人材不足が深刻化している昨今、人材確保の必要があるものの、採用活動がうまくいかずに悩んでいる会社は多いことでしょう。
そのような会社では、希望している人材がなかなか集まらない、定着しないといった、会社の希望と求職者の能力がミスマッチに陥っていることが少なくありません。
そこで活用をおすすめしたいのが、
ミスマッチの防止に役立つ
ジョブ・カード制度
です。
これを活用すれば、新規採用した人材に訓練を実施したうえで雇用を検討することができ、ミスマッチを防ぐことができます。
本稿では、ジョブ・カード制度をさらに活用すべく、トライアル雇用助成金やキャリアアップ助成金の正社員化コースとの併用についてお伝えしていきます。
ジョブ・カード制度とは?
会社の採用活動に役立つ制度の一つに、ジョブ・カード制度があります。
ジョブ・カード制度とは、正社員経験の乏しい求職者を支援する国の制度です。
ジョブ・カード制度では、キャリア・コンサルタントなどのサポートを受けることによって、
- 求職者の職務経験
- 職務能力
- キャリア
などを詳しく記載したジョブ・カードを作成します。
求職者は、求職活動でジョブ・カードを利用することによって、自分の強みや希望を会社に正確に伝えやすくなります。
会社も、履歴書や短時間の面接だけでは把握できない情報を知ることができ、適性のある人材を確保しやすくなります。
また、ジョブ・カードによって様々な情報を把握すれば、今は適性のない人材であったとしても、
本人が訓練に意欲的である場合などには、適当な訓練を実施することによって適性を身に着けてもらい、
それを確認した後に常用雇用に切り替えることも可能です。
もちろん、ジョブ・カードは求職者だけではなく、色々な立場の人が活用することができるものです。
例えば、すでに雇用している従業員のキャリアを正確に把握し、成長を促すために利用することもできます。
しかし、特に採用活動がうまくいかずに悩んでいる会社にとっては、ジョブ・カードは採用活動の実施にあたって、特に効果を大きな発揮します。
訓練を受ける意欲がある人材や、訓練によって適性が得られそうな人材だと判断した場合に、
まずは有期契約として雇用し、訓練を実施してからその後の雇用をどうするかを判断すればよいため、
採用活動におけるミスマッチを防ぐことにつながるのです。
このように、ジョブ・カード制度を活用することで、訓練を通して潜在的な適性を備えている人材を見落とすことなくマッチングしていくことを目指すことにより、会社の採用活動が大きく変わります。
採用できる機会が増えるのはもちろんのこと、雇用に伴って助成金を受給できる機会も増えるため、ジョブ・カード制度によって助成金の活用を加速することができるのです。
ジョブ・カード制度を活用することで受給できる助成金には、まず人材開発支援助成金が挙げられます。
また、受給の可能性や効率を高められる助成金には、トライアル雇用助成金やキャリアアップ助成金があります。
それぞれの助成金を、ジョブ・カード制度と絡めながらどのように活用していくか、以下で見ていきましょう。

※ジョブ・カード制度の基本情報について、詳しくはこちら


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人材開発支援助成金を使おう
まず、ジョブ・カードを活用しながら訓練を実施するにあたって、人材開発支援助成金を利用することができます。
人材開発支援助成金にはいくつかのコースがありますが、ここで活用するのは特別育成訓練コースです。
人材開発支援助成金の特別育成訓練コースは、もともとキャリアアップ助成金の「人材育成コース」として実施されていた助成金です。
これが、平成30年にキャリアアップ助成金から人材開発支援助成金へ統合された結果、今では
「人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)」
となっています。
もっとも、統合されてからも制度的には大きな変更はなく、ジョブ・カード制度を使った採用活動、採用後の訓練で助成金を受給することができます。
簡単に活用できる助成金なので、積極的に活用したいものです。

特別育成訓練コースとは?
人材開発支援助成金の特別育成訓練コースは、有期契約労働者等に対して、一般職業訓練あるいは有期実習型訓練を実施した場合に、助成金を支給するコースです。
ジョブ・カードを活用した訓練によって助成金を受給する場合には、OFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を3~6ヶ月にわたって実施する必要があります。
OFF-JTとOJTについて簡単に説明すると、
- OFF-JT:業務に必要な知識やスキルについての訓練を、通常の業務以外で実施すること
- OJT:指導者の指導によって、通常の業務の中で実務を通じて訓練すること
という違いがあります。
特別育成訓練コースを実施した会社には、訓練生が訓練を受けている時間分の賃金と、訓練に要した経費の助成を受けられます。
具体的な助成金額は以下の通りです。
【OFF-JT】
- 賃金助成:1人1時間当たり760円(生産性要件を満たしている場合には960円。1人当たりの助成時間は最大で1200時間まで)
- 経費助成:100時間未満では10万円、100時間以上200時間未満では20万円、200時間以上では30万円を上限として実費を助成
☆追加支給
訓練実施後に正規雇用に転換された場合には、OFF-JTに要した経費に対して、
100時間未満では15万円、100時間以上200時間未満では30万円、200時間以上では50万円
を上限として実費を助成します。
【OJT】
- 賃金助成:1人1時間当たり760円(生産性要件を満たしている場合には960円。1人当たりの助成時間は最大で680時間まで)
人材開発支援助成金の特別育成訓練コースでは、このような助成を受けられます。
ジョブ・カードを利用して採用活動を実施すれば、求職者をひとまず有期契約で雇用します。
3~6ヶ月の訓練を実施し、助成金を受給しながら適性を見極めていくことができます。
人材開発支援助成金を活用しながら人材確保を図ることによって、訓練に伴う賃金や経費の負担は大幅に軽減され、採用活動の効率もアップします。
訓練の結果、会社側が「これなら十分に採用できる」という適性が見いだせることも多いはずです。
また、このようなメリット以外にも、
- 労働者側が自信や興味を抱いて働き続けることを希望することによって、定着率アップにつながる。採用後に短期間で離職し、再び人材確保を図るという無駄がなくなる
- 常用雇用に切り替える前提として訓練を受けるため、常用雇用後に基礎的な訓練の必要がなく、生産性の低下を招きにくい
- 訓練によって生産性を向上させることで、生産性要件を満たすことによる助成金の加算を受けられる可能性も高まる
といった様々なメリットを得ることができます。
正規雇用せずとも受給可能
さらに、特別育成訓練コースのメリットは、訓練後に無期雇用や正規雇用などに転換せずとも、受給の対象となることです。
特別育成訓練コースのパンフレットでも、
「訓練修了後に訓練受講者の正社員転換をしなければ助成金はもらえませんか?」
という質問に対し、以下のように回答されています。
「結果的に、訓練修了後に訓練受講者に対し、正社員転換をしなくても助成金は受けられます。
ただし、訓練は訓練受講者の正社員転換を目的としたものでなければならず、訓練計画を作成する際に、訓練修了後の正社員転換の基準、時期を定め、訓練受講者に説明し理解させておかなければなりません。
このため、正社員転換を目的とすることや訓練修了後の正社員転換の基準、時期が明確でない訓練計画である場合、訓練受講者が訓練の
- 目的
- 内容
- 正社員転換の基
- 時期
を理解していない場合には、訓練計画に不備があるものとして助成金は支給されません。」
つまり、訓練終了後に適性がなかった場合、常用雇用に転換しなかったとしても、助成金は受給できます。
転換を目的とした取り組みでなければなりませんが、最初から転換を目的とすることなく、コストをかけて採用・訓練を実施する会社はないでしょうから、おそらく問題ないはずです。

※人材開発支援助成金の特別育成訓練コースについて、詳しくはこちら
→ジョブ・カードの活用で助成が受けられる特別育成訓練コースについて

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トライアル雇用助成金との併用
ジョブ・カードを活用しながら特別育成訓練コースに取り組むことで、有期契約期間中に適性を見出し、訓練後に常用雇用に切り替えられる可能性が高まります。
そこで活用したいのが、トライアル雇用助成金との併用です。
トライアル雇用助成金は、原則3ヶ月間のトライアル雇用の後、常用雇用に切り替えた場合に、会社には1ヶ月あたり4万円、3ヶ月で最大12万円が支給される助成金です。
トライアル雇用助成金のメリットは、適性があるかどうかわからない求職者をトライアル雇用期間に限定して雇用できることです。
適性がなければトライアル雇用期間の後に契約を更新せず、離職してもらうこともできるため、適性のない人材を無駄に雇ってしまうリスクを抑えることができます。
しかし、トライアル雇用助成金の難しいところは、トライアル雇用期間の後に常用雇用に切り替えなかった場合には、12万円の助成金も受給できなくなるということです。
トライアル雇用期間も賃金は発生するため、適性のない人材をトライアル雇用することが続いた場合、いつまでたっても人材を確保することができず、助成金も受給できず、無駄な負担を強いられることになります。
そこで、ジョブ・カード制度による特別育成訓練コースを活用しながら、トライアル雇用助成金に取り組むことがおすすめです。
※特別育成訓練コースとトライアル雇用助成金の併用は、厚生労働省が認めています。
通常、助成金には「併給調整」というルールがあり、同じ取り組みで複数の助成金を受給できない仕組みになっています。
厚生労働省が公表している併給調整の最新の資料はやや古く、
現在の「人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)」ではなく
「キャリアアップ助成金(人材育成コース)」
の併給調整について記載されています。
それによれば、トライアル雇用助成金の併給調整は可能となっています。
人材開発支援助成金の特別育成訓練コースは、キャリアアップ助成金の人材育成コースが統合されたものですから、現在もトライアル雇用助成金との併給が可能と考えて良いでしょう。
上記の通り、特別育成訓練コースによる助成金は、訓練後に常用雇用に切り替えるかどうかに関わらず、受給することが可能です。
したがって、トライアル雇用助成金と特別育成訓練コースを併用することにより、
- 訓練後に適性を見いだせずに常用雇用に切り替えられず、トライアル雇用助成金を受給できなかったとしても、訓練に伴う賃金助成や経費助成は受給することができ、訓練による負担は大幅に軽減される
- 訓練によって適性を見出し、トライアル雇用後に常用雇用に切り替えられることが増え、トライアル雇用助成金を受給できる可能性が高まる
というメリットが得られます。
これにより、人材確保が容易になるだけではなく、人材確保につながらなかった場合にも無駄な出費を極力減らせるのですから、トライアル雇用助成金と特別育成訓練コースの併用は大いにメリットがあると言えるでしょう。


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キャリアアップ助成金との併用
もっとも、トライアル雇用助成金よりもキャリアアップ助成金の正社員化コース(以下、正社員化コース)と併用するほうがおすすめです。
こちらも、キャリアアップ助成金の人材育成コースと正社員化コースは併給可能となっているため、組み合わせて利用できます。
正社員化コースは、有期契約から無期雇用あるいは正規雇用へ転換、無期雇用から正規雇用へ転換した場合に、以下のような助成金を受給できる制度です。
基本的な支給額 | 生産性が6%向上している場合 | |
有期契約から正規雇用へ転換 | 1人当たり57万円 | 1人当たり72万円 |
有期契約から無期雇用へ転換 | 1人当たり28.5万円 | 1人当たり36万円 |
無期雇用から正規雇用へ転換 | 1人当たり28.5万円 | 1人当たり36万円 |
(※すべての転換を合わせて、1年度1事業所当たり支給申請上限人数は20人まで)
特別育成訓練コースと正社員化コースの併用によって、訓練後に常用雇用に転換できる可能性が高まること、転換によっても助成金を受給できるというメリットがあります。
有期契約として雇用した人材に訓練を実施し、その後に転換するのですから、トライアル雇用助成金よりも多額の助成金を受給できることが分かります。
トライアル雇用助成金との使い分けは?
では、トライアル雇用助成金よりも正社員化コースを使うべきかと言えば、一概にそうとも言い切れません。
トライアル雇用助成金では、トライアル雇用期間が3ヶ月だけであり、その期間を終えて常用雇用に切り替えれば、助成金の支給を申請できます。
一方、正社員化コースでは転換の前提として6ヶ月以上の継続雇用が必要となり、なおかつ転換後に6ヶ月間の賃金を支払うことで、初めて助成金の支給を申請できます。
このように、トライアル雇用助成金と正社員化コースでは、助成金を受給するまでの期間に大きな違いがあるのです。
そのため、資金繰りが厳しい会社では、短期間で受給できるトライアル雇用助成金を利用したほうが良い場合もあります。
正規雇用をしたいなら正社員化コースを
しかし、正社員化コースとの併用によって、受給金額は大幅に増えるため、資金繰りや時間に余裕がある会社では、ぜひとも正社員化コースとの併用を考えるべきです。
特に、正規雇用の従業員を増やしたいと考えている会社では、正社員化コースと併用したほうがメリットは大きくなります。
有期契約から正規雇用へと転換した場合には、基本支給額が57万円(生産性要件を満たしている場合には72万円)となります。
さらに、特別育成訓練コースでは、訓練後に正規雇用に転換した場合に経費助成を増額しているため、特別育成訓練コースでの受給額も増えます。
したがって、正規雇用を前提にジョブ・カードの活用と訓練に取り組む会社では、有期契約で6ヶ月にわたって雇用した後、正規雇用に転換することでたくさんの助成金を受給することをおすすめします。


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まとめ
本稿で紹介した通り、
一つの取り組みに対して、複数の助成金を併給できる場合があります。
厚生労働省では、できるだけ多くの会社に助成金がいきわたるよう、併給を認めていないケースが多いものの、併給可能な場合もしばしばあるため、それをうまく活用していくことによって助成金の活用を加速させることが大切です。
したがって、採用活動に悩んでいる会社では、ジョブ・カード制度を活用して人材開発支援助成金を受給しつつ訓練を実施し、なおかつトライアル雇用助成金やキャリアアップ助成金の正社員化コースでも受給するのがおすすめです。
社労士とも相談しながら、自社にとってベストな組み合わせを選んでみてください。