障害者雇用への取り組みで受給できる助成金には、様々なものがあります。
障害者を雇用することによっても受給できますし、労働時間を延長したり、無期雇用や正規雇用に転換したりすることでも受給できます。
特に、多額の受給を目指すうえで、雇用区分の転換は一考の価値ありです。
障害者の転換に伴う助成金はかなり手厚く設定されており、受給金額を大きく伸ばすことにつながります。
本稿では、障害者職場定着支援コースの転換措置によって受給できる助成金を、多角度的に考えていきます。
障害者の雇用義務とは?
障害者雇用促進法の雇用義務制度によって、一定以上の規模の会社では、障害者の雇用義務が発生します。
現在、障害者の雇用義務に伴う法定雇用率は2.2%に定められており、常用労働者46人以上の会社では、最低1人の障害者を雇用する義務があります。
政府は、この雇用義務は徐々に拡大していく予定です。
2021年には法定雇用率を2.3%に引き上げることが予定されており、常用労働者44人から最低1人の雇用義務が生じることとなります。
雇用義務の算定ルールは細かく規定されており、
というようにカウントします。
労働時間の延長で雇用義務を満たす
この算定ルールを知れば、障害者雇用に色々な工夫も可能となります。
例えば、法定雇用率の引き上げや業容拡大によって、新たに雇用義務が生じた会社では、短時間労働者として雇用している障害者の労働時間を、週30時間以上に延長することによっても対応できるのです。
この時、障害者雇用安定助成金の障害者職場定着支援コース(以下、障害者職場定着支援コース)を利用すれば、雇用する障害者の労働時間を延長したことによって、以下の助成金を受給することができます。
支給対象者 | 措置の内容 | 支給額 | 支給対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者 | 20時間未満から30時間以上へ延長 | 54万円 | 1年 | 27万円×2期 |
20時間未満から20時間以上30時間未満へ延長 | 27万円 | 1年 | 13.5万円×2期 | |
20時間以上30時間未満から30時間へ延長 | 27万円 | 1年 | 13.5万円×2期 | |
上記以外 | 20時間未満から30時間以上へ延長 | 40万円 | 1年 | 20万円×2期 |
20時間未満から20時間以上30時間未満へ延長 | 20万円 | 1年 | 10万円×2期 | |
20時間以上30時間未満から30時間へ延長 | 20万円 | 1年 | 10万円×2期 |

障害者職場定着支援コースを利用すれば、短時間労働者の労働時間を延長して雇用義務を満たし、さらに助成金も受給できるのね。
※障害者の労働時間の延長によって受給できる助成金について、詳しくはこちら

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同時に転換も検討してみる
雇用する障害者の労働時間を延長するとき、受給金額を伸ばすためにも、是非検討したいのが雇用区分の転換です。
短時間労働者として雇用している障害者の週所定労働時間を30時間以上に延長する際、雇用区分は有期契約のままに据え置くことも可能です。
しかし、十分な適性があると判断した場合には、無期雇用や正規雇用に転換することで、さらなる助成金の受給も可能となります。
障害者職場定着支援コースでは、雇用する障害者を転換することによって、以下の助成金を受給することができます。
支給対象者 | 措置の内容 | 支給額 | 支給対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者 | 有期雇用から正規雇用へ転換 | 120万円 | 1年 | 60万円×2期 |
有期雇用から無期雇用へ転換 | 60万円 | 1年 | 30万円×2期 | |
無期雇用から正規雇用へ転換 | 60万円 | 1年 | 30万円×2期 | |
上記以外 | 有期雇用から正規雇用へ転換 | 90万円 | 1年 | 45万円×2期 |
有期雇用から無期雇用へ転換 | 45万円 | 1年 | 22.5万円×2期 | |
無期雇用から正規雇用へ転換 | 45万円 | 1年 | 22.5万円×2期 |
受給額はどれくらい伸びるか?
障害者職場定着支援コースで受給できる二つの助成金を併給すれば、受給額はどれくらい伸びるのでしょうか。具体的な例で見てみましょう。
障害者の雇用義務が1人から2人に増える会社では、これまで短時間労働者として雇用してきた2人の障害者(重度障害者以外)の週所定労働時間を30時間以上に延長することで、雇用義務を満たすことができます。このとき、
①有期契約のまま労働時間だけ延長する場合
・週所定労働時間を20時間以上30時間未満から30時間以上に引き上げる
→20万円×2人=40万円の受給
②労働時間の延長と同時に、無期雇用に転換する
・週所定労働時間を20時間以上30時間未満から30時間以上に引き上げる
→20万円×2人=40万円の受給
・有期契約から無期雇用に転換する
→45万円×2人=90万円の受給
⇒合計130万円の受給
③労働時間の延長と同時に、正規雇用に転換する
・週所定労働時間を20時間以上30時間未満から30時間以上に引き上げる
→20万円×2人=40万円の受給
・有期契約から正規雇用に転換する
→90万円×2人=180万円の受給
⇒合計210万円の受給
となり、受給額を大幅に伸ばすことができます。

ただ労働時間を延長するよりも、かなり多くなるんだね!

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適切な転換で受給額を伸ばす
雇用義務の算定ルールでは、雇用区分による変動がありません。
このため、有期契約から無期雇用に転換したから、あるいは正規雇用に転換したからといって、雇用義務の拡大に対応することにはなりません。
しかし、短時間労働者として雇用しながら、十分な配慮を組み立て、適材適所で働かせることができているならば、無期雇用や正規雇用への転換を検討しても良いでしょう。
週所定労働時間を30時間以上に伸ばして継続雇用するとき、それが有期契約であっても無期雇用であっても、会社の負担が大きく変わるわけではありません。
正規雇用に転換するならば、基本給がアップしたり、賞与をはじめとした正社員を対象とする諸手当を支払ったりすることによって、人件費が増大します。
しかし、それは一般の従業員を正規転換する場合にも同様です。配慮や適性に大きな問題がないのであれば、障害者を正規雇用へ転換し、受給額を大幅に伸ばすのも一つの手です。

無期雇用・正規雇用への転換で、会社にはどのような問題・負担が生じるだろうか。
よく考えてみて問題がなければ、転換によって受給額を伸ばすのが正解だ。
障害者+多様な正社員への転換も
なお、障害者の正規雇用への転換には、一般的な正社員だけではなく、多様な正社員(ジョブ型正社員)も含まれています。
多様な正社員とは、職務内容や勤務地、勤務時間などを限定した正社員のことであり、一般の正社員とは大きく異なる要素を持っているものの、助成額が変わるわけではありません。
障害者を正規雇用に転換する場合には、一般の正社員への転換だけではなく、多様な正社員への転換を検討してみるのも良いでしょう。
障害者雇用には合理的配慮の提供義務が伴います。
このため、おのずと職務内容・勤務地・勤務時間などが限定されることが多いため、多様な正社員への転換と相性が良いのです。
多様な正社員に転換し、特に障害特性を考慮しながら勤務時間や勤務地を設定すれば、これは立派な配慮となり、合理的配慮の提供義務を満たすことにもつながります。
さらに、多様な正社員への転換に伴い、勤務時間や勤務地への配慮のために就業規則の改定などを実施すれば、これも障害者職場定着支援コースの「柔軟な時間管理・休暇取得の措置」による助成金の支給対象となり、
も受給できる可能性があります。

転換の対象となる障害者としても、多様な正社員への転換なら安心できるわね。
※柔軟な時間管理・休暇取得の措置について、詳しくはこちら

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キャリアアップ助成金の正社員化コースと比較
一般の労働者でも、キャリアアップ助成金の正社員化コース(以下、正社員化コース)を利用することで、無期雇用や正規雇用への転換によって助成金を受給できます。
この助成金は、多くの企業で活用しやすいものであり、当サイトでも度々紹介しているものです。
しかし、政府は障害者雇用の促進に力を入れているため、障害者の転換による助成金を正社員化コース以上に手厚く設定しています。
これは、正社員化コースと障害者職場定着支援コースの助成内容を比較してみるとよくわかります。
受給金額
正社員化コースの助成金支給額は、以下のように定められています。
基本的な支給額 | 生産性が6%向上している場合 | |
有期契約から正規雇用へ転換 | 1人当たり57万円 | 1人当たり72万円 |
有期契約から無期雇用へ転換 | 1人当たり28.5万円 | 1人当たり36万円 |
無期雇用から正規雇用へ転換 | 1人当たり28.5万円 | 1人当たり36万円 |
正社員化コースと障害者職場定着支援コースの受給額を比較すれば、どのような転換の場合においても、障害者職場定着支援コースのほうが多額に受給できることが分かります。
正社員化コースでも障害者職場定着支援コースと同様に、多様な正社員への転換も正規雇用転換に含まれます。
基本的には助成額は変わりませんが、新たに勤務地・職務限定正社員制度を規定したうえで多様な正社員に転換した場合には、上記の金額に9.5万円(生産性要件を満たした場合には12万円)が加算されます。
しかし、このような増額を考慮しても、障害者職場定着支援コースのほうが多く受給できる内容となっています。
生産性要件の有無
次に、生産性要件の有無も大きな違いです。
一般の従業員を対象とする助成金の多くで、生産性要件を満たした場合に助成金が増額される仕組みとなっています。
正社員化コースも同様に、生産性要件を満たした場合に増額を受けることができます。
しかし、障害者職場定着支援コースでは生産性要件による増額がありません。
障害者雇用関連の助成金では、障害者雇用への取り組みそのものを評価されるため、生産性の変化は考慮されないのです。
このため、正社員化コースで生産性要件を満たした場合よりも、多くの受給が可能となっています。
賃金アップの有無
さらに特筆すべき違いは、賃金アップの有無です。
正社員化コースでは、単に転換しただけでは受給要件を満たすことはできず、転換と同時に「転換前よりも賃金を5%以上増額すること」も要件となっています。
このため、転換によって人件費も増加します。
しかし、障害者職場定着支援コースの受給要件では、このような賃金増額の定めがありません。
このため、有期契約から無期雇用に転換する場合、転換前と転換後で時給ベースでの賃金が増えていなくとも、受給することができます。
正規雇用に転換するならば、正規雇用としての賃金規定が適用されたり、正社員としての諸手当を支給したりすることで、支給される賃金は増加することと思います。
しかし、仮にそれが増額率5%未満であったとしても、不給要件とはならないのです。
このように、比較的軽い負担で転換できるため、会社にとって取り組みやすい仕組みとなっています。

すべての条件を比較しても、障害者職場定着支援コースのほうがたくさん受給できるようになっているぞ!

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まとめ
本稿で解説した通り、雇用している障害者に無期雇用や正規雇用への転換措置を実施することで、多額の助成金を受給できます。
人材不足に悩んでいる会社の中には、無期雇用や正規雇用への転換を検討するとき、障害者ではなく一般の従業員を転換したいと考える会社もあることでしょう。
もちろん、優秀な人材を確保していくためには、一般の従業員への転換措置に取り組むことも重要です。
しかし、十分に適性があることが分かっていれば、障害者の転換も検討してみましょう。
転換の対象を障害者・健常者で分けて考えるのではなく、会社にとって大切な人材であれば等しく転換を検討し、その中でより多くの受給を目指していくことが、人材不足解消と負担軽減のカギとなるのです。
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