政府が推進する働き方改革では、高年齢者の雇用促進にも力を入れています。
平成25年には65歳までの雇用が義務化されており、さらに2020年には70歳までの雇用を義務化する方針です。
労働人口が減少しており、少子高齢化も深刻な日本では、高年齢者が働ける社会を作っていく必要があります。
政府は、今後も高年齢者の雇用促進に力を入れていき、企業経営にも大きく影響すると考えられます。
本稿では、このような流れに対応していくために活用すべき、3つの助成金を紹介していきます。
70歳雇用の努力義務
平成25年に高年齢者雇用安定法が改正されたことによって、企業は高年齢者を65歳まで雇用することを義務付けられました。
これによって、定年を65歳未満に定めている会社では、雇用している高年齢者を65歳まで雇用をするために、次のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要があります。
- 65歳まで定年を引き上げる
- 65歳までの継続雇用制度を導入する
- 定年を廃止する
なお、「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者が希望した場合に、再雇用制度などによって、定年後も引き続き雇用することをいいます。
このような法改正によって、高年齢者を雇用していくことに負担を感じている会社は多いと思います。
しかし、労働人口が減少しており、なおかつ少子高齢化が進んでいる日本では、高年齢者を雇用推進は避けては通れない道です。
さらに政府は、65歳以上の高年齢者の雇用を促進していくべく、高年齢者雇用安定法を改正し、企業に70歳雇用を義務付ける方針を明らかにしています。
現段階では、70歳雇用への改正案は2020年の通常国会で提出し、企業に努力義務を課すとしています。
この改正案が実施された場合、企業は次のような努力が求められます。
- 70歳まで定年を引き上げる
- 70歳までの継続雇用制度を導入する
- 定年を廃止する
このような政府の方針は、今後も続いていくことと思います。


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使うべき助成金①65歳超雇用推進助成金
高年齢者雇用にあたって、活用すべき助成金の筆頭は65歳超雇用推進助成金です。
これは、既に雇用している高年齢者に対して、定年の引き上げや廃止、雇用管理制度の整備、処遇の改善などに取り組んだ会社に助成金を支給するものです。
65歳超雇用推進助成金は3つのコースに分けられており、それぞれをうまく活用していくことが重要です。
なお、65歳超雇用推進助成金のすべてのコースにおいて、以下の高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施することが要件となっています。
- (a)職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等
- (b)作業施設・方法の改善
- (c)健康管理、安全衛生の配慮
- (d)職域の拡大
- (e)知識、経験等を活用できる配置、処遇の改善
- (f)賃金体系の見直し
- (g)勤務時間制度の弾力化
会社は、高年齢者の雇用に負担を感じることも多いです。
中には、高年齢者が継続雇用を希望しにくくなるように、職場環境を悪化させたり、改善に全く取り組まないということも考えられます。
そこで、定年の引き上げや廃止、継続雇用制度の導入などに伴い、高年齢者が働きやすくなるように、上記のような何らかの管理改善措置を実施する必要があるのです。
65歳超継続雇用促進コース
まず、次のいずれかの取り組みを実施した会社では、65歳超継続雇用促進コースによる助成金が支給されます。
- 65歳以上へと定年を引き上げる
- 定年の定めを廃止する
- 希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度を導入する
助成金の支給額は、定年を引き上げる幅や、60歳以上の雇用保険被保険者数によって、以下のように変動します。
■65歳以上へ定年を引き上げる、あるいは定年の定めを廃止する場合
60歳以上の被保険者数 | 65歳まで引き上げ | 66歳以上に引き上げ | 定年を廃止 | ||
5歳未満 | 5歳 | 5歳未満 | 5歳以上 | ||
1~2人 | 10万円 | 15万円 | 15万円 | 20万円 | 20万円 |
3~9人 | 25万円 | 100万円 | 30万円 | 120万円 | 120万円 |
10人以上 | 30万円 | 150万円 | 35万円 | 160万円 | 160万円 |
■希望者全員を対象として66歳以上の継続雇用制度を導入した場合
60歳以上の被保険者数 | 66~69歳まで | 70歳以上 | ||
4歳未満 | 4歳 | 5歳未満 | 5歳以上 | |
1~2人 | 5 | 10 | 10 | 15 |
3~9人 | 15 | 60 | 20 | 80 |
10人以上 | 20 | 80 | 25 | 100 |

高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
このコースは、高年齢者の雇用管理制度を整備した会社に助成金を支給するコースです。
高年齢者の雇用管理の整備とは、具体的に次のようなことを指します。
高年齢者の職業能力を評価する仕組みと、その仕組みを活用した賃金・人事処遇制度を導入する(すでに賃金・人事処遇制度を導入している会社では、制度にさらなる改善を加える)
- 高年齢者の希望に応じて、短時間勤務制度や隔日勤務制度などを導入する(すでにこのような制度を導入している会社では、制度にさらなる改善を加える)
- 高年齢者が意欲と能力を発揮して働けるよう、必要な知識を身に着けるための研修制度を導入する(すでに研修制度を導入している会社では、制度にさらなる改善を加える)
- 法定外の健康管理制度を導入する
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースでは、雇用管理制度の整備に要した経費の60%を助成します(生産性要件を満たしている場合には75%を助成)。

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高年齢者無期雇用転換コース
このコースは、50歳以上かつ会社が定める定年年齢未満の有期契約労働者を、無期雇用へ転換させた場合に助成金を支給するものです。
通常、従業員を転換する際には、キャリアアップ助成金の正社員化コースを利用します。
正社員化コースで有期契約から無期雇用へ転換した場合、1人当たり28.5万円(生産性要件を満たしている場合には36万円の助成を受けられます。
しかし、50歳以上定年年齢未満の従業員であれば、キャリアアップ助成金の正社員化コースよりも高年齢者無期雇用転換コースを利用すべきです。
なぜならば、高年齢者無期雇用転換コースでは、1人当たり48万円(生産性要件を満たしている場合には48万円)の支給を受けられるからです。

正社員化コースでは、転換に伴って賃金を5%以上増額させる必要がありますが、高年齢者無期雇用転換コースではその必要がありません。
転換後の人件費負担でもメリットがあるのです。
高年齢者無期雇用転換コースは、支給申請年度1事業所当たり10人を上限としています。
一方、正社員化コースは1年度1事業所当たり20人までです。
したがって、高年齢者を無期雇用へ転換するとき、キャリアアップ助成金の正社員化コースを使ってしまうと、助成金の受給額が減るだけではなく、20人の枠を無駄に使ってしまうことになります。
そうならないように、50歳以上定年年齢未満の従業員には高年齢者無期雇用転換コースを使い、それ以外の従業員を転換する場合にはキャリアアップ助成金の正社員化コースを使いましょう。
助成金の効果を最大限に引き出しつつ、全体で30人まで受給できます。


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定年の引き上げ・廃止に取り組んだら
高年齢者の雇用に取り組むにあたって、まずは65歳超雇用推進助成金を活用する会社が多いと思います。
これによって、定年を引き上げたり廃止したりした会社では、高年齢者を活用するための環境を整えることができます。
せっかく定年を引き上げたり廃止したりしたのですから、採用の幅を高年齢者にも広げて、人材確保を役立てていくのが良いでしょう。
すでに雇用している高年齢者ではなく、一度離職した求職中の高年齢者を雇用する場合には、特定求職者雇用開発助成金を利用することができます。
使うべき助成金②特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
まず、60歳以上65歳未満の人材を雇い入れる場合には、特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースを利用することができます。
特定就職困難者コースでは、60歳以上65歳未満の高年齢者だけではなく、母子家庭の母や障害者など、就職が困難な人材を広く対象としています。
ここでは、60歳以上65未満の高年齢者を雇用した場合のみ紹介しますが、以下のように助成金を受給することができます。
対象労働者 | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 | |
短時間労働者以外の者 | 高年齢者 (60歳以上65歳未満) |
60万円 | 1年 | 30万円×2期 |
短時間労働者 | 高年齢者 (60歳以上65歳未満) |
40万円 | 1年 | 20万円×2期 |
生涯現役コースにも共通しますが、この表の「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者を指しており、「2期」「4期」などの「期」とは、6ヶ月を1期とする支給対象期を指しています。
したがって、生涯現役コースにおける短時間労働者を対象とする助成金は、
「週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者は、6ヶ月ごとに20万円を、2期にわたって受給できる」
ということになります。
使うべき助成金③特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
生涯現役コースは、特定就職困難者コースのように色々な就職困難者を対象とするものではなく、65歳以上の高年齢者を雇用した場合のみを対象として助成金を支給するものです。
65歳以上の高年齢者を雇用した会社では、以下の助成金を受給することができます。
支給対象者 | 支給額 | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの支給額 |
短時間労働者以外の者 | 70万円 | 1年 | 35万円×2期 |
短時間労働者 | 50万円 | 1年 | 25万円×2期 |
特定就職困難者コースと生涯現役コースは、支給申請上限も設定されていないため、高年齢者を採用する会社では積極的に活用していきたい助成金です。


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まとめ
基本的には、より若い人材を雇用し定着させ、長期にわたって雇用し続けることが理想です。
しかし、労働人口の減少と少子高齢化が進んでいることを考えると、高年齢者も貴重な経営資源となってくるはずです。
今後も、高年齢者の雇用が推進されていくことと思います。
この流れに対応し、会社のメリットにつなげていくためには、助成金をしっかりと活用していくことが重要です。
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