難に陥る可能性も高いです。

そうならないよう、政府は中小企業への支援策も打ち出してくるはずだ。今後の動きに注目しておこう。

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既存の助成金を活用すべし
以上のように、様々な影響が考えられる中で、中小企業が取るべき第一の道は助成金を活用していくことです。
既に実施されている助成金を活用していくのはもちろんのこと、政府の動向を観察し、これから新設・拡充される可能性がある助成金について考えておくことが大切です。
政府の助成金制度は、その時々の状況に合わせて拡充されたり、新たな制度が新設されたりします。その見通しが当たるかどうかはさておき、政府の方針から助成金の動向を予想しておけば、新設・拡充された制度を素早く活用していくことができます。

もちろん、これは希望的観測であってはいけないわ。
既存の助成金を十分に活用しながら、さらなる活用のためにアンテナを貼っておき、随時活用していくということです。
現在実施されている助成金のうち、すぐに活用すべき助成金には、
- 賃上げの際に利用できる助成金(最低賃金アップの負担を助成金で吸収する)
- 生産性向上に利用できる助成金(最低賃金アップの負担を生産性向上で吸収する)
の二通りが考えられます。
賃上げの際に利用できる助成金
既存の助成金で活用できるもののうち、両方を活用するのがベストですが、生産性向上はややハードルの高い取り組みになります。
そのため、まずは賃金アップで受給できるものから検討しても良いでしょう。
賃金を増額することで受給できる助成金には、
- キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コース
- 業務改善助成金
の二つがあります。
両者の概要、特徴、使い分けなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。



それぞれの比較
政府の方針では、今年は最大で5%の賃上げになる可能性があります。もし5%の増額となった場合、最低賃金は874円から912円への増額となる計算です。
従業員を最低賃金ギリギリで雇っている会社では、賃金規定等改定コースの賃金2~3%アップ、あるいは業務改善助成金の30円アップでは追い付かないペースです。
賃金規定等改定コースを利用するならば約4.3%の増額、業務改善助成金を利用するならば38円の増額となります。
この時、それぞれの助成金を利用した場合の、賃上げと助成金受給の様子はどうなるのでしょうか。
「従業員10人に対して賃上げを実施する」という条件で比較してみると、以下の通りとなります。
【賃金規定等改定コース】
最低賃金で雇用している、一部の有期契約労働者に対し、賃金規定を増額改定した場合、支給額の基本となる賃金2%増額の区分では、以下の助成金が支給されます。
対象労働者数 | 有期契約労働者の一部に2%増額の場合 | |
基本的な支給額 | 生産性が6%向上している場合 | |
1~3人 | 1事業所あたり4万7500円 | 1事業所当たり6万円 |
4~6人 | 1事業所あたり9万5000円 | 1事業所当たり12万円 |
7~10人 | 1事業所あたり14万2500円 | 1事業所当たり18万円 |
11~100人 | 1人当たり1万4250円 | 1人当たり1万8000円 |
この表の通り、従業員10人であれば7~10人の区分で、1事業所当たり14万2500円(生産性要件を満たした場合には18万円)の受給となります。
さらに、賃金の増額率が4.3%であれば、3%以上増額した場合の加算として、1人当たり7600円(生産性要件を満たしている場合には9600円)が支給されます。
このため、従業員10人に賃上げする会社では、事業所への助成金として14万2500円(生産性要件を満たした場合には18万円)、さらに従業員10人分の助成金として1人当たり7万6000円(生産性要件を満たしている場合には9万6000円)が支給され、総支給額は、
1事業所当たり21万8500円(生産性要件を満たした場合には27万6000円)
となります。
さらに、賃金規定等改定コースでは、賃金規定の増額改定にあたって、職務評価を活用している場合に、1事業所当たり19万円(生産性要件を満たした場合には24万円)の増額を受けられます。
したがって、職務評価を実施した場合の受給総額は、1事業所当たり40万8500円(生産性要件を満たした場合には51万6000円)の受給となり、かなりまとまった額の支給を受けられることが分かります。
【業務改善助成金】
業務改善助成金は、賃上げが受給要件になっているものの、本来の目的は生産性の向上です。
生産性向上を目指して設備投資を行い、結果的に事業場内最低賃金を30円以上アップすれば、以下の経費助成を受けられます。
事業場内最低賃金の引き上げ額 | 助成率 | 引き上げる労働者の数 | 上限額 | 助成対象の事業場 |
30円コース(800円未満) | 4/5(9/10) | 1~3人 | 50万円 | 事業場内最低賃金が800円未満の事業場かつ 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が 30円以内及び事業場規模30人以下の事業場 |
4~6人 | 70万円 | |||
7人以上 | 100万円 | |||
30円コース(800円以上) | 3/4(4/5) | 1~3人 | 50万円 | 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が 30円以内及び事業場規模30人以下の事業場 |
4~6人 | 70万円 | |||
7人以上 | 100万円 |
自社における事業場内最低賃金が、既に全国平均の最低賃金であると仮定すると、従業員10人に対して38円の増額を実施した場合、助成率は3/4(生産性要件を満たしている場合には4/5)、最大100万円の経費助成となります。
今年の賃上げにはどっちが向いている?
以上のように、条件を寄せて比較すれば、上限いっぱいまで受給できるならば、業務改善助成金のほうが受給額は大きくなります。
もちろん、
- 対象となる労働者が何人であるか
- 職務評価を実施するかどうか
- 生産性向上についてどう考えるか
などによって選択が変わってくるため、自社の状況に合わせた活用が重要です。
ただし、注意したいのは、業務改善助成金を利用する場合には、生産性向上のための設備導入をはじめ、様々な取り組みを実施する必要があるということです。
今からこれに取り組もうとしても、政府が最低賃金引き上げを発表するまでに、取り組みが完了しない可能性もあります。
したがって、基本的には、とりあえずは職務評価も実施しながら賃金規定等改定コースで対応し、生産性向上にじっくり取り組めるタイミングで業務改善助成金を利用することになると思います。

自社に適した取り組みを。賃金の状況は?生産性の向上余地は?生産性要件は達成できる?色々な角度から考えよう!

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生産性向上に利用できる助成金
次に、生産性向上に利用できる助成金を見ていきましょう。
今後、人材不足が徐々に深刻化してくることが予測されるため、生産性向上は中小企業にとって急務と言える取り組みです。
シビアな話ですが、人手不足を解消する方法は、
- 従業員を増やす
- 従業員一人当たりの生産性を向上させる
のどちらか(あるいは両方)しかありません。
従業員一人当たりの生産性が向上すれば、賃金アップの影響にも耐えやすくなり、新たに人材を雇用する必要も少なくなります。
これは、以下のように比較すればわかるでしょう。
【生産性が横ばいの会社】
300の労働力を必要としている会社で、労働者一人当たりの平均的な生産性が10であれば、必要な労働者は30人です。
生産性向上に取り組まないまま、最低賃金アップの影響を受けてしまうと、労働力当たりの人件費は高くなり、採算は低下します。
採算維持のために人員削減を迫られれば、事業を縮小するほかありません。
もし、この会社が最低賃金で雇用し、これ以上の人件費負担に耐えられない状況であれば、人員の削減は免れないでしょう。
なぜならば、最低賃金が874円から912円に増大すれば、労働者1人当たりの時給では38円、30人当たりの時給では1140円の増大となり、約1.3人分の人件費負担に耐えられなくなるからです。
これをカバーするために、労働力1.3人分の労働者を削減すれば、会社の労働者は28.7人、労働力は287となり、事業規模は労働力287の範囲内に縮小せざるを得ません。
事業規模が縮小すれば、当然業績も低下します。
この後、生産性はさらに横ばいを続け、最低賃金が1000円までアップすれば、労働者1人当たりの時給は912円から1000円へと88円アップ、28.7人当たりの時給では2526円の増大となり、2.75人分の人件費負担に耐えられなくなります。
事業継続のためには、さらに2.75を削減して労働者を26人へと減らし、事業規模は260の労働力で回せるように縮小する必要があります。
このように、生産性が横ばいで、人件費負担が増大すればジリ貧に陥る可能性が極めて高いのです。
(なお、その他の部分でコストカットを図り、生産性は横ばいでも採算性を向上させ、事業規模を維持することも可能ですが、ここではそれについては触れません)
【生産性が向上した会社】
では、生産性向上に取り組んだ会社はどうでしょうか。
同じく300の労働力を必要としている会社で、労働者一人当たりの平均的な生産性は10、そして30人の労働者を雇っていたとします。
この会社で生産性の向上に取り組み、労働者一人当たりの平均的な生産性が5%アップして10.5になれば、300の労働力を約28.5人の労働者でカバーできるようになります。
余った1.5人分で15の労働力を使えば、労働者は30人のままで315の労働をこなせるようになります。
会社によっては、
「取り組めば業績にプラスになるとわかっていたものの、これまで人手がギリギリだったために取り組んでこなかった」
といった問題に余剰分の労働力を投入し、15以上の成果をあげられるかもしれません。
もちろん、事前に労働力の投入先を見出していなかったとしても、労働力をどこに投入すべきかを考えることが、自社を見つめなおす良い機会になることもあります。
労働力がギリギリで、苦しさにあえいでいる状況では、なかなか自社をまっすぐ見つめることはできませんが、生産性の向上が良い契機になることがあるのです。
さて、この会社で、300の労働力で100の売上を上げていたならば、生産性5%アップによって、労働者は30人のまま、315の労働力で105の業績を出せることになります。
あくまでも単純計算ですが、このように生産性向上によって業績アップにつなげていけば、最低賃金が5%アップしても、その影響を十分にカバーできることでしょう。
もちろん、生産性向上に取り組む中で課題を見つけ、さらに生産性向上に取り組みながら助成金を受給していけば、生産性を大きく伸ばし、最低賃金引き上げに悩むことはなく、むしろ事業拡大・新規雇用も検討していけるでしょう。
時間外労働等改善助成金を使おう
以上のように、生産性の向上は、賃上げの影響を吸収するためにも、人材不足に対応するためにも、非常に大きな効果を発揮します。
上記の業務改善助成金もそうですが、これ以外にも生産性向上につながる助成金として、「時間外労働等改善助成金」があります。
いくつかのコースに分かれていますが、時間外労働等改善助成金では、
- テレワーク関連機器の導入
- 労務管理用ソフトウェアや労務管理用機器の導入
- 小売業のPOS装置の導入
- デジタコの導入
など、労働能率の増進に伴う機器の導入で助成金を受給できる仕組みとなっています。
会社によって取り組みは異なると思いますが、生産性向上の取り組みとして分かりやすいのが、テレワークの導入です。
テレワークとは、簡単に言えば、様々な場所で働ける仕組みのことです。これにより、自宅やサテライトオフィスなど、会社以外でも働けるようになります。
仕事の内容にもよりますが、自宅でも会社でも、どちらでも問題なくこなせる仕事があります。
そのような仕事であれば、わざわざ会社に出勤せず、自宅でこなしたほうが効率的です。

通勤に時間を場合にはなおさらよ!
また、会社が郊外にあり、営業先が市街地にあるような場合、営業マンが必要とする手続きや資料作成などを、わざわざ郊外の会社に戻って行う必要があり、能率が悪くなります。
しかし、市街地のサテライトオフィスで働ける仕組みを作っていれば、市街地で必要な事務処理をこなしつつ営業活動もできるため、無駄がなくなります。
このように、テレワークによって働ける環境を整えておけば、労働の能率は上がり、生産性は向上します。
テレワークの導入は両立支援にもつながるため、生産性向上だけではなく人材確保にももつながります。
例えば、育児や介護、病気の治療などによって、会社で勤務することが難しい従業員でも、自宅勤務が可能であれば働きやすくなります。
このため、テレワークの導入によって、
- 勤務場所が限定されることで生じる無駄を省き、生産性を向上できる
という生産性向上効果のほかに、
- 仕事をしにくい事情を抱えた従業員の離職を防いだり、積極的に採用を検討したりできる
という、人材確保の効果も得られるのです。

できれば生産性をアップして、そこから生まれた余裕で賃上げに対応したいね。

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助成金の拡充に備えよう
ここまで、既存の助成金の活用について考えてきましたが、それと同時に、今後拡充される可能性がある助成金についても、簡単に考えておくと良いでしょう。
様々な懸念に対応するために、政府は単に最低賃金を引き上げるばかりではなく、中小企業にとって賃上げしやすい環境を整備していくことも考えています。
7月の参院選に向けて、政府は賃上げしやすい環境を整備すべく、複数の取り組みを掲げています。中でも注目すべきは、以下の二点です。
- 地域金融機関や商工会議所を通じて、即戦力となる人材の確保を促すこと
- IoTやロボットの導入・利用促進を支援すること
人材育成関連が充実か?
まず、1についてはそれほど期待できそうにありません。
確かに、即戦力となる人材を雇用することができれば、事業への貢献度も高く、賃上げの影響は吸収できるでしょう。
しかし、即戦力となるような人材は、今やどの会社でも求めており、今後、獲得のための競争は一層激しくなっていくはずです。
政府が、いくらそのような人材の確保を促すといっても、経営する側としては、促されるまでもなく求めているというのが実態でしょう。
したがって、政府のこのような方針は、
- 即戦力となる人材の確保を促す
というよりも、
- 即戦力となるように、人材の育成を促す
といった方針になる可能性が考えられます。
つまり、現時点での制度でいえば人材開発支援助成金のように、訓練に関する助成金が拡充されるという流れです。
拡充の内容としては、現在拡充されている助成金(キャリアアップ助成金の選択的適用拡大導入時処遇改善コースや、短時間労働者労働時間延長コース)の内容を参考にすれば、
- 助成金の支給額が加算される
- 助成金の支給申請上限人数が増える
といった拡充になるかもしれません。
人材開発支援助成金の助成内容に照らし合わせるならば、
- 賃金助成を受けられる訓練の上限時間が延びる
- 経費助成の上限金額が増える
- 有期契約労働者に訓練を実施した後、正規雇用に転換した場合の追加助成が増える
といった方向が考えられます。
もちろん、人材育成関連の助成金だけではなく、中途採用の拡大、高齢者雇用、女性の活躍推進などを通して、潜在的な即戦力の掘り起こしにつながる助成金の拡充も予想されます。
雇用系の助成金には広く注目しておきたいものです。

訓練しながら雇用すれば、全く訓練しない人材を雇用するよりも、生産性には良い影響が期待できるね。
生産性向上関連の助成金も充実するかも
2の「IoTやロボットの導入・利用促進」ですが、これも助成金として支援が実施される可能性が考えられます。
政府が、このような技術の導入・利用促進を掲げているのは、かなり的を射た対処と言えるでしょう。
最近は、人材不足の解消策として、外国人労働者の受け入れを拡大する気運も高まっていますが、外国人労働者よりも日本人労働者によって人材不足を補ったほうが良いことは間違いありません。
外国人労働者は、国家経済全体にとって、長期的には人材不足に大きな効果をもたらすでしょうが、中小企業単位での生産性には、悪影響になる可能性も高いです。
なぜならば、生産性を高めることなく人材不足を解消するために外国人労働者を雇用することは、生産性を低く留めることにつながるからです。
生産性を十分に向上させ、国内の人材への可能性も十分に追求し、それでも追い付かない部分を外国人労働者でカバーするのが正しい方法です。
しかし、それをしなければ、
外国人労働者の活用がうまくいかず、生産性が低下する
- →生産性の高い会社と低い会社の格差が広がる
- →生産性の高い会社に人材が集まり、生産性の低い会社には人材が集まらなくなる
- →生産性の低い会社はジリ貧に陥る
という悪循環に陥ります。
このような悪循環に陥らないためには、安易に外国人労働者に頼るのではなく、技術の導入によって生産性を高めていくことが大切です。
技術を導入することで生産性が高まれば、新たに人材を雇用する必要も少なくなり、業績・財務ともに良い影響が表れ、最低賃金が上がり続ける中でも生き延びることができます。
導入する技術によっては、単に労働力の需要を抑えるだけではなく、少ない労働者で良質な商品やサービスを生み出すことにもつながります。
このような付加価値を追求する上でも、今後の企業経営では「テクノロジーの活用による生産性の向上」が欠かせません。
もちろん、助成金を活用している会社では、生産性を向上することで追加助成を受けられるケースも多いため、財務的もメリットが期待できます。
導入する技術・設備の広がりに注目
これまで、IoTやロボットといった最先端技術を導入する際の支援は、助成金ではなく補助金で実施されてきました。
したがって、IoTやロボットの導入・利用促進に伴う政府の支援は、今後も補助金による支援が続く可能性が高いです。

しかしながら、今やテレワークの導入で助成金が受給できる時代だ!
高額な最先端技術の導入では助成金を受給できなくとも、一般に利用が広まりつつある、比較的安価な技術の導入であれば、助成金を受給できる機会が増えるかも知れません。
上記でも紹介した通り、時間外労働等改善助成金では、労働能率の増進につながる様々な機器の導入に対して助成金を支給しています。
この助成金が拡充されれば、IoTやロボットの導入には及ばずとも、それに近いものを導入し、労働能率を大幅に改善できる可能性もあります。
政府の方針を額面通り受け取れば、今後は生産性向上に関する助成金も拡充・新設の対象となる可能性があります。
もちろん、できるだけ多くの会社を支援するという助成金の性質から、高額の技術・設備の導入は難しいでしょうが、助成金を活用しながら生産性を向上できる機会は増えていきそうです。

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まとめ
最低賃金の引き上げは徐々に加速しています。これに対して、どのように対応していくかをしっかり考えなければ、具体的に対処できないまま負担が増大していき、経営に大きなマイナスになるはずです。
それを防ぐためには、まずは助成金の活用によって負担を軽減することが大切です。これだけでも、何もせずに最低賃金アップを受け入れている会社に比べて、随分と経営がラクになります。
さらには、最低賃金アップの影響を、生産性の向上によって吸収することも考えましょう。
これは、生産性向上によって、賃金を上げても経営が成り立つ根拠をはっきりさせているのですから、経営の安定にも大きな効果が見込めます。
ここから、さらなる取り組みをしたい会社は、政府の動向も観察しつつ、今後拡充される助成金について考え、活用のプランも簡単に考えておきましょう。
見通しが外れたとしても、経営と助成金の関係を深く考えることにつながるため、決して無駄にはならないはずです。
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