現在、政府は中途採用の拡大を促しており、採用活動も新卒一括採用から通年採用へと変わろうとしています。
この方針は、潜在的な労働力であり、また将来的な問題を孕んでいる就職氷河期世代を支援するためです。
しかし、中途採用によって人材を確保することは簡単ではなく、中途採用への取り組みに悩む中小企業は少なくありません。
そこで本稿では、中途採用が難しい理由、派遣労働者を活用するメリットを解説し、派遣労働者の活用で成功した会社の実例も紹介していきます。
今後は中途採用拡大か
現在、政府の進める働き方改革の一環として、中途採用を拡大する動きがあります。
新卒一括採用のシステムを長くとってきたため、日本の企業は、基本的に中途採用に消極的です。
新卒一括採用のタイミングで就職することができずに非正規雇用として働いてきた人、あるいは勤めてきた会社を離職した人などが求職活動をしても、
- 企業にとっては新卒の人材のほうが魅力的である
- 採用活動の時期が固定されている
などの理由から、積極的な雇用が生まれにくいのです。
氷河期世代を支援する風潮
先日、経団連と大学が通年採用に合意したと報じられました。
大企業では、すでに中途採用を拡大するために取り組んでいる会社も多く、今後は中途採用に力を入れていく会社が増えていくと思います。
政府が、中途採用の拡大に取り組んでいる背景には、就職氷河期世代の問題があります。
バブル崩壊後、日本企業は約10年間という長期にわたって低迷を続けました。
この時期に就職活動をした人々の中には、うまく就職できなかった人が非常に多く、この世代は「就職氷河期世代」とも呼ばれます。
就職氷河期に高校・大学を卒業した人は、現在30代半ばから40代後半となっており、ここには第二次ベビーブームに生まれた団塊ジュニア世代も含まれます。
このため、氷河期世代の人口は、政府の見解では1700万人、また別の見解では2300万人ともいわれており、膨大な数に上ることが分かります。
この世代の特徴は、他の世代と比較して、非正規雇用の割合が高いことです。
長期にわたって就職活動がうまくいかず、正社員としてキャリアを積むことができなかったために、未だに非正規雇用として働いている人が大勢いるのです。
具体的には、非正規雇用として働き続けている人は50~70万人、無職の人は40~55万人とされています。
労働人口の減少、それによる経済成長の停滞・後退を懸念する政府としては、就職氷河期世代の就労や正規雇用化を促進することで、経済的に大きな効果が見込めるという狙いがあります。
また同時に、このような政府の狙いがうまくいかなかった場合、大きな問題につながります。
就労がうまくいかない就職氷河期世代が、今の状況を改善できないまま時間が経過すれば、今後数十年のうちに、この世代から生活保護受給者が大量に出る懸念があるのです。
さらに、就労がうまくいかず、生活が安定しないことから結婚できない人も多く、これが少子化の原因にもなっています。
以上のように、成長のためにも、将来の問題の予防のためにも、政府にとって就職氷河期世代の支援は欠かすことができません。そこで、中途採用の拡大を目指し、取り組んでいるのです。

就職氷河期世代と経済の関係は深い。今後も、就職氷河期世代と中途採用の問題は、様々な形で中小企業と関わってくると思うわ。

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中小企業と中途採用
人材不足に悩む中小企業では、中途採用の拡大によって受給できる助成金もあるため、積極的な取り組みを検討している会社も多いと思います。
しかし、中小企業にとって中途採用は簡単ではなく、慎重な取り組みが求められます。
まず、多くの中小企業において、人材確保の核となるのは新卒採用、中途採用、派遣労働者活用です。
このほか、必要に応じてアルバイトやパートタイマーを雇う場合もあるでしょうが、経営における人的資源の中心はこの3つです。
中小企業でも、新卒の人材を採用したいと考えている会社がほとんどです。
しかし、新卒の人材の多くは
- より良い待遇で働きたい(できれば大企業で働きたい)と思っていること
- 中小企業は好待遇での雇用が難しいこと
- そもそも新卒の人材が減っていること
などにより、中小企業が新卒の人材を雇用することは容易ではなくなってきています。
中途採用の難しさ
そこで、中途採用を拡大せざるを得ないのですが、これも容易ではありません。
なぜならば、中途採用の人材は定着率が低い傾向があるためです。
新卒採用と中途採用の大きな違いは、就労経験があるかどうかです。
新卒採用には就労経験がないのに対し、中途採用には就労経験があります。
このため、企業が中途採用を実施するとき、どうしても即戦力になる人材を求めることになります。
即戦力にならなければ、中途採用で雇う魅力は大きく損なわれます。
即戦力にならなければ、中途採用でも新卒採用でもどちらでもいいのです。
むしろ、新入社員を全員横並びで教育できるように、新卒採用のほうが会社の都合は良いでしょう。
即戦力になることが前提ですから、有期契約雇用、つまり試験的・穴埋め的な雇用ではなく、最初から無期雇用や正規雇用として募集をかけることも多いです。
もちろん、能力を見極めるために、まずは有期契約として雇い入れる会社もあるでしょうが、中途採用等支援助成金の受給要件は常用雇用することです。
この意味でも、中途採用と有期契約は相性が良いとは言えません。
さらに、中途採用の人材を雇用するにあたって、企業は書類や面談を通して選考します。
このような選考だけでは、適性を見極めることが困難であるため、書類や面談だけで常用雇用に踏み切るのはリスクが高いです。
実際に、中途採用の拡大に取り組んだ中小企業では、定着率の低さに悩む会社も多いです。

中途採用で人材を求める意義をよく考えよう。
これまで、多くの企業が中途採用の採用に消極的だったが、それなりに合理的な理由があったのだ。

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中途採用を廃止したA社の事例
本稿で例に挙げるA社も、中途採用の難しさに悩み、採用活動に負担を感じていた会社のひとつです。
A社でも、人材確保のために新卒採用、中途採用、派遣労働者活用の3つで対応してきたのですが、中途採用の定着率の低さに悩んでいました。
年間に平均5名程度を中途採用していたものの、1年後に在籍するのは1~2名に過ぎなかったのです。
そこでA社は、中途採用を全て廃止することとしました。
事業ではより多くの人材を必要としており、人材確保のためには中途採用も必要と考えて取り組んできたのですが、中途採用ではいつまでたっても十分な人材を確保できません。
A社では、新卒採用・中途採用・派遣労働者活用を同時並行していましたが、中途採用を廃止して派遣労働者の活用に注力することで、人材確保を図ったのです。
中途採用と派遣労働者の違い
人材を確保したいのに中途採用を廃止するといえば、人材確保の道をひとつ断つわけですから、矛盾した方針にも聞えるかもしれません。
しかしA社では、中途採用を廃止して派遣労働者活用にシフトしたことで、着実に人材不足を解消しています。
上記の通り、中途採用の人材は定着率が低い傾向があります。
これは、適性を把握しにくいため、ミスマッチが起こってしまうことが最大の原因です。
会社が期待する適性を備えていない人材を雇ってしまう、優秀な人材の確保が難しいという問題があるのです。
これに対し、派遣労働者ではこのようなミスマッチが起こりにくいです。
なぜならば、派遣労働者は数ヶ月間の有期契約として雇い、実際の就労を通して適性を見極め、有期契約の更新や正規雇用への転換などを検討できるからです。
A社では、まず、派遣労働者を6ヶ月の有期契約で雇います。
この期間で派遣労働者の適性を見極め、継続して働いてほしいと思える人材には面談を実施し、本人の意向も踏まえて正規雇用へ転換します。
適性が分からない中途採用の人材は、5人採用して1~2人しか定着しないのに対し、適性を把握している派遣労働者を正規雇用に転換すれば、短期間での離職はほとんど起こりませんでした。
10名の人材を確保するために、中途採用によって5名、派遣労働者の転換5名を確保するならば、中途採用は採用後の離職も考慮して15人程度も雇用しなければなりません。
そのような非効率なことをするよりも、派遣労働者を雇用して労働力を確保し、なおかつ適性があり、定着が期待できる人材を正規雇用に転換し、10名の確保を目指したほうがよほど効率的です。
実際、A社は派遣労働者からの転換により、1年間で正社員を10名増やし、定着率を高め、離職者も従来の半分に減らすことができました。
正規雇用をスムーズにし、離職率も減らし、まさに人材の雇用・人材流出の防止の両面から人材確保を進めていったと言えます。

会社によっては、中途採用を一切やめるという思い切った方針で、人材確保が進むこともあるんだね。

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キャリアアップ助成金も活用
A社は派遣会社から、6ヶ月後の正規雇用転換を前提する「紹介予定派遣」という契約で派遣してもらっています。
このため、正規雇用に転換した場合には、派遣会社に転用費用を支払います。
転用費用は、転換した派遣労働者の年収の30%程度が一般的です。
中途採用がうまくいけば発生しない手数料ですから、派遣労働者の転換はコスト負担が大きいようにも思えます。
しかし、上記の通り、A社のケースでは5人の確保に15人の中途採用が必要という状況でした。
これはある意味、15人のうち10人は辞めることを前提として雇い、教育し、人件費を払うのですから、非常に無駄が多いです。
予想に反して定着率が高くなった場合には、大きすぎる人件費負担で悩むことになります。
人材は欲しいが定着率が低く無駄が多い、しかし定着率が高ければ人件費が高いからやめてほしいという、採用活動がなんともちぐはぐな感じになってしまうのです。
それよりも、転用費用を人材確保のためのコストと割り切って、適性のある人材を、必要な人数だけ雇用したほうが良いでしょう。
また、転用費用はそれほど深刻なコスト負担ではありません。
というのも、派遣労働者を正規雇用に転換した場合、キャリアアップ助成金を受給できるからです。
キャリアアップ助成金の正社員化コースでは、派遣労働者を正規雇用すると、
1人当たり85万5000円(生産性要件を満たしている場合には108万円)
の助成金を受給することができます。
厚生労働省の発表する「労働者派遣事業報告書(平成27年度)」によると、派遣労働者の1日当たりの平均賃金11,617円となっています。
年間240日の勤務と仮定すれば、派遣労働者の平均年収は約280万円となります。
転用費用として、この年収の30%を派遣会社に支払うならば、派遣労働者の正規雇用転換にかかるコストは84万円です。
つまり、キャリアアップ助成金の正社員化コースで受給できる85.5万円で十分にカバーできる金額であり、生産性要件を満たしている場合にはおつりがくることが分かるでしょう。
このほか、正規雇用に転換することによって、賞与などの手当が適用されるようになるため、派遣労働者として雇っていた頃よりも人件費は高くなるでしょう。
しかし、派遣会社に毎月支払っていた派遣料金から大幅に増えることはなく、むしろ人材不足を解消し、事業を円滑に進め、売上や利益が伸びていくことが期待できますから、ほとんど問題にはなりません。

派遣労働者を『足りない労働力の埋め合わせ』くらいに考える会社も多いが、助成金も手厚いし、人材確保に活用できるわ。
売上もアップ
A社が人材確保に取り組んでいた理由は、工場を365日24時間稼働するためでした。
国内で経営するA社は、海外で展開する同業他社の影響により、苦戦を強いられていました。
このため、365日24時間稼働によって事業を推進し、生産力を高める必要があったのです。
A社では、キャリアアップ助成金を活用して助成金を受給し、負担を大幅に軽減しています。
中途採用に取り組んでいた頃に比べて、採用活動による負担も軽減され、人材確保もスムーズになりました。
もちろん、適性のある派遣労働者を選んで正規雇用できるのですから、従業員の能力の平均値も高まりました。
これに加えて、365日24時間稼働の体制も実現し、売上も14億円から15.3億円に伸びています。
人材は確保でき、離職率は低下し、売上もアップしており、まさに一石三鳥の結果が得られたのです。

派遣労働者の活用、正規雇用への転換で生産性も高まった好例だな!

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まとめ
人材不足に悩んでいる会社の中には、人材不足が解消されれば事業を拡大でき、業績アップにつながる会社も多いです。
人材問題を解決するかどうかが、事業の行く末を左右するポイントになっているのです。
それを、どのように解決していくのか。中途採用の拡大、派遣労働者の活用、最近では外国人労働者の拡大など、色々な方法が考えられます。
しかし、自社に適していない方法を選ぶと、中途採用に取り組んでいた頃のA社のように、なかなか人材不足が解消されません。
そのような場合でも、思い切って中途採用を廃止して派遣労働者の活用に注力するといった、ある意味「灯台下暗し」的なアプローチによって、思いのほか簡単に解決できる場合があります。

自社に適している方法を模索しつつ、助成金もしっかり活用しながら、人材確保に取り組んで欲しい!
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