働き方改革が推進されたことにより、企業は様々な変化を求められています。
この変化に消極的に対応する会社と、積極的に対応する会社とでは、大きな差が出てくることでしょう。
積極的に対応する会社では、助成金制度による支援を受けることもできます。
特に、働き方改革の進み具合によって新設されたり、拡充されたりする助成金は条件が良いため、活用を検討すべきものです。
本稿では、働き方改革によって中小企業が受ける影響と、その影響を緩和するために利用すべき助成金制度について解説していきます。
働き方改革と経営への影響
働き方改革の推進により、企業を取り巻く環境は変化しています。
政府主導で働き方改革に取り組み、労働環境の整備を進めています。
これにより、働き方改革関連法案も誕生し、すでに実施されたものもあります。

働き方改革関連法案により、すでに中小企業に対して施行されているもの、また今後施行が予定されているものをまとめると、以下のようになるわよ。
すでに施行されているもの
2019年4月1日より、以下の項目が施行されています。
- 年次有給休暇の付与の義務化
- 労働時間状況の客観的な把握
- 勤務時間インターバル制度の導入促進
- フレックスタイム制の拡充
- 高度プロフェッショナル制度の導入
今後施行されるもの
今後施行が予定されている項目とスケジュールは、以下の通りです。
【2020年4月1日施行予定】
- 時間外労働の上限規制
【2021年4月1日施行予定】
- 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
【2023年4月1日施行予定】
- 月60時間超の残業に対する割増賃金率の引き上げ
【2024年4月1日施行予定】
- 時間外労働時間の上限規制(自動車運転業務、建設事業、医師)
負担への対応が明暗を分ける
以上のように進められている働き方改革によって、労働環境が整備され、労働者にとって安心して働けるようになっていきます。
良い環境と待遇で働くことができれば、心身ともに健康的に働けるようになり、職場への定着率も向上し、生産人口の減少を食い止めることができます。
企業にとっては、労働者の待遇を改善し、なおかつたくさんの規制を受けながら経営していくこととなり、様々な負担を強いられます。

この負担にどう対応していくかによって、今後うまく経営していける会社、伸び悩む会社、行き詰る会社などがはっきり分かれてくるだろう。
政府も、中小企業にとって大きな負担になることを考慮して、負担軽減のために助成金を支給するなどして対応しています。
この助成金が、負担軽減のカギとなります。

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働き方改革と助成金
働き方改革が推進されている今、改革による影響を緩和するためにも、助成金制度の充実・拡充が図られています。

このようなタイミングだからこそ、より積極的な活用を検討すべきだよ。
助成金を受給すれば、単純に金銭的負担を軽減するだけではなく、政府から取り組みを認められたことにもなるため、会社の信用を向上させることにもつながります。
働き方改革に関する助成金のうち、代表的なものは、
- 時間外労働等改善助成金
- 業務改善助成金
- キャリアアップ助成金
の3つが挙げられます。
時間外労働等改善助成金
上記の通り、2020年4月1日から、時間外労働の上限規制が施行されます。
すでに大企業では、2019年4月1日から施行されており、原則的に月45時間、年360時間が上限となります。
この上限規制により、これまでのように時間外労働に頼った経営ができなくなります。
時間外労働等改善助成金は、時間外労働の削減を迫られる中小企業に対して、業務効率化による対応を促すためのものです。
時間外労働等改善助成金には、
- 時間外労働上限設定コース
- 勤務時間インターバルコース
- 職場意識改善コース
- 団体推進コース
- テレワークコース
の5つのコースが設けられており、業務効率化に要した経費の一部を、助成金によってカバーすることができます。
※時間外労働等改善助成金について、詳しい説明については、以下の記事を参考にしてください。
(法改正で時間外労働の上限規制へ。具体的にはどんな内容?使える助成金は?)
業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業の生産性向上を支援するための助成金です。
設備投資やサービスの利用などを通して、生産性を向上することにより、事業所の最低賃金を引き上げた場合に経費の一部を助成するものです。

働き方改革の一環として、最低賃金の引き上げが毎年のように行われているわ。
業績や財務などが変わらない状態でで、最低賃金の引き上げに対応していけば、徐々に人件費負担が重くなり、経営を圧迫されてしまいます。
これに対応するためには、生産性の向上によって、最低賃金の上昇分を吸収することを考えるべきです。
そのような取り組みにあたり、業務改善助成金を利用することができます。
※業務改善助成金について、詳しい説明については、以下の記事を参考にしてください。
(最低賃金を上げるときに使える業務改善助成金とは?)
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、働き方改革に伴って新設されたものではなく、長きにわたって実施されてきた助成金です。
主に、非正規労働者の待遇を、正社員化や賃金増額などによって改善していくことを目指しており、そのような取り組みの際に、助成金を受給することができます。
キャリアアップ助成金は、多くの会社にとって活用しやすいものであり、労働力の確保や、労働者の意欲の向上・生産性の向上などにもつながるため、ぜひとも活用してほしいものです。

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キャリアアップ助成金の拡充に注目
上記の助成金の中でも、働き方改革の推進に伴って拡充されたキャリアアップ助成金は要チェックです。
2019年4月1日から、キャリアアップ助成金の7つのコースのうち、選択的適用拡大導入時処遇改善コースと、短時間労働者労働時間延長コースが拡充されています。
この拡充は、働き方改革の推進の結果、現段階において好ましい支援をするために、拡充されているものです。

あくまでも一時的な拡充とされているため、条件にマッチする会社は、先延ばしすることなく活用に取り組み、支援を最大化することが大切だ。
それぞれのコースの変更された内容は、以下の通りです。

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選択的適用拡大導入時処遇改善コースの変更点
選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、社会保険を適用する範囲を拡大し、有期契約労働者を新たに社会保険に加入させ、なおかつ収入が減らないように賃金を増額した会社に、助成金を支給するコースです。
基本給を増額した割合に応じて、助成金額は変化します。
今年度の拡充によって、対象労働者1人当たりの助成金額は以下のように変更されています。
基本給の増額の割合 | 拡充前の助成金額 | 拡充後の助成金額 | 増額の金額 |
3%以上5%未満 | 1.9万円〈2.4万円〉 | 2.9万円〈3.6万円〉 | 1万円〈1.2万円〉 |
5%以上7%未満 | 3.8万円〈4.8万円〉 | 4.7万円〈6万円〉 | 0.9万円〈1.2万円〉 |
7%以上10%未満 | 4.75万円〈6万円〉 | 6.6万円〈8.3万円〉 | 1.85万円〈2.3万円〉 |
10%以上14%未満 | 7.6万円〈9.6万円〉 | 9.4万円〈11.9万円〉 | 1.8万円〈2.3万円〉 |
14%以上 | 9.5万円〈12万円〉 | 13.2万円〈16.6万円〉 | 3.7万円〈4.6万円〉 |
※〈〉は生産性要件を満たした場合。
この表を見ればわかる通り、全ての増額割合において支給額がアップしていることが分かります。
さらに、支給の上限人数も拡充されています。
選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、1事業所当たり1回のみの支給となっています。
拡充前の支給申請上限人数は30人でしたが、拡充後には45人に増えています。
以上の変更の結果、拡充前は最大(30人に対して14%以上増額し、生産性要件も満たした場合)で360万円であったものが、拡充後には最大(45人に対して14%以上増額し、生産性要件も満たした場合)で747万円の受給が可能となります。
このように、場合によっては2倍以上の助成金を受給できるのです。
なお、この拡充は2020年3月31日までの暫定措置となっています。
選択的適用拡大導入時処遇改善コースを利用したいと考えている会社は、今年度がチャンスとなるでしょう。
短時間労働者労働時間延長コースの変更点
短時間労働者労働時間延長コースは、有期契約の短時間労働者の週所定労働時間を延長したときに助成金を受給できるものです。
受給要件には2パターンあり、
- 週所定労働時間を5時間以上延長する
- 賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースのいずれかを実施したうえで、週所定労働時間を1時間以上5時間未満延長し、なおかつ新たに社会保険に加入させる
となっています。
新規に雇用することなく、すでに雇用している短時間労働者の労働時間を伸ばすことによって助成金を受給できるため、労働力不足に悩んでいる会社が活用すべき助成金と言えます。
今年度の拡充により、対象労働者1人当たりの助成金額は、以下のように変更されています。
週所定労働時間延長時間 | 拡充前の助成金額 | 拡充後の助成金額 | 増額の金額 |
1時間以上2時間未満 | 3.8万円〈4.8万円〉 | 4.5万円〈5.7万円〉 | 0.7万円〈0.9万円〉 |
2時間以上3時間未満 | 7.6万円〈9.6万円〉 | 9万円〈11.4万円〉 | 1.4万円〈1.8万円〉 |
3時間以上4時間未満 | 11.4万円〈14.4万円〉 | 13.5万円〈17万円〉 | 2.1万円〈2.6万円〉 |
4時間以上5時間未満 | 15.2万円〈19.2万円〉 | 18万円〈22.7万円〉 | 2.8万円〈3.5万円〉 |
5時間以上 | 19万円〈24万円〉 | 22.5万円〈28.4万円〉 | 3.5万円〈4.4万円〉 |
※〈〉は生産性要件を満たした場合。
短時間労働者労働時間延長コースでも、すべての場合で支給額が増額されていることが分かります。
さらに注目すべきことは、1事業所当たりの支給申請の上限人数が、拡充前は15人であったところ、拡充後には45人となっていることです。
選択的適用拡大導入時処遇改善コースよりも、大幅に上限人数が拡充していることが分かります。
以上の変更の結果、拡充前は最大(15人に対して5時間以上延長し、生産性要件も満たした場合)で360万円であったものが、拡充後には最大(45人に対して5時間以上延長し、生産性要件も満たした場合)で1278万円の受給が可能となります。
この場合、拡充によって最大の受給額が3.5倍以上になっているのですから、今年度に利用することで得られるメリットは非常に大きいと言えます。
短時間労働者労働時間延長コースも、2020年3月31日までの暫定措置となっています。
したがって、条件にマッチしている会社では、今年度の利用を積極的に検討すべきです。

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まとめ
本稿で解説した通り、働き方改革は着実に進められており、企業では様々な変化が必要となっています。
消極的に対応するだけでは、従業員にメリットがあっても経営には大きな負担となってしまいます。
そのため、助成金を活用しながら、積極的に対応していくことによって、経営にもメリットが得られるように取り組んでいくべきです。
特に、働き方改革の進み具合に応じて、新設や変更が加えられる助成金には注目しておきましょう。

うまく活用することで、通常よりも大きなメリットが得られることがあるよ。
今年度拡充措置となった、キャリアアップ助成金の選択的適用拡大導入時処遇改善コースや短時間労働者労働時間延長コースの利用も、検討してみることをおすすめします。
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