労働力の細かい調整に役立つ「短時間労働者労働時間延長コース」とは?

働き方改革により、有給休暇付与の義務化や時間外労働の上限規制が設けられ、労働力の確保が徐々に難しくなってきています。

規制の中で労働時間を調整し、必要に応じて待遇を改善したり、賃金をアップしたりすることで、労働力を確保することを考えなければなりません。

そのためには、助成金を受給することで負担軽減を図るべきですが、結果的に負担が大きくなることがないように、適切な助成金を選ぶことが大切です。

本稿では、微調整をしながら労働力を確保するのに役立つ、短時間労働者労働時間延長コースについて解説していきます。

キャリアアップ助成金のコース使い分け

助成金の中でも、特によく知られているものは雇用系の助成金であり、トライアル雇用助成金やキャリアアップ助成金を知っている人は多いと思います。

中でも、キャリアアップ助成金は受給額が大きく、多くの会社で利用できることから、当サイトでもおすすめしている助成金です。

キャリアアップ助成金には、目的に応じて複数のコースが設けられており、

  • 正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 健康診断制度コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 諸手当制度共通化コース
  • 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース

などがあります。

これらの中でも、特に労働力を確保する際に活用できるコースは、正社員化コースと短時間労働者労働時間延長コースです。

正社員化コースは、有期契約の労働者を無期雇用や正規雇用に転換する、あるいは無期雇用の労働者を正規雇用に転換することによって、まとまった助成金を受給できるものです。

労働力を確保したい場合、新規に労働者を雇用する方法と、すでに雇用している労働者の勤務時間を伸ばす方法が考えられます。

新規に雇用するならば、全く適性の分からない人材を雇用することとなり、それなりにリスクも伴います。

ですが、雇用形態を転換することで労働時間を伸ばすならば、適性に信頼がおける人材によって労働力を確保することができます。

したがって、労働力を確保したい会社では、正社員化コースを検討することも多くなるのですが、正社員化コースでは労働力の微調整が難しいというデメリットがあります。

というのも、正社員化コースで認められる転換は、

  • 有期契約→無期雇用
  • 有期契約→正規雇用
  • 無期雇用→正規雇用

のいずれかであり、待遇を大幅に変えることになるからです。有

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期契約のまま据え置き、なおかつ労働時間を増やして助成金を受給する、といったことはできないのだ。

このため、

「労働力は確保したい、だから法定労働時間に満たない従業員の労働時間を延長したい。
しかし、正社員化コースを受給するためには、有期契約のまま据え置くことはできない。
契約更新のタイミングで人員を調整したいから、やみくもに無期雇用や正規雇用に転換したくない」

という問題が起こるのです。

そこで役に立つのが、短時間労働者労働時間延長コースです。

短時間労働者労働時間延長コースならば、転換せずに有期契約に据え置きつつ、労働時間を延長し、助成金を受給することができます。

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短時間労働者労働時間延長コースを学ぼう

短時間労働者労働時間延長コースとは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

基礎的なことから受給に関することまで、解説していきましょう。

短時間労働者とは?

まず、厚生労働省がいう「短時間労働者」とは、どのような労働者を指すのでしょうか。

これは「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の中で、以下のように定義されています。

この法律において「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。

簡単に言えば、正社員よりも所定労働時間が短く設定されている従業員を、短時間労働者としています。

法定労働時間は守っていることを前提として、正社員の1週間の所定労働時間を40時間としている会社であれば、週所定労働時間が40時間未満の従業員を「短時間労働者」と考えることができます。

例えば、正社員が1日8時間、週5日(40時間)働いている会社で、

  • 1日8時間、週3日(24時間)働いている
  • 1日5時間、週5日(25時間)働いている

といった従業員を、短時間労働者とみなします。

「非正規の社員は短時間労働者」と考えている人もいるとい思いますが、あくまでも通常の労働者よりも短時間の労働に従事している人を短時間労働者と考えるため、これは誤りです。

非正規雇用の従業員でも、フルタイムで勤務しており、正社員と労働時間が変わらない人もいます。そのような従業員は、短時間労働者とはみなさないのです。

  • アルバイト
  • パートタイマー
  • 嘱託
  • 契約社員
  • 臨時職員
  • 準社員

など、非正規労働者には色々な呼び方がありますが、週所定労働時間が正社員よりも短ければ短時間労働者に該当します。

短時間労働者労働時間延長コースで助成金を受給するためには、短時間労働者の定義を理解し、対象労働者に対して取り組む必要があります。

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助成金の支給額

上記のように定義されている短時間労働者に対して、以下の受給要件を満たした場合に助成金が支給されます。

支給額は、週所定労働時間をどれくらい延長するかによって変わります。

パターン①

週所定労働時間を5時間以上延長し、新たに社会保険に適用した場合、

  • 1人当たり22.5万円(生産性要件を満たした場合には1人当たり28.4万円)

の受給となります。

パターン②

労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を1時間以上5時間未満延長し、新たに社会保険に適用させ、なおかつキャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」または「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」を実施した場合には、以下の助成金を受給することができます。

延長する週所定労働時間 基本的な支給額 生産性が6%向上している場合 昇給率
1時間以上2時間未満 1人当たり4.5万円 1人当たり5.7万円 13%以上昇給
2時間以上3時間未満 1人当たり9万円 1人当たり11.4万円 8%以上昇給
3時間以上4時間未満 1人当たり13.5万円 1人当たり17万円 3%以上昇給
4時間以上5時間未満 1人当たり18万円 1人当たり22.7万円 2%以上昇給

②の受給要件に含まれている「賃金規定等改定コース」と「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」を簡単に説明すると、以下の通りです。

【賃金規定等改定コース】

有期契約労働者の基本給の賃金規定等を増額改定し、賃金を増額した場合に助成されるもの。

【選択的適用拡大導入時処遇改善コース】

社会保険適用の適用範囲を拡大し、有期契約労働者を新しく被保険者とし、賃金を増額した場合に助成されるもの。

短時間労働者労働時間延長コースを利用するにあたって、ただ労働時間を延長するだけであれば、保険に加入することによって手取り収入が減ってしまう可能性があります。

そうならないためにも、賃金規定等改定コースや選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施し、賃金をアップしたうえで労働時間が延長される仕組みとなっているのです。

ただし、賃金規定等改定コースと選択的適用拡大導入時処遇改善コースにおける賃金の増額率と、短時間労働者労働時間延長コースの賃金増額率は異なるため、あくまでも短時間労働者労働時間延長コースを基準として考える必要があります。

※なお、パターン①、②のいずれの場合でも、現時点では令和2年3月31日までの暫定措置となっており、支給額が増額されています。
また、①と②を合わせて、1年度1事業所当たりの上限人数は45人となっており、これも令和2年3月31日まで暫定的に緩和されています。

対象労働者

短時間労働者労働時間延長コースの対象となる労働者は、

A、短時間労働に従事している有期契約労働者

を対象とします。
これに加えて、以下の要件を満たす必要があります。

B、延長する週所定労働時間に応じて、以下のいずれかに該当すること

延長する週所定労働時間
1時間以上2時間未満 2時間以上3時間未満 3時間以上4時間未満 4時間以上5時間未満 5時間以上
週所定労働時間を1時間以上2時間未満延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者であり、かつ週所定労働時間の延長後の基本給が延長前の基本給に比べて13%以上昇給している者 週所定労働時間を2時間以上3時間未満延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者であり、かつ週所定労働時間の延長後の基本給が延長前の基本給に比べて8%以上昇給している者 週所定労働時間を3時間以上4時間未満延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者であり、かつ週所定労働時間の延長後の基本給が延長前の基本給に比べて3%以上昇給している者 週所定労働時間を4時間以上5時間未満延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者であり、かつ週所定労働時間の延長後の基本給が延長前の基本給に比べて2%以上昇給している者 週所定労働時間を5時間以上延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者

C、週所定労働時間を延長した日の前日から起算して過去6か月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった者であること

D、週所定労働時間の延長を行った事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること

E、支給申請日において離職していない者であること

A~Eまでの5つを満たす労働者が対象となりますが、困難な要件はありません。

受給の流れ

短時間労働者労働時間延長コースの受給要件を満たすためには、以下の流れで取り組みます。

1、事前の雇用

上記のCに記載した通り、対象となる労働者は、週所定労働時間延長の前日から起算して過去6ヶ月間、社会保険の適用を受けずに雇用されている必要があります。

2、キャリアアップ計画の作成・提出

キャリアアップ助成金は、すべてのコースでキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の認定を受ける必要があります。

上記の通り、1時間以上5時間未満の延長の場合には、事前に賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施する必要があります。

したがって、これらのコースに取り組む際にもキャリアアップ計画を作成・提出していることになり、短時間労働者労働時間延長コースを受給するために、計2回の計画が必要となります。

3、取り組みの実施

キャリアアップ計画に沿って、週所定労働時間の延長、対象労働者の社会保険への加入を実施します。この時、週所定労働時間と社会保険加入状況が分かるように、労働条件通知書または雇用契約書を交付しておきます。

4、賃金の支給

短時間労働者労働時間延長コースの受給のためには、対象労働者の賃金を増額する必要があります。

この賃金増額には、基本給以外に時間外手当なども含みます。

延長後、6ヶ月分の賃金を支給した時点で、賃金増額に係る受給要件を満たすことになります。

5、支給申請、受給

6ヶ月分の賃金を支給した翌日から起算して2ヶ月以内が、支給申請期間となります。

この期間に申請しなければ、全てを受給要件を満たしていた会社でも、受給できなくなってしまいます。

この期間中にきちんと申請しましょう。

なお、社労士に依頼し、きちんと連携を取りながらこれらの手続きを進めていくならば、ほぼ問題なく受給できることと思います。あまり難しく考える必要はありません。

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受給までの期間は

受給までの期間が気になると思いますので、ここでまとめておきましょう。

労働局は、助成金の支給申請を受けてから審査に入ります。

この審査にかかる時間は、申請の込み具合によっても変わり、2~6ヶ月かかるとされています。

今後、働き方改革が進み、助成金による負担軽減を図る会社が増えることによって、時間がかかるケースが多くなる可能性も考えられます。

CFレッド
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審査が完了し、問題がなければ会社に支給決定通知書が届き、2週間程度で助成金が振り込まれるぞ!

受給までの期間は、その会社の取り組み方によって変わってきます。

いくつかのパターンについて考えてみましょう。

ここでは、賃金の締め切り日が月末、翌月15日払いの会社のケースを例とします。

週所定労働時間を5時間以上延長する場合

週所定労働時間を5時間以上延長するならば、賃金規定等改定コースや選択的適用拡大導入時処遇改善コースに取り組むことなく、すぐに短時間労働者労働時間延長コースに取り組むことができます。

最短で10ヶ月程度

すでに6ヶ月以上、社会保険未適用で雇用している有期契約の短時間労働者がいる会社では、すぐに週所定労働時間の延長に取り組むことができます。

4月1日に延長を実施した場合、9月30日までの6ヶ月の賃金を算定し、10月15日に6ヶ月分の賃金支払いが完了します。

CFイエロー
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その翌日にあたる10月16日から、12月15日までの2ヶ月間が支給申請期間となるわね。

1ヶ月後の11月15日に支給申請を完了した場合、最短の目安とされる2ヶ月で審査が完了すれば、翌年1月15日に支給決定通知の受け取り、1月末あたりに助成金の振り込みとなります。

最長の目安とされる6ヶ月で審査が完了した場合には、5月15日に支給決定通知の受け取り、5月末あたりに助成金の振り込みです。

したがって、最短で取り組んだ場合には、キャリアアップ計画開始から10~14ヶ月程度で受給となります。

最長で20ヶ月程度

なお、現在社会保険未加入の期間が6ヶ月に満たない労働者を対象とするならば、6ヶ月経過後に週所定労働時間延長となるため、その期間の分だけ受給までの期間が延びることとなります。

もし、4月1日に雇用した短時間労働者を対象として取り組むならば、その短時間労働者を社会保険未適用の状態で、9月30日まで6ヶ月間雇用し、10月1日から週所定労働時間を延長することとなります。

延長後、翌年3月31日までが6ヶ月分の賃金算定期間となり、翌月4月15日に6ヶ月分の賃金支給が完了します。

その翌日にあたる4月16日から6月15日までが支給申請期間となります。

5月15日に申請を完了して審査に入り、2ヶ月で審査完了であれば7月末あたりに振り込み、6ヶ月で審査完了であれば11月末あたりに振り込みとなります。

このように、取り組みから最長で20ヶ月程度を要する場合もあるのです。

週所定労働時間を1時間以上5時間未満延長する場合

週所定労働時間を1時間以上5時間未満延長するならば、事前に賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施する必要があります。

賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースでは、いずれの場合でも、

  1. 改定・改善前の待遇で3ヶ月以上雇用
  2. 改定・改善後、6ヶ月間分の賃金を支給
  3. その後2ヶ月間で支給申請
  4. 2~6ヶ月の審査期間
  5. 審査通過後、2週間程度で助成金の振り込み

という流れとなります。

賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施する場合、当年4月1日から開始したならば、9月30日までの賃金を算定し、10月15日に6ヶ月分の賃金支給が完了します。

その翌日16日から2ヶ月後の12月15日までが申請期間であり、1ヶ月後の11月15日に申請が完了し、2ヶ月で審査が完了したならば翌年1月末あたりに助成金の振り込み、計10ヶ月を要することとなります。

6ヶ月で審査が完了したならば、翌年5月末あたりに助成金の振り込み、計14ヶ月を要します。

もちろん、改定・改善前の待遇で3ヶ月以上雇用することを含めると、3ヶ月の加算となります

ここからは、週所定労働時間を5時間以上延長する場合と同じです。したがって、短時間労働者労働時間延長コースの受給までにかかる期間は、20~30ヶ月程度を要すると考えられます。

もちろん、すでに賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施しているならば、受給までにかかる期間は、週所定労働時間を5時間以上延長する場合と同様です。

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まとめ

有給休暇付与の義務化や時間外労働の上限規制などにより、労働力の確保に悩む会社が増えています。

そのような会社が、助成金を受給しながら対応していくために、キャリアアップ助成金は非常に役立つものです。

すでに雇用している有期契約の短時間労働者の労働時間を延長し、労働力の微調整を図るならば、短時間労働者労働時間延長コースを利用するのがおすすめです。

無期雇用や正規雇用に転換する必要もなく、リスクをコントロールしやすくなります。

助成金には様々なものがあり、最適なものを利用していくことにより、大きな効果が得られます。

CF戦隊
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社労士とも相談しながら、活用していこう!

 

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