一定以上の規模の会社では、障害者を雇用する義務があります。
また、障害者を雇用したならば、その障害者に合理的な配慮をする義務もあります。
合理的な配慮と聞けば、負担が大きい取り組みに聞えるかもしれませんが、そんなことはありません。
障害者が働きやすいように、勤務時間や休暇を工夫するだけでも、立派な配慮となります。
そして、そのような配慮に取り組むことで、助成金を受給することも可能です。
本稿では、合理的な配慮の考え方と、それによって受給できる助成金について解説していきます。
障害者雇用と合理的な配慮
障害者人口が増え続けている昨今、これまでは障害者雇用とあまり関係のなかった会社でも、障害者雇用と関わる機会が増えてきています。
障害者と企業の関係においては、企業が負っている義務には色々なものがあります。
その代表的なものは、
- 障害者の雇用義務
- 障害者への合理的な配慮の義務
です。
障害者の雇用義務
障害者の雇用義務については、当サイトの他の記事
で詳しく解説しているため、ここでは簡単な解説に留めます。
障害者雇用促進法という法律では、法定雇用率を2.2%と定め、企業に障害者雇用義務を課しています。
つまり、常用労働者数が46人以上の会社では、障害者を1人雇用する義務があるのです(46人×2.2%=1.012人)。
また、法定雇用率は2021年から2.3%に引き上げが決まっており、その場合には常用労働者44人から雇用義務が発生します。
これは努力義務ですが、常用労働者が100人超の会社では、努力義務を果たしていない場合に毎月納付金の徴収を受けます。
また、雇用計画の改善指導を受けたり、改善努力が見られない場合には社名を公表されたりといったペナルティも受けるため、努力義務はしっかりと果たしていきたいものです。
障害者への合理的な配慮の義務
また、障害者を雇用した会社では、障害者の合理的な配慮に取り組む義務を負います。
これは、障害者に適切な配慮がなされず、雇用環境が悪くなることを防ぐための義務です。
「合理的な配慮」といえば非常に漠然としていますが、これは障害者の特性によって必要な配慮が異なるためです。
一口に障害者といっても、個々人で抱えている問題は異なります。
したがって、それぞれの問題に合わせた配慮として、
- 読み書きが困難な障害者のために、音声読み上げソフトを導入する
- 歩行が困難な障害者のために、スロープを設置する
- ストレスへの耐性がない障害者のために、休憩時間を多めに設定する
- 普通の指示では理解ができない障害者のために、イラストを用いたマニュアルを作る
といった配慮に取り組む必要があるのです。
障害者は、このような合理的な配慮を受けられることを、障害者権利条約で保証されています。
それに伴って、企業に対して合理的配慮提供義務も課せられるようになっているのです。

障害者の雇用って、ただ雇用すればいいだけじゃないのね。
合理的配慮は努力義務
合理的な配慮に取り組むことは、企業の努力義務とされています。
障害者に対して差別的扱いをする、例えば障害を理由に待遇に差をつけるなどの扱いは禁止されていますが、合理的な配慮はあくまでも努力義務であり、「必ず配慮するよう努力しなければならない」ものの、「必ず配慮しなければならない」というものではありません。
したがって、合理的な配慮に取り組んでいない会社が、何らかの罰則を受けることはありません。
特に、配慮が会社にとってあまりにも大きな負担になるような場合には、配慮の実施を断ることができます。
しかし、努力もしていないならば、努力義務を果たしていないこととなり、問題が生じます。例えば、
・配慮の必要が明確であるにもかかわらず、なんら対処する姿勢がない
といった場合には、努力義務を果たしていないと言えるでしょう。
したがって、努力義務とはいえども、やはり企業は配慮に取り組んでいくことになります。

努力義務を正しく理解しよう。
障害者を雇用すれば、適切な配慮に努める義務があるのだ。

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合理的な配慮に取り組むメリット
合理的な配慮を提供する義務があることから、障害者雇用を負担に感じる経営者もいます。
しかし、合理的な配慮にしっかりと取り組むことで、会社には色々なメリットがあります。
むしろ、合理的な配慮に消極的だからこそ、障害者雇用の負担が増大し、悩みになってしまうのです。
合理的な配慮に取り組むメリットには、以下のようなものがあります。
障害者が定着する
合理的な配慮によって働きやすくなれば、障害者は職場に定着しやすくなります。
つまり、障害者の離職と雇用、雇用に伴う配慮などを繰り返す必要がなくなり、障害者雇用による負担が軽減されます。
生産性が向上する
合理的な配慮によって障害者が職場に定着すれば、会社は特定の障害者に集中して配慮することができ、配慮の質が向上し、一般の従業員からの理解も深まり、障害者はますます働きやすくなっていきます。
雇用した障害者の適性も見極めることができ、適した業務を与えることで、障害者のモチベーションにもつながり、障害者の従事する業務の生産性もアップします。
実際に、複雑な業務は困難であるものの、単純作業に高い集中力を発揮する障害者に検品作業をさせたことで、健常者が検品するよりも不良品の出荷個数が大幅に減少したなどの事例があります。
障害者雇用がスムーズになる
合理的な配慮に努め、障害者との向き合い方を会社全体で考えていくことで、障害者雇用がスムーズになります。
障害者が離職したり、業容拡大によって雇用義務が増えたりした場合には、新たに障害者雇用に取り組む必要があります。
その際、これまで配慮に取り組んできた経験を活かすことで、職場への定着や生産性への貢献を促すことも容易になります。
助成金の受給がスムーズになる
障害者雇用に伴って、様々な助成金を利用することができます。
しかし、これらの助成金は、雇用期間によって段階的に支給されるものが多く、障害者の雇用期間によって受給額が大きく異なります。
つまり、障害者雇用に取り組み、助成金を活用していくためには、障害者が職場に定着し、長く働いてくれることがカギとなるのです。
したがって、助成金をたくさん受給して負担を軽減するためにも、合理的な配慮が欠かせません。

合理的な配慮で得られるメリットは多いのだから、努力義務にしっかり取り組んで損はないぞ!

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合理的な配慮でもらえる助成金
合理的な配慮に取り組む会社では、配慮に取り組むことそのものによっても、助成金を受給することができます。
障害者雇用関連の助成金の一つに、障害者雇用安定助成金というものがあります。
この助成金のコースのうち「障害者職場定着支援コース」では、合理的な配慮によって助成金を受給できるのです。
合理的な配慮の第一歩は?
初めて障害者雇用に取り組む会社では、合理的な配慮といっても具体的に何をすればよいか、よくわからないかもしれません。
そのような会社は、障害者職場定着支援コースで助成金の支給対象となっている措置のうち、「柔軟な時間管理・休暇取得」に取り組むのがおすすめです。
雇用した障害者に必要な配慮が分からなければ、まずは障害者と面談し、希望を聞くのが一番です。
本人との面談が困難であれば、保護者との面談でも構いません。
この面談によって、障害者から求められることが多い配慮と言えば、
- 勤務時間の配慮
- 勤務地の配慮
- 休暇の配慮
の三つです。
勤務時間の配慮
まず、勤務時間の配慮を求められることが多いです。
例えば、障害特性によっては、一般の従業員と同じ勤務時間での勤務が難しい場合があります。
厚生労働省のデータによれば、週所定労働時間の長い障害者(長時間勤務が可能な障害特性)は、
の順となっています。
また、
- 身体障害者は長時間の勤務に適している場合が多い
- 知的障害者は短時間の勤務に適している場合が多い
- 精神障害者は長時間の勤務に適している場合が多い一方で、短時間の勤務に適していない場合も多い
などの傾向も見られます。
したがって、障害者の特性に応じて、勤務時間を短く設定したり、休憩時間を多くしたりすることが、配慮につながります。
勤務地の配慮
勤務地への配慮も重要です。
勤務地が遠い場合、障害を理由に通勤が困難になることが少なくありません。
身体障害者の中には、移動に伴う体力的な負担に耐えられない場合があります。
また、精神障害者の中には、通勤時のストレスに耐えられないこともあるでしょう。
そのような場合には、雇用する障害者の負担が軽減されるように勤務地を変更することが配慮となります。
例えば、勤務地Aよりも勤務地Bの方が負担が軽いならば、勤務地Bで働けるようにするのです。

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休暇の配慮
休暇の配慮とは、通院や入院のための休暇に配慮することです。
就業規則には、有給休暇についても定めがあると思います。
しかし、障害者への配慮では、通院や入院のために通常の有給休暇制度を適用するのではなく、障害者の通院や入院のための特別な有給休暇制度を適用する必要があります。
障害の特性に応じて、定期的な通院や入院が必要な障害者は多いため、これも大切な配慮と言えます。

合理的な配慮は難しく考えなくていいわ。
できることからやってみて、助成金も受給していこうね。
もらえる助成金は?
以上のような配慮のために、就業規則の変更などを実施した会社では、障害者職場定着支援コースにおける助成金を受給することができます。
受給額は、
を受給することができます。
この助成金には支給申請上限が設けられていないため、くり返し利用することができます。
例えば、
- 最初に雇用した障害者のために就業規則を変更し、勤務時間を柔軟にする
- 次に雇用した障害者のために就業規則を変更し、特別な有給休暇制度を新設する
という取り組みを実施したならば、2回にわたって受給することができます。

障害者ごとに適切な配慮を模索して、受給の機会を掴んでいこう!

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まとめ
障害者を雇用した会社には、合理的な配慮を提供する義務があります。
障害者によって特性は様々であり、特性に応じた配慮も様々です。
障害者ごとに大きく異なる配慮が必要となれば、就業規則などの変更も必要となります。
その都度、障害者職場定着支援コースでの受給を目指していけば、就業規則の変更を社労士に依頼した場合の費用負担も軽減することができ、合理的な配慮へのハードルが大きく下がります。

合理的配慮の提供義務を果たすうえで、必ず活用することをおすすめするよ!
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