キャリアアップ助成金には、複数のコースが設けられており、コースによって取り組みや助成額が異なります。
色々なコースがあるからこそ、自社に最も効果的なコースをしっかりと選び、経営に役立てていくことが重要です。
本稿では、キャリアアップ助成金の中でも特に取り組みやすく、少ない負担でまとまった助成金を受給できるものとして、諸手当制度共通化コースを紹介していきます。
同一労働同一賃金を目指す
働き方改革の合言葉の一つに、「同一労働同一賃金」というものがあります。
これは、非正規雇用の待遇が正規雇用と同一になるように取り組んでいく動きのことです。
非正規雇用の待遇を正規雇用と一致させるためには、非正規から正規へと転換するのが一番です。

これを目指している助成金が、キャリアアップ助成金の正社員化コースよ。
もちろん、会社では資金繰りとの兼ね合いを考えて、あえて非正規で雇用しているのですから、全ての非正規雇用を正規雇用に転換することは不可能です。
また、正規雇用と同水準の能力や責任などを非正規雇用に求めることも困難ですから、完全な同一労働同一賃金を実現することは困難でしょう。
そこで、同一にならないまでも、非正規雇用と正規雇用との待遇差をできるだけ埋めるように、キャリアアップ助成金では様々なコースが設けられています。
例えば、
- 正社員化コース→有期契約から無期雇用への転換で助成金を受給できる
- 賃金規定等改定コース→賃金規定を改定し、非正規労働者の賃金を増額した場合に助成金を受給できる
- 健康診断制度コース→健康診断を受けさせる義務がない非正規労働者でも、健康診断を受けられるようにした場合に助成金を受給できる
- 賃金規定等共通化コース→賃金規定を改定し、正規労働者と非正規労働者が同じ職務をこなした時、共通の基準で手当を支給した場合に助成金を受給できる
- 諸手当制度共通化コース→諸手当制度を設け、非正規労働者と正規労働者の手当を共通化した場合に助成金を受給できる
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース→社会保険の適用拡大により、非正規労働者を被保険者とした場合に助成金を受給できる
- 短時間労働者労働時間延長コース→短時間労働者の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成金を受給できる
などのコースがあるのです。
これを見れば、働き方改革で「同一労働同一賃金」を目指している様子が分かると思います。

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諸手当制度共通化コースを学ぼう
色々なコースがあるため、どれを使うのがベストであるか、悩む会社も多いと思います。
社労士などの専門家と相談しながら選ぶことをおすすめしますが、本稿で紹介する「諸手当制度共通化コース」は、多くの会社で使いやすい制度となっています。
上記の通り、このコースでは、諸手当制度を共通化することで助成金を受給することができます。
手当には色々なものがありますが、非正規労働者でも受けられる手当制度を充実させることで、従業員の満足度が大きく高まったり、求人への応募が集まりやすくなったりすることにつながります。
正社員化コースや賃金規定改定コース、短時間労働者労働時間延長コースなど、待遇改善につながるコースは他にもあります。
これらのコースと比べて、諸手当制度共通化コースは手当を一部共通化することによって受給要件を満たすことも可能であり、小さな負担でまとまった助成金を受給できることも多いです。
受給までの流れ
受給までの流れは、以下の通りです。
1、キャリアアップ計画の作成・提出
まず、諸手当制度を共通化する日までにキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長に提出して認定を受ける必要があります。
これは、キャリアアップ助成金のすべてのコースで共通する流れです。
もちろん、諸手当制度共通化コースのためのキャリアアップ計画書ですから、計画書の中には導入する諸手当制度の内容を明記する必要があります。
2、諸手当制度の共通化の実施
諸手当制度を共通化し、実施します。この時、対象となる労働者には、共通化後の雇用契約書や労働条件通知書を交付する必要があります。
共通化の実施にあたって注意したいのは、共通化によって、労働者の賃金が実際にどうなったかということです。
共通化した諸手当制度の適用を受けたすべての労働者が、共通化前の賃金と比べて減額されていると、助成金の支給を受けることはできません。
3、諸手当制度共通化後の賃金に基づき、6ヶ月間にわたって賃金を支給
共通化を実施した後、賃金を6ヶ月間にわたって支給することで、助成金の受給要件を満たすことができます。6ヶ月分の賃金を支給した翌日から起算して、2ヶ月以内が支給申請期間となります。
この2ヶ月間のうちに申請しなければ、せっかく受給要件を満たしていても受給できなくなるので、注意が必要です。
4、審査・受給
支給申請を受理した労働局は審査に入り、受給要件を間違いなく満たしているかどうかをチェックします。審査の込み具合にもよりますが、おおむね2~6ヶ月程度で審査が完了します。
審査が終わると、支給決定通知が送付され、約2週間後に助成金が振り込まれます。
対象となる手当一覧
手当には色々なものがあり、事業内容によっては特殊な手当を支給している会社もあると思います。
しかし、諸手当制度共通化コースで助成金の受給対象となる手当は、以下のものに限られています。
手当ならば、なんでも共通化すれば助成対象になるわけではなく、その点には注意が必要です。
- 賞与(いわゆるボーナス。労働者の勤務成績に応じて定期または臨時に支給される手当)
- 役職手当(管理職等、管理・監督ないしこれに準ずる職制上の責任のある労働者に対し、役割や責任の重さ等に応じて支給される手当)
- 特殊作業手当・特殊勤務手当(著しく危険、不快、不健康または困難な勤務その他の著しく特殊な勤務に従事する労働者に対し、その勤務の特殊性に応じて支給される手当)
- 精皆勤手当(労働者の出勤奨励を目的として、事業主が決めた出勤成績を満たしている場合に支給される手当)
- 食事手当(勤務時間内における食費支出を補助することを目的として支給される手当)
- 単身赴任手当(勤務する事業所の異動、住居の移転、父母の疾病その他やむを得ない事情により、同居していた扶養親族と別居することとなった労働者に対し、異動前の住居または事業所と異動後の住居または事業所との間の距離等に応じて支給される手当)
- 地域手当(複数の地域に事業所を有する場合に、特定地域に所在する事業所に勤務する労働者に対し、勤務地の物価や生活様式の地域差等に応じて支給される手当)
- 家族手当(扶養親族のある労働者に対して、扶養親族の続柄や人数等に応じて支給される手当。扶養している子どもの数や教育に要する費用に応じて支給される子女教育手当を含む)
- 住宅手当(自ら居住するための住宅または単身赴任する者で扶養親族が居住するための住宅を借り受けまたは所有している労働者に対し、支払っている家賃等に応じて支給される手当)
- 時間外労働手当(労働者に対して、法定労働時間を超えた労働時間に対する割増賃金として支給される手当)
- 深夜・休日労働手当(労働者に対して、午後10時から午前5時までの労働に対する割増賃金として支給される手当または休日の労働に対する割増賃金として支給される手当)
受給要件を満たす金額
共通化する手当によって、受給要件を満たすための支給額が異なります。
まず、賞与を共通化する場合には、6ヶ月分相当として5万円以上を支給する必要があります。
次に
- 役職手当
- 特殊作業手当・特殊勤務手当
- 精皆勤手当
- 食事手当
- 単身赴任手当
- 地域手当
- 家族手当
- 住居手当
については、1ヶ月分相当として1つの手当につき3000円以上を支給する必要があります。
時間外労働手当、深夜・休日労働手当については、割増率を法定割合の下限に5%以上加算して支給することが要件です。
手当を共通化したものの、支給額において要件を満たしておらず受給できなかった、ということがないよう注意しましょう。

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助成金の支給額
諸手当制度共通化コースは、1事業所あたり1回のみ受給が可能となっています。
正社員化コースのように、「1年度につき○回まで」といったものではなく、繰り返し利用することはできません。
諸手当制度を共通化した会社は、1事業所あたり38万円の基本支給を受けることができ、生産性要件を満たしている場合には48万円の支給を受けることができます。
共通化する手当が1つでも、受給要件を満たしている場合には、38~48万円の受給を受けることができます。
また、複数の手当を共通化した場合には、2つ目以降の手当について、1つ当たり16万円(生産性要件を満たしている場合には19.2万円)の加算を受けることができます。
さらに、共通化した1つ目の手当を支給する労働者が2人以上いる場合には、2人目以降の1人につき1.5万円(生産性要件を満たしている場合には1.8万円)の加算を受けることができます。
受給額のシミュレーション
受給額の説明をしましたが、他のコースに比べて複雑であるため、あまりピンとこない人も多いと思います。

そこで、具体的なシミュレーションをしてみよう(生産性要件は考慮しません)。
まず、1つ目に食事手当、2つ目に住宅手当、3つ目に家族手当の計3つの手当を共通化したとします。
このとき、1つ目の食事手当の共通化により、38万円の助成金が支給されます。
次に、2つ目以降の住宅手当・家族手当の共通化によって、1つにつき16万円、計32万円の助成金が支給されます。
さらに、共通化された手当の支給を受ける従業員が、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんの4人おり、
- 1人目(Aさん)→食事手当、住宅手当、家族手当の全ての対象
- 2人目(Bさん)→住宅手当、家族手当の対象
- 3人目(Cさん)→食事手当の対象
- 4人目(Dさん)→食事手当、家族手当の対象
であった場合、まず1人目のAさんは共通化した1つ目の手当(食事手当)が支払われた1人目の労働者であるため、加算の対象にはなりません。
2人目のBさんは、共通化した1つ目の手当が支払われていないため加算対象外、CさんとDさんは共通化した1つ目の手当が支払われているため加算対象となります。
したがって、2人目以降の対象労働者による加算は、Cさん・Dさんの2人を対象に、1人当たり1.5万円、計3万円の助成金が支給されます。
以上の全てを合計すると、
が助成金の支給総額となります。

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共通化する手当をしっかり選ぼう
受給額のシミュレーションからもわかる通り、諸手当制度共通化コースの受給総額は、共通化する手当がいくつであるか、対象となる労働者が何人であるかによって変わってきます。
このため、受給額を最大化するためには、共通化する手当をしっかり選ぶことが大切です。
上記のシミュレーションで考えるならば、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんら4人が支給を受ける手当は、
- 食事手当→3人
- 住宅手当→2人
- 家族手当→3人
となっています。
もし、支給対象の少ない住宅手当を共通化する1つ目の手当とすれば、食事手当を1つ目の手当とした場合よりも受給額が減ってしまいます。
この例では、大きな違いが表れていないものの、手当によって対象労働者が大きく異なる場合には、共通化する1つ目の手当を慎重に選んでいくこと大切です。
また、複数の手当を共通化することによって、受給額を大きく伸ばすことができますが、なんでもかんでも共通化すればよいわけではありません。
加算の対象となるのは、諸手当制度共通化後、最初の手当を支給してから6ヶ月の間に支給された手当のみに限られます。
このため、無理にたくさんの共通化を実施すると、6ヶ月間で多額の手当を支給しなければ加算を受けられなくなり、資金繰りに大きな負担となります。
また、多額の支給に耐えられず、共通化したものの支給が間に合わず加算を受けられなかった場合にも、共通化された諸手当制度は残ることになります。
助成金の加算は受けられず、支給する手当だけが増えてしまう結果になりかねないのです。
助成金の受給額を無理のない範囲で最大化するためにも、社労士などとしっかり相談しながら取り組むようにしましょう。

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まとめ
諸手当制度共通化コースは、1つでも手当を共通化すれば助成金を受給できる可能性があるため、キャリアアップ助成金の中でも特に取り組みやすいものと言えます。
ただし、諸手当制度共通化コースを受給できるのは、1事業所につき1回限りですから、手当を1つだけ共通化して助成を受けるのは、もったいないとも言えます。

受給額の計算がやや複雑ですから、社労士と相談しながら、無理のない範囲で受給額を最大化するよう、取り組んでみよう!
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