皆さんもご存じの通り、長期融資は短期融資よりも高い金利設定になっています。
しかし、金利設定の基準となる短期プライムレートと長期プライムレートを比較してみると、現在は長期プライムレートのほうが低くなっているため、長期融資のほうが低い金利になってもよさそうなものです。
ところが、実際の融資の現場では、長期融資のほうが金利は高くなります。
このことに混乱してしまう人もいることでしょう。
本稿では、長短金利の逆転現象について学び、金利への理解を深めましょう。
「長期金利>短期金利?」それとも「長期金利<短期金利?」
銀行が融資を実行するにあたり、短期融資よりも長期融資のほうが金利は高くなるのが普通です。

これは、返済期間が長期になるほど、返済期間中に融資先の経営が悪化し、貸し倒れリスクが高くなるためよ。
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短期融資と長期融資によって銀行が負うリスクは異なるため、金利条件は「長期融資>短期融資」の関係になるのが普通です。
しかし、短期融資の基準となる短期プライムレートと、長期融資の基準となる長期プライムレートを比較すると、現在では長期プライムレートのほうが低くなっています。
もちろん、普通は「長期金利>短期金利」の関係が正しいのですが、実際には「長期金利<短期金利」の関係になることもあります。
これを、長短金利の逆転と言います。
金利について正しい知識をつけるため、将来の環境を予測して資金繰りに活かすために、長短金利の逆転の構造を知っておくと良いでしょう。

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長短金利の逆転とは?
すでに書いた通り、金利は「長期金利>短期金利」の関係にあります。
これが普通の考え方で、一般的な預金にしても、長期の定期預金ほど利息が高く設定されるのが普通です。
しかし現在の金利を見てみると、長期プライムレートが短期プライムレートよりも低くなっていますし、預金でも長期の定期預金よりも短期の定期預金のほうが金利は低くなっています。

このような長短金利の逆転の原因は、簡単に言えば景気が悪化したことによるんだ。
金利と景気の関係
では、なぜ景気が悪化することで、長短金利の逆転が起きるのでしょうか。
景気が悪くなれば、金利は下がります。
なぜならば、景気と金利には、
→消費者の購買意欲も低下する
→企業の売上が減り、資金繰りは苦しくなる
→銀行から融資を受けることが難しくなる
→投資を控えたり、リストラをしたりする
→景気が後退に拍車がかかる
→経済全体でのお金への需要が減る
→中央銀行が金利の引き下げを行う
→企業はお金を借りやすくなる
→資金が回りやすくなり、投資や給与にもお金が回る
→消費者の購買意欲も高まり、企業の売上も回復する
→景気が回復する
という関係があるからです。
景気が悪い時の長短金利の差
もし、この先の景気が悪化しそうだという状況では、将来的に金利が下がると考えられます。
長期スパンで資金を運用している人は、金利が下がらないうちに固定金利の長期国債を買おうとします。
そうなると、長期国債の需要が高まるため、長期国債の価格が上昇します。
長期国債の価格が高くなれば、金利が下がらないうちに買ったとしても、利回りは低くなります。
一方、短期国債の需要は相対的に低くなるため、短期国債の価格は下がり、利回りは高くなります。

このように、景気悪化によって長期金利が低下したことで、長短金利の差が小さくなっていくんだ。
その傾向が続けば、通常時では「長期金利>短期金利」の関係にあるはずが、「長期金利<短期金利」という逆転現象が起きるのです。

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景気が良い時の長短金利の差
逆に、この先景気が良くなりそうだという状況では、将来的に金利は上がっていくと考えられます。
この場合には、金利が上がるまで待ってから長期国債で運用したほうが良いため、それまでは短期国債で運用しようと考える人が増えます。
そうなると、短期国債の価格が上昇し、利回りは低下していきます。
一方、長期国債の需要は低下して価格が下がり、利回りは高まります。

この結果、長短金利の差は小さくなっていき、本来の「長期金利>短期金利」という関係に戻るのね。
預金で考えてみる
以上のことは、預金で考えてみてもわかりやすいです。
銀行は、預金者から預けてもらったお金を運用して利益を得ており、預金者には利息を支払っています。
長期金利と短期金利の原則から言えば、長期の預金は短期の預金に比べて、高い利息が得られるのが普通です。
しかし、景気が悪いタイミングでは、この原則が通用しなくなります。
銀行としては、低い預金金利で資金を調達したほうが利益につながります。
今後、景気が悪化して金利が低くなりそうなタイミングでは、貸付金利も徐々に低くなっていくと考えられるため、預金金利を低く設定しなければ採算性が低下してしまいます。
また、短期の預金ならば、金利が変動して採算性が低下しても、短期スパンで金利を見直せばよいため、銀行はリスクを抑えることができます。
そこで、長期の預金は金利を低めに設定してリスクに備え、短期の預金は金利を高めに設定して、人々の預金が短期の預金に流れるようにします。

だからこそ、預金金利においても、景気が悪い時は「長期定期預金金利<短期定期預金金利」の関係に逆転することになるんだ。
現在の長短金利は逆転
長短金利は、上記のような関係にあります。
このことから、長期金利と短期金利の差は、景気の先行きを示しているとも言われます。
これは、実際に長期金利と短期金利の違いを見比べてみると、よくわかります。
1991年にバブルが崩壊して平成不況に突入し、その後徐々に景気が回復していきました。
この時の長期プライムレートは2.05%、短期プライムレートは1.5%でした。(長期>短期)
2001年にはITバブル崩壊によってふたたび景気が悪化。
長短金利差は徐々に縮小していき、長期プライムレートは1.55%、短期プライムレートは1.375%となります。(長期>短期)

その後の景気にも波がありますが、「長期金利>短期金利」の関係はほとんど崩れていないし、逆転が起きたとしてもごく軽微な逆転だ。
戦後最長の好景気となった2006年、長期プライムレートは2.65%、短期プライムレートは1.375%となり、長短金利差は大きな開きを見せます。(長期>短期)
しかし2009年、リーマンショックに端を発する世界的な金融不安により、日本の不景気も加速しました。
その結果、2010年6月には長期プライムレート1.45%、短期プライムレート1.475%という逆転現象が起きました。(長期<短期)
その後は逆転現象が解消しても長短金利差は広がらず、現在では長期プライムレート1.00%、短期プライムレート1.475%という逆転現象になっています。(長期<短期)
このように、長短金利の差が景気の動向に大きく影響されていることが分かります。

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資金調達への活かし方
ところが、長短金利の逆転が起こっているからと言って、融資における金利条件では、「長期融資>短期融資」の関係が崩れることはありません。
なぜならば、長短金利の逆転が起こっている状況では、長期プライムレートではなく「新長期プライムレート」が適用されることで、長期金利が短期金利を上回るようになっているからです。
そのため、長短金利が逆転しているから短期融資は不利、長期融資は有利という考え方は間違っています。銀行に対し、
などと交渉しても通用しません。
※新長期プライムレートについて、詳しくはこちら

しかし、長短金利の逆転を正しく理解しておけば、この知識を資金調達に活用していくことができます。
すでに解説した通り、長短金利の逆転現象は、今後の景気が悪化していくと考えられる場合、つまり今後の長期金利が下がっていくと考えられる場合に起こります。

実際に逆転現象が起きたとしても、新長期プライムレートが適用されるため、長期金利が高いことには変わりないわ。
しかし、長短金利が逆転している事実を以て、
といった考え方も可能です。
この考え方は、長短金利差がどのようになっているか、また銀行が適用するプライムレートがどうなっているかによっても変わります。
しかし、長短金利の関係について正しく理解していれば、資金調達に活用できることでしょう。

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まとめ
本稿では、長期金利と短期金利の関係について、長短金利の逆転現象も含めて解説していきました。
これによって、長期プライムレートが短期プライムレートよりも低くなる理由、それにもかかわらず長期融資の貸付金利のほうが高い理由が分かったと思います。
また、長短金利の逆転現象が起きている状況で、今後の資金調達をどうしていくべきかについても、ヒントになる知識だと思います。

ぜひ、資金調達や金利交渉に活用してほしい!
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