業務改善は、従来の業務に様々なポイントで手を加えることで、業務の効率化を図ることです。
業務改善に取り組むことで、業務の流れがスムーズになったり、無駄やミスが少なくなったり、社員の意識やスキルが向上したりすることが期待できます。
それにより、コストや時間、労力などの浪費を防ぐことができます。
売上や利益率が高まったり、売上の回収がスムーズになったりすることで、資金繰りにも良い影響がもたらされます。
しかし、一口に業務改善といっても、実際の取り組みはなかなか複雑なもので、どのように取り組むべきか分からない場合も多いでしょう。
そこで本稿では、業務改善の第一歩として、改善点と方針を特定する方法を解説していきます。
業務の改善ポイントを見つけよう
業務改善に取り組むにあたって、まず躓くのが「何を、どのように改善すればいいのか分からない」ということです。
ここでしっかりと改善ポイントを見つけることができなければ、効果がない、あるいは効果が少ない点について改善を試みてしまう可能性もあります。
その結果、業務を改善するつもりが、却って無駄な時間や労力やコストをかけてしまうことになります。
場合によっては、闇雲に改善しようとした結果、改善どころか改悪になってしまう可能性もあります。
そうならないためにも、以下のような観点と手順によって、業務の改善ポイントを明らかにする必要があります。
まずは業務全体を階層的に把握する
最初に取り組むべきは、業務を正確に把握することです。
業務を把握してこそ、改善点を考えることもできます。
業務といっても色々な業務があり、それぞれにかけるべきコスト・時間・労力なども様々です。
会社の業務の中でも、大きなものを挙げれば「人事」とか「経理」とかいった業務があるでしょうし、小さなものを挙げれば「社員教育」「人員配置」「節税対策」などが挙げられるでしょう。
もっと小さな業務では「売掛金回収」「在庫管理」といった業務も考えられます。
もっともっと小さなレベルで考えると、「製造工程におけるAからBに至る動作」といった考え方もできます。

このため、業務改善を考えるにあたり、大きさの異なるそれぞれの業務を一緒くたに考えてしまうと、業務改善はうまくいかなくなります。
期待できる効果がバラバラであるにもかかわらず、優先順位を考えずに取り組めば業務改善効率は下がってしまいます。
業務改善に携わる人々の認識にズレが生じる可能性も高く、これも効率低下につながります。
したがって、業務改善に先立ち、それぞれの業務を階層的に分類することから始めるべきです。
つまり、次のように階層的に捉えます。
会社全体の業務>部門全体の業務>部門における個々の業務>個々の業務の流れ>流れの中での動作や意識
このように捉えると、
- どの階層で改善を図るか
- その階層のどの業務で改善を図るか
- その業務の手順に、どのように改善を加えるか
などと考えていくことができます。
業務全体の把握では、階層的な見方を心がけてください。

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業務棚卸表の作成して業務を把握する
しかし、業務全体を階層的に把握しただけでは、改善ポイントを特定することはできません。
業務改善のためには、会社の業務をより深く分析する必要があるのです。
そのためには、全ての業務を漏れなく挙げて、一覧表にまとめましょう。
一覧表にまとめることによって、それぞれの業務にかけられている時間や労力について考えやすくなりますし、それぞれの業務で生じている無駄なども見えてくることが多いです。
業務の整理がつきやすく、的を射た議論もしやすくなります。

棚卸の結果、まとめられた一覧表は「業務棚卸表」と言います。
業務棚卸表の作り方を簡単に説明すると、以下のような流れで作成していきます。
1.大分類を作る
まず、業務を大きな分類で挙げていきます。
例えば、人事に関する業務では、採用計画、人員配置、人件費管理などの業務が大分類となります。
資金繰りに関する業務ならば、資金計画、資金管理、債権管理、債務管理などが大分類となります。
2.中分類を作る
中分類とは、1で挙げた大分類を中程度に細分化するものです。
例えば、採用計画ならば採用方針、採用活動、採用試験、入社手続きなどの中分類となります。
人員配置ならば全般的な人員配置の方針・発令、新人の配置方針、出向管理などが中分類になります。
資金管理ならば現預金の出納、有価証券の管理などが中分類となります。
3.小分類を作る
小分類とは、それぞれの中分類に対して、もっと細かく分類するものです。
中分類に挙げた業務に対し、現場ではどのような小さな業務が行われているのかをまとめていきます。

そのため、現場の作業分担に関する資料を参考にしたり、現場の管理にあたる人にヒアリングしたりすることが大切です。
また、簡易的な業務棚卸表でも問題ないと判断する場合には、大分類と中分類だけの分類でも構いません。
なお、以上の手順で業務の棚卸をする際には、業務の種類についてのみ分類し、一覧表を作るものと考えてください。手
順レベルなどの細かな点は後回しにし、まずは全ての業務の把握に努めましょう。

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業務量を調査して仕事量を定量化する
業務棚卸表を作ったならば、その一覧表をさらに充実させていきます。
そのために、業務量に関する情報を加えていきます。
業務量調査では、その業務にかかる時間をまとめることで、それぞれの業務の仕事量を定量化していきます。
業務量調査では、経験見積もり法という方法を用いることが多いです。
それぞれの業務量は、業務にあたる人や環境によって異なることも多く、100%正確に把握することはできません。

業務棚卸表に書き加えるにあたっては、それぞれの業務にかかる1回あたりの業務量、頻度、年間業務量に分けて書き加えていきます。
1回あたりの時間は、分単位の方が考えやすい小さな業務もあるため、分単位で記載するのが良いでしょう。
かかる時間が毎回異なる業務は、平均時間で記載していきます。
そして、年間の業務量は何時間という書き方が分かりやすいです。
業務の頻度は、日・週・月・年に分けて欄を設け、頻度の高いものは日に何回、週に何回といった書き方、頻度の低いものは月に何回、年に何回といった書き方ができるようにしておきます。
1回あたりの業務量と頻度を掛け合わせると、年間業務量が算出されます。

正社員の年間就業時間は、1800~2200時間が適正とされています。
もし、平均的な数値から大きく乖離しているならば、一覧表の見積もり方がおかしくなっている可能性があります。
もし、正確に見積もったうえで大きく乖離しているならば、別の観点から問題を考えるべきです。
平均値より小さい場合には、待機時間が無駄に生じているなどの理由から、従業員が無駄な時間を過ごしている可能性があります。
逆に、平均値より大きい場合には、業務に無駄が多かったり、業務量と人員数が釣り合っていなかったりすることで、従業員の労働時間が長くなっているのかもしれません。
その場合には、年間業務量を適正値に近づけることも考えながら、業務改善に取り組んでいくべきです。
業務量の大きいものから改善をはじめる
業務量調査の結果、陥りやすい間違いがあります。
それは、業務量の少ない業務ならば簡単に手を加えられるからと言って、手軽さを基準に改善の順番を決めてしまうことです。
確かに、業務量が小さい業務では、業務の手順もそれほど複雑ではないでしょうし、業務に携わる人も少ないでしょうから、改善は加えやすいと思います。
しかし、その業務が必ずしも効果の大きい改善点とは限らないのですから、手軽さを基準に考えるのは間違いです。
効率的に改善を進めるためには、それぞれの業務内容や時間を整理したうえで、優先すべき業務を考えて取り組んでいくべきです。
例外はあるにせよ、改善すべき業務の優先順位を考える時には、むしろ業務量の大きいものほど優先することが多いです。

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業務量が大きいということは、たくさんの時間を費やしているということで、効率化によって時間を削減できる可能性も高いのです。
つまり、業務量が大きいほど改善すべき点も多い傾向があり、改善効果も大きくなることが期待できます。
また、経営と業務量の関係を考えた場合にも、このことは明らかです。
業務量が小さい簡単な仕事は、経営においてそれほど重要ではないことがほとんどです。
もし、小さな業務が経営に多大な貢献をしているならば、その小さな業務を何倍にも増やすことで、経営に飛躍的な効果が現れるでしょうが、そんなうまい話はありません。
普通は、業務量が大きいものほど、経営との関係も深いのです。
業務改善を通して、経営や資金繰りといった広い括りでの改善を目指しているならば、業務量の大きなものから優先的に改善していく必要があるのです。
業務量の上位20%から改善していこう
この考えにより、業務量の大きいものから優先して改善を図ります。
業務棚卸表をもとに、業務量の大きなものから順番に並べていき、各業務が業務全体の何%を占めているかを計算していきます。
パレートの80:20の法則によれば、全体の20%が成果の80%をもたらしていると言われます。
したがって、業務量の大きいものから順番に並べた時、上位20%にあたる業務が、成果の80%をもたらしていると考えられます。
そこで、まずは上位20%にあたる業務から優先的に改善すれば、改善効果も大きくなることが期待できます。

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業務の特定を踏まえて細かい改善方針を決める
ここまでで、改善すべき優先順位が分かりました。
次に、その優先順位に基づいて改善するにあたり、より効果を高めることを考えましょう。
すなわち、改善すべき業務に対して、どのように改善を加えるのが効果的であるのかを考えます。
この時に重要となるのが、改善を加える業務の特性を踏まえた上で、改善を図るということです。
したがって、改善の目星を付けたそれぞれの業務を、特性に応じて以下のように分類しましょう。
- 定型タイプ(決まった作業が繰り返し行われる業務。業務手順の改善が効果的)
- 専門タイプ(専門性の高い業務。担当者のスキルを高めることや、スキルの共有が効果的)
- 部門横断タイプ(複数の部門にまたがって処理される業務。各部門のやり取りを減らすことや、やり取りの際のルールを決めると効果的)
- プロジェクトタイプ(特定のプロジェクトに伴う業務。計画の精度を高めることや、過去の類似プロジェクトの情報を共有すると効果的)
このように、業務の特性に応じて分類することによって、改善の方針や改善に携わる人の範囲なども明確になります。
稼働率を高めて業務改善を
業務特性に応じた改善方針を決めた時点で、業務改善に取り組むべき体制がほとんど整う会社もあります。
しかし、業務改善が求められている会社の中には、次のような会社もあります。
- 社員があまり真面目に取り組んでいない
- 真面目に取り組むための仕組みがあまりにもずさんである
- ↑これによって、社員が無駄な時間を過ごしてしまい、業務効率が低下している
そのような会社は、改善すべき業務の優先順位や業務特性を考えただけでは、十分な業務改善効果は見込めません。
社員の就業時間を100とした場合、100を仕事に費やしているならば、100の時間に対して業務改善を図ることができ、大きな効果が期待できます。
しかし、就業時間のうち70を仕事に費やし、30が無駄に費やされている状態で業務改善を図っても、70の時間で行われる業務に改善が図られるだけで、効果は不十分となります。
このような場合、事前に30の無駄な時間を特定し、対策を講じたうえで業務改善を図る必要があります。
稼働率向上の為にワークサンプリングの実施をする

ワークサンプリングとは、就業時間を100%とした時に、そのうちの何%が稼働時間(価値を生み出してている時間)であり、何%が非稼働時間(価値を生み出していない時間)であるかを分析するものです。
ワークサンプリングにあたっては、まず対象となる職場を決め、サンプルとなる項目を20項目程度書き出します。
細かすぎる項目は除外し、時間を費やしている項目を書き出すのがポイントです。
無駄の多い職場で、時間を費やしている項目を書き出していくと、パソコンへの入力、電話対応、書類のチェックなどの価値を生み出す項目が上がる一方で、雑談、清掃、待機などの価値を生み出さない項目も出てきます。
就業時間100%のうち、各項目が何%を占めているかを算出し、稼働率(価値を生み出している項目の合計)と、非稼働率(価値を生み出していない項目の合計)が明らかとなります。
その結果、非稼働率が大きい場合には、稼働率向上を踏まえた業務改善が必要となります。
また、ワークサンプリングを定期的に行うことで、稼働率の推移を把握しておくと、稼働率の維持や向上を意識し、稼働率の低下を防ぐことにもつながります。
業務改善の効果が高まるため、ぜひ定期的なワークサンプリングを心がけてください。
業態を調査して業務改善を
ただし、ワークサンプリングは万能ではありません。
ワークサンプリングは、稼働率と非稼働率を割り出すことで、時間的な無駄を省くためのものです。
業務における問題点は稼働率だけではなく、効率の問題も考えられます。
もし、稼働率は高かったとしても、業務の取り組み方に無駄が多ければ成果は上がりにくいため、改善の必要があります。
したがって、ワークサンプリングの結果に応じて稼働率を高めると同時に、業務の実態を把握して、業務の手順やタイミングに改善を加えていくことも重要です。

改善の対象となっている業務に取り組む社員に対し、業務の実施状況を時系列で記録してもらい、その日報を調査することで改善を図るのです。
日報調査にあたっては、どのような業務をどのように記載するといった、記載ルールを決める必要があります。
この時、細かい業務を記載するように求めると、煩雑になって分析が困難になるほか、担当社員が日報の記入に時間を奪われてしまいます。
そこで、業務遂行に伴って生じる代表的な作業を、20項目程度を上限として記載するようにします。
例えば、出荷、客先配送、営業活動、返品対応、社内での会議、待機時間など、大きな項目を設定します。
設定されたルールに基づき、担当者は日報を記入していきます。
この時、業務内容が変わるたびに日報に記入していきますが、業務がA→Bと移る時、A→待機→Bという流れになっているならば、きちんと待機時間も記載するように指示してください。
また、ミスへの対応業務を記載する際には、ミスの原因についても書くようにルール化しましょう。
このように作られた日報を分析すると、
- 待機時間が多く発生しているならば、業務の流れを変えたり、別の業務を差し込んだりすることによって、待機時間を減らすようにする
- 返品対応など、ミスをカバーするための無駄が多く生じているならば、ミスを減らすための業務改善を考える
といった考え方が可能となり、業務改善の精度は一層高まります。

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ミスを抑制するという改善
ミスの抑制も、立派な業務改善です。
これについて、もう少し詳しく書いておきたいと思います。
業務改善を計画していくと、それまで見逃していたミスに気付くはずです。
ミスが発生し、そのカバーのために無駄な作業が生じていることは、意外なほどに多いのです。
この場合には、ミスの削減も視野に入れつつ、業務改善を図る必要があります。
いくら稼働率を高めたり、業務手順を工夫したりしても、ミスが減らなければ業務改善の足を引っ張ることになります。
そのためにも、ミスを特定し、その原因を見出し、対策を講じる必要があります。
具体的には、ミスを出発点として、段階的に原因を特定していく、ロジックツリーが有効です。
例えば、経理部門が発行した請求書にミスがあったために、取引先からミスを指摘されたとします。
この時、取引先にお詫びの電話やメールを入れ、再度請求書を作成しなければならず、本来必要のない業務が発生してしまいます。
このようなミスによって、売掛金回収の遅れにつながり、ひいては資金繰りにもマイナスの影響を与えるかもしれません。

請求書に記載ミスがあった時、請求書の作成後、チェックリストで確認しているか?
(確認している場合)
→チェックリストで確認しているならば、なぜミスが生じているのか?
- チェックリストの項目が不足している
- チェックがおざなりになっている
(確認していない場合)
→チェックリストで確認していないのはなぜか?
- そもそもチェックリストで確認する気がない
- チェックリストの確認を忘れていた
このように考えていくと、ミスの原因が特定されやすくなります。
上記の例では、そもそもチェックリストを確認する気がないことや、チェック忘れによるミスは、それほど多くないでしょう。
しかし、チェックリストの項目があまりにも多いとすれば、おざなりなチェックによるミスが生じるかもしれません。
また、チェック項目そのものが不十分という可能性も高いです。
この時のポイントは、ミスの原因として考えられるものを全て挙げ、それぞれの可能性を検討していき、ミスの原因となりやすい部分に改善を図ることです。
そうすることで、効率よくミスを減らしていくことができます。
まとめ
会社の業務を改善するためには、正しい考え方と手順によって、重点的・優先的に改善すべき業務を特定することが大切です。
また、改善すべき業務を特定したならば、どのように改善していくかを考えます。
会社の状況に応じて、業務の手順を改善したり、稼働率を改善したり、ミスを改善したりと、改善の方針は異なることでしょう。
改善すべき業務と方針を的確に把握しなければ、業務改善はうまく進みません。
効果のないことにコストや時間をかければ、却って資金繰りにマイナスの影響を与えることもあります。
業務改善を資金繰り改善へとつなげるためには、計画性のある効率的な取り組みを心がけてください。
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