助成金には色々な種類があります。
近年では、雇用の安定と生産性の向上のために、従来の労働環境を整備することで受給できる助成金が多くなっています。
「従来の労働環境を・・・」というと、既存の企業に対して助成金を支給しているイメージがあります。
しかし助成金の中には、単純に雇用する際に活用できるものもあるため、起業時にも利用することができます。
本稿では、起業にあたって利用すべき助成金について解説していきます。
まずは助成金のトレンドをおさえておこう!
助成金制度は、その時々の社会情勢や政府の政策によって、基本的な方針が変わります。
例えば、以前の助成金制度では、主に雇用の創出に関する助成金が多かったものです。
起業によって雇用を創出した起業家に助成金を支給したり、既存の企業でも雇用を拡大したり調整したりした会社に助成金を支給することがメインとなっていました。
今でも、そのような助成金はあるのですが、近年のトレンドは「雇用の拡大」ではなく、労働環境の整備や正社員化、教育などによる「雇用の安定」にシフトしています。

- 女性や高齢者、シングルマザーなどが働きやすい環境を作ること
- 有期契約労働者を正規雇用に転換すること
などによって、職場への定着を促すと同時に、教育による生産性の向上を促すことによって、経済全体の成長を目指しているのです。
つまり、雇用の創出・拡大・調整によって、失業率を下げる方針から、労働環境の整備や生産性の向上によって、経済成長を促す方針へと転換していると言えます。

人口の減少が続いている日本では、経済成長が鈍化しており、今後ますます深刻になっていくと考えられます。
この問題に取り組むためには新規に雇用を生み出すよりも、既存の会社で労働環境の整備や正社員化、教育などを促し、雇用の安定を増進し、生産性を向上したほうが効率的なのです。
現在の政府の方針や、日本が抱えている現実的な問題を考えると、今後もこのトレンドは変わらないと考えられます。
雇用創出よりも雇用安定が重視されることでしょう。
本稿では、起業にあたって利用できる助成金を紹介していきますが、まずはこのような流れを正確にくみ取ることが大切です。
いずれ、起業時に使える助成金が徐々に手薄になっていく可能性もあると考え、限られた支援を十分に活用していくためにも、しっかりと知識をつけておくことが大切なのです。

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起業時に使える3つの助成金
起業時に受給できる助成金は、あくまでも「起業によって雇用が生み出されたこと」によって、助成金の支給対象となっています。
したがって、起業に伴う雇用の際に、助成金を利用できると考える必要があります。
ただ起業したからと言って、自分ひとりだけで経営を回しているのであれば、助成金を受給することはできません。
しかし、起業後すぐにはなかなか利益を確保できないものですから、資金繰りは厳しくなります。
厳しい資金繰りの中で人手不足に陥ったとき、従業員を雇いたいけれども人件費の負担が大変だ、ということもあるでしょう。
そこで、起業時に雇用系の助成金を利用し、人件費負担を助成金によってカバーしていくことを考えるのです。

- トライアル雇用助成金
- 特定就職困難者雇用開発助成金
- 地域雇用開発助成金
1、2は起業時に限らず、ほとんどの会社で利用できるものです。
起業時だから利用できるというよりも、起業時にも利用できると考えましょう。
ただし、3の地域雇用開発助成金は、特に起業時に活用しやすい助成金であり、助成金の支給額も大きいため、要チェックの助成金です。
では、上記の助成金について、簡単に見ていきましょう。

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トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、経験や技能、知識などによって、安定的な就職が困難な人材を試験的に雇用したとき、受給できる助成金です。
起業して間もない会社で人材を募集しても、なかなか優秀な人材は集まらないものです。
普通の人であれば、もっと安定していて、名前もよく知られているような会社、できれば大手に就職したいと考えるものです。
起業間もない、小さくて安定しているかどうかも分からず、雇用条件にも不安がある会社であれば、積極的に応募したいと考える人はあまりいません。
「そのような会社でも雇ってくれるなら・・・」「とにかく働ければ御の字だ」と考える人でなければ、応募してこないのです。
考え方によっては、他の会社では安定的に就職できないからこそ、そのような会社に望みをかけて応募してきているとも言えます。
起業したばかりで、資金繰りにも余裕がない時期ですから、雇用には慎重にならざるを得ません。
いくら人材不足であり、優秀な人材が集まらないからと言って、経験・技能・知識に問題がある人材を下手に雇ってしまえば、人件費に見合う貢献がなされず、負担に悩むこともあるでしょう。

そうすれば、3ヶ月間の働きによって判断し、適性がないと思えば雇用を打ち切ることもできますし、適性があると思えば常用雇用へ切り替えることもできます。
常用雇用に切り替えたとき、助成金の受給対象となります。
受給金額は1人当たり月4万円、最大12万円の受給となります。
金額は小さいですが、起業後間もない会社で慎重に見極めながら雇用したい場合に、トライアル雇用助成金が役に立ちます。

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特定就職困難者雇用開発助成金
これは、60歳以上65歳未満の高年齢者や障害者、シングルマザーなど、就職が特に困難な人を雇い入れた場合に受給できる助成金です。
起業後間もないころから、このような人材を雇い入れることは困難なケースが多いと思います。特
に障害者を雇用する場合には、就労のための設備やサポート体制を導入しなければならないこともあり、ある程度余裕がある会社でなければ取り組むのは難しいでしょう。
しかし、最初から起業を通して社会貢献を目指している場合には、障害者を雇用することが考えられます。
また、それほど負担が大きくない仕事であれば高齢者やシングルマザーなどでも問題なく雇える可能性があります。

通常の会社ではなかなか雇用できない人材を雇うこと、雇い入れによって会社に生じる負担が小さくないことから、助成金額は大きめに設定されています。
短時間労働者として雇用した場合には、
- 高年齢者やシングルマザーを雇用:6ヶ月ごとに20万円を1年間支給(計40万円)
重度障害者を含む身体・知的障害者を雇用:6ヶ月ごとに20万円を2年間支給(計80万円)
短時間労働者以外として雇用した場合には、
- 高年齢者やシングルマザーを雇用:6ヶ月ごとに30万円を1年間支給(計60万円)
- 重度障害者を除く身体・知的障害者を雇用:6ヶ月ごとに30万円を2年間支給(計120万円)
- 重度障害者を雇用:6ヶ月ごとに40万円を3年間支給(計240万円)
を受給することができます。
トライアル雇用助成金と特定求職困難者雇用開発助成金は、起業後間もないゆえに求人への応募が集まらず、人材確保に困っている会社が、使いにくい人材をうまく使っていくためのものです。
これらをうまく使えば、人材を確保しつつ、助成金で負担を軽減していくことができます。
地域雇用開発助成金
これは、雇用が不足している地域などで起業したり、事業所を設置・整備したりすることによって、雇用を生み出した会社に支払われる助成金です。
対象地域については、厚生労働省のホームページに詳しく書かれています。たくさんの地域が対象となっているため、ここでは掲載しません。
もし、起業するエリアが対象地域に含まれているならば、地域雇用開発助成金を受給できる可能性があります。
また、既存の会社が対象エリアで事業所を設置・整備する場合と比べて、起業時にこの助成金を使った場合には良い条件が適用される仕組みになっています。
起業時に利用した場合、その地域に居住する人材を雇い入れたとき、事業所の設置・整備にかかった費用に応じて、以下の条件で3年間にわたって助成金を受給することができます。
設置・整備費用 | 対象労働者の増加人数 | |||
2~4人 | 5~9人 | 10~19人 | 20人以上 | |
300万円以上1000万円未満 | 50万円 | 80万円 | 150万円 | 300万円 |
1000万円以上300万円未満 | 60万円 | 100万円 | 200万円 | 400万円 |
3000万円以上5000万円未満 | 90万円 | 150万円 | 300万円 | 600万円 |
5000万円以上 | 120万円 | 200万円 | 400万円 | 800万円 |
起業時の利用で優遇されている点と言えば、
- 対象労働者を増加させるにあたり、通常の中小企業では3人から支給対象とみなすのに対し、起業する会社では2人から支給対象とみなされる
- 1年目の支給時、通常の中小企業では規定の支給額の1.5倍を受給できるのに対し、起業する会社では2倍を受給できる
などです。
起業後間もないタイミングでは、従業員をたくさん雇い入れることはできないことを考慮して、2人からの増加をもって支給対象としてくれます。

地域雇用開発助成金は、対象地域で起業する場合に利用できるものです。
トライアル雇用助成金や特定求職困難者雇用開発助成金などのように、雇い入れが難しい人材をあえて雇用する必要はなく、対象地域の求職者を雇い入れた場合に利用できるため、メリットは大きいと言えるでしょう。
設置・設備費用の算定については細かな定めがあるので、社労士と相談しながら進めていくことをお勧めします。

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まとめ
助成金というと、すでに経営している既存の企業が、これまで構築してきた労働環境を整備することで受給できるというイメージが強いかもしれません。
これから起業する場合や起業して間もない場合、つまり労働環境のどこに問題があり、改善余地があるかわからない場合には、助成金を活用するという発想にはなりにくいものです。
また、助成金は長期を見据えて活用していくべきですが、起業後間もない時点では長期の展望も定まらず、助成金を活用しにくい事情もあるでしょう。
それでも、起業後に事業を拡大していくためには、従業員の新規雇用は必須です。
その時、使える助成金は使わないのはもったいないことですから、しっかりと活用していきましょう。
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