「離職率が高ければ人材不足に陥る」ということについて、異論を唱える人はいないはずです。
しかし、人材確保を図っている会社の中には、離職率を下げるために具体的な取り組みをせず、採用活動のみに取り組んでいる会社も少なくありません。
このような会社は、離職率の問題を十分に理解していないことがあります。
離職率は、人材不足の直接的な原因になると同時に、生産性の低下、財務の悪化、助成金活用の妨げなど、様々な悪影響の遠因になるのです。
本稿では、離職率の問題を正しく捉えるために、人材不足以外の様々な悪影響について解説していきます。
人材不足と離職率
近年、中小企業の人材不足が深刻化しています。
このため、政府は中小企業の人材確保を助成金などによって支援しており、中小企業も様々な確度から人材確保を図っています。
しかし、人材確保への取り組みもむなしく、人材不足の解消がなかなか進まない会社も少なくありません。
そのような会社では、人材確保への取り組みには熱心であるものの、重要な視点が欠落している場合があります。
それは、「人材の流出を防ぐ」という視点からの取り組みです。
人材確保と聞くと、採用活動によって人材を雇い入れることをだけイメージしがちです。
しかし、それは人材確保の片面だけしか見ていない取り組みです。
人材確保とは、自社に必要な人材を雇い入れ、長く留め、円滑な経営をするためのものです。
そのためには、雇用すると同時に、雇用した人材が離職しないように取り組んでこそ、初めて人材確保と言えるのです。
いくら人材確保に取り組んでも、雇い入れた人材が容易に離職し、流出してしまうならば、いつまでも人材不足は解消されません。
離職率を下げる、別の言い方をすれば定着率を上げることも、人材不足解消には欠かせないのです。

採用の促進と離職の防止は、人材確保の両輪なのだ。
若手の離職率から考える
離職率が人材不足の大きな原因となっていることは、具体的なデータを見ても明らかです。
多くの企業では、若手の人材を確保したいと考えていますが、多くの人材は中小企業よりも大企業への就職を望むため、中小企業は採用活動で初めから劣勢に立たされています。
さらに、若手の人材の離職率は高く、新卒採用の人材の約3割は、入社3年以内に離職するというデータがあります。
つまり、若手の人材不足に悩んでいる会社は、若手を雇用する機会に恵まれないと同時に、雇用しても早期に離職しやすいことから、慢性的な若手不足に陥るのです。
若手の人材を雇用する機会に恵まれないことは、日本特有の大企業志向や、若い人々の価値観なども強く影響しているため、自社の取り組みによって改善することは難しいものです。
しかし、若手の人材を雇用する機会は皆無ではありません。
大企業への就職をあきらめ、中小企業に就職する若手もいます。
そして、雇用した若手を定着させることは、自社の取り組みによって可能です。
このことからも、人材不足に悩む会社では、離職率の低下に取り組むことが非常に重要であると言えます。

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離職率の影響は多岐にわたる
このように考えてみると、離職率を下げる重要性がよくわかると思います。
離職率を下げていけば、採用するたびに人材不足が着実に改善されていき、やがて十分な人材を確保することができるのです。
しかし離職率を下げることは、単に慢性的な人材不足の解消だけではなく、他の様々な悪影響を防ぐことにもつながります。
離職率の高さは、財務、生産性、助成金活用など、様々な部分で悪影響をもたらすのです。
生産性への影響
まず、離職率が低ければ生産性も低くなる可能性が高いです。
人材不足ながらも生産性を維持している会社もあるかもしれませんが、それだけで精一杯になることがほとんどで、少なくとも生産性を高めることはかなり困難です。
これは、「離職率が高い」ということは「長く定着し、知識や経験を高め、生産性に寄与できる人材が少ない」ということでもあるからです。
生産性に寄与する人材が少なければ、生産性が上がらないことは自明の理です。
新規に雇用した従業員のみ離職率が高く、勤続年数が長い従業員の離職率は低いケースもありますが、この場合にも生産性が低下することが多いです。
というのも、新規に雇用した従業員が生産性に寄与するのは、知識や経験がある程度備わってからであり、そのためには生産性に寄与できるベテランが指導する必要があるからです。
ベテランが、定着する見込みの少ない従業員に指導を行うために、本来の業務に取り組んでいるはずの労力を割くことになるのです。
このため、新規に雇用した従業員の知識・経験が不十分であること、そしてベテラン従業員が指導の負担によって本来の業務に十分に取り組めないことによって、生産性が低下してしまうのです。

人材不足で生産性が伸び悩むことは知っていたけど、生産性低下の原因にもなるのね。

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財務への影響
離職率の高さは、財務の悪化にもつながります。
まず、離職率が高い会社では、人材確保のために絶えず採用活動を実施する必要があります。
これによって採用コストがかさみ、財務的な負担となります。
定着の見込みが少ない人材の雇用と教育にコストをかけ続けるのですから、費用対効果が非常に低い取り組みといえます。
また、上記の通り、離職率の高さは生産性の低下を引き起こします。
生産性が低下すれば、従業員の働きによって得られる利益も目減りしていきます。
利益が目減りすれば、活用できる資金も減少するのですから、生産性向上や環境整備、事業拡大などのための投資も縮小せざるを得ず、成長性が低下します。
同時に、資金繰りに融通が利かなくなり、財務状態は悪化します。
これにより、取引先への買掛金の決済が難しくなったり、生産性や成長性の低さ、資金繰りが不安定であることなどによって、銀行交渉に悪影響を与え、資金調達が困難になることも多いです。
資金を調達できても借入条件が厳しくなり、
- 長期での借入れができずに返済負担が重くなる
- 借入金利が高まり利息負担がかさむ
- 保証機関の保証を求められて保証料がかさむ
- より多くの保全を求められる
など、様々な悪影響を引き起こします。

銀行交渉がうまくいかない会社は、離職率が遠因になっていることもあるのだ。

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助成金活用への影響
さらに、助成金の活用にも様々な悪影響をもたらします。
多くの助成金は、受給までに一定の期間を要します。
例えば、キャリアアップ助成金の正社員化コースを受給するためには、
- 有期契約あるいは無期雇用で従業員を雇う
- 6ヶ月間の雇用の後、有期契約から無期雇用あるいは正規雇用へ転換、または無期雇用から正規雇用へ転換を実施する
- 転換後、さらに6ヶ月の雇用を継続する
という流れを経て、はじめて受給に至ります。
もし、転換後の6ヶ月間で転換した従業員が離職すれば、受給要件を満たすことはできず、助成金も受給できなくなります。
このように、離職率の高い会社では、助成金活用の難易度が上がってしまうのです。
人材不足解消のために取り組み、助成金によって負担軽減を図ろうとしても、受給できなければ負担だけが残ります。
また、助成金の中には、離職率の低下が要件となっているものもあります。
例えば、人材確保等支援助成金の複数のコースで、離職率の低下が要件となっています。
離職率が高い会社は、そもそも離職が起こりやすい雰囲気になっていることが多いものです。
職場の風土は、短期間で変えられるものではありません。
このような会社で離職率の低下に取り組んでも、思うように効果が得られず、受給要件を満たすことも難しくなります。
さらに上記の通り、離職率の高さと生産性の低さには強い相関性があるのです。
これにより、たとえ助成金を受給できたとしても、生産性要件を満たすことによる追加助成を受給することは難しく、助成金の活用がなかなか進まないことも考えられます。

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まとめ
本稿で解説した通り、離職率の高さは、人材不足以外にも様々な悪影響を孕んでいます。
離職率を低下させることによって、それらの悪影響が起こることを防ぐことができ、経営を着実に改善していくことにもつながります。
そして、離職率を下げることは可能です。
離職率が低下する原因に一つずつ対処していけば、着実な効果を得ることができます。
もちろん、その取り組みの中で受給できる助成金も多いため、負担を軽減しながら離職率低下に取り組むことができ、それによって助成金の活用は加速します。

人材不足に悩んでいる会社は、ぜひ離職率改善に取り組んでいこう!
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