休業補償だけじゃない雇用調整助成金の魅力。教育訓練について徹底解説!

新型コロナウイルスの影響を受ける中小企業を支援するために、政府は様々な制度を実施しています。

中でも、雇用調整助成金では拡充が続いており、利用している企業が増えています。

雇用調整助成金の目玉は、休業する企業への休業補償です。

雇用調整助成金を受給しながら休業すれば、労務コストを大幅に削減できるため、すでに活用している企業も多いことでしょう。

しかし、雇用調整助成金は休業だけではなく、休業中に教育訓練を実施する会社にも、別途助成金を支給しています

本稿では、休業と同時に教育訓練によって助成金を受給するメリットと、教育訓練に関する特例措置について詳細に解説していきます。

教育訓練でも受給できる

政府が実施している新型コロナウイルス対策の目玉のひとつに、雇用調整助成金があります。

休業中の会社は、給与の6割以上を休業手当として支給することを義務付けられていますが、雇用調整助成金を受給することで負担を大幅に軽減できます。

売上の回復に時間がかかる現在の状況で、資金繰りを維持していくためには、経費削減が欠かせない!

経費の中でも労務コストが占める割合は非常に大きいため、雇用調整助成金を受給しながら休業することで、労務コストの削減が期待できます。

このように、雇用調整助成金による休業補償は大きなメリットを持っていることから、「雇用調整助成金=休業補償」と考えている人もいるかもしれません

しかし、雇用調整助成金では、休業だけではなく教育訓練によっても助成金を支給しています

これは、休業中の会社が教育訓練を実施し、従業員のスキルアップを図ることによって、経営立て直しの円滑化を図るためのものです。

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教育訓練を実施するメリット

休業によって雇用調整助成金を受給している会社では、休業すると同時に教育訓練も実施するのがおすすめです。

教育訓練には、以下のようなメリットがあります。

受給額が増える

現在、休業によって受給できる助成金は、1人当たり1日8330円が上限となっています。一方、教育訓練によって受給できる助成金は、1人当たり1日2400円となっています。

新型コロナウイルス以前の教育訓練では、1人当たり1日1200円が上限となっていましたが、4月以降に実施された雇用調整助成金の特例措置によって、教育訓練での助成金が2倍になったのです。

現在、休業補償の増額も盛んに議論されており、政府は増額の方向で調整しています。

このため、休業補償の上限も早晩8330円から増額されると思いますが、現在(5月13日時点)は8330円です。

度重なる特例措置によっても、休業補償は8330円での据え置きが続いていたのに対し、教育訓練はすぐに2倍への引き上げとなったことに注目です。

これにより、休業しながら教育訓練を実施した会社では、

8330円(休業)+2400円(教育訓練)=10730円

となり、最大で1万円以上の助成金を受給できます。

単に休業するだけで、何もしなければ最大8330円であったものが、教育訓練の実施によって1万円以上に増えるのですから、魅力的な制度といえます。

最近は、研修の費用も低価格化が進んでおり、コスト負担は大きくないわ!

1万円以上の助成金を受給していれば、教育訓練を実施しても負担にはならず、むしろいくらか手元に残るかもしれません。

なお、一部休業によって休業補償を受給する場合にも、教育訓練と組み合わせることができます。

例えば、勤務時間を午前のみに縮小し、午後は休業して教育訓練に充てる、といった形で実施するものも対象となります。

アフターコロナを見据えて

次に、休業のタイミングで教育訓練を実施しておくことで、新型コロナウイルス収束後に経営の立て直しがスムーズになります。

現在、新型コロナウイルスの収束の見通しは立っていませんが、いずれ収束することでしょう。

その際には、新型コロナウイルスで打撃を受けた経営を立て直していくことになります。

コロナ渦中でアフターコロナ見据えることが重要であり、そのために教育訓練が役立ちます

新型コロナウイルスの影響を通じて、経営のあり方は大きく変化しつつあるのだ!

テレワークを導入する会社が急増しているのが良い例です。

今後、在宅勤務が今よりもずっと一般的な働き方となり、新型コロナウイルス収束後の働き方や人材確保にも大きな影響を与える可能性があります。

実際に、新型コロナウイルス収束後に社会の仕組みが大きく変化することを想定して、今のうちから対応を模索している企業もあります。

大企業では特にこの動きが顕著よ!

このような変化に伴って、業態を変えなければならない、新しい分野に進出しなければならないなど、大きな方向転換を迫られる会社も出てくるはずです。

収束後に方向転換を模索するのではなく、今のうちから模索し、方向転換を見据えて教育訓練を実施しておけば、収束後の事業展開がスムーズになるはずです。

 

もちろん、方向転換の必要を感じていない会社でも、収束後には経営を立て直す必要があるのですから、それを見据えて教育訓練を実施し、人材開発を進めておくべきです。

特に、これまで教育訓練の余裕がなかった会社では、教育訓練の良い機会となるはずです。

ピンチをチャンスに変えるためにも、教育訓練を検討してみましょう。

休業している従業員も、なにも仕事をしないまま時間だけが過ぎていくならば、なにかと不安になるものです。

教育訓練を実施すれば、モチベーションの維持・向上につながるため、これもアフターコロナの備えとなります。

今は苦しくない会社でも

一部の会社では、新型コロナウイルスのダメージをそれほど受けておらず、売上の減少幅も小さく、休業に踏み切っていないこともあります。

このような会社は、休業補償はもちろんのこと、教育訓練も実施しておらず、雇用調整助成金を全く活用していないことが多いです。

しかし、雇用調整助成金の教育訓練は、特例措置によって活用の幅が広がっているよ!

すぐに教育訓練を実施しないとしても、いざとなったら活用できるよう、知識をつけておくのがよいでしょう。

現在、新型コロナウイルスのダメージが軽い会社は、

  • 新型コロナウイルスの影響を受けにくい環境にある
  • 新型コロナウイルスの影響が今後深刻になる

といった場合が考えられます。

新型コロナウイルスによる特需が発生しているなど、特殊な環境にある一部の会社では、今後も新型コロナウイルスの影響を受けにくいと考えられます。

しかし、今後の新型コロナウイルスの影響は未知数であり、思わぬ影響を受ける可能性もあります。

アフターコロナを見据えるのはもちろんのこと、想定外の影響に備える意味でも、教育訓練について知っておくことが大切です。

また、現時点では新型コロナウイルスの影響が軽微であっても、今後影響を受けると考えられる会社では、影響の拡大に合わせて早いうちから教育訓練を実施することが重要です。

これにより、影響が深刻化するまでに教育訓練の実施体制を整えることができ、雇用調整助成金の活用がスムーズになるでしょう。

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特例で利用しやすくなった

実際には、上記のような大きなメリットがあるにもかかわらず、利用していない会社が多いです。

これは、従来(新型コロナウイルス拡大以前)の雇用調整助成金では、教育訓練による助成の仕組みが非常にわかりにくく、要件も厳しかったためです。

雇用調整助成金の歴史は古く、現在の仕組みになるまでに、厚生労働省は度重なる改訂を行ってきました。

このため、制度が複雑になり、受給できる場合とできない場合の解釈やつじつま合わせも難しくなっています。

社労士などの専門家の中には、「厚生労働省でさえ、よく理解していないのでは」という人もいるほど、混乱しやすい仕組みなのです。

このため、雇用調整助成金の教育訓練の仕組みを理解できず、二の足を踏んでしまう会社が非常に多いのだ!

また、支給要件も非常に厳しいです。

過去に教育訓練で不正受給が頻発したため、支給できないケースが次々と加えられた結果、受給自体が難しくなっています。

このため、受給を諦めてしまっている会社も少なくありません。

しかし、現在の雇用調整助成金では、新型コロナウイルスによって特例措置が実施されており、教育訓練の対象も大幅に緩和されています。

仕組みの分かりにくさは相変わらずですが、大幅な緩和が実施されたことによって、「分かりにくいけれども、とりあえず使いやすい」といった仕組みになっています。

従来と現在の違い

従来の仕組みでは、「外部講師を招き、従業員が教室に集まり、対面型の研修を実施する」といった教育訓練を主な対象としていました。

簡単にいえば、専門的でレベルが高く、特別に研修の機会を設けなければ不可能な教育訓練が対象となっていたのです。

しかし、特例措置が実施されている現在では、オンラインによる自宅での研修も対象となっているほか、一般的な内容の研修・教育も対象となっています。

感染拡大防止のためには、大勢の従業員が外出し、一ヶ所に集まって研修を受けるといったことを避けなければなりません。

しかし、オンラインでの実施では研修のレベルに限界があるため、対象を緩和したものと考えられます。

具体的な緩和

では、具体的にはどのように緩和されたのでしょうか。詳しく見てみましょう。

(特例措置だけを知りたい方は、【従来の教育訓練】を飛ばして、【特例措置後の教育訓練】だけ読んでいただいてもかまいません。しかし、新型コロナウイルス収束後には従来の判断基準に戻ると考えられるため、長期的な活用のためにも一読をおすすめします)

【従来の教育訓練】

従来の仕組みでは、以下の教育訓練を対象外としており、対象外のものでなければ支給する、という判断基準です。

  • 職業に関する知識、技能又は技術の習得又は向上を目的としていないもの。(例:意識改革研修、モラル向上研修、寺社での座禅 等)
  • 職業又は職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの。(例:接遇・マナー講習、パワハラ・セクハラ研修、メンタルヘルス研修 等)
  • 趣味・教養を身につけることを目的とするもの。(例:日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習、話し方教室 等)
  • 実施目的が訓練に直接関連しない内容のもの。(例:講演会、研究発表会、学会 等)
  • 通常の事業活動として遂行されることが適当なもの。(例:自社の商品知識研修、QCサークル 等)
  • 就業規則その他の文書又は当該事業所の経営慣行等に基づいて通常行われるもの。 (例:入社時研修、新任管理職研修、OJT等)
  • 通常の生産ラインにて実施されるものなど、通常の生産活動と区別がつかないもの又は教育訓練過程で生産されたものを販売等することにより利益を得るもの。(事業所内訓練のみ)
  • 法令で義務づけられているもの。 (例:労働安全衛生法関係の教育)
  • 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第28条第2項に規定する職業訓練指導員免許を有する者その他当該教育訓練の科目、職種等の内容についての知識、技能、実務経験又は経歴を有する指導員又は講師により行われないもの。
  • 指導員又は講師が不在のまま自習(ビデオ等の視聴を含む。)を行うもの。
  • 転職や再就職の準備を目的とするもの。
  • 過去に行った教育訓練を、同一の労働者に実施するもの。
  • 海外で実施するもの。
  • 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第1の2の表の技能実習の活動に従事する者(技能実習生)に実施するもの。

ここで注目したいのは、従来の教育訓練では、接遇・マナー講習などの専門性がほとんどないもの、パワハラ・セクハラ研修、自社の商品知識研修、新人研修など会社がルーティーンとして実施すべきもの、過去と同一の研修、指導員・講師が不在の研修などを対象外としていることです。

【特例措置後の教育訓練】

以上の判断基準は、特例措置によって大幅に緩和されました。厚生労働省の見解でも、

新型コロナウイルス感染症の影響により、集合研修等の実施が難しい状況であることに鑑み、従前認めていなかった以下の教育訓練を緊急対応期間においては認めるものとする

と明言しています。具体的には、以下のような教育訓練が対象となっています。

  •  自宅などで行う学習形態の訓練(サテライトオフィス等も認める)
  • 接遇・マナー研修、パワハラ・セクハラ研修、メンタルヘルス研修などの職業、職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となる訓練
  • 繰り返しの教育訓練が必要なものについて、過去に行った教育訓練を同一の労働者に実施する訓練(※同一の対象期間における再訓練は認めない)も認めるものとする
  • 自宅等で実施するなど、通常と異なる形態で実施する場合には、その企業において通常の教育カリキュラムに位置づけられている訓練も認めるものとする
  • 自宅等でインターネット等を用いた双方向での訓練を実施するなど、通常と異なる形態で実施する場合には、社内において、自社職員である指導員が、一般的に教育的立場にあり、一定程度の知識、実務経験を有するならば、当該指導員による訓練も認めるものとする

 

この緩和によって、従来に比べて非常に使い勝手がよくなっています。例えば、

  • ハラスメントの問題を防止するために、オンラインでパワハラ・セクハラ研修を実施する
  • 接遇・マナーに不安のある従業員に、オンラインで研修を実施する
  • 過去に行った教育訓練のうち、不十分な従業員を対象に再度実施する

といった教育訓練が可能です。特に、新型コロナウイルス拡大の時期が新卒社員の入社時期と重なっているため、

・新入社員の教育訓練を、ベテラン社員が指導員となってオンラインで実施する

といった形で実施すれば、社会人としてのマナー、業務に関する基礎的なこと、商品に関する知識などを教えることができます。

新型コロナウイルス収束後はあまり余裕がなく、新人教育も不十分になる会社もあるでしょう。

それを防ぐために、雇用調整助成金を活用しながら新人教育を実施するのがおすすめよ!

参考資料

なお、教育訓練の対象を詳しく知りたい人は、雇用調整助成金の要領として公開されている資料(https://www.mhlw.go.jp/content/000627417.pdf)が参考になります。

従来の教育訓練の解釈は13ページ、特例措置による解釈は56ページに記載されています。

上記でも書いた通り、雇用調整助成金における教育訓練の仕組みは、厚生労働省の人でもよく理解していないケースが珍しくありません。

このため、教育訓練を検討している会社がハローワークなどに問い合わせても、ある人は特例措置を知らず(要領の13ページの認識)、ある人は特例措置を知っており(要領の56ページの認識)、対応する人によって答えが違う場合があります

したがって、ハローワークなどで確認したい人は、単に問い合わせるだけではなく、要領も確認することをおすすめします。

もちろん、社労士に協力してもらえる会社は、社労士の意見を聞くのがベストだ!

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教育訓練を実施する際の注意点

ここまで読んで、教育訓練を実施したいと思った会社も多いと思います。

そのような会社は、実施にあたっての注意点を知っておく必要があります。

雇用調整助成金の教育訓練には厳しい制約があり、ここで間違いがあれば不正受給とみなされる恐れがあるのです。

その注意点とは、

  • 教育訓練中に業務につかせないこと
  • 所定労働時間内に教育訓練を実施すること

の二点です。

特に重要なのが、業務につかせてはならないことです。

教育訓練を実施しているように見せかけて、業務につかせていれば当然不正受給となります。

また、ささいな業務も不正受給の対象とみなされます。例えば、

  • オンライン研修の最中に、取引先から電話がかかってきたので、研修の受講者が電話をとって対応した
  • 社員が講師となってオンライン研修を実施している最中、話の流れで会議のようになってしまった

といった場合には、業務にたずさわったものと見なされます。

実際には、このようなささいなことであれば、不正受給として厳しく追及されることは考えにくい。

とはいえ、基本的にはNGであることを意識しておくことで、思わぬ間違いを防ぐことができます。

また、従来の仕組みで所定労働時間内の事業所内訓練・事業所外訓練が対象となっていたように、特例措置後の仕組みでも所定労働時間内の教育訓練が原則となります。

これらの点には十分注意しておきましょう。

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まとめ

本稿で解説したように、雇用調整助成金は休業だけではなく教育訓練でも活用でき、様々なメリットが期待できます。

現在、休業に踏み切っている会社では、「とても教育訓練などできる状況ではない」と考えているかもしれません。

しかし、緩和措置が実施されている今、非常に少ない負担でさまざまな教育訓練が可能となっています。

ぜひ、新型コロナウイルス収束後を見据えて、教育訓練の実施を検討してみてください。

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