雇用調整助成金の上限増額でどう変わる?わかりにくいところは厚生労働省に聞きました。

かねてより、安倍首相は雇用調整助成金の日額上限を8330円から15000円に引き上げることを発表していましたが、5月27日の臨時閣議でついに決定されました。

これまで、日額上限が雇用調整助成金の問題のひとつになっていたため、約2倍への引き上げは多くの中小企業にとってまさに「干天の慈雨」といえます。

ただし、現時点では引き上げの対象がごく一部に限られており、閣議決定に伴い公表された最新の情報には分かりにくい部分もあります

そこで、分かりにくい部分について、厚生労働省に問い合わせて確認してみましたので、本稿で整理していきたいと思います。

雇用調整助成金の問題

これまで、雇用調整助成金にはさまざまな問題がありました。

雇用調整助成金は、新型コロナウイルス対策の中でも特に有用な助成金ですが、

  1. 申請手続きが煩雑であること
  2. 支給要件が厳しいこと
  3. 会社によっては十分な支給が受けられないこと

など、多くの問題がありました。

政府が、これらの問題の解決に力を入れたことで、1と2の問題は大幅に解消されました。

申請手続きは簡素化され、支給要件となる売上の減少率、休業補償の対象者の拡大などが行われたことによって、多くの会社が受給できるようになったのです。

支給額の問題

しかし、3の問題はなかなか改善が進まなかったのだ。

政府は、助成率を大幅に引き上げることで対処を図ろうとしたのですが、それだけでは不十分だったのです。

平常時の雇用調整助成金では、休業した中小企業が従業員に支給した休業手当のうち、2/3を支給するとしていました。

この助成率が、複数回の特例措置によって、

  • 全ての中小企業で、助成率が休業手当の4/5へ引き上げ(解雇等を行わない場合は9/10)
  • 法律で義務付けられている休業手当(給与の6割)以上を支給した場合には、6割以上の部分について10/10の助成率を適用
  • 都道府県などの休業要請に協力し、8330円以上の休業手当の支給あるいは給与の100%の休業手当を支給している中小企業は、6割以上の部分に限らず10/10の助成

となり、最大で100%の助成率へと引き上げられました。

ただし、助成率100%の要件を満たしている会社でも、従業員に支給した休業手当相当額を受給できるわけではありません

なぜならば、休業補償の日額上限が8330円に据え置かれているためです。

つまり、1日あたりの賃金が15000円の従業員に対し、休業手当として15000円を支給すれば助成率100%の要件を満たすものの、雇用調整助成金の日額上限が8330円であることから、

  • 助成金額:8330円
  • 会社負担額:6670円

となるのです。

これでは、いくら助成率が上がったとはいえ、労務コストの削減効果は今ひとつでしょう。

このため、報道番組のコメンテーターの中には、「助成率100%とはいうが、実際に100%にならないことも多い。このような措置にどれだけ意味があるのか」などと批判する人も少なくありませんでした。

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第2次補正予算案の決定

5月27日の臨時閣議で、第2次補正予算案が決定されました。新型コロナウイルス対策もたくさん盛り込まれていますが、中でも目玉となるのが「雇用調整助成金の日額上限を15000円へ引き上げる」と決定されたことです。

もっとも、15000円への引き上げは、5月14日の記者会見で安倍首相がすでに明言していました。

これが、閣議決定によってほぼ確定したといえます。

このほか、

  • 4月1日にさかのぼって増額対象とすること
  • 特例措置を実施する緊急対応機関を、6月30日から9月30日へ延長すること
  • 解雇等をしない中小企業の助成率を、9/10から10/10に引き上げること

などが発表されています。

日額上限引き上げの効果

上記でも述べた通り、日額8330円の上限によって、あまり負担が軽減されない会社が少なくありませんでした。

中には、助成率は引き上げたいものの、要件に沿って休業手当を増額すれば却って会社負担が増大してしまう、といったケースもありました。

日額上限が15000円に引き上げとなれば、この問題は大きく解消されると考えられます。

上記の例で考えるとよくわかります。

1日あたりの賃金が15000円の従業員に対し、休業手当として15000円を支給する会社で、助成率100%・日額上限15000円になれば、

  • 助成金額:15000円
  • 会社負担額:0円

となり、会社負担はゼロになるのです。

月額上限は33万円

ただし、日額上限の引き上げと同時に、33万円の「月額上限」も設定されています

もちろん、日額上限8330円であれば、月に22日間受給しても18万3260円ですから、月額上限33万円はかなり高い設定になっているといえます。

また、日額上限15000円を22日間にわたって受給して初めて33万円になるため、完全に休業する会社でも十分な金額が受給できる設計になっています。

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具体的なメリット

日額15000円・月額33万円以上の部分は会社負担となりますが、それでも大きなメリットがあります。

数字で考えると、そのメリットがよくわかるわ!

一日の賃金が20000円の従業員に休業手当を支給する場合で考えてみましょう。

【(A)日額上限8330円・助成率100%の場合】

まず、引き上げ以前の日額上限8330円で助成率が100%の場合、

  • 助成金額:8330円
  • 会社負担額:11670円
  • 月間(22日)負担総額:25万6740円

となります。

【(B)日額上限8330円・助成率80%の場合】

次に、日額上限8330円であり、法律で義務付けられている「賃金の6割(12000円)」を支給し、助成率が80%(中小企業を対象とする4/5の助成率)の場合、

  • 助成金額:8330円
  • 会社負担額:3670円
  • 月間(22日)負担総額:80740円

となります。

【(C)日額上限15000円・助成率100%の場合】

では、日額上限が15000円に引き上げられ、なおかつ助成率100%ならばどうでしょうか。この場合は、

  • 助成金額:15000円
  • 会社負担額:5000円
  • 月間(22日)負担総額:11万円

となります。

 

比較してみると、会社負担は(A)の半分以下に減っていることが分かります。

(B)より月間負担総額が3万円弱増えていますが、(B)で従業員が受け取る休業手当は26万4000円であるのに対し、(C)では44万円であることがポイントです。

つまり、会社が毎月3万円を負担することによって、従業員の収入が17万6000円も増えているのです。

もちろん、従業員の収入が増えたからといって、会社の資金繰りがラクになることはありません。むしろ、確実に支出となります。

とはいえ、会社が少しの負担を受け入れることによって、従業員は安心して生活できるよ!

会社への信頼が高まり、新型コロナウイルス収束後に意欲的に働いてくれることも期待できます。

収束後は、全従業員が一丸となって、厳しい中で経営を建て直していかなければなりません。

このとき、従業員が積極的・意欲的に働いてくれることが、大きな力になります。

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現時点ではっきりしない点

以上のように、日額上限引き上げは非常に魅力的ですが、現時点ではっきりしないこともあります。

多くのメディアが、雇用調整助成金の拡充について報じています。

例えば、Newsweekの5月27日付の『新型コロナ対策追加に伴う第2次補正予算案のまとめ』では、

日額上限を1万5000円(月額33万円)に引き上げ。適用期間は4月1日に遡及の上、9月30日までとする。緊急対応期間も9月30日まで延長し、解雇等を行わない中小企業の助成率を10分の10とする。

とあります。

概ね上記と同じ内容であり、筆者が確認した限りでは、全てのメディアが同様に報じています。

現在は記載なし

ところが、経済産業省のパンフレットでは、現在(5月29日時点)、このような記載が確認できません(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf)。

このパンフレットは、あらゆる新型コロナウイルス関連支援を網羅したものであり、制度の変更や拡充のたびに更新されているものです。

雇用調整助成金に関する情報は48ページ以降に記載されていますが、日額上限は8330円と記載されているだけです。

「日額上限15000円」に更新されているのは、51ページの「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援」です。

これまでも、小学校等が臨時休業することによって、子供の養育のために休暇取得を迫られた従業員に対し、賃金を全額支給した会社には日額上限8330円の賃金助成を行っていました。

この上限が日額15000円へと更新されています。

最近では、徐々に再開する学校が増えてきており、養育のために休暇を取得する従業員も減ってきています。

となれば、現在のパンフレットの内容では、日額上限15000円のメリットはそれほど大きくないともいえます。

厚生労働省に確認してみた

多くの報道では「日額上限が15000円に引き上げ」とだけ報じており、現時点で日額上限引き上げの対象が限られていることには触れられていません

ここがはっきりしないため、厚生労働省の窓口に電話して聞いてみたところ、回答は以下のようなものでした。

  • 確かに、現時点で日額上限引き上げを公表しているのは、「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援」のみである
  • 雇用調整助成金の上限引き上げについては、まだ確定していないので記載されていない
  • 今後、確定したら順次更新されていく
  • ただし、その予定などはっきりとしたことはいえない

もちろん、日額上限引き上げについては首相が明言しており、閣議決定もされていますから、ほぼほぼ確定したものと考えてよいでしょう。

しかし、閣議の内容は6月8日に国会に提出し、12日までの成立を目指すとしています。

少なくとも、成立までは確定しておらず、更新もできないということなのでしょう。

また、成立の後にどのような流れやスピード感をもって実施に至るのか分からず、実際の引き上げまでに時間を要する可能性もあります。

このほかにも、不明点は多いわ。

例えば、今回の拡充によって、解雇等しなかった場合の助成率が9/10から10/10に引き上げられました

一方、以前の特例措置には、「賃金の6割以上の休業手当を支給している会社には、6割以上の部分に10/10の助成率を適用」とするものがあります。

果たして、

  • 支給した休業手当全体に対し、日額15000円を上限として10/10の助成率が適用されるのか
  • 賃金の6割以上の部分に対し、日額15000円を上限として10/10の助成率が適用されるのか

といったことが説明されていません。

また、4月1日までさかのぼって支給するとしていますが、現実的に既に申請した会社や、受給している会社への対応がどうなるのかも不明です。

当然、助成金額の算定方法が変わるのですから、追加の支給額を再計算する必要があるでしょう。

過去の申請資料によって厚生労働省が計算・支給してくれるのか、あるいはさかのぼってもらうために再度申請が必要になるのか、といったことが気になります。

今後の発表に注目

これらの不明点についても尋ねてみたのですが、現在記載していることがすべてであり、詳細は追って記載してゆく、といった回答しか得られませんでした。

もっとも、相談窓口の担当者も、度重なる制度の変更で混乱しているかもしれません。

また、下手に間違った説明をし、誤解させることは避けなければなりませんから、無理もないことです。

おそらく、雇用調整助成金の休業補償は、日額上限15000円に引き上げられることでしょう。

しかし、日額15000円・月額33万円という上限は、必ずしも適用されない可能性があります

また、申請書の記載内容や提出資料が増減することも考えられます

日額上限引き上げ決定を手放しに喜ぶのではなく、

  • 最新の情報をもとにできる限り資料を整理しておく
  • 特に相談できる社労士などがいれば事前に相談しておく
  • 引き上げの実施が難航した場合も想定して、計画的な資金繰りを心掛ける

といった準備が大切です。

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まとめ

首相の発言や閣議の内容から考えると、雇用調整助成金の日額上限が15000円に引き上げられることは、ほぼ間違いないでしょう。

しかし、メディアでは表面的なことしか報じられていません。この情報を鵜呑みにして休業手当を考えてしまうと、思わぬ見落としをする可能性があります。

実際に、現時点では不明点が多く、いつから引き上げになるのか、自社の受給額がいくら増えるのか、申請はどのように行えばよいのかなど、不明なことも多いです。

近いうちに詳細が発表されていくと思いますが、早い段階で準備を進めていきたいと考えているならば、社労士への相談をおすすめします。

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