人口の減少に伴い、労働力不足が深刻化している日本では、従来のように男性を労働の中心と考えるのではなく、女性の人材にも大いに活躍してもらおうとする考えが強くなっています。
人権的な意味での男女平等については、ずいぶん前から提唱されていましたが、就労における男女平等はなかなか進んでいませんでしたが、働き方改革の推進に伴って、女性の活躍も助成金などを通して、急速に広がってきています。
本稿では、東京都の会社が女性の活躍を推進する場合に、多額の助成金を受給できる制度について、その概要と上手な使い方を解説していきます。
人材確保と女性の活躍
政府が推進する働き方改革では、女性の活躍を推進しています。
労働人口が減少を続けている日本では、これまでのように男性が中心となって労働に従事するだけでは労働力が足りません。
そこで、女性の活躍を推進することで、労働力の維持に努めているのです。
しかし、日本経済・日本企業は長い間、男性を中心として成り立ってきたため、女性が活躍できる環境を整備している会社は多くありません。
このため政府は、2016年4月に女性活躍推進法(正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)を施行し、企業には女性が活躍できる環境を整備することを義務付けました。
常時雇用する労働者が300人以下の中小企業では、あくまでも「努力義務」を課せられているだけで、義務を起こった場合にも罰則などはありません。
しかし、努力する義務を負っていることは確かであり、人材不足の解消のためにも、努力義務に応じていくことが望ましいでしょう。
努力義務の内容は、
②状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定、社内周知、公表
③行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出
④女性の活躍に関する情報の公表
と定められています。

努力義務は、努力しなくても罰則がないという意味ではない。努力する義務を負っていることを認識しよう。

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両立支援等助成金(女性の活躍加速化コース)とは?
しかし、これまで女性の活躍を促してこなかった会社では、このような取り組みは負担になるはずです。
単に手間がかかるだけではなく、社労士に相談しながら進めるなどして、コスト負担も発生することでしょう。
そこで政府は、上記の努力義務に取り組んだ会社に対しては、両立支援等助成金の女性活躍加速化コースによって助成金を支給しています。
※本稿では、厚生労働省が実施している「両立支援等助成金(女性の活躍加速化コース)」と、東京しごと財団が実施している「テレワーク活用・働く女性応援助成金(女性の活躍推進コース)」を比較していきます。
互いに名前が似ており、読みにくくなってしまう恐れがあるため、本稿では
- 厚生労働省が実施する両立支援等助成金の女性の活躍加速化コースを単に「両立支援等助成金」
- 東京しごと財団が実施するテレワーク活用・働く女性応援助成金のテレワーク活用推進コースを単に「働く女性応援助成金」
と呼び分けます。

努力義務があるものの、十分な取り組みが難しい会社が多いのも事実。だから政府は、助成金で取り組みを促しているのだ。
助成額
両立支援等助成金では、女性活躍推進法の努力義務を果たし、その結果をもとに女性の雇用と活躍推進に関する数値目標を盛り込んだ行動計画を立て、雇用環境の整備に取り組んだ会社に対して、助成金を支給するものです。
助成金の支給は、
- 数値目標の達成に向けて取り組んだ場合に、結果を問わずに受給できる「加速化Aコース」
- 数値目標の達成に向けて取り組み、達成した場合に受給できる「加速化Nコース」
があります。
Aコースに取り組み、結果によってNコースの追加受給も受けられる仕組みです。
それぞれのコースの助成額は、以下の通りです(両コースとも1企業につき、受給できるのは1回限り)。
【加速化Aコース】
常用労働者300人以下 | 常用労働者301人以上 | |
受給できる額 | 28.5万円(36万円) | 対象外 |
※カッコ内の金額は、生産性要件を満たした場合。
【加速化Nコース】
常用労働者300人以下 | 常用労働者301人以上 | |
受給できる額 | 28.5万円(36万円) | 対象外 |
女性管理職比率が基準値以上に上昇 | 47.5万円(60万円) | 28.5万円(36万円) |
※カッコ内の金額は、生産性要件を満たした場合。
加速化Nコースでは「女性管理職比率」なども考慮されますが、ここで全て掲載するのは冗長に過ぎますので、詳しい数値などは厚生労働省が公表しているパンフレットを参考にしてください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000343934.pdf

両立支援等助成金では、AコースとNコースのダブルでの受給を目指そう!
※両立支援等助成金(女性の活躍加速化コース)について、詳しくはこちら

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働く女性応援助成金とは
テレワーク活用・働く女性応援助成金(以下、働く女性応援助成金)は、厚生労働省ではなく、東京しごと財団が実施している助成金です。
東京都内の中小企業(東京都内に本社または事業所がある、300人以下の会社)を対象として、女性の活躍推進のために職場環境の整備に努めた会社に対して、助成金を支給しています。
働く女性応援助成金の条件
働く女性応援助成金で取り組むのは、「女性の新規採用・職域拡大を目的とした設備等の整備費用」となっています。
ここでいう女性の新規採用・職域拡大とは、女性が少ない雇用管理区分(雇用管理区分ごとに女性の割合を算出し4割を下回っている雇用管理区分)に積極的に女性を新規採用することをいい、離職者への補充として女性を増やしたいなど、一時的なものは助成金の支給対象外となっています。
女性の新規採用を目指し、設備を導入していくのが働く女性応援助成金なのだ。
両立支援等助成金との違い
両立支援等助成金では、女性の活躍を推進するにあたっての自社の課題を分析し、行動計画を策定し、雇用環境の改善を目的としているのに対し、働く女性応援助成金では設備の導入などを通して、女性が働きやすい職場環境を作ることを目的としています。
これが、両立支援等助成金と働く女性応援助成金の大きな違いです。

目的が異なれば受給要件も異なる。違いを把握しておこう。
支給対象経費と支給額
働く女性応援助成金の助成対象となっているのは、女性にとって働きやすい環境を作るための、以下のような設備です。
- 女性従業員専用のトイレ(工事現場に設置される仮設トイレも対象)
- 女性従業員専用のロッカー・更衣室
- 女性従業員専用の休憩室
- 女性従業員専用のシャワー室
- 女性従業員専用の仮眠室
- 育児中の女性従業員のためのベビールーム
このような設備を導入するときの経費が助成対象となります。
助成金の支給額は、
- 助成率:3分の2
- 助成上限額:500万円
となっています。
最大で500万円も受給できることから、非常に手厚い助成金であることが分かります。

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両立支援等助成金と併用しよう
働く女性応援助成金の募集要項には、助成対象外となるケースの一つとして、以下のように記載されています。
助成金の支給事由と同一の事由により支給要件を満たすこととなる各種助成金のうち、国、都又は区 市町村が実施するもの(国、都又は区市町村が他の団体等に委託して実施するものを含む。)を受給 する又は受給した場合。
テレワーク活用・働く女性応援助成金の「テレワーク活用コース」の募集要項にも同じような記載があり、テレワーク導入によって受給できる時間外労働等改善助成金(テレワークコース)を利用した場合には、テレワーク活用コースの受給は認められていません。
これは、どちらもテレワーク機器の購入やサテライトオフィスの利用が受給要件となっているからです。
これと同じように、働く女性応援助成金も両立支援等助成金も、どちらも女性の活躍を推進することが目的ですから、ダブルでの受給は認められないと思う人も多いでしょう。
しかし、東京しごと財団に電話で確認を取ってみたところ、
- 働く女性応援助成金は、設備の導入によって職場環境を整備し、女性の活躍を推進する
- 両立支援等助成金は、自社の課題分析などを通して雇用環境を整備し、女性の活躍を推進する
というように、取り組みの内容が異なるため、働く女性応援助成金と両立支援等助成金をダブルで受給することが可能とのことでした。
したがって、これらの併用によって受給できる助成金の最高額は、
- 働く女性応援助成金:500万円
- 両立支援等助成金:96万円(女性管理職比率が基準値以上となり、生産性要件も満たした場合)
→計596万円
となります。
受給額の最大化のためにも、ぜひ併用に取り組みましょう。

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まとめ
働く女性応援助成金は、最大500万円まで経費助成を受給することができます。
助成率3分の2ですから、上限いっぱいまで受給した場合には計750万円のコストをかけていることになります。
このようなまとまった費用を投じていれば、女性にとって働きやすい環境を整えることができ、採用活動にも良い影響が出てくると思います。

働く女性応援助成金は両立支援等助成金との併用が可能ですから、ぜひ両方合わせて取り組み、助成額と人材確保への影響を最大化することを目指していこう!
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