働き方改革の一環として、政府は両立支援を推進しています。
これは、育児・介護・病気の治療などと仕事を両立するための支援です。
最近では、育児と仕事の両立にあたり、男性従業員も両立支援の対象になっています。
助成金制度の中でも、男性従業員に育児休業を取得させた会社に対して、助成金を支給しているのです。
この助成金では、育児休業を最低5日取得すれば助成の対象となるため、これから両立支援に取り組んでいく会社でも取り組みやすいと言えます。
本稿では、男性従業員の育児と仕事の両立支援に使える、両立支援等助成金(出生時両立支援コース)について解説していきます。
男性従業員の育児休業を促進しよう
政府が推進している働き方改革の目的は、多様な働き方ができる社会の実現です。
「多様な働き方ができる社会」には、女性が活躍できる社会、自宅やサテライトオフィスなどで働ける社会、有給休暇をしっかり取得しながら働ける社会など、色々な意味があります。
特に、両立支援等助成金には力が入れられており、育児をしながら働ける社会、介護をしながら働ける社会、病気を治療しながら働ける社会などの実現を目指しています。
このうち、「育児と仕事の両立」というと、女性だけを対象とした取り組みにも思えるかもしれません。
しかし、最近では男女平等が進んだことにより、男性を対象とした、育児と仕事の両立支援も推進されています。
とはいえ、日本では「男性は外で働いて家族を養い、女性は家を守り子供の養育に努める」という考え方が未だに根強く、男性従業員の育児休業はまだまだ普及しているとは言えません。
そこで政府は、男性従業員が育児と仕事を両立できる職場風土を作るために、育児休業や育児目的休暇を取得しやすくなるような取り組みを実施した会社に対して、両立支援等助成金の出生時両立支援コース(以下、出生時両立支援コース)という制度を実施しています。

男性の育児休業も、徐々に普通になってきているわ。

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出生時両立支援コースとは
上記の通り、出生時両立支援コースは、男性従業員が育児と仕事を両立しやすいように取り組んだ会社に助成金を支給するものです。
助成金の支給対象となるのは、
の2通りとなっています。
育児休業と育児目的休暇の違い
まず、育児休業と育児目的休暇の違いについて明らかにしておく必要があります。
これは、どちらも同じものに見えますが、育児・介護休業法という法律で、以下のように明確に区別されています。
【育児休業】
育児休業は、育児・介護休業法第2条第1号において、以下のように規定されています。
育児休業とは、労働者(日雇い労働者を除く)が、その子を養育するためにする休業をいう。
実際の法令では細かい記載がなされていますが、単純に「自分の子供の養育のために休むこと」を育児休業といいます。
【育児目的休暇】
育児目的休暇は、育児・介護休業法第24条第1項に規定する休暇制度のことです。第24条には、
事業主は、その雇用する労働者のうち、その小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、労働者の申出に基づく育児に関する目的のために利用することができる休暇を与えるための措置及び次の各号に掲げる当該労働者の区分に応じ当該各号に定める制度又は措置に準じて、それぞれ必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
と記載されており、第1項には、
一歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしていないもの
と書かれています。
取り組みの内容も異なる
以上のことから、育児休業は育児のために休むことそのものを指しており、育児目的休暇は育児休業を取得するときのルールや措置を指していることが分かります。
育児休業は休業の種類の一つであり、育児目的休暇は休業に関する制度の一つなのです。
このため、出生時両立支援コースの助成金を受給するための取り組みも
- 育児休業の取得促進
男性従業員が育児休暇を取得しやすい職場風土づくりに取り組む
- 育児目的休暇の導入
男性従業員が、子供の出生前後における育児や配偶者の出産支援のために取得できる、育児目的休暇の制度を新たに導入し、労働協約または就業規則に規定する
というように、似て非なるものであることが分かります。

この違いは、出生時両立支援コースを利用する際に混乱しやすい部分だから、しっかり理解しておこう。

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育児休業の促進でもらえる助成金
では、育児休業の促進と育児目的休暇の導入のそれぞれの取り組みについて、制度の概要を見ていきましょう。
必要な取り組み
まず、育児休業の取得促進で助成の対象となるのは、平成28年4月4日以降に、男性従業員が育児休業を取得しやすい職場風土づくりに取り組んだ会社です。
男性従業員が育児休業を取得しやすい職場風土づくりのための取り組みとは、
- 男性従業員を対象に、育児休業制度の利用を促進するための資料を作成し、周知に努める
- 管理職によって、子供ができた男性従業員に育児休業の取得を勧める
- 男性従業員の育児休業取得について、管理職に研修を実施する
などです。
これらの取り組みを、助成金の支給対象となった男性従業員が育児休業を開始する日の前日までに実施する必要があります。

育児休業の取得促進といっても、手の込んだ取り組みは不要なのだ!
☆活用のポイント☆
上記のように、男性の育児休業の促進は簡単なものばかりです。
しかし、簡単な取り組みでも、使い方によってはメリットを高めることができます。
例えば、男性従業員への周知のために資料を作成することも取り組みとして認められますが、これは男性従業員向けに特化することを想定しています。
しかし、「女性従業員に育児休業を勧める内容であってはならない」が絡んではいけないという決まりはありません。
このため、周知のための資料に、男性従業員に対する育児休業を推奨すると同時に、女性従業員にも育児休業を推奨する資料を作り、女性従業員にも配布した場合にも、助成金の受給が可能です。
今後、女性従業員に対しても育児休業を広げていきたいと考えている会社は、これを機にまとめて周知に努めるのが良いでしょう。

助成対象となる範囲内で、自社にメリットが大きい取り組みへとカスタマイズしよう。
育児休業の期間
この助成金を受給するためには、育児休業を取得させる期間とタイミングが設定されており、
- 中小企業は連続5日以上(大企業は連続14日以上)の育児休業を取得すること
- 子供が生まれてから8週間以内(生まれた日を含めて57日間)に、育児休業の取得を開始すること
が助成金の支給対象となっています。
この要件から分かる通り、中小企業では男性従業員に対して、最低5日の育児休業を取得させることによって、助成金を受給することができます。
注意したいのは、育児休業の取得を開始するまでの期間が、子供が生まれてから8週間以内に限定されていることです。
57日間という短い期間のうちに、育児休業を取得するかどうかを決める必要があるため、たまたま子供が生まれる時期と会社の繁忙期が被った場合など、このタイミングで育児休業の取得を開始できなければ、助成対象外になってしまいます。

5日程度であれば、無理なく取り組める会社も多いだろう。対象期間に注意しながら取り組もう!
助成金額
助成金の支給額は、中小企業と大企業で異なりますが、ここでは中小企業の助成金額だけを紹介します。
助成金額は、育児休業を取得した人数と、取得日数によって以下のように異なります。
育児休業を取得した人数 | 助成金支給額 |
1人目 | 取得日数に関わらず一律57万円(72万円) |
2人目以降 | 5日以上の取得:14.25万円(18万円) |
14日以上の取得:23.75万円(30万円) | |
1ヶ月以上の取得:33.25万円(42万円) |
※カッコ内は生産性要件を満たした場合。
※1企業当たり1年度10人まで。
この助成金は、毎年繰り返し利用することができます。
上記の表の「1人目」というのは、「育児休業の取得促進に取り組んだ1人目の男性従業員」という意味であって、「その年度に育児休暇を取得する1人目の男性従業員」という意味ではありません。
したがって、出生時両立支援コースで育児休暇の取得促進に取り組み、育児休業の取得第1号となる男性従業員のみを57万円の支給対象とみなします。
それ以降は、全て2人目以降の括りで考えます。

毎年10人まで利用できるのはありがたいね!

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育児目的休暇の導入でもらえる助成金
次に、育児目的休暇の導入についてみていきましょう。
育児目的休暇とは、子供の出生前後に、育児や配偶者の出産支援のために取得できる制度のことです。
上記の「育児休業の取得促進」では、子供が生まれた後を基準と考えているのに対し、育児目的休暇の導入では、子供が生まれる前後を基準と考えています。
助成金の支給対象となるのは、育児目的休暇を新たに導入し、労働協約または就業規則に規定した場合に限られます(すでに導入している会社は助成対象外)。
必要な取り組み
育児目的休暇の導入でも、育児休業の取得促進と同じような取り組みを実施することが要件となっており、男性従業員が育児目的休暇を取得しやすい職場風土づくりに取り組む必要があります。
具体的には、
- 男性従業員を対象に、育児目的休暇制度の利用を促進するための資料を作成し、周知に努める
- 管理職によって、子供ができた男性従業員に育児目的休暇の取得を勧める
- 男性従業員の育児目的休暇取得について、管理職に研修を実施する
のいずれかを、助成金の支給対象となった男性従業員が育児目的休暇を取得する日の前日までに実施する必要があります。

就業規則に育児目的休暇を盛り込む必要はあるけど、取り組み内容は育児休業の取得促進とほとんど変わらないわね。
育児目的休暇の期間
育児目的休暇は、出生前後が休暇の対象期間となっています。
助成金を受給するためには、対象となる男性従業員に対して、
- 子供の出生前の6週間から出生後8週間以内(出生日も含む)
の期間内に、育児目的休暇を取得させる必要があります。
この対象期間については、勘違いしやすいので注意が必要です。
というのも、育児・介護休業法においては、育児目的休暇を
と定めているため、子供が1歳未満であれば助成金の支給対象になると勘違いしやすいのです。
しかし、あくまでも助成対象となるのは、「子供の出生前の6週間から出生後8週間以内」に限られます。
せっかく育児目的休暇を導入し、就業規則にも規定を設けていても、この勘違いによって対象期間内に育児目的休暇を取得させることができなければ、助成金の支給は受けられません。
なお、休暇の日数は育児休業の取得促進と変わらず、中小企業は合計5日以上(大企業は合計8日以上)で助成金の支給対象となります。
育児休業の取得促進は「連続5日以上」となっているのに対し、育児目的休暇の導入・実施は連続でなくても、合計で5日以上であれば対象となります。

育児目的休暇を取得するタイミングには注意しておこう!
助成金額
育児目的休暇を導入し、男性従業員が実際に育児目的休暇を取得した会社では、
28.5万円(生産性要件を満たした場合には36万円)
の助成金を受給することができます。
☆活用のポイント☆
この助成金は、育児目的休暇の取得促進ではなく、育児目的休暇制度の導入のために実施されている助成金であるため、1事業者1回限りの支給となっています。
したがって、この助成金を受給した後、出生前に育児目的休暇を取得した従業員がいても、助成金の支給は受けられません。
制度を導入した以上、従業員が制度の利用を申請したときには、受け入れる必要があります。
また、育児目的休暇制度は男女どちらにも適用されるため、会社によっては負担になる可能性があるため、導入するメリットをしっかり考えたうえで取り組むことが大切です。
なお、育児目的休暇の導入と適用によって助成金の支給対象となるためには、所定労働日に取得した育児目的休暇であることが要件となっています。
このため、育児休業中の従業員をもって、育児目的休暇を取得させたとみなすことはできません。
育児休業の取得促進と、育児目的休暇の導入・適用は、同じ従業員に対して併用できないのです。
したがって、
- 男性従業員の育児休業の取得を促進するために、先日、子供が生まれた直後に、Aさんに育児休業を取得させた
- その後、育児目的休暇を導入し、Aさんが育児目的休暇を取得したことにした
という取り組みでは、育児目的休暇の導入・適用による助成の対象にはならないのです。
もっとも、育児休業の取得促進と、育児目的休暇の導入・適用の対象労働者が異なれば問題ありませんから、
- 育児目的休暇を導入し、まもなく子供が生まれるBさんに育児目的休暇を取得させた
- 先日子供が生まれたAさんには、育児目的休暇ではなく育児休業を取得させた
という取り組みであれば、ダブルで助成金を受給することが可能です。

育児目的休暇の導入・適用は、1回しか受給できないからこそ、計画的に取り組もう。

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まとめ
多くの会社にとって、男性従業員は貴重な戦力となっているでしょう。
育児休業や育児目的休暇を取得させることが、大きな負担になる会社もあると思います。
しかし、その点は十分に考慮されているらしく、出生時両立支援コースでは最低5日の取得で受給要件を満たすことができます。
たった5日で助成金を受給することができるため、利用のハードルは高くないはずです。
また、出産という一大イベントの直前・直後のタイミングで、配偶者をサポートできることは、従業員にとってもありがたいことです。

活用しやすく、従業員の満足度アップにも役立つ助成金ですから、ぜひ活用を検討してみてほしい!
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