助成金の中には、従業員に対して研修を行うことで受給できるものもあります。
自社の業務に直接関係のある研修であれば受給できる可能性も高く、賃金や経費の負担を軽減しつつ、生産性の向上に取り組むことができます。
ただし、研修系助成金を受給するにあたっては、研修を行う時間には十分に注意すべきです。
本稿では、研修系助成金の助成対象時間について解説していきます。
研修系の助成金とは?
助成金制度は、経済成長の促進を目的としています。
このため、人材雇用に伴う助成金だけではなく、人材定着のための取り組みや、生産性向上のための取り組みなどに対しても、助成金を受給する場合があります。
分かりやすい助成金の一つに、研修系の助成金があります。
これは、従業員に適切な研修を受けさせることにより、その際に発生する賃金を助成するものです。

特別訓練コース
- Off-JT(外部研修機関での研修)・・・1人1時間当たり760円(生産性要件を満たした場合には1人1時間当たり960円)
- OJT(社内での研修)・・・1人1時間当たり665円(生産性要件を満たした場合には1人1時間当たり840円)
一般訓練コース
- Off-JT・・・1人1時間当たり380円(生産性要件を満たした場合には1人1時間当たり480円)
研修系助成金を受給するためには、第一にその研修が適切か、不適切かを重視されます。
- 助成金を希望する会社の業種から考えて適切である
- 研修を受ける従業員の職務から考えても適切である
- 受講する内容やタイミングも適切である
このような場合には、助成金を受給することができます。
これと同時にしっかり意識しておくべき要素が、「助成対象時間」です。

研修系助成金では、助成対象とならない時間に研修を受けても、賃金助成を受けることはできません。
しかし、研修系助成金における時間の考え方を知らずに損をする会社は多いのです。
助成対象とはならないタイミングで研修を実施し、助成金を受給し損ねたり、受給額が減ったりする会社が少なくありません。

半年弱で50億円積み上げたOLTA、クラウドファクタリング「3兆円市場」目指してChatworkと連携するなど、この資金調達方法がすごい。

大手企業ともパートナー提携していて非常に安心よ♪
OLTAのサイトはこちらから→ https://www.olta.co.jp/
助成対象時間は?ポイントは所定労働時間
では、助成対象時間はどのように考えるのでしょうか。
助成対象時間を考える上でポイントとなるのが、所定労働時間です。
所定労働時間とは、会社が定めている労働時間のことです。
そして、研修系助成金の注意事項では、支給対象とならない場合について、
「所定労働時間外・休日(振替休日は除く)に実施されたOff-JTの賃金助成、OJTの実施助成」
を挙げています。
これが、「法定時間外に研修を行っても受給対象にならない」というのであれば、納得しやすいと思います。
法定労働時間とは、「労働基準法に定められている、労働させてよい時間」だからです。

しかし、研修系助成金では、あくまでも所定労働時間内での研修を支給対象としています。
所定労働時間を決めているのは、就業規則と雇用契約です。
そこで、所定労働時間を「8:00~17:00」と定めている会社では、その時間以外に研修を行っても、時間外分の助成金は受給できないのです。

もし今、資金繰りにお困りなら、こちらの窓口に相談されてみてはいかがでしょうか。
アクセルファクターについての関連記事はこちら
受給できないケース
では、受給できないケースを具体的に見ていきましょう。
受給できないと言っても、一部受給できないケースもあれば、全部受給できない場合もあります。それぞれの場合を見ていきましょう。
一部受給できないケース
一部受給できないケースで多いのが、外部研修機関による研修の実施時間と、自社の所定労働時間がずれているケースです。
例えば、所定労働時間を8:00~17:00と定めている会社が、外部研修機関で10:00~18:00で実施されている研修を受けたとします。
この時、所定労働時間内である10:00~17:00だけが助成対象時間となり、所定労働時間外の17:00~18:00は助成対象時間とはなりません。
研修中には1時間の休憩があることを見込むと、助成対象時間は1回の研修当たり6時間となります。
会社としては、10:00~18:00の研修を受けることにより、1時間の休憩を見込んでも7時間分の賃金助成を受けられると考えていたかもしれません。

しかし実際には、所定労働時間外については助成対象とはならないため、1回あたりの受給額が1時間分少なくなり、受給額は45万6000円に目減りします。
このような影響をカバーするためには、
- できるだけ所定労働時間内に研修を受けさせる
- 生産性要件を満たすことによって助成額を上乗せする
などの工夫が必要となります。
全額受給できないケース
全額受給できないケースには、
- 全ての研修を所定労働時間外で実施した場合
- 研修を受けた時間が、当初の計画していた研修時間の8割未満の場合
が挙げられます。
全ての研修を所定労働時間外で実施した場合
まず、これまでに書いたことからもわかる通り、所定労働時間外は助成対象時間にはならないため、研修の実施がすべて所定労働時間外であれば、全額受給できなくなります。
よくあるのが、所定労働時間以降に、会社に居残らせて研修するようなケースです。
例えば、
「新人社員10人に対して、入社から3ヶ月間、終業後の17:00~19:00まで週5回、新人社員研修を行った。残業代は支給しているから実施助成を受けたい。
月21日で42時間、3ヶ月で126時間の実施だから、10人では83万7900円の助成金を受給できるだろう」
などと考えているケースです。
新人社員研修を行う会社は多いでしょうし、それが業務に直接関係のある研修ならば、助成金の支給対象となります。
しかし、就労時間外に実施されたOJTは助成対象にはならないため、全額受給できなくなるのです。
研修を受けた時間が、当初の計画していた研修時間の8割未満の場合
また、研修計画における研修時間の8割未満しか実施できなかった場合にも、全額受給できなくなります。
助成金を前提に研修を実施する場合には、まず事業内職業能力開発計画を策定する必要があります。

この研修時間の8割未満しか実施できていなければ、受給できなくなるのです。
例えば、所定労働時間を8:00~17:00と定めている会社で、13:00~19:00というカリキュラムの研修を10回にわたって実施する計画を立てたとします。
休憩を15:30~16:00の30分とすると、1回の研修における所定労働時間内の研修時間は3時間30分、所定労働時間外の研修時間は2時間となります。
全10回の研修では前者が35時間、後者が20時間です。
従業員10人に社内研修を受けさせた場合、受給できる金額は23万2750円、受給できない金額は13万3000円となります。
もし、計画開始後に所定労働時間外は助成金が発生しないことを知ったとしましょう。
「ならば無駄な研修はやめよう」などと考えて、研修時間を休憩なしで13:00~17:00の全10回に切り替えた場合、当初は55時間の研修を実施する予定が、40時間の実施に減ってしまいます。
つまり、当初計画していた研修時間の8割未満しか実施されなかったことになり、助成金を全額受給できなくなってしまうのです。
社労士としっかり相談しよう
以上のように、一部あるいは全額を受給できなくなる失敗を防ぐためには、社労士と十分に相談しながら正確に実施することが重要です。
社労士に相談すれば、助成対象時間を考慮しながら計画を立ててくれるため、失敗することがなくなります。
もし、社労士から指導を受けつつも、経営の事情から計画通りの研修ができなくなった場合には、社労士に相談すべきです。
それをせずに、経営者の独断で研修時間をずらすと、受給できる金額が減ったり、全く受給できなくなったりする可能性があります。
社労士に相談すれば、経営に支障なく研修に取り組めるよう、研修のカリキュラムや時間を組みなおし、変更手続きをしてもらうことができます。
変更後の計画に沿って取り組むことができれば、期待通りの助成金を受給することができるでしょう。

もし貴社が、新型コロナウイルスで売上が低迷しているなら、この人達が救済してくれるゾ!
シフト勤務はどうなる?
さて、研修系助成金と時間の関係について解説してきましたが、分かりにくいのがシフト勤務の場合です。
シフト勤務の場合には、労働日や労働時間が不規則ですから、助成対象時間の考え方も分かりにくくなります。

つまり、シフト表に「4月1日の8:00~17:00まで勤務」と記載されている従業員が、その時間内に研修を受けていれば、それは助成対象とみなされます。
もちろん、シフト表の記載以外の時間帯に研修を受けていれば、それは助成対象にはなりません。
よくあるミスが、シフト表から助成対象時間を特定できないケースです。
事業所によっては、
「シフト表は、現場で勤務している従業員を把握するためのもの。研修中は現場を離れているから、シフト表には記載しない」
と考えて、シフト表に記載しない場合があります。
これでは、実際に所定労働時間内に研修を受けていたとしても、それをシフト表によって証明することができないため、助成金の受給ができなくなってしまうのです。

次に出勤簿やタイムカードから研修を受けた時間を特定し、賃金台帳から研修中の賃金を支払ったことを証明する必要があります。
シフト表による所定労働時間の証明は出発地点ですから、ここでミスがないようにしましょう。

業界最大手の資金調達プロなら、10社のうち9社で資金繰りが改善しています。
資金調達プロに関する関連記事はこちら
まとめ
研修を受けることで助成金を受給すれば、従業員の知識や技能を向上させ、生産性の向上にもつながり、なおかつそのためのコスト負担を軽減することもできます。
従業員一人当たりの生産性が向上すれば、人材不足も緩和されるでしょうし、経営改善には大きな効果があるでしょう。
しかし、この助成金の仕組みをよく知り、助成される時間に研修を行うことができなければ、せっかくの取り組みも無駄になってしまいます。
社労士をしっかり相談しながら、十分に受給できるように進めていきましょう。
コメント