資金繰りに関する基本的な要素を学ぶにあたり、よくある疑問を解消することで理解が飛躍的に進む場合があります。
例えば、よくある疑問として、「黒字なのに倒産するのはなぜか」、「赤字でも倒産しないのはなぜか」というものがあるのですが、それを知ると資金繰りの理解が大きく進むことがあるのです。
そこで本稿では、黒字でも倒産する理由と赤字でも倒産しない理由に迫っていきたいと思います。
黒字でも倒産する会社
利益を出している限り、会社は倒産しないという誤解があります。
そう思っている人にとっては、「利益を出してお金を稼いでいるのに、どうして倒産することがあるのか?」と不思議に思うのですが、それには理由があります。
黒字でも倒産するのは、信用経済のしくみによるものです。
信用経済とは、簡単に言えば信用を担保として取引する仕組みのことです。
その昔、経済は物々交換によって回っていました。
物と物を交換するのです。
貨幣が誕生すると、物とお金を交換するようになりました。
現在のビジネスの現場ではここからもう一歩進んで、掛け取引をするようになっています。

反対に、自社を信用してもらって、後日の支払いを約束して売ってもらうこともあります。
販売した時、資料の上では掛け取引での売上から利益を計算し、実際に入金されたかどうかは考慮されません。
つまり、資料の上ではきちんと儲かって黒字になっていたとしても、取引相手が支払わなかったり、倒産して支払えなかったりすると、会社にはお金が入ってこず、会社がつぶれることになってしまいます。
これが黒字倒産です。
利益計算と資金繰り計算の違い
つまり、利益計算と資金繰り計算では計算方法に違いがあり、それが黒字なのに倒産するという矛盾した現象を引き起こしています。
利益計算をするときは、実際のお金の出入りとは無関係に売上・原価・経費を集計し、売上から原価と経費を差し引いたものを利益とみなします。
実際のお金の有無とは関係なく、資料の上で利益とみなされるものがこれです。
これを図示すると、以下のようになります。
原価 | 売上 |
経費 | |
利益 |

したがって、以下に図示するように、入ると見込んでいた売掛金が入らなかったりすると、その分が丸ごと不足することになってしまいます。
収入と支出の予定にあまり違いがない時、貸し倒れなどによって収入が減ってしまうと、不足分が生じてしまうことになります。
収入 | 支出 |
不足 |
このように、利益計算では黒字でも資金繰り計算では支出の方が多くなることがあり、これを倒産状態と言います。
収入が不足する理由は、大きく分けて以下の三つ考えらえます。
- 販売した代金の回収がうまくいかなかった。
- 掛け取引によって過剰に仕入れてしまったが、うまく販売につなげることができず、利益を得られなかった。
- 借入金によって設備投資をしたが、うまく利益につなげることができなかった。
これによって黒字倒産が起こるのです。

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黒字倒産と粉飾決算
しかし、上記の三つの理由は理論的には黒字倒産の原因になるものですが、実際の現場を見てみると、粉飾決算によって黒字倒産するケースが非常に多いです。
粉飾決算とは、その名の通り決算を粉飾するものです。
決算書とは、貸借対照表と損益計算書によって構成されています。
簿記は貸借平均の原理によって、貸方と借方の金額が必ず一致するようになっています。
このことから、貸借対照表と損益計算書の両方において数字を操作することで、粉飾が可能となります。
手口は複数考えられますが、スタンダードな粉飾決算には以下のようなものがあります。
売掛金と売上を同額ずつ増やす
貸借対照表の資産の部における売掛金を増やし、同時に損益計算書の売上を同額増やすと、当期純利益も同額だけ増やすことができ、利益を多く見せかけることができます。
棚卸資産を増やし、その同額の原価を減らす
貸借対照表の資産の部における棚卸資産を増やし、損益計算書で同額の原価を減らせば、当期純利益は同額増えることになり、利益を多く見せかけることができます。

つまり、その気になってしまえば、架空の伝票1枚で利益を操作できるということです。
これは、役員報酬を確保するため、株価を維持するため、銀行の印象をよくするためなどの理由で行われます。
しかし、粉飾決算はあくまでも粉飾であり、実態を伴わないものです。
架空の売上を計上したとしても、その売上が実際に入ってくることはありません。
棚卸資産を過大に評価しても、その評価相応の売上をもたらしてくれることはありません。
ないものをあるものとしており、実態を伴わない架空の姿に資金繰りを合わせていかなければならないため、資金繰りが苦しくなっていきます。
嘘が嘘を呼んでいる状態なのですから、資金繰りが苦しくなって当然です。
粉飾決算によって融資を受け、それによって一時的にしのいでも、やがてその返済のための借入が必要となり、ついに破綻してしまいます。
資金繰りはごまかせない
粉飾決算によって破綻した会社の決算書を見ると、このことが明らかです。
架空の売掛金と不良債権、水増しされた棚卸資産と不良在庫、過剰に評価されているだけで実際には含み損を抱えている不動産などが目白押しです。
また、帳簿に乗せられていない負債が隠されていることもあります。
粉飾した貸借対照表には、これらのおかしな内容が多々含まれます。
これらは債務超過状態をごまかすために粉飾されたものですから、嘘をすべて取り除いてしまうと債務超過状態が明らかとなります。
純資産よりも負債の方が大きい状態を債務超過と言います。
こうなると、資産を売却したり、債務を減免してもらったりしなければ、会社は立ち行かなくなります。
表面上は黒字でも実質的には赤字であり、粉飾している状態では、いずれ倒産に至ります。
利益計算では数字をごまかして黒字にできても、資金繰り計算では誤魔化すことはできないのです。

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赤字でも倒産しない会社
次に、赤字でも倒産しない会社を見てみましょう。
黒字倒産をよく理解していれば、赤字で存続できる理由も良くわかると思うので、こちらは簡単に説明しておきます。
赤字になると倒産すると考えている人は、ここで認識を改めておきましょう。
実際、国税庁の統計を見てみると、日本の企業の70%程度は赤字なのです。
もし赤字になったら倒産してしまうならば、日本の企業の70%は倒産することになってしまいます。
しかし、そんなことはありません。
黒字でも倒産する会社を知り、カンのいい人は既に気づいているかもしれませんが、赤字や黒字というのはあくまでも利益計算の上でのことです。
利益計算で赤字になっている会社でも、資金繰りでお金が続くならば、倒産することはないのです。
赤字でも資金繰りがうまくいくケース
では、赤字でも資金繰りが続くケースにはどのようなものがあるのでしょうか。
現金商売の場合
まず考えられるのは、現金商売が多い会社です。
収益状況は悪く赤字になっているのですが、現金商売によってお金が入ってくるために、何とか資金繰りを回せるという場合です。
もちろんこの場合には、その場しのぎであって儲かっているわけではありませんから、いずれは倒産することになるでしょう。
これを自転車操業と言います。
融資を受けられる場合
このほか、赤字でも融資を受けて資金繰りを回している場合があります。
新規に創業した会社が、現在は赤字であるものの、将来性を認められて公的金融機関から借り入れをして資金繰りがうまくいっている事もあります。
また、一時的な赤字であることを認められて銀行から借り入れをして、資金繰りをうまくいっているという場合がこれに当ります。

したがって、倒産することもありません。
経営者から借り入れる場合
最も多いのは、経営者から借り入れて資金繰りをカバーするケースです。
会社が赤字で困ったとき、その会社をつぶしたくない経営者は、私財を投じて会社を救います。
もちろん、持ち家を売り払ったり、子供の学資に貯めておいた貯金を崩したりするというのではなく、会社が儲かっている時にもらっていた役員報酬をつぎ込む形がほとんどです。
役員報酬とは
会社が儲かったときには、法人税などの税金も高くなります。
これを安くするために節税を図るわけですが、役員報酬を取って利益を減らすことによっても、税金を安くすることができます。
もっとも、役員報酬には所得税がかかるため、役員報酬をもらった経営者は所得税という形で支払うことになります。
しかし、所得税率が法人税率よりも低くなる範囲内で受け取っていれば、結局は法人と個人を通算した税額は軽くなるのです。
役員報酬は、次のように決まり事があります。
- 毎月一定額であること
- 株主総会か定款で決められた範囲内であること
- その業種における水準を大きく上回らないこと
この条件で一定の役員報酬を受け取り続けてきた経営者は、会社がピンチの時にはそれを会社に貸し付けることによって、倒産を免れることができるのです。
以上のように、会社が赤字になったとしても、何らかの方法によって不足分を賄い、支払いをきちんとやっていけるならば、赤字でも倒産してしまうことはないのです。

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まとめ
本稿によって、会社が黒字でも倒産する理由、逆に赤字でも倒産しない理由が分かったと思います。
ポイントとなるのは、利益計算と資金繰り計算は異なるものであり、利益計算で黒字でも資金繰りがうまくいかなければ倒産します。
そして、利益計算で赤字でも資金繰りがうまくいけば倒産しないということです。
これを知れば、黒字倒産をしないためにはどうすればよいのかが分かりますし、赤字でも倒産しないためにどうすればよいのかが見えてくるでしょう。
このような基本を押さえることは、資金繰りでとても大切なことなのです。